著者
村田 浩一 佐藤 雪太 中村 雅彦 浅川 満彦
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

日本アルプスの頚城山脈、飛騨山脈および赤石山脈において、環境省および文化庁の許可を得てニホンライチョウから血液を採取した。栄養状態や羽毛状態に著変は認められず、すべて健常個体であると診断された。血液塗抹染色標本を光学顕微鏡下で観察したところ、78.1%(57/73個体)にLeucocytozoon sp.の感染を認めたが、他の血液原虫感染は認めなかった。検出された原虫の形態および計測値から、大陸産のライチョウに確認されているL.lovatiと同種であると判定した。感染率に性差は認めなかった。本血液原虫の血中出現率は、春から夏にかけて上昇し、夏から秋にかけて低下する傾向が観察された。ほとんどの地域個体群にロイコチトゾーン感染が確認されたが、常念岳および前常念岳の個体群には感染を認めなかった。L.lovatiのmtDNA cytb領域を解析し、各地域個体群間および他の鳥種間で塩基配列の相同性を比較検討した。南北アルプスのライチョウ間では差が認められなかったが、他の野鳥寄生のLeucocytozoon spp.との間では差が認められた。L.lovatiを媒介していると考えられる吸血昆虫を調査した。調査山域でアシマダラブユおよびウチダツノマユブユ等の生息を確認した。PCR法によりブユ体内からL.lovatiと100%相同の遺伝子断片が増幅された。このことから、L.lovatiの媒介昆虫はブユであることが強く示唆された。本研究で得られた数々の知見は、ニホンライチョウを保全する上で有用であると考える
著者
関 泰一郎 細野 崇 増澤・尾崎 依 三浦 徳
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

血栓症は、がんと並ぶわが国の死亡原因であり、動脈硬化を基盤として発症する。動脈硬化は、脂質の摂取量の増加により促進されるが、近年、腸内細菌の関与が注目されている。赤身肉、乳製品などに豊富に含まれているコリンは、腸内細菌により代謝され、生成したトリメチルアミンが肝臓のフラビンモノオキシゲナーゼ(FMO)によりトリメチルアミンNオキシド(TMAO)に変換される。TMAOは動脈硬化を促進する可能性が示唆されているが、その詳細は不明である。本研究では、TMAOの生成を抑制する機能性食品成分を探索し、またこれまでに解明されていないTMAOの血栓形成促進機構を明らかにする。
著者
鈴木 生郎
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究の目的は、相互的な存在論的依存(相互的根拠づけ)関係について理論的に整備するとともに、それをさまざまな形而上学的問題に応用することである。こうした目的を達成するために、2021年度は以下の研究を進めた。(1) 前年度に引き続き、(A)ある対象が特定の種に属すること、その対象がその種の成員として典型的な性質を持つこと、その対象その種に属するものとして同一性を保つことの間の相互依存関係を明らかにすることによって、持続の形而上学における「根拠づけの問題」を解決する論文をまとめ、出版することを目指す。また、根拠づけ概念に関する研究の応用として、(B) 死の害悪についての「タイミング問題」に対する、いわゆる「死後説」(人は死によって生じる害を、死後に被るとする説)に、より十全な擁護を与える論文を執筆するとともに、新たに着想を得た論点として、(C) 時間の哲学における「現在主義」と呼ばれる立場に対して、持続の事実を根拠づけるものは何かということに関する困難があることを指摘する課題にも取り組む。(2) 相互的根拠づけの概念に基づいて実体概念を解明する。特に、アリストテレス以来典型的な「実体」とみなされている中間的なサイズの対象が、その構成要素であるミクロな対象に対してどのような意味で「独立的」であると言えるのか、という問題意識のもとで、その独立性を相互依存関係のあり方から捉えることを目指す。
著者
高松 千尋
出版者
日本大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

ヨアヒム・フォン・ザントラルトの著書『高貴なる建築・彫刻・絵画のドイツ・アカデミー』(1675-1679年、ニュルンベルク)について研究する。同書は17世紀に出版された画家伝兼絵画理論書であるが、その研究は未だ断片的なものにとどまっている。その資料的価値は近年ようやく認められつつあり、今後美術史研究の一次資料として重要性を強めていくと思われる。本研究ではザントラルトがローマで直接交際した北方の画家たちを対象とし、『ドイツ・アカデミー』中の伝記を他の画家伝と比較することで、その記述内容や芸術観の特質を明らかにする。
著者
浦野 起央
出版者
日本大学
雑誌
政経研究 (ISSN:02874903)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.69-106, 2013-06
著者
西尾 俊幸 小田 宗宏 李 秋夢 篠崎 佑子 高橋 愛実
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

各種糖質加水分解酵素の糖転移作用を利用してN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)を構成糖として含む特殊構造オリゴ糖を合成し、それらのプレバイオティクス機能について評価を行った。その結果、以前に量産法を確立したN-アセチルスクロサミンを原料として用い、新規な6種類のGlcNAc含有オリゴ糖を合成することができた。これらのオリゴ糖は、ヒト腸内細菌由来の善玉菌であるビフィズス菌の中で特定の種を選択的に増殖させることが分かった。従来のオリゴ糖プレバイオティクスはこのような選択的ビフィズス菌増殖能が無いことから、今回合成したものは新しいタイプのプレバイオティクスとして開発できる可能性がある。
著者
伊藤 芳久 須川 晃資 小菅 康弘
出版者
日本大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

Prostaglandin E2 (PGE2)は、様々な生理学的プロセスにおいて重要な役割を果たす脂質メディエーターである。私達は、PGE2がPGE2受容体EP2サブタイプの活性化を介して、マウス運動ニューロン由来で未分化のNSC-34細胞の神経突起伸長を促進し、細胞増殖を抑制することを見出した。また、ALS発症直後のモデルマウスの運動ニューロンではEP2発現が増加すること、ニューロン様に分化したNSC-34細胞のEP2発現はPGE2処置により上昇することを明らかにし、運動ニューロンにおけるPGE2誘発性のEP2発現増加がALSにおけるニューロン変性に関与することを示した。
著者
五十嵐 由里子
出版者
日本大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1996

古人類集団の人口構造を推定する際に要となるのが、古人骨の年齢推定である。古人骨において比較的残りやすい部位である腸骨耳状面を用いた年齢の推定方法は、Lovejoy et.al(1985)、五十嵐(1990)らによって掲示されている。今回は、東京慈恵会医科大学所蔵の近代日本人骨格標本のうち、生年月日と死亡年月日の記録があり、年齢の信憑性が極めて高い資料(男性30体、女性8体、年齢は25歳から85歳)を用いて、耳状面の形態による年齢の推定方法を新たに作った。新たな方法による年齢の推定値は、従来の方法による値と完全には一致しないことがわかった。縄文時代には地域によって人口構造が異なっていた可能性が、五十嵐(1990)によって示唆されている。今回は国立科学博物館所蔵の、蝦島貝塚(岩手県)人骨(縄文時代後・晩期、男性16体、女性30体、不明16体)を対象として、この集団の人口構造を推定した。年齢推定には今回新たに設定した方法を用いた。結果は以下の通りである。蝦島集団では、30歳代後半から40歳代前半での死亡率が最も高かった。蝦島集団の死亡率は、10歳代後半から30歳代前半では、他の本州集団(福島県三貫地遺跡、愛知県伊川津遺跡、吉胡遺跡、岡山県津雲遺跡)より高いが北海道集団より低く、30歳代後半以降では他のどの集団よりも高い。妊娠痕が判定できた全ての女性個体に妊娠痕が認められた。妊娠回数が多かったと判定した個体は40歳代後半以上の個体の60%を占める。この割合は、他の本州集団より高いが北海道集団より低い。以上の結果から、蝦島集団は、他の本州集団より多産多死傾向にあったが、北海道集団ほどではなかったという可能性が示唆できる。日本大学松戸歯学部で解剖された女性遺体6体について、骨盤上の妊娠痕の観察を行った。今後遺族へのアンケートによって、生前の妊娠出産に関する情報を収集する予定である。
著者
小浜 正子 姚 毅 何 燕侠
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、上からの生殖コントロールの推進に対する中国の農村女性の対応を明らかにしようとしたものである。研究の結果、調査地の農村では、「一人っ子政策」開始以前の1970年代に生殖コントロールが急速に普及したが、これには出産・養育の負担にあえぐ女性たちが政府のキャンペーンに後押しされて、多子を望む家族を説得していった側面があることがわかった。政策は、リプロダクティブ・ライツの実現に対して、両義性を持っていたと言える。
著者
横田 陽匡
出版者
日本大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2019-04-01

糖尿病網膜症(以下、網膜症)は糖尿病患者の増加と相まって、我が国の中途失明の主因になっています。網膜症を予防するためには血糖コントロールが重要であることは言うまでもありません。しかし血糖コントロールを良好に維持することは容易なことではなく、網膜症の予防に対してその効果にも限界があります。我々はレニンの前駆体であるプロレニンと網膜症の関連性を明らかにしました。そこでプロレニンを標的として網膜症に対するワクチンを作成することに成功しました。実際に糖尿病マウスに接種したところ、網膜神経機能が保護されインスリン感受性も改善していたことから、網膜症のみならず他の糖尿病合併症に対しても効果が期待されます。