著者
安岡 義人 紫野 正人 二宮 洋 近松 一朗
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.268-273, 2016 (Released:2017-03-23)
参考文献数
13

小児の反復する難治性嚥下性肺炎予防のための誤嚥防止術には種々の術式がある。喉頭気管分離術は気管食道吻合術と共に,小児の誤嚥防止術として最も広く普及し施行されている術式である。筆者らは気管を切断せず,気管前壁のU字気管弁を後方に折り曲げ気管後壁と側壁に縫合して気管閉鎖する喉頭気管分離術(気管弁法)を開発し施行している。 気管弁法は低侵襲で簡便なため本人・家族が受け入れやすく,術後の管理が容易で気管孔が安定しているなどの利点がある。今回,気管弁法の術式の改良を行い,小児,成人,気管切開後にも適応を拡大し,喉頭気管瘻や気管腕頭動脈瘻のリスクも軽減させることのできる応用範囲の広い術式とした。さらに,誤嚥防止術の枠を超え,嚥下機能改善や,食道–喉頭シャントにより声帯発声が展望できる術式を目指している。
著者
臼井 智子 増田 佐和子
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.17-22, 2012 (Released:2012-12-28)
参考文献数
8

RSV 感染症により入院治療を行った24例のうち,急性中耳炎を合併した18児を対象とし,年齢,重症度,臨床症状,鼓膜所見,検出菌や治療,経過を検討した。RSV 感染に合併した急性中耳炎児の初診時月齢は,0 ヵ月から 3 歳 5 ヵ月,平均12.3ヵ月,中央値11.5ヵ月であった。2 歳以上に比べ 2 歳未満で有意に中耳炎の合併率が高く,軽症は 7 例,中等症は 3 例,重症は 8 例であった。抗菌薬投与や鼓膜切開術を行わずに急性中耳炎が治癒したものは 2 例のみであり,軽症,中等症の 4 例で翌日に増悪を認め,そのうち 1 例は治癒後にも再燃を認めた。上咽頭からは12例,中耳貯留液からは 1 例で細菌が検出されており,重症度や経過との関連は認められなかった。細気管支炎により入院での全身管理を要する RSV 感染は低年齢児に多い。中耳炎を認めた場合,翌日に悪化することもあるため,軽症であっても連日の注意深い観察と小児科医との連携が必要であると考えられた。
著者
井上 翔太郎 神吉 直宙 久呉 真章
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.278-282, 2019 (Released:2020-04-28)
参考文献数
12

急性中耳炎の頭蓋内合併症は稀だが致死率も高く神経学的後遺症を残す場合もあり早期の診断と治療が重要である。今回急性中耳炎にS状静脈洞血栓症を合併した症例を経験した。症例は11歳の女児で受診前日に急性中耳炎と診断され経口抗菌薬を処方されたが,その後嘔気・頭痛が増強し当院を受診した。発熱なく意識清明で髄膜刺激徴候はなく,CTにて右中耳炎・乳様突起炎と診断し広域抗菌薬の経静脈投与を開始した。翌日MRIで右S状静脈洞血栓症を認め,ヘパリンNaの投与も開始した。抗凝固療法は計7日間,抗菌薬投与は計14日間行った。第26病日のMRIで血栓は消失し,神経学的後遺症なく経過した。急性中耳炎で頭痛や嘔吐が強い場合,本症も念頭に置く必要がある。小児でも成人と同様に広域抗菌薬,抗凝固療法による治療が有用と考えられた。
著者
田中 康雄
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.253-259, 2017 (Released:2018-03-31)
参考文献数
4

発達障害に対する小児耳鼻咽喉科臨床と発達障害臨床を対比した。さらに発達障害という存在について考察し,治療対象とすべき障害は生活障害であると主張した。そのうえで,親・家族が抱える思いを想像し,親・家族への応援のあり方,説明方法,さらに本人への応援や生活支援者への応援について検討した。発達障害臨床とは相手の思いに思いを馳せつつも,決して完全には重ならないという,当たり前のことを述べ,それでも相手が主体的に生きていくよう応援するため,相手のためにこちらが悩み,いろいろと心配し,そしてなによりも苦しさに耐えて投げ出さないという覚悟が大切であると説いた。見返りの少ない活動であり孤軍奮闘と寂しさのなか,応援する者もまた,応援を必要としていることを強調した。生活障害を応援することは畢竟,気負うことなく,奢ることなく,恥じることなく,「素人の相談者と評される」ことであろう。
著者
加藤 俊徳
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.248-253, 2011 (Released:2012-12-28)
参考文献数
8

小児中耳炎の発症要因のなかで,頭位(体位)の関与するものに,授乳時の姿勢,胃食道逆流,寝ているときの姿勢が考えられる。授乳時の姿勢と中耳炎については,1960年ダンカンが哺乳瓶を寝せた状態で授乳させると,ミルクが耳管を経て中耳に入り,中耳炎の原因になることを指摘し,哺乳瓶を寝せた状態で授乳したことによりおこる中耳炎を頭位性中耳炎(positional otitis media)と名づけた。日本でも30年前に授乳の時の姿勢により中耳炎をおこすことが,わかっていた。しかし,多くの母親は,臥位授乳をしているので,その理由を検討した。そして授乳の姿勢による中耳炎を検討し,さらに,胃食道逆流や,寝ているときの姿勢の関与を考察した。
著者
今井 直子 熊川 孝三 安達 のどか 浅沼 聡 大橋 博文 坂田 英明 山岨 達也 宇佐美 真一
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.352-359, 2013 (Released:2014-03-20)
参考文献数
18

【目的と方法】  先天性難聴の原因として最も頻度が高いのは GJB2 遺伝子変異であり,一般的に非進行性難聴を呈するとされる。今回我々は GJB2 変異97例について遺伝子型と難聴の進行の有無について検討した。【結果】  遺伝子型は従来アジア人に多いとされている235 delC が最も多く,欧米人に多い35 delG は認められなかった。当初からの重度難聴例を除いた41例のうち,1 年以上の間隔で聴力が 2 回以上測定されている症例は32例であった。明らかな難聴の進行例は 1 例,進行疑い例は 3 例であったが,遺伝子型の特定の傾向は認められなかった。【結論】  GJB2 変異においては難聴の進行は稀であり,進行性難聴を呈する特定の遺伝子型は指摘できなかった。しかし乳幼児では特に難聴の程度が言語発達に大きく影響を与えるため,GJB2 遺伝子変異例であっても稀に難聴が進行するということをふまえて注意深く難聴の経過を追う必要がある。
著者
加藤 久美
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.209-215, 2010

  小児の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)は成人と異なり,眠気よりも学力低下や,多動性・攻撃性などの注意欠陥/多動性障害(AD/HD)様の認知・行動面の問題が生じやすく,発達に影響を及ぼすとされているが,そのメカニズムはまだ明らかではない。脳に器質的な影響を及ぼすとの報告,全例ではないが OSAS 治療後に落ち着きや集中力などが改善することより,小児 OSAS に対する早期介入が重要であると考えられる。小児睡眠診療では AD/HD,広汎性発達障害(PDD)の発達障害を持つ児の受診が多く,未診断のケースも少なくない。小児睡眠診療を行う上では,発達面に留意して診療を行い,保護者の困り感や,脳波所見など気になる所見がある場合に,小児科や児童精神科,療育センターなどにコンサルテーションできる体制を整えておくべきである。小児 OSAS では,発達面を含めた長期視野でのフォローが重要である。
著者
岩﨑 涼太 杉山 剛 石井 裕貴 五十嵐 賢 増山 敬祐 杉田 完爾
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.15-20, 2015 (Released:2015-06-20)
参考文献数
17

【背景】年少の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)患者には成長障害の合併が多いが,アデノイド口蓋扁桃摘出術(AT)前後の身体発育に関して 7 歳以下の報告は少ない。【目的】7 歳以下の OSAS 患者に対する AT の身体発育への影響を明らかにする。【方法】対象は19名(男女比13:6)。Type 3 簡易 PSG で無呼吸低呼吸指数(AHI)≧5 でアデノイド増殖・口蓋扁桃肥大を有する小児を OSAS と診断し,AT 後 3,6,12ケ月の身体発育を検討した。【結果】AT 後に AHI は有意に低下した(18.9±15.3 vs 3.4±1.6)。BMI パーセンタイルは AT 後 3 ケ月で有意に増加し(43.9±26.1 vs 55.6±22.5),身長 SD スコアは AT 後12ケ月で有意に増加した(−0.26±0.94 vs 0.006±0.63)。【結論】7 歳以下の OSAS 患者では AT 後,体重増加が先行し,身長は遅れて増加した。
著者
加藤 久美 毛利 育子 谷池 雅子
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.5-10, 2013 (Released:2013-06-17)
参考文献数
22

小児の健やかな発育・発達のためには十分な睡眠が必要である。乳幼児期の睡眠不足は後の多動性や肥満に関連することが知られている。しかし,我が国の小児の睡眠時間は世界一短く,小児の睡眠が軽視されていると言わざるを得ない。また,閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)やレストレスレッグズ症候群(RLS),ナルコレプシーなどの小児の睡眠関連疾患は小児の認知・行動面に影響を及ぼす場合があるが,決して稀な疾患でないにも関わらず,一般的には認知されていない現状があり,適切な治療を受けるのに年月を要するケースも珍しくない。年齢依存的に出現する症状や小児に特有の病態など,小児の睡眠関連病態は成人とは異なる点が多い。本稿では,小児の睡眠の重要性と主たる睡眠関連病態について,小児科の立場より解説する。
著者
漆原 直人 矢野 正幸
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.207-211, 2014 (Released:2015-03-13)
参考文献数
7

小児の胃食道逆流症の当科での診断手順,治療方針と外科的治療経験などについて報告した。当科では外科治療として腹腔鏡下の Toupet 法による噴門形成術を標準術式としており2000–2013年までに Toupet 噴門形成術が151例(腹腔鏡122例,開腹29例)に施行された。脳性麻痺など神経筋疾患に伴うものが121例と最も多く,食道閉鎖や横隔膜ヘルニアなどの術後10例,食道裂孔ヘルニア10例で,合併疾患のない正常児は 5 例であった。合併疾患のない 5 例は,高度食道炎と食道狭窄 4 例と反復性中耳炎・咽喉頭炎 1 例であった。最近,胃食道逆流症が難治性中耳炎,咽喉頭炎などの原因になるとの報告がみられるようになった。しかし中耳炎,咽喉頭炎など耳鼻科領域の疾患と GER の関係については,症例も少なく,また小児外科医への認知度も低いことから,今後の検討が必要と思われる。
著者
清水 直樹 家根 旦有 岡本 英之 細井 裕司
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.29-32, 2008 (Released:2012-09-24)
参考文献数
11
被引用文献数
1 2

奈良県立医科大学耳鼻咽喉科では1990年から2006年の過去17年間に7例の小児甲状腺癌を経験した.これは当科で手術を施行した甲状腺悪性腫瘍全体の1.6%に相当する.性別は男性3例,女性4例で,年齢は8~16歳,平均年齢は11.6歳であった.病理組織型は,乳頭癌6例,濾胞癌1例と,成人同様乳頭癌が多く認められた.乳頭癌のうち,びまん性硬化型乳頭癌と診断した症例が1例,充実濾胞型の増殖を示した症例が1例あった.また全例に頸部リンパ節転移を認めた.甲状腺全摘術を施行した2症例は,術後一時的に気管切開を要した進行例であった.肺転移が認められた症例が3例あり,そのうち2例に衛後アイソトープ治療を施行した.小児甲状腺癌の予後は成人と比較し良好であると報告されているが,初診時から周囲組織への高度浸潤を認める症例や,遠隔転移をきたすなど進行癌である場合も多く,治療方針の選択には十分注意する必要であると考えられた.
著者
近藤 康人
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.271-275, 2022 (Released:2023-03-31)
参考文献数
24

特定の花粉アレルゲンに感作されると,新鮮な果物や生野菜を摂取した際にIgE抗体の交差反応によって口腔内に限局した即時型アレルギー症状を来すことがある。この病態を花粉-食物アレルギー症候群(以下PFASと略す)という。症状は通常,口腔アレルギー症候群(以下OASと略す)の臨床病型を示す。我が国においてもカバノキ科花粉の飛散地域においてバラ科食物のPFASがみられる。一方,ヒノキ科花粉におけるPFASの原因アレルゲンはpolygalacturonaseファミリーによる報告のみであった。しかし近年,南欧でヒノキ花粉症患者にモモやオレンジのPFASが報告され,交差抗原性の原因としてgibberellin-regulated protein(以下GRPと略す)の関与が示された。そして2020年,本邦スギ花粉においてGRPが同定され,新規アレルゲンCry j 7として登録され,注目されている。
著者
吉田 之範
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.196-201, 2014 (Released:2015-03-13)
参考文献数
11

胃食道逆流症(gastroesophageal reflux disease : GERD)は反復性喘鳴をきたす疾患として重要である。しかし,どのような喘鳴児で GERD の関与を疑うか明確ではない。また,治療では H2 受容体拮抗薬(H2RAs)とプロトンポンプ阻害薬(PPIs)の使用について議論の余地がある。従って,反復性喘鳴児での GERD 診療においては,①どのような反復性喘鳴児で GERD の関与を疑えばよいか,②喘鳴をきたす GERD の薬物治療は? という 2 つの課題があげられる。  そこで我々は,通常の治療を行っても喘鳴を反復する児に24時間 pH モニタリングを行った。その結果,胃酸の逆流は臥位よりも立位で多く,そのような児は日中に呼吸器症状が多いことが分かった。また,そのような児へファモチジンを投与したところ,症状は改善した。  これらのことから,夜間よりも日中に呼吸器症状をきたしやすい児で GERD の関与を疑い,また PPIs の小児の至適容量が検討されていないことも併せて考えると,呼吸器症状をきたす GERD 治療は H2RAs から開始することでよいと考えられる。
著者
安岡 義人 中島 恭子 村田 考啓 紫野 正人 近松 一朗
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.374-380, 2015 (Released:2016-03-31)
参考文献数
10

過去 6 年間に当科外来を受診した15歳以下の小児鼻出血77例の血管病態を電子内視鏡の通常光と狭帯域光観察(narrow band imaging: NBI)を用いて診断し,好発部位と血管形態別 6 型分類の特徴を明らかにした。好発部位は95%以上が鼻中隔前下方皮膚粘膜移行部付近とキーゼルバッハ部であった。血管形態分類では線状型(linear type)39例(50.6%),網状型(reticular type)34例(44.2%),肉芽型(granular type)2 例(2.6%),点状型(punctate type)1 例(1.3%),瘤型(aneurysmal type)1 例(1.3%)で陥凹型(recessed type)は該当例がなく,静脈性出血であった。小児の鼻出血の好発部位と血管病態に基づき,小児の鼻出血の初期対処法は患側の母指で鼻翼を正中の鼻中隔に圧迫し,手掌は開き他 4 指を対側下顎角部に当て挟む,母指圧迫止血法:thumb press maneuver (TPM)が合理的で効果的な止血法である。
著者
冨山 道夫
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.23-28, 2013 (Released:2013-06-17)
参考文献数
24

伝染性単核球症に対するぺニシリン系抗菌薬(PCs)投与は高率に皮疹を生じるため禁忌である。一方細菌性急性咽頭・扁桃炎の主な起炎菌は A 群 β 溶血性連鎖球菌(A 群溶連菌)で,PCs が第一選択薬とされている。今回 A 群溶連菌感染症を合併した伝染性単核球症の 1 例を経験した。症例は 7 歳女児で咽頭痛,発熱を主訴に受診した。上咽頭,口蓋扁桃に白苔,発赤を認め A 群溶連菌迅速診断陽性であった。自動血球測定装置でリンパ球優位の白血球上昇がみられたため,肝機能検査,Epstein-Barr (EB)ウイルス抗体検査を行うとともに cefditoren pivoxil を投与した。細菌検査では上咽頭,口蓋扁桃より A 群溶連菌が 3+ 検出された。血液検査では肝機能低下,異型リンパ球,EB ウイルス感染を認め伝染性単核球症と診断された。治療後 3 日目に解熱した。A 群溶連菌迅速診断陽性の急性咽頭・扁桃炎に対する抗菌薬選択にあたり,白血球分画を測定する必要があると思われた。
著者
富澤 晃文 遠藤 まゆみ 坂田 英明
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.263-269, 2014 (Released:2015-03-13)
参考文献数
16
被引用文献数
1

聴覚障害乳幼児を対象に VRA (visual reinforcement audiometry)による骨導聴力測定を行った。6 症例(0~2 歳)の気導/骨導 VRA による気骨導差の推定について,他検査との整合性の観点から検討した。トリーチャー・コリンズ症候群,中耳炎併発例の 2 例においては,VRA により気骨導差が示された。70 dB 以下の感音難聴であった 2 例では,VRA による気骨導差はみられなかった。高度・重度感音難聴であった 2 例の骨導 VRA はスケールアウトを示した。骨導聴力が一定レベルまで残存していれば,気導/骨導 VRA の組み合わせにより気骨導差の有無とその程度の推定が可能であった。得られた検査結果は誘発反応・画像などの他覚的検査の所見と概ね整合しており,行動観察的手法によって良側の骨導オージオグラムを得る意義が示された。本手法と他検査とのクロスチェックは,乳幼児における伝音/感音障害の鑑別に有用と思われた。