著者
清水 太郎 異島 優 石田 竜弘
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.199-207, 2017-07-25 (Released:2017-10-25)
参考文献数
51

補体系は、自然免疫系の1つであり、初期の異物認識機構で中心的な役割を果たしており、病原体だけでなく、人工のナノ粒子の排除にも深く関わっている。補体系の活性化(カスケード反応)に伴い、生物学的活性をもつさまざまな分子が生成され、異物の貪食や炎症反応を誘導している。ナノ粒子の物性に応じて補体の活性化の程度はさまざまに変化するため、ナノ粒子の予期せぬ体内動態変化や毒性発現が想定されている。このような現象はナノ粒子による薬物送達効率を低下させるため、ナノ粒子に対する補体活性化機構を理解することは、非常に重要である。一方で、補体活性化に伴う免疫活性化は、ナノ粒子を用いたワクチンへ応用することが可能であると考えられる。本稿では、ナノ粒子に対する補体活性化の負と正の両側面について紹介する。
著者
井上 貴雄
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.10-23, 2016-01-25 (Released:2016-04-25)
参考文献数
35
被引用文献数
7 4

アンチセンス、siRNA、アプタマーに代表される核酸医薬品は、抗体医薬品に続く次世代医薬品として注目を集めている。現在、製薬業界では創薬シーズの枯渇が問題となっているが、核酸医薬品は従来の医薬品では標的にできなかった新規分子をターゲットにできる点において魅力的である。また、薬効本体がオリゴ核酸で構成されるという共通の特徴を有すること、有効性の高いシーズ(配列)のスクリーニングが他の医薬品と比較して容易であることなどから、1つのプラットフォームが完成すれば短期間のうちに新薬が誕生すると考えられている。本稿では、新たな局面を迎えている核酸医薬品の基本的性質と開発動向について概説する。
著者
西川 元也 吉岡 志剛 長岡 誠 草森 浩輔
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.40-50, 2021-01-25 (Released:2021-04-25)
参考文献数
35

核酸医薬品の実用化が急速に進み、ギャップマー型アンチセンス核酸(ASO)、スプライシング制御型ASO、ナノ粒子化あるいはN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)結合siRNA、CpGオリゴが近年上市された。これらの核酸医薬品は、水溶性高分子という共通点のほかは、標的細胞や標的分子、投与経路、体内動態などの点で異なる。標的部位に到達した核酸医薬品のみが薬効を発揮するため、核酸医薬品の体内動態制御は最重要課題の1つである。タンパク結合は、核酸医薬品の体内動態や毒性発現に重要であるが、必ずしも最適化されていない。標的指向化にはリガンド修飾が有用であり、GalNAc修飾が肝細胞へのsiRNAの送達に実用化されている。本稿では、核酸医薬品開発の現状と核酸医薬品の適応拡大に向けたDDSの可能性について論じる。
著者
井上 貴雄 佐々木 澄美 吉田 徳幸
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.86-98, 2019-03-25 (Released:2019-06-25)
参考文献数
15
被引用文献数
3 1

アンチセンスやsiRNAに代表される核酸医薬品は、これまで治療が難しかった遺伝性疾患や難治性疾患に対する新しいモダリティとして注目を集めている。従来の核酸医薬開発では生体内における安定性や有効性に課題があったが、修飾核酸技術やDDS技術が進展したことで状況は一変しており、局所投与のみならず、全身投与でも高い効果を発揮する候補品が次々と開発されている。本稿では、核酸医薬品の分類、性質、構造、作用機序等の基礎知識を解説し、既承認核酸医薬品を例にあげながら、その開発状況や優位性について議論したい。
著者
伊藤 沙耶美 中川 晋作 岡田 直貴
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.39-45, 2017-01-25 (Released:2017-04-25)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

現行のワクチンの大半は注射製剤であるため、投与に医療従事者を必要とするだけでなく、ワクチン製剤の輸送・保管に一貫した低温温度管理(cold chain)の整備が求められる。そのため、実際にワクチンを最も必要としている開発途上国などの地域にワクチンが浸透しにくく、また感染症パンデミックやバイオテロリズム発生時にワクチンの大規模接種を迅速に施行できないという課題を有する。したがって、注射に代わる簡便で有効かつ安全な新規ワクチン手法を開発することがさまざまな感染症ワクチンの有用性を向上させると考えられる。本稿では、近年開発が進むさまざまな新規ワクチン剤形のなかで、皮膚に貼るだけという簡便性と低侵襲性を併せもった経皮ワクチン製剤の開発状況について紹介する。
著者
山本 祥之
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.109-118, 2017-03-25 (Released:2017-06-25)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

これまでに、複数の抗がん剤内包リポソーム製剤が開発され、その臨床的有効性が示されてきた。近年、新たにイリノテカン内包リポソーム製剤であるOnyvide®が、転移性膵がんに対して5-FUとロイコボリンとの併用療法として米国で承認された。本稿ではこの新規リポソーム製剤の特徴および臨床開発経緯について概説する。
著者
吉村 和久
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.384-393, 2020-11-25 (Released:2021-02-25)
参考文献数
15

1980年代初頭、原因不明の免疫不全症候群がアメリカを皮切りに世界中に蔓延した。まだ原因も治療法もわからないころは、エイズを発症したらほぼ1年以内に命を落とす、いわゆる現代の黒死病として恐れられた。しかし、2020年現在では、早期発見・早期治療を行えば、非感染者とほぼ同等の寿命を全うできるようになった。なぜなら、現在使われている抗HIV薬は強力かつ副作用が少なく、非常に飲みやすいためである。ここに至るまでには、治療薬開発の長くて苦しい道のりがあった。今回、30年以上にわたる抗HIV薬の開発の歴史をまとめてご紹介する機会を得、あらためてこれまでの治療薬研究の道のりを振り返りながら、今後の治療方法の方向性を考えていきたい。
著者
河合 弘二
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.530-536, 2007 (Released:2007-12-13)
参考文献数
28

抗がん剤を用いた膀注化学療法と膀注免疫療法はともに表在性膀胱がんの治療体系に組み入れられた標準治療であり,特にBCG(bacillus Calmette-Guerin)菌を用いたBCG膀注療法は現状では最もよく行われ,かつ臨床的有用性の確立したがん免疫療法である.膀注療法の最も一般的な適応は表在性膀胱がんに対する経尿道的切除術後の再発予防である.また,膀注療法は上皮内がんに対する治療としてもその有効性が認識されている.また,これらの膀注療法の最終的な目標は表在性膀胱がんから浸潤性膀胱がんへの進展を予防することにある.TUR後早期の単回の抗がん剤膀注による膀注化学療法は,低あるいは中間リスク症例に適応され,その有効性が証明されているが,維持療法に関しては評価は一定していない.BCG膀注療法は一般的に膀注化学療法よりも有効であるが,有害事象も多いとされている.しかし,複数のメタアナリシスによる解析ではBCG膀注療法が有意に浸潤性膀胱がんへ進展するリスクを低減しうることが示されている.本稿では,最近のメタアナリシスによる知見も含めて膀胱がんに対する膀注療法の現状について概説したい.
著者
黒田 俊一
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.251-258, 2017-09-25 (Released:2017-12-25)
参考文献数
5

2001年に経済産業省より「大学発ベンチャー1000社計画」が発表され、2004年末には約1,000社、2005年末には約1,500社が設立された。そのなかには、創薬系ベンチャーが大きなグループを形成し、DDS技術に特化したベンチャーも数多く存在したが、現在まで存続するものは少なく、存続していても創薬事業を放棄していることが多い。また、2011年以降、大学発ベンチャー設立が再燃しているが、IT系ベンチャーが主であり、DDS技術を含めた創薬系ベンチャーは少ないままである。本稿では、筆者らが2002年に設立したDDS技術をコアとする創薬系ベンチャーの現在までの経緯を概説し、アカデミア発創薬系ベンチャー(特にDDS技術系)の起業化・事業化の課題を指摘した後、今後の発展につながる提言を行いたい。
著者
小坂 展慶 落谷 孝広
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.125-133, 2014-03-25 (Released:2014-06-25)
参考文献数
23

がん細胞とその周辺細胞の密接な関係は、これまでサイトカインやケモカインなどで説明されてきた。しかし、その複雑な関係は複数種類の分子では説明がつかず、新たな相互関係が探索されてきた。最近、エクソソームと呼ばれる100nmの細胞外小胞顆粒の存在が再注目され、特に、がん細胞における役割が近年急速に解明されている。本稿では、がん細胞がどのようにしてエクソソームを悪用しているのかを述べるとともに、エクソソームを標的とした治療と診断の展望に関して述べる。
著者
高田 賢蔵
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.40-46, 2012-01-30 (Released:2012-04-27)
参考文献数
2
被引用文献数
1

我々の体内では微生物などの外来抗原に低濃度で繰り返し暴露されることにより、これら外来抗原に対する結合活性の高い抗体産生リンパ球が選択的に増幅する親和性成熟が常に起こっている。従って、ヒト血液リンパ球は高活性抗体ソースとして優れている。イーベックではヒト血液リンパ球にEBウイルスを感染させることによりその増殖、抗体産生を誘導し、そこから目的とする抗体産生リンパ球を分離し抗体を作製する独自の技術を開発した。本稿では、イーベックの抗体技術と製薬企業とのライセンス経験について紹介する。
著者
金山 洋介 新垣 友隆 尾上 浩隆 渡辺 恭良
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.328-334, 2013-09-25 (Released:2013-12-26)
参考文献数
18

生体分子イメージング技術は、薬剤開発における重要な技術となってきている。特にPET(Positron Emission Tomography)は高い感度と定量性、プローブの多様性から、病態の分子医学的把握による疾患診断、薬効評価を可能にし、合理的な薬物送達システム(DDS)の評価を行うことに役立つ。脳は高度な機能と複雑な構造を有し、薬剤や毒物の移行を制限する血液脳関門によって恒常性が保たれている。脳を標的とした薬剤の開発においては、非侵襲的に薬剤の脳内分布を解析可能な分子イメージング技術の必要性が高い。本稿ではPETを用いた血液脳関門における薬剤トランスポーター機能の解析、薬剤の脳内移行の視覚化と薬効評価の例を通して分子イメージングの有効性について概説する。
著者
田中 浩揮 櫻井 遊 秋田 英万
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.237-246, 2022-07-25 (Released:2022-10-25)
参考文献数
48
被引用文献数
2

タンパク質の導入を目的とするmessenger RNA(mRNA)やタンパク質のノックダウンを目的とするsmall interfering RNA(siRNA)を用いた医薬品が承認されたことを受け、今後RNA創薬はますます加速すると考えられる。これらの新規モダリティを基盤とした医療を実現するうえでは、脂質ナノ粒子(Lipid Nanoparticle:LNP)がそのデリバリー技術として大きく貢献している。本稿では現在までのLNPs開発の経緯について概説するとともに、mRNA医薬品の最初の例となったRNAワクチンについて、その免疫活性化機構について最近の知見を紹介する。また、今後のさらなる医療応用を加速するうえで必須となるターゲティング技術について解説する。
著者
前田 浩
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.80-88, 2018-03-25 (Released:2018-06-25)
参考文献数
42
被引用文献数
1 1

固型腫瘍のEPR効果(enhanced permeability and retention effect)発見の歴史、問題点、各種EPR効果増強剤(エンハンサー)の重要性、腫瘍のHeterogeneityと遺伝子変異の多形性、高分子化/ナノメディシンの体内安定性と薬物活性本体(API)の化学的性状の違いによる腫瘍局所での放出とその細胞内とり込みとの大きな差異(例:ポリマー(P)結合ピラルビシン(THP)とP-ドキソルビシン(DOX)の差)、固型がんの血栓形成などの血流不全と腫瘍デリバリーのバリアーとその克服、マウス実験腫瘍モデルと現実のヒト臨床成績のギャップなどについて論じた。
著者
井上 誠
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.636-642, 2007 (Released:2008-02-18)
参考文献数
33
被引用文献数
1 2

センダイウイルス(Sendai virus)ベクターは,“細胞質型RNAベクター”という新規概念の遺伝子デリバリーシステム(ベクター)である.このベクターが有する遺伝毒性がないという性質は,不特定多数のヒトあるいは動物(家畜)を想定したワクチン療法の場合,今後,必須条件となる.センダイウイルスベクターを利用して,新興・再興感染症を含む一群の感染症および非感染症疾患の治療に対しての有効性・安全性試験を実施しており,エイズワクチンなどはすでに開発段階にある.当該技術利用による,真に有効で安全な遺伝子ワクチン製剤の提供が望まれている.
著者
櫻井 文教
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.99-105, 2019-03-25 (Released:2019-06-25)
参考文献数
36

1990年に米国にて、アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症に対して世界で最初の遺伝子治療が実施されてから、25年以上が経過した。この間、素晴らしい治療効果が観察された臨床例もあったが、期待されたほどの治療効果が得られた例は限られており、また重篤な副作用も報告されたことから、遺伝子治療は冬の時代を迎えた。しかし、その後の研究者の絶え間ない努力により、2012年のリポタンパクリパーゼ発現アデノ随伴ウイルスベクター(商品名Glybera)の承認を皮切りに、7種の遺伝子治療薬が相次いで承認され、いよいよ遺伝子治療は現実のものとなってきた。そこで本稿では、ウイルスを基盤とした遺伝子治療薬の開発の現状ならびに今後の展望について紹介する。
著者
前田 和哉
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.394-400, 2020-11-25 (Released:2021-02-25)
参考文献数
19
被引用文献数
1

Pharmacokinetic boosterは、CYP3A、P-gpの良好な基質であるために、経口投与時に血中での十分な暴露の確保が困難であったHIVプロテアーゼ阻害薬等の代謝・排出経路を強力に阻害することによって、血中暴露の劇的な改善に貢献してきた。古くは治療量よりは低投与量のリトナビルが用いられてきたが、その後、リトナビルと異なり薬効をもたず、酵素誘導能も喪失した構造類縁体のコビシスタットが純粋なboosterとして、各種薬物との配合剤として用いられるようになった。リトナビルとコビシスタットは、消化管・肝臓CYP3Aの強力な阻害を呈する一方、リトナビルは、複数の代謝酵素の誘導も引き起こすため、両者の間で処方変更があった場合、併用薬の体内動態に影響するケースがあることに留意する必要がある。
著者
今井 輝子
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.48-53, 2007 (Released:2007-04-24)
参考文献数
17
被引用文献数
1 3

医薬品の開発においては,ヒト臨床試験に先立ち,動物実験で安全性・有効性が確認される.しかしながら,ヒトと実験動物の体内動態には相違があり,動物実験の結果をヒトに反映できないことがある.その原因の一つとして,主な消失過程である代謝の経路および速度がヒトと異なることがあげられる.本稿では薬物代謝の動物種差について説明し,ヒトにおける体内動態を予測するための試みを紹介する.
著者
松藤 哲義 島田 神生 高橋 寿
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.433-445, 2015-11-25 (Released:2016-02-25)
参考文献数
15

抗肥満・抗糖尿病薬の標的であるbombesin receptor subtype-3(BRS-3)は中枢系のほか、末梢系の消化管にも発現している。Merck社の中枢系作用型BRS-3アゴニストはラットやイヌで抗肥満作用を示すものの、副作用として体温・血圧上昇、心拍数増加が見られた。そこで筆者らは消化管BRS-3へ選択的に作用する、より安全性の高い薬剤の開発を目指した。自社化合物とMerck社化合物の構造類似性から新規分子骨格をデザインし、極性基導入によって中枢移行性の低下を実現した。さらにごくわずかな中枢系曝露を回避するため、生体内代謝によって不活性化するアンテドラッグ5cを考案した。5cはマウス単回投与で摂食抑制作用を示すと共に、イヌ心血管系リスク評価では心拍数・血圧変動の減弱傾向を確認し、薬効と中枢系副作用回避の両立を達成した。
著者
宮田 完二郎 内田 智士 内藤 瑞 片岡 一則
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.44-53, 2016-01-25 (Released:2016-04-25)
参考文献数
51
被引用文献数
2 1

核酸医薬は、がんをはじめとする多様な難治性疾患の治療薬となり得ることから、その実用化に大きな期待が寄せられている。しかしながら、酵素により容易に代謝され、また細胞膜を透過できないことから核酸のバイオアベイラビリティは非常に低く、その医療応用は困難を極めている。このような状況を打破するために、核酸を標的部位に効率よく運ぶためのDDSの開発が世界的に行われている。本稿では、合成高分子材料を基盤とする核酸DDSの設計指針を、とりわけ細胞内の局所環境に応答して機能発現する“スマート”ポリイオンコンプレックス(PIC)ミセルに注目して説明する。また、siRNAとmRNAデリバリーに関して得られた最近の成果を紹介する。