著者
末弘 淳一
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

血管内皮増殖因子により誘導される転写因子Egr-1、Egr-3は内皮活性化において中心的役割を果たす。Egr-1、Egr-3遺伝子についてsiRNAを用いたマイクロアレイ・ChIP-seq解析による標的遺伝子の網羅的探索を行ったところ、新規Egr標的遺伝子としてRho GTPaseであるRND1を見出だした。RND1遺伝子周辺のEgr結合領域は転写開始点上流25kbに存在し、レポータ解析からエンハンサ-として働いていることが示された。また、RND1は転写因子NFATcの制御下にありEgr/NFATcシグナルが内皮活性化において重要であることが示された。RND1抑制下で内皮細胞の機能解析を行ったところ増殖、遊走、管腔形成、内皮バリア機能が損なわれた。個体レベルでの解析ではEgr-3抑制下ではB16メラノーマ固形腫瘍進展に阻害が見られる一方、Egr-1ノックアウトマウスにおいて野生型マウスと差異が認められず、in vivoにおける機能の差異が明らかとなった。
著者
良永 知義 KARLU MARX ANDAYA Quiazon KARLMARKANDAYA Quiazon QUIAZON KarlMarxAndaya
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

Anisakis pegreffi三期幼虫をニジマス体腔内に外科的に挿入するという攻撃試験を行い、昨年度Anisakis simplex s.s.で行った同様の攻撃試験の結果と比較した。その結果、A. pegreffiiはA. simplex s.s.に比較して、明らかに筋肉に侵入しにくいことが示された。また、両種ともに、水温が高いほど筋肉に移行する期間が短くなったが、水温は筋肉への移行率に大きな影響を与えなかった。体腔内の虫体をみると、A. simplex s.sでは宿主組織による鞘の形成がみられたのはいくつかの虫体に限られていたが、A. pegreffiiではほとんどの虫体に対して宿主反応が見られた。また、体腔内と筋肉内の虫体の合計はどちらも経過時間とともに減少した。体腔内での宿主反応により虫体が死滅する、あるいは虫体の筋肉への移行が阻害されるという現象が生じているものと思われた。北部日本海のマアジならびにサクラマスから得られた虫体の種を分子生物学的に判別したところ、全てA. simplex s.s.であった。この結果をQuiazon et al. (2011)が示した結果と併せ考えると、A. simplexは日本沿岸の太平洋側と北部日本海に分布し、A. pegreffiiは東シナ海と西部日本海に分布することが確かめられた。このことから、A. pegreffiiは東シナ海から西部日本海に主として生息する鯨類・海獣類を終宿主とし、A. simplex s.s.は太平洋ならびに北部日本海に生息する鯨類・海獣類を終宿主としている可能性が示された。
著者
中村 恵美子
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

本年度は、Fr.シュレーゲルのイロニーおよびアラベスク概念に関する論考を二本提出している。第一のものはティークの『長靴を履いた牡猫』をロマン的イロニーとの連関のうちに分析した「エルゴンなきパレルゴン-ティークの『牡猫』における"イロニー"」(『シェリング論集第5集』)である。ドイツ文学批評史がこれまで、『牡猫』をロマン的イロニーが駆使された典型的作品とみなし、それをいわば定式のように語ってきた一方で、当のシュレーゲルが一言足りともそのような言説を残していない-この事実は従来見逃されてきたか、あるいは意図的に等閑に付されてきた-この矛盾を論述の起点とし、原因を解明しようと試みたものである。「自己創造と自己破壊の絶え間ない交代」というシュレーゲル自身のイロニー定義に鑑みるとき、このディアレクティークの成立に不可欠である自己創造のモメントが『牡猫』に欠けているという仮説を提起し、作品分析を通じてこれを証明している。ロマン的イロニー理解における一つの歴史的な誤解を指摘したものである。第二の論考は「Fr.シュレーゲルのアラベスク概念解明のために-セルバンテスとスターンを中心として」(『詩・言語』第64号)である。批評を内在させる芸術作品において、イロニーは自己批判的、自己破壊的な契機を、アラベスクは種々の諸要素をつなぎとめる構築的契機を担い、両者は一対のものとして、いわば理論を内包する混沌たるロマン主義芸術作品を成立させる不可欠の要素となっているにもかかわらず、その一翼を担うアラベスクの究明は、従来の研究においてなおざりにされてきた。本論考はあえてドイツ文学の域を超え、シュレーゲルがアラベスク的と批評したセルバンテスとスターンの作品の中から、『ドン・キホーテ』『トリストラム・シャンディ』を分析対象として取り上げ、両作品に通底する作品構成に着目しつつ、アラベスク概念の解明を試みたものである。
著者
Shimoyama Haruhiko
出版者
東京大学
雑誌
東京大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13421050)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.273-281, 2002-02-25

This paper is intended as an investigation of the developmental task of clinical psychology today in Japan. Clinical psychology is now beginning to develop a large profile and a more serious role in Japanese society, but it is rather difficult to draw a definite perspective to develop it as a profession in the society. At first, we review the history of clinical psychology in Japan to describe difficulties it is now facing. Then we consider the comparison between clinical psychology in the U.K. and in Japan to focus on a feature of Japanese clinical psychology. It is shown that there is confusion about what clinical psychology, psychotherapy and counselling exactly are in Japan and the confusion has caused many problems of Japanese clinical psychology. The comparative analysis also indicates that finding ways to some integration is necessary to surmount the difficulties and problems. So we can say that it is actually a developmental task of clinical psychology today in Japan.

1 0 0 0 OA 東京大学年報

出版者
東京大学
巻号頁・発行日
vol.第1, 0000
著者
中山 浩太郎
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究課題では,最新の脳科学の知見を活かしてスケーラビリティの高いDeep Learning手法を開発し,柔軟な知識処理機構を実現することを目指している.本機構が目指す目標は,多様なタスク(アプリケーション)へ適用可能な汎用性の高い知識処理のモデルおよび,大規模なデータをリアルタイムに処理可能な並列処理に最適化された計算モデルの2点である.特に重要なのは,一般的な計算環境(PC等)でも実行可能な並列計算のためのモデルであり,GPU(OpenCL等)を利用した多コア環境で実行可能なモデルを構築する.さらに,本手法の有効性を実証するために,プロジェクトの前半ではスパムフィルタなどの比較的シンプルなタスクやデータに適用するが,プロジェクト後半では連想検索とオープンQAの二つのアプリケーションを期間内に構築することを目指して研究活動を推進してきた。以上の予定と活動に基づき、2016年度は予定どおり基礎研究に軸足を置きつつ、アプリケーションへの適用を試験的に進めてきた。特にスパース性の高いWebデータへの適用を積極的に進め、研究開発を推進してきた。さらに、当初の研究計画に基づき、研究成果の対外発信を強化してきた。論文誌で研究成果が掲載された他、情報処理学会論文誌を始めとする国内論文誌へ論文を投稿中である。また、Deep Learning系のトップカンファレンスにも積極的に論文を投稿中である。
著者
永田 俊
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

外洋域においてウィルス数が局所的極大を示す層、すなわち「ウィルス・ホットスポット(VHS)」、の分布の実態把握と形成機構の究明を行った。観測の結果、VHSは中部および西部北太平洋において広範に見られ、その分布が溶存酸素アノマリーの分布と関連することが明らかになった。観測・実験データを基に、VHSの形成には、宿主依存的なウィルス生産、鉛直混合、紫外線影響の3要因が関与しているという新たな仮説を提案した。
著者
斉藤康己
出版者
東京大学
巻号頁・発行日
1996

博士論文
著者
森 玲奈
出版者
東京大学
巻号頁・発行日
2013

学位の種別: 課程博士
著者
糸川 英夫
出版者
東京大学
巻号頁・発行日
1949

授与名簿の本タイトル: 音響イムピーダンスに依る微小変異測定に関する研究
著者
山本 博資 有本 卓
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

上記課題の研究により,下記の成果を得た。1.秘密情報が離散情報で,暗号の安全性レベルを盗聴者の秘密情報に対する条件付きエントロピーで評価する場合(a)通信路が離散的放送型通信路(Discrete Brroadcast Channel)の場合に対して、暗号文レート R,鍵レートRk、安全性レベルh,正規の受信者に対する歪許容値Dの達成可能領域(Achievable region)を確定した.(b)通信路がガウス性ワイヤータップ通信路(Wiretap Channel)の場合に対して、暗号文レート R,鍵レートRk、安全性レベルh,正規の受信者に対する歪許容値Dの達成可能領域(Achievable region)を確定した.2.秘密情報が連続値を取り,暗号の安全性レベルを盗聴者が達成できる歪の最小値で評価する場合(a)通信路が離散的放送型通信路(Discrete Brroadcast Channel)の場合に対して、暗号文レート R,鍵レートRk、安全性レベルhD^^〜,正規の受信者に対する歪許容値Dの達成可能領域(Achievable region)の内界(inner bound)を導出した.(b)通信路がガウス性ワイヤータップ通信路(Wiretap Channel)の場合に対して、暗号文レート R,鍵レートRk、安全性レベルD^^〜,正規の受信者に対する歪許容値Dの達成可能領域(Achievable region)の内界(inner bound)を導出した.3.秘密情報が離散情報で,暗号の安全性レベルを盗聴者が達成できる歪の最小値で評価する場合(a)通信路が無雑音通信路(Noiseless Channel)の場合に対して,暗号文レートR,鍵レートRk、安全性レベルD^^〜,正規の受信者に対する歪許容値Dの達成可能領域(Achievable region)の内界(inner bound)と外界(Outer bound)を導出した.
著者
森口 祐一 工藤 祐揮 松八重 一代 福島 康裕 醍醐 市朗 中島 謙一 栗島 英明 菊池 康紀 中谷 隼 田原 聖隆 井原 智彦 兼松 祐一郎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究課題では,国内産業および輸入原料を含む国産製品のサプライチェーンを対象として,それが産み出す社会価値と,地域レベルおよび地球レベルで発生する環境・資源ストレスの統合的ホットスポット分析の枠組みを確立することを目的とした。輸入資源の国際サプライチェーン分析,地域における再生可能エネルギー供給システム,産業廃棄物の地域間分析,サプライチェーンの地震リスクといった数多くの事例分析を実施し,それぞれ潜在的なストレス・リスク要因のホットスポットを特定した。さらに,分析方法のアルゴリズムおよび原単位のデータベースをソフトウェアに実装することで,ホットスポット分析の枠組みの汎用化を目指した。
著者
北村 俊雄 稲葉 俊哉 松井 啓隆
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

HL60はレチノイン酸で好中球に、Vitamin D3で単球に分化する。本研究ではHL60分化において経時的にRNAseqを行い、好中球および単球に分化する際に上昇してくる遺伝子を複数の遺伝子を同定した。しかしながら予想したようにこれらの遺伝子が染色体上の近傍に存在するということはなかった。そこで、HL60の分化におけるエピジェネティクスが果たす役割を調べるためにエピジェネティクス因子ASXL1のノックダウンを行い、細胞分化とヒストン修飾の関係を調べた。ASXL1ノックダウンはヒストンH3K4とH3K27のトリメチル化を低下させ、HL60の分化を阻害した。