著者
吉田 早苗 藤田 覚 宮崎 勝美 藤井 恵介 田島 公 詫間 直樹
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

1.東京大学史料編纂所に所蔵される江戸時代有数の故実家裏松固禅研究の基本的な史料『裏松家史料』について調査を完了し、全点の題名・内容・書誌情報等を含む詳細な調書を作成した。そのデータからデータベースを完成し、全点目録「裏松家史料目録」(第1版)を作成した。目録は史料編纂所の「所蔵史料目録データベース」上での公開を予定している。2.「裏松家史料」のうち修理中の冊子約80冊を除いた冊子本約300点とそれ以外の史料の全点について、マイクロ撮影・デジタル化を完了した。得られた画像データは、史料編纂所の「所蔵史料目録データベース」に対応する画像公開システムにより公開する予定である。3.「裏松家史料」中の書籍の奥書、固禅が作成した勘文類などに基づき、天明-寛政期の固禅の活動を解明して「裏松固禅活動年譜(稿)」を作成した。4.固禅の主要著作『大内裏図考証』については、引用史料データベースの仕様を確定し、テストデータの入力を行ない、献上に関する重要史料である『大内裏図考証清書目録』を翻刻した。5.以上の「裏松家史料目録」(第1版)「裏松固禅活動年譜(稿)」「『大内裏図考証清書目録』翻刻」および、「裏松家史料」を直接の基礎史料として固禅の執筆活動と公家社会の構造の関連性を解明した、「裏松固禅と裏松家史料について」(吉田早苗)、「裏松固禅の著作活動について」(詫間直樹)、「寛政期有職研究の動向と裏松固禅」(西村慎太郎)、「『皇居年表』の編修過程について」(詫間直樹)の4篇の論文を掲載した研究成果報告書を刊行した。
著者
島田 悠彦
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

本研究ではランダム系の臨界現象や量子多体系のエンタングルメント・エントロピー(EE)の解析を、レプリカ法によって誘導される有効対称性である多層構造をもつ場の理論を通して行うのを目的としていた。具体的には、これまで研究されてきたゼロ次元ランダム系や1次元量子系に比べると現実的だが格段に難しい2次元ランダム系と2+1次元の量子系に関する結果を得るべく研究を進めた。ランダム系ではレプリカ層がバルクで相互作用するのに対し、量子系では層を張り合わせた境界のみで相互作用する場の理論となる。バルクに関しては前年度までに一定の成果を得たので、本年前半は境界に注目して2+1次元の量子臨界点の重要な例であるRokhsar-Kivelson点を一般化した状況における基底状態の波動関数を特徴づけるEEの普遍部分を主に調べた。この一般化には米や仏のグループの数値実験があるのみで解析計算がなかった。解析的にはEEは層の境界がもつ基底状態縮退(Affleck-Ludwigのg因子)の情報から決定できると考えられる。そこでレプリカ対称性と共形不変性の両方を併せ持つ「レプリカ型」境界状態をクーロンガスの方法に基づき構成し、g因子を層の枚数の関数として決定した。これにより繰り込み群のフローから数値結果を説明できた。EEの特殊値等、一部整合的でない部分が残ったものの、レプリカ対称性を共形不変性と組み合わせた場合に許される境界状態を具体的に書き下し特定したことは重要である。後半の仏滞在では、これまでとってきた径路積分描像と相補的である転送行列描像における付随代数や数値計算を用いてランダム系を解析して、二次相転移を示唆する繰り込み群の固定点の存在を確かめた。この相転移における臨界指数とフラクタル次元等を精度よく調べることは今後の課題である。
著者
島崎 邦彦 中田 高 中村 俊夫 岡村 眞 千田 昇 宮武 隆
出版者
東京大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1992

別府湾中央断層および北西部の三名沖断層、沖の瀬沖断層において音波探査およびピストンコアリングによる堆積物採取を行った。別府湾中央断層では過去6300年間に最大20mの上下食い違い量が見いだされている。この最も活動度の高い部分でコアリングを行い、断層の南北両地点で海底下16mを超える深度までの連続不撹乱試料を得ることができた。断層を挟む堆積物の対比結果により、海底面から海底下約2.5mまでは大きな上下食い違いを生じていないことが明かになった。年代測定の結果を考慮すると、過去1000年間この断層からは大きな地震が発生していないと結論される。しかし、断層の北側海底下2.5mから5mまでの間に、断層の南北で約7mの上下食い違いを生じている。この約7mの上下食い違いは年代測定の結果によると、2000年前から1000年前までの間に生じたと推定される。対比面の数が少ないため決定的な議論はできないが、約2000年前に7mの上下食い違いを生ずる大地震が発生した可能性がある。(他の可能性は、2000年前から1000年前までの間に複数回地震が発生した。)過去6300年間に約20mの上下食い違いを生じているので、一回の地震で7m食い違いを生ずるとすれば、過去6300年間に3回地震を発生したはずである。平均繰り返し間隔は約2000年となる。これは、昨年度の研究によって明かとなった中央構造線活断層系西部の松山沖の部分の繰り返し間隔とほぼ等しい。この両者はほぼ同じ時代に地震を発生している可能性があり、80km近く離れているが、力学的になんらかの連動性を持っているのかも知れない。中央構造線活断層系の四国中央部、および四国東部の部分も同様な繰り返し発生間隔であるとの推定があるが、最新の地震活動は、いずれも2000年前より新しい。このため現在の地震発生ポテンシャルは、西部の松山沖が最も高いと考えられる。同様に、別府湾中央断層も地震発生ポテンシャルが相対的に高いと結論される。
著者
大野 耕一 辻本 元 増田 健一 岩田 晃 長谷川 篤彦
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究では獣医領域における腫瘍や免疫異常疾患に対する遺伝子治療を開発することを最終目的として研究を行ってきた。具体的には1)イヌおよびネコの肝細胞増殖因子(HGF)を用いた遺伝子治療の基礎研究、2)イヌp53遺伝子導入アデノウイルスベクターの構築およびイヌ腫瘍細胞株に対する抗腫瘍効果の検討、3)FIVに対する,およびFIVを用いた遺伝子治療の基礎研究を中心に研究を進めてきた。イヌおよびネコの肝・腎不全に対するHGF遺伝子治療の基礎研究に関しては,HGF cDNAについてネコの完全長およびイヌの部分クローニングを行った。またイヌの肝疾患に対するHGF遺伝子治療の前段階として,各種肝疾患におけるHGFおよびTGFの発現について検討を行った。またクローニングされたイヌおよびネコHGFを発現プラスミドに組み込み、その発現プラスミドの投与法(直接あるいはリボソーム法)について検討を行った。小動物の腫瘍に対する遺伝子治療の基礎研究としては,まずイヌの各種腫瘍細胞におけるp53癌抑制遺伝子の変異と,セントロソーム異常について検討を行うとともに,我々の研究室でクローニングが行われたイヌp53遺伝子を組み込んだ組み換えアデノウイルスの作成し,その抗腫瘍効果を検討した。また抗腫瘍免疫の増強を目的として,ネコIL-18cDNAのクローニングと,イヌCTLA-4融合蛋白発現プラスミドの作成を行った。ネコ免疫不全ウイルス(FIV)感染症に対する遺伝子治療の基礎研究としては,FIV特異的治療の評価法の確立を目的として,血漿中ウイルスRNA量の定量法を確立し,その手技を用いて血漿中ウイルス量と病態との関連性について検討を行った。またTNFによるFIV感染細胞のアポトーシスのメカニズムについて検討を行うとともに,ネコのTNFレセプターについてクローニングを行った。さらに新たなFIVの治療標的を探る目的で,ネコの血管内皮増殖因子(VEGF)のクローニングも合わせて行った。
著者
瀬崎 薫 岩井 将行
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、様々なメディアを通して細粒度、リアルタイムの環境情報を低コストで収集し、そのデータをエネルギーマネジメントの観点から地域単位での空調制御へ応用することで快適性を確保したまま地域全体の消費電力削減を目指している。研究成果としては、スマートフォンを通した参加型センシング、ソーシャルメディアに発信された情報からの環境情報取得、動物に取り付けたセンサを用いた長期間、広範囲の自然環境調査など統合的な環境センシングを実現するとともに、複数の情報ソースから得た温度データからルールに応じて家電機器を制御するソフトウェアを開発し、気温などのデータに基づいたエアコンの制御システムを構築した。
著者
中野 義昭 種村 拓夫 杉山 正和 小関 泰之 肥後 昭男 久保田 雅則
出版者
東京大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2014

(1) 量子井戸型偏波制御器の設計と試作前年度に開発した量子井戸型偏波制御器の高速化と省電力化を図るために, 逆バイアス駆動により量子閉じ込めシュタルク効果を用いた変調素子を試作実証した. 並行して, さらなる高性能化に向けて量子構造の最適化を進めている.(2) 偏波解析素子の設計と試作前年度に作製した量子井戸型受光素子を搭載した完全にモノリシックな集積回路を評価し, ポアンカレ球面上の任意の偏波状態を検出できることを実証した. さらに, 高感度化に向けて, 4ポート構成を新たに提案し, 素子パラメータの設計を完了した. 現在, 4ポート素子の作製を進めている.(3) 光波合成チップの設計と試作前年度に提案したランダム信号を用いた駆動手法を大規模光波合成チップに適用し, その有効性を実験的に検証した. 同時に, 2次元化に向けて, 回折格子カプラを集積した素子の試作を行った. これらの素子の応用の一つとして, 2次元イメージング実験を進めている.(4) ユニタリ変換チップの設計前年度に作製した3×3ユニタリ変換チップを用いて, 任意光ユニタリ変換機能を実験的に検証した. 並行して, 作製誤差に対して耐性のある新規構造の素子を完成させ, 評価を進めている.
著者
下島 昌幸
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

フィロウイルス(エボラウイルスおよびマールブルグウイルス)の感染は、本ウイルスの細胞侵入を担う表面糖蛋白質GP蛋白質をエンベロープとしたシュードタイプウイルスを代替として用いた。シュードタイプウイルスのゲノムにはレポーターとして蛍光蛋白質(もしくは細胞膜蛋白質)の遺伝子が組み込まれているので感染の検出は容易である。フィロウイルスが感染しにくいとされるJurkat細胞にヒト肝臓cDNA libraryを発現させ、上記のシュードタイプウイルスの感染性が上昇するようなcDNAの探索を行った。エボラウイルス・マールブルグウイルスのどちらのGP蛋白質を用いた場合もカルシウム依存性レクチンのLSECtinという分子を感染性を上昇させる分子として同定した。cDNA libraryを発現させる細胞としてK562細胞(やはりフィロウイルスが感染しにくい)を用いた場合も同じであった。LSECtin分子は主に肝臓やリンパ節の類洞内皮細胞に発現しているが、フィロウイルスはマクロファージや肝細胞を含めた様々な細胞に感染するため、本ウイルスは感染標的によって異なる分子を侵入に用いていると考えられた。次にヒト由来細胞株(HeLa細胞・HT1080細胞)でマウスを免疫し、上記シュードタイプウイルスの感染阻止を指標としてハイブリドーマをスクリーニングしたが、感染を阻止するような抗体は得られなかった。18年度の結果も含め、フィロウイルスの感染に関わりうる分子としてTyro3ファミリー・C型レクチンがあることが分かったが、これら以外にも未同定の分子があることも分かった。GP蛋白質による免疫沈降など、他の実験方法も用いる必要性があると考えられた。
著者
杉田 正道
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2012

【目的】頚椎症の関連痛型症例に対し鍼治療を行い、その治療成績について検討した。【方法】症例を発症から当治療室での鍼治療開始までの期間別に分け、その治療成績を検討した。症例は43例で、男12例・女31例、平均年齢は51.0歳であった。発症から1ヶ月までと3ヶ月の者は各5例・6ヶ月と1年が各4例・2年5例で、2年以上は20例で、平均63.1ヶ月であった。ジャクソンの過伸展圧迫テスト陽性は43例中33例、スパーリングの椎間孔圧迫テスト陽性は25例であった。また頚椎の骨変形の程度評価基準(I型がその程度が最も軽度で、II・III・IV型と強くなる)に基づく内訳は、43例中I型が13例・II型17例・III型13例であった。鍼治療は頚肩・肩甲間部への単刺・雀啄・置鍼、低周波鍼通電療法、円皮鍼等を適宜行い、治療頻度は週1回、期間は一般的に物理療法の効果判定に必要とされる3ヶ月とし、治療効果の判定は各症例の自覚症状と他覚的所見の改善度をもとに、著効・有効・やや有効・無効の4段階とした。【結果】発症から鍼治療開始までの期間からみた治療成績は発症から1ヶ月が著効1例・有効2例・やや有効1例・無効1例・3ヶ月では5例全て有効・6ヶ月では著効1例・有効2例・やや有効1例であった。発症から1年では著効2例・有効と無効が各1例で、2年では、有効3例・やや有効2例で、2年以上では著効3例・有効9例・やや有効6例・無効2例であった。今回は発症から治療開始までの期間別の症例数にばらつきが高かったこともあり、一定の傾向は得られなかった。やはり本症は頚椎変形がベースとなる疾患であることから、頚椎骨変形の程度が軽度な者の方に治療成績が良い、という傾向がみられた。また全体としての治療成績は、著効は43例中7例(16.3%)・有効22例(51.1%)・やや有効10例(23.3%)・無効4例(9.3%)であったことから、本症に対する鍼治療の有効性や有用性が示唆されたものと考える。
著者
清水 信宏
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2014-04-25

本研究の目的は、Belle実験においてe+e-→τ+τ-過程を通じて生成されたタウ粒子の放射性レプトニック崩壊τ→lννγ(l=e or μ)と,その対となるτ→ρν→ππ0ν崩壊を観測,解析し、素粒子の基本的な性質の一つである異常磁気能率を測定することである。タウ粒子異常磁気能率は、実験的難しさから未だ測定されていない。最終年度は,より測定の容易であるミシェルパラメータ,ηbarとξκの測定を終了させた。ミシェルパラメータも異常磁気能率と同様、電子より重いレプトンの基本的な性質をあらわす変数であり、異常磁気能率の測定とほぼ同等な手法をもって解析がされる。ミシェルパラメータの測定に必要となる様々な背景事象の確率密度関数の記述は,異常磁気能率の測定の事前準備として不可欠なものとなる。得られたpreliminaryな結果は,9月に中国の北京で行われた国際会議,Tau2016で発表した。また,その発表と同時に,conference paperとしてpreprint serverに挙げている。τ→μννγモードを用いて得られたηbarとξκ同時フィットにより得られた値は(ηbar)μ=-1.3±1.5±0.8,(ξκ)μ=0.8±0.5±0.3である。一方,電子モードでは,ηbarを標準理論の予測する値0に固定し,(ξκ)e=-0.4±0.8±0.9という測定値を得た。これら最初の不定性は統計誤差,最後のものは系統誤差を示している。得られた測定値は,標準理論の予測と不定性の範囲の中で無矛盾である。タウ粒子の異常磁気能率の測定を三年間の期間内に終えることは出来なかったが,本研究で得た背景事象の記述に関する手法,新たな知見は,その測定を現実化するために広く応用が可能なものであるといえる。
著者
小林 敏雄 高木 清 大島 まり
出版者
東京大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

低温体療法は脳の一部に血液が流れなくなる虚血性血管障害型の脳卒中に有効であり、1980年代より試みられている。虚血性血管障害が起きると欠血により脳内温度が40度近くに上昇し、このため神経障害が起こり、最悪の場合には死に至る。低温体療法を用いて体を冷やすことで脳の温度を2度から3度下げることにより、発病後の回復経過が良好である症例が報告されている。しかし、現在行われている低温療法は全身を長時間にわたって冷やすため、患者の体力負担が増大し、かえって危険になる場合が起こり得る。そこで、頭と頸部だけを冷やすことにより効果的かつ患者の負担が軽減できるような選択的脳冷却療法が模索されている。本研究では脳内温度の調節のメカニズムを把握すると同時に効率的な選択的脳冷却療法の指針を構築するため、脳内の熱輸送のモデリングおよび数値解析を行った。以上より、本研究では以下の3つのテーマに重点を置いて研究を行った。(1)脳内熱輸送のモデリング(2)数値解析システムの開発(3)医用画像および臨床データとの比較・検証(1)では脳血管網において熱交換を行っていると考えられている、内頸動脈の海綿静脈洞を模擬した同軸円管における対向流型熱交換について、直円管モデルと屈曲管モデルでの数値解析を行った。(2)数値解析にはFIDAPを用い、動脈・静脈の入口に50mmの導入部を設けて安定化を図っている。それぞれの密度・比熱は血液および血管壁で等しく、伝熱方程式に熱拡散係数を与えることで温度の計算を行う。(3)実際の脳冷却を行う際には0.2℃から0.3℃の温度低下が必要とされ、今回の解析でその条件を満たすことが確認された。屈曲管は2次流れの影響により直円管よりも伝熱量が増加し、また拍動流入を与えることで温度境界層が壁面近傍だけでなくなり、より動脈の冷却が促進されることが分かった。
著者
堀家 由妃代
出版者
東京大学
雑誌
東京大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13421050)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.337-348, 2003-03-10

This is an ethnographic study on the interaction processes among various people such as teacher, students and a boy with physical disabilities called Kenji in the main streaming classroom. In this study, the author focuses on analyzing their interaction and activities as strategy which are ways of achieving their goals, including their survival. Kenji's teacher's goal is an enhancement of performance of her students. She has two strategies which are "visualization" and "avoidance". The first strategy aims to present children's performance, and the second strategy aims to avoid the communication between Kenji and her. Although the teacher usually uses "visualization" to the children, she uses "avoidance" to Kenji. In this case, Kenji developed two of his unique strategies. To resist "visualization", he pretended to be a "participant" though he cannot do such an activity, and an "incompetent" though he can do it really. As for the "avoidance", "he becomes" indifference "to escape the interaction in the classroom. As Kenji's assistant, the author intervenes in the interaction between teacher and Kenji, other children and him to mediate the communication between Kenji and other people and avoid the conflict among them. In the prior research on the special education, the social handicap of the child with disabilities is derived from the physical impairment and the disability. But this study suggests that it depends upon the social setting whether the child with disabilities suffers from the handicap or not. Both the impairment of the child with disabilities and the interaction among various people around the child constitute the handicap inside of the classroom.
著者
篠原 雅尚 村井 芳夫 藤本 博己 日野 亮太 佐藤 利典 平田 直 小原 一成 塩原 肇 飯尾 能久 植平 賢司 宮町 宏樹 金田 義行 小平 秀一 松澤 暢 岡田 知己 八木 勇治 纐纈 一起 山中 佳子 平原 和朗 谷岡 勇市郎 今村 文彦 佐竹 健治 田中 淳 高橋 智幸 岡村 眞 安田 進 壁谷澤 寿海 堀 宗朗 平田 賢治 都司 嘉宣 高橋 良和 後藤 浩之 盛川 仁
出版者
東京大学
巻号頁・発行日
2010

2011年3月11日、東北地方太平洋沖でM9.0の巨大地震が発生し、地震動・津波被害をもたらした。この地震の詳細を明らかにするために、各種観測研究を行った。海底地震観測と陸域地震観測により、余震活動の時空間変化を明らかにした。海底地殻変動観測及び地震波反射法構造調査から、震源断層の位置・形状を求めた。さらに、各種データを用いて、断層面滑り分布を明らかにした。現地調査により、津波の実態を明らかにし、津波発生様式を解明した。構造物被害や地盤災害の状況を明らかにするとともに、防災対策に資するデータを収集した。
著者
西出 和彦 初見 学 橋本 都子 込山 敦司 橋本 雅好 高橋 鷹志
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2001

立体的な空間の広がりや形態に特徴がある居住空間において、実際に展開されている生活様態、人間の心理・生理に与える影響を明らかにすることを目的として、居住実態調査、実験室実験、および実際の居住空間での実験を行った。1、天井高や室空間形態に特徴のある居住空間を対象として居住実態調査を行い、実際の居住者の生活様態・意識の把握を行い、空間との関連を3次元的に考察した。(1)立体的にデザインされている住空間を対象とした調査を行い、空間と居住様態の関係を考察し、高さ方向の変化は住まい方に様々な影響を与えること、居住者による能動的な空間への働きかけの実態、天井の高い空間が質の豊かさをもたらす可能性について明らかにした。(2)空間構成に特徴のある住宅における居住者の入居から現在に至る環境移行の実態追跡調査を行い、居住者が自分たちにあった環境を創成してゆく過程を明らかにした。2,天井高や室空間形態に特徴のある実際の居住空間において、空間の容積、天井高、形状がどのような行為を可能にするか、どのような印象を与えるか等について実験を行った。3,室空間の天井高と容積、開口比率等に関するデータを収集し、室の機能、用途、使用人数、時代背景・文化と3次元空間・容積との関係という観点から現況の把握・整理を行った。以上の分析結果は、室空間の計画における容積という視点を取り入れた新たな尺度の提案を行うことを目指し、実践的な計画に向けた天井高や容積からみた室空間のデザイン理論の提案のための基礎となるものである。
著者
西出 和彦 大月 敏雄 大方 潤一郎 小泉 秀樹 羽藤 英二 岡本 和彦 廣瀬 雄一 佐藤 由美
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

『超高齢社会に対応した地域建築機能再配置型都市再編システムの社会実験を通した構築』では、さまざまな居住環境を有し日本における多様な都市環境の縮図ともいえる千葉県柏市を主たる研究対象として、各種別の建物が果たす社会的性能を緻密な実態調査を通して抽出し、地域建築機能再配置型都市再編システムを具体化し、社会実験を通して超高齢社会対応型の新たな都市再編システムの構築を目指した。本研究の結果、公共空間には、近隣居住者同志が自然と地域を支えるコミュニティや居場所づくりの重要性が明らかになった。今後の高齢社会の問題を解決するためには、社会学・医学・リハビリ学など分野横断的な取り組みが必要となる。
著者
齊藤 修 橋本 禅 高橋 俊守
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、里山を対象として、供給サービス(木材、食料)、調整サービス(大気・水循環調整)、文化的サービス(レクリエーション、景観)、基盤サービス(生物生息地)の各生態系サービスを定量評価し、複数の将来シナリオのもとで生態系サービスが今後どう変化しうるかを政策立案者や地域住民に対して定量的・空間的・視覚的に伝え、協働を支援する対話型シナリオ分析ツール開発を行った。
著者
佐々木 健一 西村 清和 礒山 雅 戸澤 義夫 藤田 一美 坂部 恵
出版者
東京大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1993

本年度は6回の研究会を開催した。昨年度は報告を提出したあとの3月にも研究会を催したが、今年度分に限って言えば、それぞれの研究報告者とその主題は次の如くである。先ず、尼ヶ崎彬は舞踊を対象とし「藝術的価値と身体」について論じた。その際、舞踊批評において用いられる評言を手掛かりとして、訓練された踊り手の身体において認められる独特な藝術的価値を明らかにした。小田部胤久は18世紀のドイツ美学、すなわちまだ価値の概念が十分に術語化していなかった時代の美学思想のなかに潜在している価値論を、再構成することを試みた。長野順子は「生の強度」という観点から、バ-クからカントをへてニーチェに至る崇高概念を研究した。そして、とくにこの種の美的範疇に伴う性差のイメージを、理論書のテクストから抽出して、そこに新しい光を当てた。加藤好光は、西田幾多郎の述語論理と場所の概念に注目しつつ、これを生命科学や生気論哲学によって再記述することによって、「美的体験の生命関係学的基礎づけ」を試みた。大石昌史は、価値の再評価を行ったニーチェのニヒリズムの哲学において、絶対的肯定によって美的価値が創造されるという思想を捉え、その理論をあとづけた。伊藤るみ子はP・キヴィーの論考を手掛かりとして、音楽における作品の演奏の関係、特に「演奏のauthenticity」の問題を考察した。この他、代表者佐々木が価値概念についての原理的考察を著書の一部として公表するなど、各研究分担者の独自の研究もあるが、全体の研究成果のうち、公表可能な段階に達したものを集めて研究成果の報告書を編んだ。
著者
岸 清香
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

1980年代後半以降の現代美術の芸術生産において、活動領域の世界的拡大と価値規範の多様化が観察されるが、本研究はこの現象について、(1)「アジア現代美術」の芸術生産の様態、(2)フランスにおける公共政策、(3)日本における公共政策、の三つの研究軸から考察することを目指している。本年度はそのとりまとめとして、共著の刊行、学会報告、論説・翻訳文の発表を行った。まず上記(1)について、本研究で行ってきた福岡アジア美術館でのフィールドワークに基づき「美術館がアジアと出会うとき」(戦後日本国際文化交流研究会の論集『戦後日本の国際文化交流』所収)を上梓し、「アジア現代美術」を社会学的に考察するための視座を得た。特にこの「アジア現代美術」という美的カテゴリーが欧米で展開する多文化主義の議論を踏まえた言説空間のもとに出現した点に着目し、その論理的構成を整理した内容を日本社会学会年次大会で発表した。また(2)に関して、フランスで行ってきた調査研究を踏まえ、「1990年代の現代美術論争」を上梓したが、さらにこれを戦後フランスにおける美術と国家という枠組に位置づける論考を日本国際文化学会全国大会で報告した。社会文化史の重鎮P・オリー氏の来日講演に際しては、通訳と講演原稿の訳出に関わり、日本では十分に知られていないフランスの文化政策研究の紹介にも携わった。また「『文化』は戦略化する」では、フランスとヨーロッパにおける近年の対外文化政策の動向を論説した。(3)については、前述の戦後日本国際文化交流研究会論集に、「『日本的グローバリズム』のアジア的契機」のほか、史的概説と関連年表を共同研究の成果をまとめた。以上を通して、芸術生産が社会経済生活に関わる価値や規範の問題として国家と国家間政治の次元において争点化し、国際社会における集合的同一性の問題として出現している様相を具体的に解明することができた。
著者
松尾 友矩 北田 敏廣 太田 幸雄 三村 信男 楠田 哲也 村岡 浩爾 野池 達也
出版者
東京大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1992

地球温暖化問題はきわめて重要かつ緊急の課題となってきており、影響評価と対策立案が急がれている。本研究では特に、都市と地球温暖化の関わりについて総合的に研究を行った。すなわち、都市活動に起因する温室効果ガス排出、都市大気中での大気反応と輸送、都市諸活動・施設への温暖化の影響を明らかにするとともに対策を検討した。本年度における各研究分担者の行った研究成果はそれぞれ次のようである。都市活動にともなう二酸化炭素の発生については、都市からの発生量の国際比較、未利用エネルギー利用可能量の推定について検討を行った(松尾)。自然水系として底泥からのメタン発生速度をバッチ実験によって測定し、底泥の性状や水質の汚濁指標との関連を検討した(野池)、汚濁を受けた都市河川における一酸化二窓素の存在量と発生ポテンシャルを現場調査と室内実験によって明らかにした(花木)。可視光領域の太陽放射量の変化とそれに伴う光解離速度の変化、雲粒による硝酸、亜硝酸、過酸化水素等の吸収を考慮した対流圏光化学モデルを検討した(太田)。前年度に開発した温室効果ガス輸送モデルを汚染大気の化学反応を含むものに拡張し、東アジアに適用した(北田)。沿岸部に集中した港湾、橋梁、護岸、防潮堤、排水排除に関する水理計算の方法を再検討し、浸水の予測が正確に出来るように計算法を改良した(楠田)。実際の都市の水収支、水循環推定の手法を大阪に引き続いて,合流式下水道を持つ沿岸都市である神戸に応用した(村岡)。さらに本年度は最終年度にあたるので、各分担者の課題について総括的なまとめを行い、総説的解説論文にとりまとめた。