著者
手嶋 泰伸
出版者
東北学院大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は、現在まで本格的な分析の行われてこなかった戦間期における日本海軍の政治史的動向と役割を、特に陸海軍関係に着目することで解明し、戦間期の政治史研究の深化に実証的な貢献をなすことである。平成24年度においては、ワシントン海軍軍縮期・ジュネーブ海軍軍縮期の分析を行い、防衛省防衛研究所図書館・国立国会図書館憲政資料室を中心に、戦前期陸海軍の関係文書を調査した結果、以下の点が明らかになった。また、平成25年に行う予定であった海軍の南進論を中心とした戦略思考の再検討も行うことが出来たため、それについても以下で記述する。(1)ワシントン海軍軍縮会議と海軍軍部大臣武官専任制が改定されなかった最大の原因は、海軍にあったと結論することが出来た。(2)ジュネーブ海軍軍縮会議と海軍財部彪がジュネーブ会議時に全権就任をかたくなに拒否しつつも、ロンドン会議時に全権就任を承認するようになるには、時々の利害観測により、海軍へ有利な状況を作り出そうとする政治的意図があったことが判明した。(3)南進論を中心とした海軍の戦略思考の再検討南洋群島開発政策の政治過程の中で、海軍の政治的影響力は強かったものの、その関与は限定的な時期もあったことが確認され、とかく中堅層の急進的な南進論を重視してきた先行研究の見解には再考の余地があることが認められた。
著者
郭 基煥 曹 慶鎬 兪 キョン蘭
出版者
東北学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究の目的は、被災地に暮らす外国出身者が震災後にどのような状況に置かれていたのかをトータルに把握することである。調査で明らかになった主な点は、次の通りである。①多くの外国出身者が被災直後においては支援されつつも、支援する側に回っていたこと、②震災という共通の経験を持つことで地域に対する一体感が強まった考えられる事例が多数みられること。③その一方で被災地では、外国人が犯罪をしているという流言が広範に広がっていたこと。④流言を聞いた人のうちの8割以上の人がそれを信じたこと、⑤流言を信じるか信じないかという態度の差は地域や性別、収入、職業などとほとんど無関係であることである。
著者
伊藤 寿隆
出版者
東北学院大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

◇研究の目的大学経営人材として職員の役割に期待が集まっているが、大学の規模(職員数)によっては、単独で職能開発に取り組むことが難しい状況にある。そこで、大学経営を担う人材の職能開発には、複数の大学連携による取り組みが有効と考えた。本研究は、大学職員の職能開発(SD)に関する地域別の実態を明らかにしたうえで、仙台地区の私立大学において実行可能性のある職能開発プログラムの提起を目的として実施した。◇研究方法1. 大学職員の職能開発に関する将来構想と先行事例を概観するために文献による調査を行った。2. 職能開発の実態と課題を抽出するため、仙台地区の私立大学にアンケート調査を実施した。3. 京都地区の大学とコンソーシアム組織及び札幌地区の大学にヒアリング調査を行い、仙台地区における実態との比較による検証を行った。◇研究成果調査の結果、職能開発の実態は大学の職員数や事務組織の規模による差があることを把握できた。仙台地区においては、大学単独では職能開発が進んでいないといった課題が明確になった。職能開発の機会が限られていることは、大学間競争の際に脆弱性をもたらすこととなる。一方で京都地区においては多様な職能開発のプログラムが用意されていることから、大学職員の職能開発には大きな地域間格差があることが実証できた。また、大学職員の役割の高度化・複雑化への対応として政策立案力などの資質を備えるため、職能開発プログラムの内容もより進化したものが求められるようになり、ますます大学単独での実施が困難を極めるようになってきた。このような実態を踏まえ、仙台地区私立大学における共通の課題を解決するためには、大学協働型職能開発プログラムが不可欠と考えられる。導入するまでには、いくつかの環境整備が必要となるが、学都仙台コンソーシアムなどの機関で具体的な方策を検討できるよう基礎資料の提示を計画している。
著者
原田 桃子
出版者
東北学院大学
巻号頁・発行日
2017-03-23

平成28年度
著者
熊谷 正朗
出版者
東北学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

従来の球面モータに比べて出力が大きい、3自由度に角度制限なく回転する球面誘導モータを開発した。トルクは最大 5Nm、球面での推力換算で 40N を出力でき、かつ指令から力出力の安定まで 10ms 未満という応答性を持つなど、移動ロボットの車輪などに使用可能な性能を実現した。また、光学式マウスセンサによる球体の運動計測を併用して、角速度制御、角度制御を実現し、トルク出力と合わせて応答特性を測定し、性能を明示した。
著者
吉村 富美子
出版者
東北学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、効率的に書く力に転移するような英文の読み方について、理論的、実証的検証を行った。文献研究から書く力に転移するような英文の読み方を特定し、そのような読み方を取り入れたチェックリストを作成し、その効果について実験研究と教室研究を行った。実験研究からは、読み書きを統合すること自体転移を促進し、チェックリストはその読み書きの統合をスムーズにすることがわかった。また、教室研究からは、チェックリストを使った指導は学習者の英文を書く力を向上させるのに有効であることが示された。
著者
政岡 伸洋
出版者
東北学院大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

本研究は、ここ数年各地で見られるようになった「民俗文化」を活用したまちづくりと、それに伴う住民アイデンティティの再構築という現象について、「現代社会における民俗の実践」という視点から、地域を取り巻く政治的・経済的・社会的状況の変化に注目しつつ、民俗がいかに位置づけなおされ、新たな意味を獲得しているのかを、中山間地域および被差別部落の事例を中心に調査検討することで、新たな民俗理解の可能性を考えようとするものである。本年度は最終年度ということで、引き続き大阪府和泉市旧南王子村および徳島県旧東祖谷山村・旧西祖谷山村(現三好市)の資料整理とともに、昨年から調査を開始した青森県三戸郡新郷村のキリスト祭り、これまで台風等による自然災害の影響のため実施できなかった宮崎県東臼杵郡椎葉村の平家祭り、また比較のため近年農漁家レストランで成功している南三陸町他においても調査を行なった。この3年間、上記のような視点からの資料を調査収集し、分析してきたわけであるが、特に注目されるのが、ここで活用されている「民俗」が、新たな生活基盤や住民アイデンティティの再構築といった大きな社会変化に伴う動きの中で、過去ではなく、地域社会の今日的なイメージや状況に合わせるかたちで再構成されたものであった点である。つまり、変化と現在を視野に入れたうえで民俗を理解する必要がある。また、その活用の方法についても、各調査地によってきわめて多様な面もあり、今回取り上げた現象を、現代という一時代だけに押し込めるのではなく、地域社会の変化全体の中に位置づけたうえで、その意義というものを政治的・経済的・社会的状況の変化に注目しつつ再検討する必要もあろう。このほか、地域社会をめぐる変化は、町村合併等の影響をはじめとして、今日においても進行しつつあり、今後も継続的に調査していく必要があることも指摘しておきたい。
著者
小宮 友根 北村 隆憲 森本 郁代 三島 聡 佐藤 達哉
出版者
東北学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2023-04-01

本研究は、裁判員裁判の評議において裁判官がおこなうファシリテーションについて、その技法とそれが評議の展開に及ぼす影響を解明しようとするものである。現職裁判官をはじめとする法曹の協力のもと、現実の裁判員裁判に限りなく近い模擬裁判を実施し、その録画を主として会話分析の手法を用いて分析することで、裁判官が用いるファシリテーション技法の会話的特徴とそれが評議にもたらす帰結を体系的に解明するとともに、それに対する学際的な分析と評価をおこなう。
著者
熊谷 公男 小倉 慈司 堀 裕 川尻 秋生 遠藤 慶太 鹿内 浩胤 新井 重行 福島 真理子 中村 憲司 佐藤 早樹子 佐藤 真海
出版者
東北学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、弘仁・貞観・延喜の三代の格(律令の修正法)を内容によって分類、再編した『類聚三代格』の新たなテキストを作成することを目的とするもので、そのために必要な主要な写本について史料学的な検討を行いつつ各巻の底本を選び直し、校訂方針の明確化をはかった。その結果、古写本の文字をできるだけ尊重しながら原本の復原をめざすという基本方針を立て、研究代表者・研究分担者から巻ごとの担当者を定めて、協議をしながら校訂作業をすすめてきた。その成果の一部は論文の形でも公表した。また出版社も決定し、全体を3分冊として2022年から順次刊行していく予定である。
著者
小宮 友根
出版者
東北学院大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2013-08-30

裁判員裁判の模擬評議の録画データを分析することで、以下の知見を得ることができた。(1)司会の裁判官が用いる「裁判員全員に向けた行為連鎖開始活動」によって、裁判員は「誰が話し手になるべきか」「どの順序で話し手となるべきか」という順番交替上の問題に直面する。(2)裁判官は「順々」という順番交替システムを採用することでこれらの問題を解決する。(3)他方裁判員どうしが討議するためには「順々」システムから日常会話型のシステムへの移行が必要になる。
著者
熊谷 正朗
出版者
東北学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では球面モータの動力評価、効率評価に必要な回転中のトルク計測手法を提案、実証した。従来のモータと異なり、球面モータは3自由度、すなわち三つの空間軸周りの回転の自由な組み合わせで回転でき、トルクも同様で、かつ両者の軸方向が同一とは限らない。そのため、従来は同時に測定する手法が見られず、開発中の球面誘導モータの性能評価、改良のために、6軸力覚センサと、機械的な球体の駆動装置の組み合わせにより実現した。
著者
鈴木 努
出版者
東北学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

この研究では福島第一原発事故後にいわき市在住者らによって設立された地域SNS上で行われた放射能汚染のリスクについてのコミュニケーションの可視化を行った。その結果、科学的な知識をもつ人は特定の分野ではリーダーシップを発揮するが、人々を媒介する役割は果たしていなかった。リスクコミュニケーションにおいては共感的態度がより重要であることが示唆された。人々の不安に影響を与える要因を分析するためのウェブ調査では、情報収集の活発さやリスク認知が放射線の影響に対する不安を高めることが分かった。科学技術への関心や放射線に関する知識は不安を低減する可能性はあるが一貫した結果は得られなかった。
著者
陶久 利彦 荒木 修 新井 誠 宮川 基 佐々木 くみ
出版者
東北学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

性風俗産業の法的問題性を、憲法・行政法・刑法という個別法分野から分析・検討すると同時に、法を支える感情面や倫理面との関連性を法哲学の見地から研究した。ただ、性風俗に含まれる行為や営業は多様であるから、共同研究者の関心にも沿うような形で専ら売買春と所謂風営法に対象を限定した。フェミニズムに加担するのではなく、かといって実態調査に埋もれるのでもなく、性風俗関連の立法史、特に行政的規制の在り方、そして風営法の憲法論的位置づけなどを検討したことは、性風俗産業への法学的アプローチとして大きな成果を上げた。
著者
植田 今日子
出版者
東北学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

東日本大震災が訪れる前から幾度にわたって津波の被災と回復を余儀なくされてきた歴史をもつ社会で、「未曾有」の規模と表現されてきた2011年の津波被害が、どのような社会的、文化的実践によって克服されようとしていたのかについて明らかにした。集落単位での分析にこだわることで、被災前からルーティンとして執り行われてきた儀礼や祭祀が被災したコミュニティに果たす役割の重要さが明らかとなった。また「津波常習地」とはいっても、人間の寿命をゆうに跨ぐ間隔で訪れる災害へ警戒を伝えることの難しさも浮き彫りとなった。この伝承において必須となっていたのは、人間の寿命を凌ぐスパンをもつ有形無形の伝承媒体の存在であった。
著者
政岡 伸洋 岡田 浩樹 小谷 竜介 加藤 幸治 蘇理 剛志 沼田 愛 遠藤 健悟 大沼 知
出版者
東北学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、民俗学の立場から、以前の暮らしや他地域の事例も視野に入れつつ、東日本大震災の被災地で起こるさまざまな現象を調査検討し、新たな理解と課題を提示するものである。今回得られた知見として、①震災後の早い段階から民俗行事が行われ注目されたが、これは混乱の中での必要性から、震災前の民俗を活用し、新たに創出されたものであったこと。②暮らしの再建という点からみれば、4年経った被災地の現状は、やっと出発点に立った段階であり、今後もその動きを注視していく必要があること。③被災体験の継承については、災害のみならず地域の歴史や暮らし全体に関心を持つ地元研究者の育成が必要である点などが明らかとなった。
著者
増子 正 李 在檍 高橋 信二 大澤 史伸
出版者
東北学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

韓国における共同募金特徴を、①韓国共同募金会の組織、②募金プログラムの開発と事業支援、③説明責任 の3つの視点から整理して、韓国における共同募金のマネジメントの体系化を試みた。単に募金を集めて配分するだけでなく,配分を受ける組織が事業を遂行するための相談支援体制を持っていること。募金事業のマネジメントに関しては,募金戦略の作成から評価にいたるまでのPDCAサイクルが確立していることがわかった。
著者
村山 貴俊
出版者
東北学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

隙間(ニッチ)市場を創出し、そこで高い市場占有率を維持し続ける企業の競争優位の源泉を探った。食品や飲料産業で活動する企業の事例を分析するなかで、特定の事業に集中しながら,腹数の付加価値活動上の優位をうまく統合している企業が、長期的な優位性の構築に成功していることを発見した。
著者
白鳥 圭志
出版者
東北学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

衰退地域である北海道江差、松前地域では、地方資産家は地域振興に関わろうとするが、人、資本等の移動もあり奏功しなかった。発展地域である函館市では、1920年までは地方資産家によるインフラ等への投資が地域経済の発展を加速する相乗効果を発lfliした。しかし、20年代以降、地か資産家は地域経済の投資主体として地域を支えることを求められたが、このような行動を長則に採ることは出来なかった。
著者
齋藤 善之 鎌谷 かおる 篠宮 雄二
出版者
東北学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

近世の三陸地域に大規模家経営体が卓越したのは、その力量によって大自然(山野河海)の豊富な天然資源を開発しえたからであり、とりわけ両者の資源を連関させることで相互の開発を促進するしくみを創出保持できたからである。そうした大規模家経営体は辺境な地理的環境にありながら海運業や遠洋漁業をとおして広い地域との交流関係をもち、所有船などの輸送手段を介して遠隔地とも直接通交する力をもっていた。それにより都市との間の物流を実現したのみならず、最新の技術や文化を地域社会にもたらす窓口になり、三陸地域社会の自立と発展をもたらす原動力となっていたのである。