著者
Kizawa Takashi
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.204-239, 1959
被引用文献数
2

火山学史上世界的に著名な昭和新山の生成には,3つの著しい地震群が発生した。第1報にこれ等の諸性質を明らかにした。筆者は今回昭和新山を取囲む3観測所,札幌(Δ=69km),森(Δ=54km),室蘭(Δ=25km)で観測された地震波動の性質を詳細に究明し,火山活動の予知及び活動機構を解明する手懸りを得る目的で,第1報に引続いて研究を行つた。得られた主な結果は次の通りである。<BR>(I) 噴火に先行して発現した<I>A</I>-型地震群(1943Dec.-1944Apr.)の振幅は,大小様様の大きさで起つている。そして噴火に近づくとその振幅は,exponentiallyに減少して来る。然るに,噴火終了直前から発生してその後1ケ年間継続した,Lava Domeの成長に伴う地震群(<I>B</I>-型と名付く)の振幅は,前者に比べて可なり小さく,しかも全期間を通じて殆んど同じ大きさで起つていた。これ等の事実は両地震群の震源の深さの違いに起因する事を示して注目に値する。<BR>(II)水平動両成分の最大振幅のratio(<I>A<SUB>N</SUB>/A<SUB>E</SUB></I>)のをとると,<I>A</I>-型地震群は<I>A<SUB>N</SUB>/A<SUB>E</SUB></I>>1となり,B-型地震群は逆に<I>A<SUB>N</SUB>/A<SUB>E</SUB></I><1となつて明確な対照を示した。即ちここにも両地震群の震源の深さ,及び発震機構に,著しい相異のある事が見事に示された。<BR>(III)活動の初期(1944 1月)<I>A</I>-型地震群の中の主な10個の地震には<I>P</I>波の初動が明瞭に現れた。それ等は,札幌と森が押しで室蘭が引き波に現れた。現地に於ける震源の移動と比較して注目すべき結果が得られた。<BR>(IV)群速度の著しく遅い明瞭な2つの相が,森測候所(Δ=54km)に顕著に現れた。そしてそれはB-型地震群に,特に,両相共鮮明である。仮に,これ等を3相,4相と名付けると,3相の速度は,1km/sec足らずで出現し,4相は約340 meter/secで始り,その後に一定周期の波が続く。<BR>この度,発見されたこれ等の明瞭な2つの相はそれぞれAiry phase及びAir-coupled Rayleighwaveと考えられる要因が非常に強い。若しそうだとすれば, Airy phaseとAir-coupled Rayleighwaveが同一地震に出現した事となる。この事実は,今日まで世界中殆んど例がない。<BR>この稀有な現象が起つたのは,震源の深さ,海の深さ,海底の条件,(森測候所のpathは海である)層の数の問題, 及び発震機構等の条件に起因する為と考えられるから,更に今後これらの研究を進めねばならない。併し,このうち震源の深さと,発震機構の問題は特に,これ等2つの相と密接な関係を持っと考えられるので,火山活動の原因を究明する上に重要な,手懸りを与えるに違いない。<BR>Air-coupled waveについて:-<BR>大気と海とは2つの媒質のdensity constantの違いが,非常に大きいので,両者のcouling等考えるさえ誠に驚くべき事柄である。<BR>この問題の発端は,1883年有名なKrakatoaの大爆発の際に,世界中いくつかの地点で,観測されたair wave arrivalとtidal disturbance waveの到着時の一致と云う点から始まる。<BR>この現象に,M. EWINGとF. PRESS等が着目して, Air-coupled waveの構想を1950年よりこの方,一連の理論や実験により打ち建てたものである。今回このphaseの存在を独自に自然現象の中に発見したわけである。<BR>(V) 3相,4相の振幅比が,時と共に変化する状態から見ると,<I>A</I>-型地震群の震源は,噴火に近づくと浅くなつて行き,<I>B</I>-型地震群は噴火から遠ざかると震源が深くなつて行く傾向のある事を知つた。この深さが問題である。
著者
青木 輝夫 本山 秀明 竹内 望 的場 澄人 堀 雅裕 八久保 晶弘 山口 悟 田中 泰宙 岩田 幸良 杉浦 幸之助 兒玉 裕二 藤田 耕史 朽木 勝幸 庭野 匡思 保坂 征宏 橋本 明弘 谷川 朋範 田中 泰宙 植竹 淳 永塚 尚子 杉山 慎 本吉 弘岐 下田 星児 本谷 研
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2011-04-01

グリーンランド氷床上での現地観測から、涵養域ではアルベド低下に対するブラックカーボン(BC)等積雪不純物の寄与は小さく、積雪粒径増加効果の方が大きいことが分かった。また2012年7月の顕著な表面融解には下層雲からの長波放射が効いていた。消耗域では表面の不純物中に微生物が大量に含まれ、アルベド低下へ大きく寄与していた。衛星観測から2000年以降の氷床表面アルベドの低下原因を解析した結果、涵養域では積雪粒径の経年増加が主要因で、消耗域では裸氷域と微生物を含む暗色域の拡大が原因であった。内陸域で深さ223mの氷床コアを掘削し、その解析からBC濃度は1920-30年に現在の数倍程度高いことが分かった。
著者
小嶋 美都子
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.63-82, 1990 (Released:2006-10-20)
参考文献数
22

一般に、ある一つの地電位異常変動が、ある一つの地殻活動によるものであると断定することは現在のところ不可能である。それら二つを関連づける場合に、地電位異常変動の他の原因をすべて消去することが不可欠である。地電位異常変動のうち、矩形状のものは人工擾乱によるものであることを観測所の多くの例から示した。水戸—常陸太田に現れる人工擾乱による地電位異常変動の内、一つのタイプは、気象条件と関連した日立電鉄の電車の漏洩電流によることが判明した。伊豆大島でNTT通信施設を利用して観測される地電位異常変動は、上田等の主張する伊豆半島東方沖の地震活動の前兆現象ではなく、降水と関連した電話交換機等からの漏洩電流による人工擾乱によることが判明した。
著者
高山 博之 黒木 英州 前田 憲二
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.127-134, 2007 (Released:2007-11-01)
参考文献数
15

すべり速度・状態依存摩擦構成則を平面および3次元の形状をしたプレート境界面に適用し,東南海および南海地震の発生順序に関するシミュレーションを行った。平面のプレート境界では,プレートの形状の影響がないので,東南海・南海地震のそれぞれのアスペリティの大きさおよび摩擦係数(a-b)の大きさの影響を調べた。アスペリティの大きさおよびa-bの絶対値が同じ場合(基本モデル)は,どちらかが先に起こる傾向は見られないことがわかった。アスペリティの大きさまたはa-bの絶対値が異なる場合は,いずれも小さい方が先に起きた。前者は応力の集中の早さの違いに起因し,後者は応力降下量の大きさの違いに起因する。プレート境界を3次元の形状にした場合についてもシミュレーションを行った。東南海と南海のアスペリティの大きさとa-bの大きさを同じにし,両アスペリティのa-bの絶対値を基本モデルと同じにした場合は東南海から先に起き,10%小さくすると南海から先に起こるようになった。これは東南海の東端からの応力の集中の早さと紀伊半島沖の安定すべりによる南海側での応力集中の早さの関係がa-bの値の大小で入れ替わるためと考えられる。
著者
森 俊雄
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.149-155, 1985 (Released:2007-03-09)
参考文献数
7
被引用文献数
6 6

日本電信電話公社の通信ケーブル施設を使って長基線の地電位試験観測を行った。現在、日本では陸上での地電位観測で数km以上の基線で観測されているものは、他にはない。関東北部の笠間、下館および小山の各電話中継所のアースおよびその間の通信ケーブルを用いて、笠間—下館間 (26.8km) および小山—下館間 (15.7km) の地電位変化を観測した。1Hz等の短周期ノイズが大きいため、カットオフ周期が6分のローパスフイルターを通したところ笠間—下館間では非常によい記録が得られた。ここでの地磁気変化による誘導電位変化は、柿岡地磁気観測所の地電位EW成分と類似している。小山—下館間では、直流電車からと思われる電気的ノイズが非常に大きく、良い記録は得られなかった。しかし、そこでは地電位変化が、笠間—下館間に比較して非常に小さいことも確かである。このような地電位変化の相違は、主にこの付近の堆積層の厚さに関係していると考えられる。今回の試験観測の結果、電々公社のケーブル施設を使って、長基線地電位変化を観測できることがわかった。このような観測は、地下構造の解析や地下電気抵抗の時間的変化の検出に利用できると考えられる。
著者
広野 卓蔵 佐藤 馨
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3-4, pp.177-193, 1971 (Released:2012-12-11)
参考文献数
5

MSK震度階が我が国に適した震度階であるかどうかを試験するために,106の気象官署で, MSK震度とJMA震度の同時観測を1967年から1970年まで行った.このために作った調査表に地震時に観測した現象の項目をチェックして気象研究所に送り,著者等はそれによってMSK震度の決定を行った.地震を大地震と小地震に分けて,JMA震度と比較しながら統計を取った.その結果JMA震度は低震度に適し, MSK震度は高震度に適していることが分った.JMA震度3までの低震度をMSK震度になおす式はM=1.5J+1.5で,ここにMはMSK, JはJMA震度である.また大地震のときの両者の関係はM=1.5J+0.75と求められた.両者にはそれぞれ長所と短所があり,気象庁は両者を併用することが望ましい,すなわち,JMAは緊急報告用に,MSKは大地震の現地調査などに用いられる.
著者
青木 孝
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.61-118, 1985 (Released:2007-03-09)
参考文献数
75
被引用文献数
13 14

北太平洋西部における台風の発生および日本への台風の襲来について、地域分布や年変化、経年変化などの気候学的特徴を明らかにした。台風の発生については1953-1982年の30年間を解析の対象とした。日本への台風の襲来は、さらに長い期間の資料を収集して、1913-1982年の70年間について解析した。台風が多く発生したときと少ないときの両者について、発生場所や500mb高度場、雲量、海面水温を比較した。また台風が日本へ多く襲来した年と少ない年における台風の襲来数の分布の違いを調べた。日本各地の台風襲来数の年変化型の地域差を主成分分析で明らかにし、得られた固有ベクトルに対応する振幅係数を使って日本の地域区分を行った。 次に、東部赤道太平洋における海面水温の異常現象であるエル・ニーニョと台風の発生数との関係を見いだすとともに、北太平洋の海面水温と1953-1982年の30年間における台風の発生数および日本への台風の襲来数との相関関係を解析した。大きな相関係数が得られた海面水温、すなわち台風が発生する前年と2年前の北太平洋の海面水温を予測因子として重回帰分析を行ったところ、北太平洋の海面水温が、台風の発生数や日本への台風の襲来数を長期予報するための資料として役立つことがわかった。
著者
中村 雅基
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3+4, pp.81-94, 2002 (Released:2006-07-25)
参考文献数
14

自動的に、P波の初動極性を取得し、発震機構解を決定し、十分な精度で発震機構解が決定できているか否かを判別する手法を提案した。P波の初動極性を取得する際には、まず、ベッセルバンドパスフィルタを適用し、次に、ARモデルを用いてP波の初動到達時を得、ARフィルタを適用した。発震機構解の決定には、グリッドサーチによる手法を用いた。十分な精度で発震機構解が決定できているか否かを判別するために、解の安定性、過去に発生した地震の発震機構解等から総合的に判断し、発震機構解の決定精度の評価を行った。気象庁によって読みとられた初動極性の70%が、本手法を適用することによって得られた。また、両者でくい違った験測を行っているのは全体の3.5%以下であり、十分な精度で初動極性の自動験測が行われた。さらに、本手法を適用することにより、気象庁で発震機構解が得られた地震の2.8倍以上の地震について、決定精度の良い解を得ることができた。M<2の内陸浅発地震やMが決定されていないような小さな深い地震でも、十分な精度で発震機構解が決定できることもある。本手法を適用することにより、十分な精度で効率的に発震機構解を決定することができる。
著者
高島 勉
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
気象研究所研究報告 (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.75-81, 1983
被引用文献数
5

海からの放射の大気散乱光に及ぼす影響をadding methodに使える形で導いた。大気及び海水は水平方向に光学的に一様で、垂直方向に不均質であると仮定した。海面はCox and Munk(1956)のモデルとし、海底は黒体とした。海中の海水、hydrosol、chlorophyll 等によって散乱、反射した光は偏光を考慮した形で式を導いたが、計算例としてはRaschke (1972)のモデルをscalarで求め、衛星によって受信される反射光の強度 (0.63&mu;m: NOAA搭載AVHRR放射計の第1チャンネルの中心波長に対応) への影響として討議した。海中からの放射は天底角が小さい所で認められ、天底角が大きくなると影響がない事がわかった。偏光を考慮した計算結果は準備中です。
著者
勝又 護 徳永 規一
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3+4, pp.191-204, 1980 (Released:2007-03-09)
参考文献数
24

海洋の低速層 (SOFAR channel) を伝わる地震波“T”は、かなり古くから知られているが、我が国でこの波が大きく明瞭に観測された例は少なかった。1975年南大東島に地震計が設置されて以来、短周期の振動からなる極めて顕著なT波群がよく記録されるようになった。これらは、主として琉球―台湾―フィリピン地域の地震に伴うもので、他の地域の地震ではまれである。 地震計に記録されるTは、海底に入射した地震波により水中疎密波がゼネレートされ、これが海洋を伝わり、沿岸で再び地盤を伝わる地震波に変換されたものである。水中疎密波が大きなエネルギーで遠方にまで伝わるためには、地震波―水中疎密波―地震波の変換が効率よく行なわれること; 海洋をchannel waveとして少い減衰で伝播すること等が必要である。従って、Tの発生と伝播の機構には、地震波が入射する地域、伝播径路および観測点付近の海底地形が大きく関与することになる。南大東島はこれらに関し好条件が揃っているため、Tを大きく記録するものと思われる。特に、ルソン島近海の地震に伴うTは優勢で、人体感覚を生じる程度の強さとなることもある。 Tの発生源および伝播径路は多様であるが、その主力波群のフィリピン海における平均伝播速度は1.48 km/secで、同海域におけるSOFAR channelの音速の極小値とほぼ一致する。 東シナ海の地震 (震源のやや深いものをふくむ) によるTもよく観測されるが、これらは琉球列島の東側の海底に入射した地震波 (S波の可能性がある) によってゼネレートされたものと推定される。
著者
浜田 信生
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
気象研究所研究報告 (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.77-156, 1987
被引用文献数
8

長い時間スケールを持つ地震活動に対し、古い地震資料の精度の再評価による解明を試みた。まず過去60年間の地震観測の歴史を概観し、観測体制、運用状況を考察することにより、観測の精度、地震検知能力がどのように変化したかを把握した。次に観測の時間精度と震源決定精度の関係を、各時代につき実際例から調べ、古い観測資料の精度が今までの研究では、過小評価されてきたことを明らかにした。二重深発地震面、大地震の余震域の形状と本震の震源過程などについて行われている最近の解析方法が、古い地震活動についても適用可能となったばかりでなく、新たにサイスミシティの経年変化などを追跡する道が開けた。以上の結果を踏まえて、1940年代から1960年代にかけて日本列島の内陸部で発生した、主な被害地震の本震余震分布の再調査を進めた。再調査の結果から、いわゆる直下型地震の震源過程、先行地震活動や前震活動、余震活動の減衰の仕方など、今日の地震学の一般的な問題について考察を加え、幾つかの結論を導いた。
著者
湊 信也
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
気象研究所研究報告 (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.79-88, 1998
被引用文献数
5

&sigma;-座標系で書かれているプリンストン・オーシャン・モデル (POM) を使って、土佐湾 (最大水深4800m) でおきた高潮の数値シミュレーションを行った。その結果、より細かい鉛直解像度やより強い成層をもつモデルでは、ピークサージが少しだけ大きくなることがわかった。鉛直混合のスキームの影響についても調べた。<br> 運動方程式における力の釣り合いを調べた結果、簡単な線形の力のバランスによって解像度によるピークサージの違いを定量的に説明することができた。
著者
中村 雅基 金沢 敏彦 佐藤 利典 塩原 肇 島村 英紀 仲西 理子 吉田 康宏 趙 大鵬 吉川 一光 高山 博之 青木 元 黒木 英州 山崎 貴之 笠原 順三
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
気象研究所研究報告 (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.1-28, 2002
被引用文献数
5

中部日本におけるP波およびS波の3次元速度構造を地震波走時トモグラフィーを用いて求めた。その際、定常観測点で得られる自然地震を対象とした観測値だけでなく、人工地震や海域における臨時観測点等を用いた観測値を積極的に利用した。得られた成果は以下の通りである。沈み込むフィリピン海プレートと思われる高速度域が検出された。フィリピン海プレートは、少し高角度で沈み込み始め、その後なだらかになり、最後は高角に沈み込んでいる。35&deg;N、136.5&deg;E付近では、フィリピン海プレートが分かれている。将来発生が懸念されている東海地震の固着域の北西隣は、プレート間カップリングが弱い。35.6&deg;Nから35.8&deg;N、137.5&deg;E、深さ100kmから200km付近で、非地震性のフィリピン海プレートが検出された。
著者
小長 俊二 西山 勝暢
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.151-156, 1978-09-15 (Released:2012-12-11)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

1977年7月上旬に神戸海洋気象台春風丸により,切離冷水塊の中で2つの非常に興味ある現象が観測された(上平悦朗ほか(1978)).(1)は切離冷水塊の周辺部に環状に表面塩分の低い海域が存在していることおよび(2).冷水塊の中心のすぐそばに,周囲に比して異常に高温な観測点が存在していることである.前者は梅雨前線による降水が海山と渦の相互作用で環状に収束したものであり,後者は異常高温の大部分がXBTプローブの不良に帰せられるにしても,場所的に見て,テーラー柱の発生の可能性がある.また黒潮と切離冷水塊の挙動を第2紀南海山の位置から見て,切離冷水塊の発生から消滅まで第2紀南海山の影響を強く受げていたことが予想される.将来観測により確認する必要がある.
著者
Kobayashi J. Toyama Y.
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.1-22, 1960

高層大気の温度測定においては 日射誤差と遅れによる誤差が 系統的な誤差の主なものである 日本のラジオゾンデの日射誤差に対する補正は気圧400mb以下の高層資料に対しては既になされているが遅れに基く誤差は考量されていない<BR>この報告の目的は 日射誤差が 補正された改良型のバイメタル温度計が 気温の真値を得たい要求に充分答えうるものかどうかを明にすることである<BR>改良型温度計は 二つのバイメタル片からなり立って 一つには銀鍍金され 他は黒化されたものを用い これらを用いて日射に基く誤差を補正し 気温の真値を指示するように工夫されている<BR>通風筒で遮蔽されたラジオゾンデ用温度計の日射誤差及び遅れによる誤差を見積るために 一連の比較飛揚試験及び実験室におていて 多くの試験が行われた これらの結果によると 太陽高慶角30° において 理在使用されている補正表による日射誤差の差の補正量は少な目で 実際の日射誤差の半分程度しか補正されておらず又遅れの時定数は大凡100mbで14秒 200mbで40秒 50mbで120秒 20mbで280秒程度のものであることを示した<BR>1956年2月に行われた昼と夜の観測から観測された気温差が若干認められ測定器の測定誤差が±0.50℃であるとすると 気温の日変化の量は100mbで 0.15℃, 50mbで 0.3℃ の値を持つことが推定された<BR>この報告は1955年4月から1956年2月に互って実験された結果を集約したものである
著者
葛城 幸雄
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.277-305, 1983 (Released:2007-03-09)
参考文献数
26
被引用文献数
42 56

北緯24°から45°の範囲の、日本の12地点における90Sr月間降下量の時間変化について報告する。 90Sr積算降下量は、秋田で最も高く、大阪で最も低い。核実験開始以来の東京における積算降下量は現在までに78mCi/km2に達した。 1963年に、アメリカ、ソ連が大気圏核実験を停止したのち、90Sr降下量は減少をしめしたが、1968年以後中国核実験による放射性物質の降下が顕著にあらわれている。 中国水爆実験による降下物中の89Sr/90Sr比は、数ヶ月間増加をしめしたのち、e-(λ89-λ90)tの勾配にそって減少をしめす。又原爆実験 (数 100KT級以下) による降下物では前記の勾配より早く、その影響があらわれる期間は数ヶ月乃至6ヶ月位である。 対流圏および成層圏に放出された放射性物質の滞留時間は、それぞれ30~50日および1.0~1.2年である。 日本における90Sr降下量の季節変化は、核実験の行われた季節および規模により異なることを明らかにした。 東京における90Sr降下量と北半球全体のそれとの間には良い比例関係がみられることから、東京における90Sr降下量から、それぞれの中国水爆実験による核分裂量の推定を行った。
著者
吉田 明夫
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.15-32, 1990 (Released:2006-10-20)
参考文献数
35
被引用文献数
2 5

日本列島とその周辺に発生した浅い大地震 (M≥5, 深さ≤30km) の前震活動の特徴を調べた。1961年から1988年までの期間に発生した110個の本震の中、41個、すなわち37%が前震を伴っていた。ここで定義した前震とは、本震の前30日以内に、本震の震央を中心として20′×20′の領域内に発生した地震をいう。前震がみられた地震の割合は、期間を40日とし、また範囲を30′×30′に拡げてもほとんど変わらない。前震時系列の中の最後の前震は、本震発生前1日以内に、その本震の震央のすぐ近くで発生する場合がほとんどである。1981年以後の期間をとると、前震は55%の地震について観測された。これに対して、1961-1970年の期間では前震を伴った本震の割合は27%、また1971-1980年の期間ではそれは37%である。このことは、近年、気象庁の地震検知力が格段に増大したことを示している。前震活動には著しい地域性が存在する。その注目すべき特徴の一つは、伊豆地域と九州中部に発生する地震には前震が伴いやすいことである。特に、伊豆地域では67%の地震に前震がみられた。他の地域では、この割合は26%である。更に、伊豆地域と九州に発生する地震には、しばしば群発的な前震活動が観測される。他の地域では前震を伴ったとしても、通常は1個ないし2~3個の地震が発生するのみである。なお、伊豆地域にみられる群発的な前震活動では、本震発生の2~3時間前に静穏化が生じることが多い。この現象は、大地震の発生直前に破壊の核が生成されて、震源域における応力が緩和することを示しているものと考えられる。この研究で明らかにされた前震活動の地域的な特徴は、1926年から1961年までの期間に日本とその周辺海域に発生した大・中地震の前震を調査したMogi (1963) の結果と調和的である。この事実は、Mogi (1963) も指摘しているように、これらの特徴が一時的なものではなく、その地域地域毎の地殻構造や応力の集中過程を反映した固有の性質であることを示している。前震の時系列は4つのタイプに分類することができる。タイプ1は、1個ないし2~3個の地震が本震の数日から数10日前に発生するものである。このタイプの前震中には本震の発生と直接関係しないものも含まれている可能性がある。タイプ2もタイプ1と同じように1個ないし2~3個の前震がみられる場合であるが、しかし、これらの前震は本震の直前 (通常数分以内) に発生する。このタイプの前震の発生は、本震発生に引き続く破壊の開始を表わしているのかもしれない。タイプ3の典型的な場合は、M4程度の中規模の地震が本震の数時間から1日ほど前に発生してその地震に伴う余震、時には、前震もみられるものである。この中規模の地震に伴う地震活動は、通常、本震発生の2~3時間前には静かになる。タイプ4は群発的な前震活動に対応する。タイプ3とタイプ4の前震活動の発生は、伊豆地域、フォッサ・マグナ地域、九州の中央部にほとんど限られる。これらのタイプの前震活動で、特に伊豆地域においてしばしば見られる本震発生の2~3時間前に生じる静穏化は、大きな地震の直前の予知に有効な前兆現象と考えられる。
著者
広野 卓蔵 末広 重二 古田 美佐夫 小出 馨
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.323-339, 1968-10-25 (Released:2012-12-11)
参考文献数
4
被引用文献数
1 2

本研究は本邦の地震予知に関する研究の一環として,高感度地震計の市街地における地震観測方法の改善を最終目的としている。このため,気象庁が現用している電磁式地震計と同一性能の地中地震計を開発し,これを主として地盤の雑微動の実態を解明する目的で観測井(深さ200m)の掘削過程における各種深度面(10,20,50,100,150,200m)に設置して,それぞれ地上との同時比較観測を行った。本論文は観測資料の解析結果,また,地質調査資料について述べる。おもな帰結;(1) 高周波ノイズほど深さと共に減衰し,特に50mまでは著るしい。(2)0.5cps以下の低周波ノイズはほとんど減衰しない。(3) 周期1secの地震計による近地地震の観測を目的とする場合,50m程度の深さで著るしいSN比の改善が期待される。(4) 重錘落下や自動車の通過によるノイズは50mより深くなると問題にならない。
著者
Hirono Takuzo Sato Kaoru
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.177-193, 1971

MSK震度階が我が国に適した震度階であるかどうかを試験するために,106の気象官署で, MSK震度とJMA震度の同時観測を1967年から1970年まで行った.このために作った調査表に地震時に観測した現象の項目をチェックして気象研究所に送り,著者等はそれによってMSK震度の決定を行った.地震を大地震と小地震に分けて,JMA震度と比較しながら統計を取った.その結果JMA震度は低震度に適し, MSK震度は高震度に適していることが分った.JMA震度3までの低震度をMSK震度になおす式は<I>M</I>=1.5<I>J</I>+1.5で,ここにMはMSK, JはJMA震度である.また大地震のときの両者の関係は<I>M</I>=1.5<I>J</I>+0.75と求められた.<BR>両者にはそれぞれ長所と短所があり,気象庁は両者を併用することが望ましい,すなわち,JMAは緊急報告用に,MSKは大地震の現地調査などに用いられる.