著者
斉藤 和雄 瀬古 弘 川畑 拓矢 青梨 和正 小司 禎教 村山 泰啓 古本 淳一 岩崎 俊樹 大塚 道子 折口 征二 国井 勝 横田 祥 石元 裕史 鈴木 修 原 昌弘 荒木 健太郎 岩井 宏徳 佐藤 晋介 三好 建正 幾田 泰酵 小野 耕介
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009-04-01

局地豪雨による被害軽減につながる基盤技術開発のための研究として以下を行った。・観測データを高解像度の数値モデルの初期値に取り込む手法(データ同化手法)の開発と豪雨事例への適用を行なった。衛星で観測するマイクロ波データ、GPSデータ、ライダー観測による風のデータを用いた同化実験などを行うとともに、静止衛星の高頻度観測データの利用に向けた取り組みにも着手した。・局地豪雨の発生確率を半日以上前から定量的に予測することを目標に、メソアンサンブル予報のための初期値や境界値の摂動手法の開発と雲を解像する高分解能モデルへの応用と検証を行い、局地豪雨の確率的予測の可能性を示した。
著者
和田 章義
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2013-04-01

北西太平洋海域に展開された3基のフロートによる日々の観測により、2011-2012年の台風シーズンにおいて8つの台風の海洋応答をとらえた。この海洋応答について、台風中心に対するフロートの3つの相対位置を①100km以内の台風近傍域、②台風経路から100km外でかつ右側に離れた海域、③台風経路から100km外でかつ左側に離れた海域に分け、それぞれについてその応答特性を調査した。①の台風近傍域では、風の低気圧性回転成分により海洋内部で湧昇が生じた結果として、表層水温の低下が顕著となった。また②の進行方向右側の海域では、強風による乱流混合の増大に起因した海洋混合層の深まりが顕著であった。さらに海洋表層における塩分変動は、台風中心とフロートの相対位置関係に加え、降水の影響を強く受けることがわかった。次にこの8つの台風のうち4事例について非静力学大気波浪海洋結合モデルによる数値シミュレーションを実施した。シミュレーション結果から①台風による海水温低下により台風中心気圧が高くなること、②環境場の風が弱い事例(2011年台風第9号)で、海水温低下が台風経路シミュレーションに影響を与えること、③台風中心から半径200kmまで、台風直下に形成される海水温低下は24~47%の潜熱の減少をもたらすことがあきらかとなった。また2013年台風第18号について、非静力学大気波浪海洋結合モデルにより数値シミュレーションを実施した結果、黒潮流域での高海面水温場による台風渦の順圧対流不安定により生成されたメソ渦が対流バーストを引き起こすことにより、北緯30度以北でこの台風が急発達したことが明らかとなった。この結果はまた、大気海洋間の高エンタルビーフラックスが台風の急速な強化に必ずしも必要でないことを示唆する。
著者
國井 勝
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

アンサンブルデータ同化手法に基づく観測データインパクト評価手法を用いて過去の台風事例でデータ同化に利用された観測データのインパクトを定量的に評価し,台風予測精度向上に効果のあった観測データを抽出することで,統計的に台風予測精度向上に最適な観測手法を推定した.結果として,大気中下層の観測データが台風予測精度向上により大きく寄与することが分かった.
著者
中澤 哲夫 別所 康太郎 坪木 和久 斉藤 和雄 榎本 剛 原 昌弘
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

2008年に行った航空機からの台風直接観測による進路予報へのインパクトについて調査を行った結果、ターゲット観測の予報改善効果が確認できたものの、台風第13号と第15号の二つの台風での限られた観測のため、有効性を十分に確認することまでは至っていない。高い感度領域でのデータ同化が、必ずしも予報精度の改善へ寄与していない事例のあることもわかった。台風周辺での観測のインパクトについては、数値予報の成績がよい気象庁やヨーロッパ中期予報モデルなどでは改善率が小さく、逆に米国のモデルなど通常の予報成績があまりよくない場合に改善率が大きいこともわかった。また、台風中心付近のデータをどのように同化システムに取込むかどうかによって予報精度が大きく影響されることが明らかになった。
著者
藤部 文昭 高橋 清利 釜堀 弘隆 石原 幸司 鬼頭 昭雄 上口 賢治 松本 淳 高橋 日出男 沖 大幹
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

970年代まで行われていた区内観測による26都府県の日降水量データをディジタル化し, 高分解能かつ長期間の降水量データセットを作成した。このデータや既存の気象データを利用して著しい降水や高低温・強風の長期変化を解析し, その地域的・季節的特性等を見出した。また, 極値統計手法を様々な角度から検討し, 各方法の得失を見出した。さらに, 全球数値モデルを用いて, 降水極端現象の再現性に対するモデルの水平解像度の影響を調べ, 今後モデルと観測データを比較するための統計的手法の検討を行った。
著者
斉藤 和雄 Lecong Thanh 武田 喬男
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.65-90, 1994 (Released:2006-10-20)
参考文献数
25
被引用文献数
7 7

紀伊半島、尾鷲付近での降雨の集中に対する地形効果をみるため、3次元山岳地形を越える流れの場を非静水圧ドライモデルを用いて調べ、観測された降雨量分布との比較を行った。 北東~南西方向に長軸を持つ楕円で単純化した地形に対する数値実験では、南東の一般風が弱い場合、山岳風上側下層の上昇流域は、斜面上と海上に2つのピークが見られた。海上のピークは、ブロッキングによる2次的な上昇流で、山岳前面最下層の逆風を伴っていた。それぞれのピークは一般風が小さいほど風上側に生ずるが、一般風が強く (あるいは安定度が小さく) ブロッキングが生じない場合は、海上の2次的な上昇流は見られない。紀伊半島地形の特徴的な湾曲は、南東風時のブロッキングの効果を高める働きを持つ。 1985年の紀伊半島での降水事例を解析し、尾鷲では潮岬に比べ雨量が多い事と大雨は東南東~南の下層風向時に生じている事を確かめた。紀伊半島の現実地形を用いた数値実験では、東~南のいずれの風向時にも尾鷲付近と紀伊半島南部に下層の上昇流域が見られ、榊原・武田 (1973) で示された紀伊半島の年平均降水量分布の極大地点と良い一致が見られた。ブロッキングにともなう海上の2次的な上昇流は南西~西の風向時には生じなかった。 大雨時に観測された一般場を用いた数値実験でも同様な傾向が見られ、シミュレーションで得られた下層の上昇流域は観測された降水分布に概ね良く対応していた。また、いくつかのケースでは、尾鷲の北東で観測された地上の降水域に対応する場所に山岳波による風下側中層の上昇流域がシミュレートされた。 実験結果は、実際の降雨分布と一般風の大きさの関係-弱風時の海岸域と強風時の内陸域-に対応している。また、弱風時にしばしば見られる紀伊半島風上側海上での対流性降雨バンドの発達に、紀伊半島の地形のブロッキングによる下層の水平収束が影響している事を示唆している。
著者
村上 正隆 折笠 成宏 斎藤 篤思 田尻 拓也 橋本 明弘 財前 裕二 牧 輝弥 荒木 健太郎 松木 篤 久芳 奈遠美
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

つくばサイトに於いて、各種エアロゾル測定・採取装置、雲核計、氷晶核計を用いて通年観測を継続実施した。エアロゾルの物理化学生物特性および雲核・氷晶核活性化スペクトルの季節変化について明らかにした。大気エアロゾルの主要構成要素である、黄砂粒子・バイオエアロゾル・種々の人為起源エアロゾル(標準粒子)を対象とした雲生成チェンバー実験や雲核計・氷晶核計を用いた測定結果と詳細雲微物理モデルの結果に基づき、その雲核能・氷晶核能を種々の気象条件下で調べ定式化した。その結果を用いて非静力学モデルなどに用いるエアロゾル(雲核・氷晶核)・雲・降水を統一的に取扱う新機軸のパラメタリゼーションを開発した。
著者
斉藤 和雄 田宮 久一郎 青梨 和正 瀬古 弘 小司 禎教 川畑 拓矢 大関 誠 原 昌弘 柳野 健 中澤 哲夫 國井 勝 田中 博 古本 淳一 永戸 久喜 村上 正隆 田中 博 津田 敏隆 古本 淳一 若月 泰孝 林 修吾 露木 義 小泉 耕 西嶋 信 石川 宜広 本田 有機 三好 建正 経田 正幸 山口 宗彦 澤田 謙 酒井 亮太 米原 仁 小野 耕介 津口 裕茂 藤田 匡 三上 彩 近藤 圭一 劉 國勝
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

集中豪雨を数値モデルで予測するため、大気の3次元的な状態を観測データを用いて精度良く解析する研究、および予測の信頼性を定量的に見積もる手法の研究を行った。非定時の観測データを同化する高解像度4次元変分法の開発、GPSデータ、マイクロ波放射計データ等の同化実験を行い、豪雨の予測が改善できることを示した。アンサンブル予報の手法をメソ現象の短時間予測に適用し、予報誤差を定量的に見積もる手法を示した。
著者
和田 章義
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

台風と海洋の相互作用を海洋大循環モデルに炭素平衡モデルを組み込んだ結合モデルと非静力学大気波浪海洋結合モデルを用いて研究した。数値シミュレーション結果から台風通過時に海面二酸化炭素フラックスが突発的に増加し、酸性化を引き起こすこと、高風速時において風速の増加に伴い抵抗係数が減少すること、クロロフィルaの増加に伴う海面水温変動は、海洋環境場に比べて台風強度に与える影響が小さいことが明らかとなった。
著者
三上 正男 長田 和雄 石塚 正秀 清水 厚 田中 泰宙 関山 剛 山田 豊 原 由香里 眞木 貴史
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

ダストの気候インパクトの定量的評価を高精度に行うことが出来るダストモデルの開発を、(1)発生過程の観測解析、(2)ダスト輸送途上の解析、(3)ダスト沈着量の観測解析と(4)ダストモデルの高度化のための技術開発により行った。(1)では、粒径別鉛直ダスト輸送量の評価法を確立し、ダスト発生モデルの検証を行い、スキームの最適化を行った。また(2)衛星及び地上ライダーの解析から、アジア域ダストがサハラ等に較べて高高度・長距離にわたって輸送される実態や、輸送中のダストでは粒径分布変化よりも内部混合の進行による形状変化が重要であることを明らかにした。さらに(3)乾性・湿性沈着観測ネットワークによる沈着フラックスの観測データを用いて、全球ダストモデルMASINGARの粒径分布とモデルのダスト発生過程の改良を行うと共に(4)高精度データ同化システムと衛星ライダー観測値を組み合わせ、全球ダスト分布の客観解析値を作成し、東アジアのダスト発生量のモデル誤差推定を行なった。また同同化システムにより、モデルの再現性を大幅に向上することが可能となった。これらにより、発生・輸送・沈着各過程を寄り現実的に再現できるモデルを開発することが出来た。
著者
中澤 哲夫 新野 宏 榎本 剛 田中 博 向川 均 吉崎 正憲
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

全球大気顕著現象の予測可能性研究計画(THORPEX)を日本で具体化し推進する研究戦略を、3回開催した研究計画策定会議により策定した。本研究は、毎年日本を含むアジア域で発生している顕著気象(台風、豪雨、旱魃、寒波、熱波など)を適切に予測して、社会的・経済的被害の低減を目的とする。日本のリーダーシップがアジアにとどまらず、世界的にも大きな役割を発揮して研究が推進できるよう、以下の6課題について研究戦略を策定した。1:大気顕著現象の発生過程とその大規模場との相互作用の機構解明。暖候期及び寒候期の大規模循環異常とメソスケール擾乱の力学と予測可能性について研究を推進する。2:偏西風帯上のエネルギー伝播と大気顕著現象発生の機構解明。偏西風の蛇行による砕波がもたらす大気顕著現象の発生機構をデータ解析や数値シミュレーションから解明する。3:アンサンブル予測の高度化に関する研究。世界各地の数値予報機関で行われているアンサンブル予測データを束ねた確率的予測手法を構築する。4:季節内変動の機構解明とその予測可能性に関する研究。長期予測の精度向上に不可欠な季節内変動をアンサンブル予測データから調査する。5:大気顕著現象発生に果たす風・水蒸気の挙動に関する研究。降雨の予測向上のためには、風上の下層大気の風と水蒸気の空間分布の把握が重要であり、観測船のデータから調査する。6:台風の進路・強度変化に果たす力学場・熱力学場の影響評価。台風周辺の直接観測を実施し、台風の予測精度向上を目指す。上記の課題を解決するため、以下3点の重要性が認識された。・気象庁をはじめ機関が保有するデータのデータベース構築とその利用・予測可能性研究のための共通基盤的研究の更なる進展・本研究の成果を東アジアや東南アジア諸国に還元し、それらの国の研究促進への貢献本研究の成果を踏まえ、平成19年度からの特定領域研究に申請を行う。
著者
猪川 元興
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.81-102, 1984 (Released:2007-03-09)
参考文献数
18
被引用文献数
5 5

多変量最適内挿法を一般化した、統計的客観解析法が示される。一般化は二点で行なわれる。第一点は、斉次線形束縛条件が、その定式化の中に陽に組み込まれていること、第二点は、一般化された方法は、気候値及びその分散、予報値及びその予報誤差分散の両方を統一的に用いるが、従来の多変量最適内挿法は、それらの一方をファーストゲスとして用いるだけである。 線形束縛条件と合致する共分散行列は、ちょうど変分客観解析における束縛条件と同様に、その線形束縛条件で束縛された空間への射影演算子として機能することが、Phillips (1982) とは異なる方法で示される。 又、ここで示される方法は変分客観解析を次の二点において改良したものとみなせる。第一点は、この方法は統計的に最適な値を与えるが、変分客観解析は、その統計的意味があいまいであること、第二点は、この方法は、不規則に分布した観測点データから直接格子点上の解析値を与えるが、変分客観解析は変分法による修正を行なう前にあらかじめ観測値を格子点上に内挿する必要がある。 この方法のいくつかの応用例が示される。例の中で、変分客観解析の弱い束縛の統計的意味が示される。又、高度場、風の場の多変量客観解析に適用できる、発散共分散モデルも議論される。 この方法は、多変量最適内挿法と、線形束縛条件を課した場合の変分客観解析の両方をその特別な場合として含む。この方法を介して、多変量最適内挿法と、変分客観解析の間の関係が基本的に理解される。