著者
田里 修 矢野 達雄 青島 敏 奥山 恭子 林 研三 森 謙二 牧田 勲
出版者
沖縄大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

沖縄県の設置後、明治政府はいわゆる旧慣温存政策をとったと言われる。いわゆる旧慣とは王府時代の法令や慣習を指す。私たちはこれを沖縄近代法としてその構造と歴史的性格を、地方制度、土地制度や家族制度等において探求した。その結果、土地制度は、1765年に大きく変化し、19世紀に入っても変化していることが分かった。また、明治に入り、内法制定過程において、さらに土地整理事業においても大きく変化したことも確認できた。
著者
桜井 国俊 宇井 純 山門 健一
出版者
沖縄大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

本研究年度中の重要な社会情勢の変化として、「家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」が平成16年11月1日から完全施行されたことが上げられる。沖縄は食文化として豚肉を多食し、県下の養豚頭数は他県に比し人口比で3倍近くの25万頭あまり有り、養豚排水の適正処理は、環境保全の観点からも、地域産業と食文化の保護の観点からも重要なテーマである。しかしながら、現在、養豚排水浄化処理施設に対する補助事業は、曝気槽への流入汚水濃度を20〜30倍の水で希釈してBOD1,200ppm程度にして浄化処理をすることを認可条件として指導されている。この指導に従えば、毎日4万トンの希釈水が養豚排水処理のために必要となるが、水資源に乏しい沖縄島では、このような排水処理は持続可能とは言いがたい。そこで今年度は、県下の畜産農家とも連携しながら、研究分担者の宇井純が設計した大里村の金城農産の無希釈の酸化溝方式排水処理施設の他畜産農家への適用可能性を検証する実証研究を展開した。まず、酸化溝方式排水処理の実施設のパフォーマンスについて検討を行った。検討したのは、沖縄大学酸化溝水質分析結果、大里村金城農産酸化溝水質分析結果、滝沢ハム(株)酸化溝水質分析結果である。次いで、金城農産等の事例を踏まえ、無希釈による畜産排水処理施設を補助対象事業とするよう沖縄県当局と協議し、認可を得た。宇井純が平成15年度に執筆刊行した「沖縄型・回分式酸化溝のすすめ-自然循環型の畜舎排水処理システム」を使用した無希釈の畜産排水処理法の畜産農家への普及活動、平成15年度に研究代表者の桜井国俊が、太平洋の島嶼国家の水資源・排水処理管理などのあり方を論じて発表した「それはもちますか?-我々はいかなる開発をめざすのか?-」を沖縄に即して詳細に検討する作業を行った。
著者
西尾 敦史
出版者
沖縄大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

2005年に改正された介護保険法により創設された地域密着型サービスの中で特に小規模多機能ケアに焦点をあて自治体を基盤にした調査を行った。その結果、全国一給付費が高い沖縄の特徴の中から、小規模ケアの機能として、1)利用者のエンパワメント、2)家族サポート(支援)、3)地域社会とのつながりをつくることが重要であり、それが介護を必要とする高齢者の尊厳を高め、その人の人生を尊重したケアが文化として充実・深化する可能性があることが見出された。また、制度の理念を実現するためにも市町村自治体の位置づけと政策が重要であることを明らかにした。
著者
壱岐 一郎
出版者
沖縄大学
雑誌
沖縄大学人文学部紀要 (ISSN:13458523)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.19-28, 2000-03-31

日本古代史のいわゆる古墳時代から7世紀末までを高校教科書では約20ページにわたり記述している。5世紀の倭国の五王から7世紀の聖徳太子,天智天皇という流れである。この原典は『日本書紀』で,教科書は戦前の神国史観を否定しているものの,まず6世紀以降をほぼ正しいとしているといってよかろう。戦後史学において,中国史,韓国史との比較,巨大古墳の考証などが進んだとはいえ,まだ重大な疑義が存在する。その大きな柱は中国史料の伝える前3世紀の徐福集団の渡来と6世紀の扶桑国である。1999年は扶桑国僧・訪中1500周年にあたるので,私は日本国内4地域で「扶桑国の謎・シンポジウム」を試みた。『日本書紀』の黙殺した史料の復権であるが,無視する学界と共にマスメディアと教科書メディアに再考を迫るものであった。この『日本紀』(日本書紀)をかの紫式部は「片そば」と批判し,公爵西園寺公望(1849-1940)は「妄誕*の書を信じると国に大いに損がある」(*でたらめ)と書き残したが,20世紀の歴史は「損」どころではなかったのではなかろうか。
著者
高江洲 頼子 狩俣 繁久
出版者
沖縄大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

この研究は、琉球語諸方言のなかから個別の方言を選び、それぞれ担当者が文法について調査・研究することを目的とした。調査地点はこの研究期間をとおして、文法調査が可能な方言話者の存在、これまで文法の記述がされていない方言という条件等から最終的に、沖縄県渡名喜島方言、沖縄県宮古市城辺字保良方言、鹿児島県大島郡大和村方言、鹿児島県徳之島伊仙町方言、沖縄県今帰仁村謝名方言、名護市幸喜方言にしぼりこまれた。実際の調査においては、方言話者の減少、方言の使用場面の減少、方言の急速な変化が、難しい丈法の記述をさらに困難にした。被調査者の理解と協力によって、体系的な形態論の記述をすることができ、研究報告としてまとめることができた。調査の内容は、動詞、形容詞について活用の全体のシステム、各文法形式の作り方、文法的な意味・用法を、用例とともに記述することである。とくに形態論的なカテゴリーの中核をになう動詞を中心に調査・研究をすすめた。研究のおくれている文法の分野において、消滅の危機に瀕している方言のうち、6地点について文法の体系的な記述をすることができた。形容詞については、今回はまとまった調査資料の収集が可能な方言について、報告することとした。琉球語の研究は、今後、ますます調査が困難になり、資料が得られなくなると予想される。この研究では、用例をできるだけ収集し、今後の研究にも提供するものでありたいと考えた。また、当初、収集した資料のデータベース化と公開について考えていたが、これについては今後の課題としたい。
著者
坂井 隆一
出版者
沖縄大学
雑誌
沖大論叢 (ISSN:03871630)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.1-18, 1969-02-28
著者
須藤 義人
出版者
沖縄大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

弥勒芸能を図像学の視点から体系化するために、来訪神信仰に関する資料収集と調査を行った。弥勒芸能は「マレビト芸能」の一種であると位置づけ、他の来訪神(マレビト)を表象する仮面芸能との比較研究を進め、『マレビト芸能の発生』(芙蓉書房出版)という研究書にまとめた。
著者
佐竹 絵美
出版者
沖縄大学
雑誌
地域研究 (ISSN:18812082)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.213-222, 2006-03-31

この調査の目的は苗族の生活を聞き書きにより記すことにある。調査は2005年6月26日から7月2日までの期間で実施した。台江苗族の生活と年中行事、特にドラゴンボートレースについて記している。
著者
宮城 龍彦
出版者
沖縄大学
雑誌
沖縄大学人文学部紀要 (ISSN:13458523)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.57-66, 2002-03-31

本資料は,琉球政府時代の久志村における1965年7月から1966年6月までの社会教育主事勤務表(日誌)である。当時の久志村(現在名護市東部)は人口約6千人の稲作を中心とした農村であったが,1960年代には急速に砂糖きび作への転換が進んでいた。そして,村の南部(辺野古区)にはすでに米軍の基地とその周辺の街が形成されていた。日誌からは,社会教育主事は頻繁に字の公民館(字事務所を兼ねる)を訪問・指導し,地域社会との結びつきが強いことがわかる。また,社会教育主事の活動から,当時の社会教育行政が最も力を注いでいたことは「家庭教育学級」や「婦人会活動」,「教育隣組」等の生活に深く関わる事への指導であったことがわかる。
著者
中村 和雄
出版者
沖縄大学
雑誌
地域研究 (ISSN:18812082)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.3-8, 2005-06-30

毎年、沖縄大学構内のホルトノキに集まって鳴くクマゼミの鳴き声の騒音レベルを知るため、大学構内の3箇所のホルトノキに集まるクマゼミのそれぞれに標識再捕法を適用した。 その結果、Bailey法によって推定された雄個体数は、7月上旬から増加し始めて、中旬にピークに達した後、減少して、8月上旬には終息した。鳴き声のレベルの季節変動は、クマゼミが集まる3箇所のうち2箇所でほぼ雄個体数の変動に近似したが、1箇所では雄がほとんど終息したはずの8月上〜中旬でも相当高いレベルが見られた。この違いは、個体数の推定は12-15時に行ったのに、鳴き声のレベルの測定は7-10時に行ったことに起因すると考えられる。すなわち、クマゼミの雄は朝と昼で集まる場所を変更している可能性が考えられる。 音源から距離を変えてレベルの変化を測定した結果、7m離れると音源の約半分のレベルに減少し、27mでは0になった。 以上のことから、沖縄大学構内に集まるクマゼミの鳴き声は、7月中の午前中は騒音レベルが高いが、20m以遠ではほとんど問題にならないことが予想される。今後、学生や周辺の住民がクマゼミの鳴き声をどの程度、騒音として感じているかを知る必要がある。
著者
いき 一郎
出版者
沖縄大学
雑誌
沖縄大学地域研究所所報
巻号頁・発行日
vol.17, pp.19-26, 1998-09-26