著者
山内 裕 平本 毅
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織学会大会論文集 (ISSN:21868530)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.41-46, 2014-12-24 (Released:2014-12-18)
参考文献数
11

This study examines customer interactions at traditional-style sushi bars in Tokyo using an ethnomethodological and conversation analytic approach. Actual interactions were videotaped and analyzed in detail. The findings suggest that sushi chefs test customers by posing a difficult question, that less experienced customers show their orientation to whether their answer is appropriate, and that experienced customers produce a concise answer without such orientation. This is all done in a routine, mundane, and matter-of-fact way. The chefs define that their customers should be able to answer the question without any problem and customers demonstrate their competence through minimal and concise actions. The customer interaction is not only about exchanging information as to what the customers want but also about presentation and negotiation of selves. As an implication, it is briefly discussed that services can be seen as a struggle; beyond meeting customer needs and satisfying customers.
著者
小江 茂徳 櫻井 雅充
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
pp.20240401-1, (Released:2024-04-01)
参考文献数
30

本稿では,ジェンダーとそれに伴う権力関係の観点から,実践共同体における参加者の個別性に応じた学習を検討した。大手部品メーカーが工場内に設置した女性育児者専用生産工程における女性作業員の学習プロセスの事例分析を行い,参加のあり方の相対化,権力関係に根ざした有能さの構築,社会物質的な排除による包摂,という3つの理論的含意を明らかにした。
著者
清宮 徹
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.63-78, 2023-03-20 (Released:2023-06-02)
参考文献数
34

本研究は東日本大震災の被災地におけるディスコースを分析し,復興過程におけるアイデンティティの形成・変化がどのように相互扶助や協力関係を推進したか考察する.南三陸町をフィールドとして2013年から5年間の現地調査を実施し,被災地において喪失,感謝,利他的というディスコースが明確化された.これらディスコースの動態的連動がアイデンティティ・ ワークに関係し,その遂行性の視点から復興を推進するプロセスを考察する.
著者
藤原 綾乃
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.37-49, 2023-06-20 (Released:2023-07-12)
参考文献数
30

近年,大学等の研究機関から研究者がチーム単位で国内外の他の研究機関へ移動するケースが増加傾向にある.人材の組織内あるいは組織間移動に関する研究は多いが,組織間移動の形態(個人移動,チーム単位移動)に着目した研究は少ない.本研究は,大学等の研究機関に所属する研究者が海外の研究機関に移動する際におけるチームでの移動の決定要因を,研究者のインフォーマル及びフォーマルなネットワークの観点から明らかにする.
著者
田尾 雅夫
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.29-35, 1993 (Released:2022-07-15)

地方自治体における行政サービスの生産性を考える場合,その組織が本来的にハイコストであることを前提とすべきである.なぜならば,企業組織と比較すると,何のために,誰のためになど目標が具体的に提示されず,客観的な指標を確定することも難しいことがある.また,公正や正義のような規範に準拠したり,結果よりも,それを得る過程に関心が向けられがちでもある.効率的に組織経営ができないところが多々あるとされる.
著者
山下 裕子
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.75-86, 1993 (Released:2022-07-15)
被引用文献数
3

本論は,秋葉原の事例を通して,価格形成という市場プロセスを情報的相互作用という観点からとらえようとする試みである.「秋葉原価格」は,さまざまな商品の価格の差異と変動から,価格サーチや価格交渉を通して,マクロの需要,競争構造をとらえようとする個々の顧客や店の相互作用から,全体として生まれるマクロ秩序であるが,その形成プロセスには,「場」が重要な役割を果たしている.それは,「場」が,個々の価格の差異と変動とに意味を与える「関係情報」を共有させるような状況設定を提供するからである.
著者
浅川 和宏
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.4-12, 2019-06-20 (Released:2019-10-30)
参考文献数
29
被引用文献数
1

世界の経営研究の国際標準化の流れの中,日本の経営学は独自路線を維持しつつも変化の兆しも見え始めている.このような状況の下,日本の経営研究にとって目指すべき質の高い論文の要件とは何だろうか.本稿はこの論点を,日本的文脈に根差した知見と,国際標準を満たした水準の2つの側面から検討する.第一に,何よりもまず国際標準をクリアする必要がある点,第二に,その国際標準を満たした後は,むしろ日本的文脈に根差した知見は国際的な文脈で極めて有力な武器になりうる点を論じている.国際標準を満たしたうえで,日本独自のユニークな視点をフルに活かして世界に貢献しうる論文を,国際化時代における質の高い論文と考えたい.
著者
竹内 規彦
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.39-50, 2023-09-20 (Released:2023-09-30)
参考文献数
50

本稿では,人的資本を扱う戦略的人的資源管理(SHRM)研究の文献レビューから,既存研究の課題を整理するとともに今後の研究方向性について議論する.具体的には,株主価値向上モデルに基づく従来のSHRM研究において,人的資本の議論がより狭義の「認知的KSAOs」に限定されている点を明らかにした.さらに,経済的,社会的,環境的側面での価値向上を重視する持続可能性パラダイム下では,「非認知的KSAOs」を含む新たな人的資本の構成要素にも着目することや,既存の認知的KSAOsとの相互作用が重要となることを提起する.
著者
青島 矢一 金 柄式
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.4-19, 2023-06-20 (Released:2023-07-12)
参考文献数
21

日本の上場企業のデータを用いて余剰資源がR&D活動やベンチャー投資に与える影響を実証した.分析結果からは,(1)余剰はR&D活動やベンチャー投資を促進するが,その関係は一部非線形であること,(2)R&D支出の増大は非主力製品分野への資源配分比率を減少させること,(3)外国人株主比率はR&D支出を増大させるが,その効果は低減すること,(4)高い利益率はR&D活動への支出やベンチャー投資を抑制させることが示された.
著者
田中 辰雄 山口 真一 彌永 浩太郎
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.47-56, 2019-03-20 (Released:2019-06-16)
参考文献数
13
被引用文献数
1

本研究ではフリーミアム型コンテンツ産業の例としてモバイルゲームをとりあげ,そこでは多数の製品を出す分散型と,一つの製品に集中する集中型の二つの戦略が存在することを示した.当たり外れの多いコンテンツ産業において一つの製品に集中する戦略は異例であり,ネットワーク効果が働くフリーミアムならではの新しい戦略と考えられる.
著者
筈井 俊輔 吉澤 剛
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.4-17, 2023-03-20 (Released:2023-06-02)
参考文献数
30

2000年代以降,組織ルーチン研究においてはFeldman‌ &‌ Pentland(2003)をはじめとする,組織活動のダイナミクスを行為や実践の局面に収斂させる方法が主流になっている.本論文ではその問題点を指摘し,批判的実在論に基づいて組織ルーチンを捉え直す.そして,新たに得られた「重層的ダイナミクス」という視野が経営の実践にどのような示唆をもたらすのか,インフラ構築の切り口から考察する.
著者
片倉 もとこ
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.76-82, 1993 (Released:2022-07-15)

アラブ・ムスリム社会の人間関係を,主に日本社会の人間関係と対比し,個人と集団の主張がともになされる両極型の集団様式,開放的な人間関係のあり方,個人を所属集団の一因としてよりも個人の資格において認識する考え方,神の前にすべての人間が平等であるとする平等主義や実力主義をもととした,水平型の集団構造などについて考察する.
著者
高瀬 武典
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.4-11, 2006-06-20 (Released:2022-08-05)
参考文献数
14
被引用文献数
3

組織進化のモデルは変異-選択-保持の3段階からなる.組織変動研究に進化モデルが多く採用されてきた理由は,変異の段階に組織の自発的・創造的な側面を,選択の段階に環境からの影響を強調するというかたちで組織と環境の相互作用を変動分析に組み込むことが可能な点にある.進化モデルはいくつかの局面で「時間」の捉え方が重要な意味をもつ.本稿では時間について従来の循環型・線型の区別に加えて有界型・無界型の区別を導入し,組織=環境関係のモデルの精密化を図ると同時に現代日本に生じている組織進化の状況について考察する.
著者
関 満博
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.4-14, 2002-12-20 (Released:2022-08-03)
被引用文献数
2

日本の各地には興味深い工業集積地が広く成立している.そして,それは地域経済の主要な担い手としての役割を演じてきた.だが,全国の工業集積地は,地域内の大手企業のアジア移管などにより,現在,大きな曲がり角に直面している.本稿では,全国の工業集積地の中でも,精密機械工業の集積によって知られる長野県岡谷に注目していく.現状の岡谷の苦しみと,それに対する取り組みは,全国の工業集積地の先駆的なものであろう.
著者
玄田 有史 神林 龍 篠﨑 武久
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.18-31, 2001-03-20 (Released:2022-07-30)
参考文献数
25
被引用文献数
4

成果主義的賃金制度が労働意欲を刺激するには,どのような条件整備が必要だろうか.成果主義が導入された職場でホワイトカラー非管理職の労働意欲が高まるには,能力開発の機会拡大が重要である.それは,性別,年齢,学歴,職種等の個人属性,規模,社員増減,業績等の企業属性の違いを超えてあてはまる.能力開発と並び,仕事の分担や役割の明確化も労働意欲を高め,これらは職場全体の個々の能力を活かす雰囲気も改善する.
著者
佐藤 郁哉
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.4-15, 1998 (Released:2022-07-22)

ある種のアート組織は,個性と個人レベルの業績を何よりも強調する芸術活動をチームワークを重視する組織という器の中で行なわざるを得ないという点で,根本的な矛盾を内包するシステムである.本論文では,この「不可能なシステム」としての芸術団体の特質について,日本の現代演劇系の劇団の事例を通して検討する.日本の劇団が抱えるさまざまなレベルとタイプの葛藤やディレンマについては,組織環境と組織構造・組織過程をめぐる問題という文脈だけでなく,組織体および組織フィールド・レベルでのアイデンティティの拡散に由来する問題として把握可能であることが示される.
著者
竹内 倫和 竹内 規彦
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.132-145, 2011-03-20 (Released:2022-08-20)
参考文献数
39
被引用文献数
3

本研究では,社会的情報処理理論を基に,新規参入者が結ぶ上司及び同僚との社会的交換関係(LMX・TMX)の質が,組織社会化戦術と組織適応とを媒介する仮説が導かれ,その検討が行われた.新規参入者137名の縦断的調査(入社1・2年目) データの分析から,仮説が支持された.この結果から,入社初期段階での上司・同僚との社会的交換関係の重要性が示唆され,その理論的・実践的含意が議論された.
著者
阿久津 聡
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.14-29, 2002-09-20 (Released:2022-08-03)
参考文献数
95
被引用文献数
1

これまでブランドを研究対象としてきたのが主にマーケティングの分野だったこともあり,ブランド戦略の研究は経営戦略論の中で比較的関心の低いものだった.しかし,市場と組織の接点であるブランドの戦略を策定し実行することは,ポーターの競争戦略論に基づく「外から内」の え方と資源ベースの戦略論に基づく「内から外」の え方との間に生じる対立を弁証法的に綜合する作業と捉えることができる.戦略家が直面する矛盾やジレンマを乗り越えるために,ブランド戦略が広く経営戦略論の中で研究されることの意義について議論する.
著者
酒井 健
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.69-81, 2016-12-20 (Released:2017-08-28)
参考文献数
21

新技術の制度化を進める上で,制度的企業家が誰をどのように支援者にすればよいのかという問題は,既存研究では十分には解明されていない.制度的企業家は,技術を正統化する権力の構造を読み解いて,制度化の鍵となる支援者を見出し,その支援を引き出すためにフレーミングを通じて政治的に働きかけるのである.本論文では,支援者の選別とフレーミングによる政治的働きかけが新技術の制度化の成否を左右することを示す.
著者
関 満博
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.43-51, 2002-06-20 (Released:2022-08-03)
被引用文献数
1

中国広東省の深圳-東莞に至るエリアは,現在「世界の工場」と言われている.特に,OA機器に関する世界最大の生産地になっている.それを促した条件としては「広東型委託加工」「転廠」「無限大の労働力供給」「香港のビジネス環境の良さ」が指摘される.香港企業,台湾企業の進出が多い.日本勢としては,「深圳テクノセンター」と言われる組織が,興味深い活動をしている.