著者
長瀬 勝彦
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.58-68, 2005-09-20 (Released:2022-08-05)
参考文献数
16

意思決定の規範的研究には,人間の意思決定は事前に設定された何らかの理由に基づいておこなわれるという前提がある.しかしながら,そのような認識は多くの実験研究によって修正を迫られている.人間は意思決定に際して必ずしも事前の理由を必要としないし,事前と事後とで理由が入れ替えられたり,事後的に想起された理由が誤っていたり,他人に理由を説明するときにはそうでないときと異なる理由が採用されたりする.
著者
根来 龍之 後藤 克彦
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.40-51, 2005-12-20 (Released:2022-08-05)
参考文献数
10

本稿では,技術革新をきっかけとした既存品と代替品の代替構造を分析し,代替戦略の構築方法を提案する.まず,代替品と既存品の関係を4つに分類し,各分類毎に代替品企業の攻撃戦略と既存品企業の防衛戦略の定石を示す.次に,提案するフレームワークをICタグの事例に適用して,方法の有効性を例示する.代替品と既存品は,買い手のニーズをそれぞれの製品機能によって取り合う構造になっている.この機能に着目する考え方が本稿に一貫する着想である.
著者
恩蔵 直人
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.19-26, 2006-03-20 (Released:2022-08-05)
参考文献数
15

市場のコモディティ化に伴い,従来の市場参入戦略は大きな見直しを迫られているように思われる.特に経験価値など,顧客にとっての新たな価値に関する研究成果が蓄積されることにより,単に市場参入順位が遅いというだけで,後発ブランドとして処理できない状況に直面しつつある.本稿では,経験価値,品質価値,カテゴリー価値,独自価値といった4つの顧客価値に注目し,市場参入戦略の新しい枠組みについて考察した.
著者
小川 進
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.27-39, 2006-03-20 (Released:2022-08-05)
参考文献数
32

本稿は,近年台頭してきているユーザー起動法(User driven method:UD法)が持つ潜在力を引き出す条件につい て考察した.本研究は株式会社良品計画の事例を分析し,UD法を使って開発した製品が高い新規性と販売実績を実現できること,そのためにはいくつかの補完的資源と仕組み上の工夫が必要であることを明らかにした.最後に,UD法の実践においてブランド・コミュニティが重要な役割を演じる可能性があることを指摘した.
著者
西村 友幸
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.71-82, 2006-03-20 (Released:2022-08-05)
参考文献数
33

フォン・ヒッペルは,問題解決の場所を説明するために,期待利益仮説と情報粘着性仮説を提示してきた.本稿は,これら 2つの見かけ上距離のある仮説の統合を図る.具体的には, 「粘着的な知識(情報)は,供与するよりも内部活用するほうが,期待利益の点で有利である」という結論が導かれる.
著者
三品 和広
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.27-42, 2006-06-20 (Released:2022-08-05)
参考文献数
15

電機・精密機器業界の一部上場企業を,長期にわたる売上高営業利益率の降順に並べてみると,上位を占めるのは創業第一世代期にある企業で,下位を占めるのは創業第一世代が姿を消した後の企業であることがわかる.経営体制の属性は時の流れとともに必然的に変わりゆくが,それに応じて業績水準も変位する可能性がここに示唆される.本稿は,その可能性をデータで実証し,変化の早い企業と変化の緩やかな企業の間に横たわる差異を探索的に検証した.
著者
高尾 義明
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.69-78, 2006-06-20 (Released:2022-08-05)
参考文献数
40

組織メンバーの自発性発揮の典型としてコンプライアンス経営において注目される内部通報を取り上げ,自発性発揮をどのように捉えるべきかを理論的に検討する.組織市民行動との対比から内部通報の特性として複合性の増大を取り上げ,それを起点とした複合性縮減の可能性を指摘する.さらに,こうした組織メンバーの自発性発揮による複合性の提供を活用するための手がかりとしてルーマンによる相互浸透概念を提示する.
著者
椙山 泰生
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.52-66, 2005-12-20 (Released:2022-08-05)
参考文献数
29

コーポレートR&Dの技術的成果にとって,事業の構想やビジネス・アイデアの持つ意味を明らかにするのが本研究の目的である.この論点について探求するため,本論文では,R&Dプロジェクトを単位として調査を実施した.その結果,重量級PLの存在と事業部知識の反映の2要因がR&Dプロジェクトの技術的成果の向上に寄与していること,および技術的不確実性がモデレータ要因となっていることが確認できた.
著者
椙山 泰生
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.81-94, 2001-12-20 (Released:2022-08-03)
参考文献数
68

知識のグローバルな分散という状況下では,製品開発において,国境を隔て,地理的にも離れた場所で発生する知識を移転,展開する方法の開拓が重要な焦点となる.本稿では,既存研究を簡単にレビューした上で,知識の粘着性概念をこのグローバル化する製品開発を分析する視角として提唱する.その上で,今後の研究課題として,粘着性のメカニズムに関係する四つの方向性が示される.
著者
沼上 幹
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.32-44, 2000 (Released:2022-07-27)

本稿はまず合理主義と経験主義の対立を明らかにし,本来,その両者が相互に影響を及ぼしあって社会システムに関する認識の地平が拡大していくことを主張する.その上で近年の経営学的研究の見取り図を作成し,〈極端な実証主義〉的バイアスの位置づけを明確にする.さらに,そのバイアスの源泉あるいは促進要因として,①経営学研究に関する存在論・認識論的な見取り図の欠如,②文献研究否定運動,③経済学者の経営学領域への侵入,④大学院大学化が指摘される.
著者
藤原 雅俊
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.56-66, 2013-06-20 (Released:2013-11-07)
参考文献数
26
被引用文献数
3

本稿の目的は,消耗品収益モデルを採用した企業がジレンマを抱え陥穽に落ちるメカニズムを論じることである.具体的には「なぜインクジェット・プリンター産業において非純正カートリッジあるいは非純正インクが普及してしまっているのか」という問いを,収益モデルが社外のプレイヤーに与える社会的作用に主に注目して分析する.本稿の分析から,ビジネスモデルが引き起こす学習メカニズムを分析することの意義が強調される.
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.35-55, 1989 (Released:2022-07-14)

パネリスト潮田健次郎(トーヨーサッシ株式会社社長)三戸 公(中京大学商学部教授)今井賢一(一橋大学商学部教授)植之原道行(日本電気株式会社副社長)司会 伊丹敬之(一橋大学商学部教授)
著者
沼上 幹
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.59-69, 1989 (Released:2022-07-14)

この論文の目的は,組織と戦略と技術の三つ巴の相互進化プロセスを捉えるための概念的な足場を構築することにある.まず,技術進化が市場の需要によって導かれると考える市場プル理論と,技術自体の論理によって導かれると主張する技術プッシュ理論を対比させながら検討することから議論を始める.その上で,技術進化が企業進化を一方的に規定するのではなく,企業による概念創造活動が技術進化の方向を規定すると考える構想ドリブン・モデルを検討する.
著者
上田 義朗
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.39-49, 1989 (Released:2022-07-14)

日本企業の役員兼任によって生じる企業間ネットワーク・人的ネットワークは,その存在が確認されているにもかかわらず,その意義は未だに明らかではない.本稿は,ネットワークの研究動向のなかに自らを位置づけ,次に,役員兼任ネットワークの断絶と修復に関するアメリカの先行研究2編を紹介する.さらに,日本の都市銀行3社における役員兼任の実態が具体的に議論される.これらによって,日本での今後の体系的な実証研究の手がかりを提示する.
著者
一小路 武安 勝又 壮太郎 中野 暁 山口 真一 生稲 史彦
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.34-48, 2022-03-20 (Released:2022-04-20)
参考文献数
53

本研究ではコミュニケーションプラットフォームアプリの製品段階ごとの戦略を検討した.Latent Dirichlet Allocationの併用状態を明らかにしたうえで,機能や用途のような属性も踏まえてアプリを整理し,同じバスケット内の補完関係を精緻化して議論を行った.結果として覇権アプリでは機能的・性質的な補完,成熟・成長アプリでは用途的補完に加えて成熟に至る過程における関係するアプリの切り替えの可能性が示された.
著者
中田 行彦
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織学会大会論文集 (ISSN:21868530)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.155-161, 2021 (Released:2021-08-21)
参考文献数
14

The use of EVs is accelerating around the world because CO2 emissions are zero while driving. However, considering the life cycle, the “inconvenient truth” that the decarbonization effect of EV is limited emerges. In addition to analyzing the organizational behavior of companies toward this “inconvenient truth,” the “inconvenient truth” were examined and considered new issues. The CO2 emissions seen from the life cycle of the automobile were estimated from the standpoint of a third party using published data. As a result, it was verified that “the decarbonization effect of EV is limited.” The most important issue is that “EVs need to significantly reduce CO2 during storage battery manufacturing.” For that purpose, it is necessary to improve the manufacturing process, materials, and structure of Lithium-Ion Battery (LIB). In addition, “promoting renewable energy” is an essential condition for decarbonization in all industries and products. In order to achieve decarbonization, it is essential to face the “inconvenient truth” and challenge and overcome it.
著者
尾形 真実哉
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.55-68, 2015-03-20 (Released:2015-06-19)
参考文献数
21

本稿の目的は,新卒採用活動(以降,採用活動)に焦点を当て,そこで重要な役割を果たす自社が求める人材が多く集う良質な応募者集団を形成するために必要な組織内部の要因(組織要因と部門要因)は何かを検討することにある.調査は日本の上場企業に対するインタビュー調査と質問票調査の双方を用いて得られたデータを基に分析を行った.分析結果は,日本企業の新卒採用活動に関する理解を促進するものである.
著者
中川 功一 服部 泰宏 佐々木 将人 宮尾 学
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.38-50, 2020-06-20 (Released:2020-08-20)
参考文献数
25

日本の経営学者たちは,いま様々な分断のただ中にある.学会を挙げて進める「組織調査」プロジェクトを推進する中では,それらの分断の輪郭が明瞭に浮かび上がってくるとともに,プロジェクトの意義がまさにその分断を繋ぎ合わせることにあることが見えてきた.プロジェクトリーダーによる内部アクションリサーチの成果という形で,その分断のあらましと,我々がいかにそれを解決しようとしているのかを議論する.
著者
吉岡(小林) 徹
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.31-40, 2021-09-20 (Released:2021-10-15)
参考文献数
61

イノベーション研究の定量研究は,そのデータ源が多様化しつつある.本稿は,イノベーションの計測,イノベーションをめぐるアクター間の関係性の操作化の新潮流を,2010年以降に行われた国内外のイノベーション研究のレビューから描き出した.とくに,イノベーションの計測におけるテキスト情報の利用,そして,ユーザーの手によるデータの利用,また,アクター間の関係性を計測可能なデータの利用が,イノベーション研究の展開を豊かにしている傾向がうかがわれた.