著者
小林 和彦 辻下 守弘 岡崎 大資 甲田 宗嗣
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.303-308, 2011 (Released:2011-06-07)
参考文献数
16
被引用文献数
1

〔目的〕担当入所者への過剰介助から廃用性の機能低下を促進させる可能性の高い看護職員1名に応用行動分析学の技法を用いたベッドから車椅子への移乗介助の方法を指導し,その効果を分析することで行動論的な介助指導の意義と課題について検討した.〔方法〕対象は介護老人保健施設に勤務する介助経験豊富な正看護師で,彼女が日頃実際に介助や介助指導を行っている高齢障害者に対するベッドから車椅子への移乗介助に際し,応用行動分析学の技法を適切に用いた介助が行えるようになることを指導目標として講義形式による指導と実践指導を4ヶ月間にわたり施行し,指導効果を単一事例実験計画法により分析した.〔結果〕実践指導後において適切な介助が増加した.また,介助対象者自身もベースライン測定時には大幅な過剰介助での課題遂行であったのが必要最小限に近い介助での課題遂行に移行し,これらはフォローアップにおいても維持された.〔結語〕より少ない介助で入所者の行動を引き出せるようになり臨床的に意義ある指導効果が得られたと考えられるが,指導内容の理解度の判定や指導効果の長期的維持等,今後における課題も残された.
著者
江村 健児 松崎 太郎 細 正博
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.345-351, 2007 (Released:2007-08-18)
参考文献数
43
被引用文献数
1 1

目的:胸鎖関節には関節円板が存在し,関節円板によって胸鎖関節は球関節の機能を持つとされている。本研究の目的は,胸鎖関節の関節円板を病理組織学的に検討することである。方法:剖検症例において摘出されたヒト胸鎖関節円板を,光学顕微鏡を用いて病理組織学的に観察した。結果:胸鎖関節円板に断裂(tear),粘液様変性(myxoid degeneration),軟骨細胞の集簇化(chondrocyte cloning)等の所見を認めた。また関節円板の表面が,表面にほぼ平行して層状に剥離する像をよく認めた。他の関節円板との比較では,解剖学的,発生学的に関節円板と同一と考えられる膝半月板の病理組織像に関する過去の報告と今回の結果が類似していたが,層状剥離の記述は見られず,これが胸鎖関節に特異的なfibrillationの表現である可能性が示唆された。
著者
板子 伸子 潮見 泰藏
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.31-35, 2006 (Released:2006-05-24)
参考文献数
10
被引用文献数
1 2

老人保健施設に入所する高齢障害者54名に対して,Visual analog scale(以下VAS)による主観的健康感の調査を行い,幸福感や運動機能,認知機能,意欲との関連性を検討した。結果は,VASによる主観的健康感が高い群の方が,中等度の群に比べてFIM認知機能が低い傾向が認められた。また,PGCモラールスケールとVASによる主観的健康感は弱い相関が認められた。これらの結果から,高齢障害者に対してVASによる主観的健康感を聴取する際には,認知機能の客観的評価とともに解釈する必要性はあるが,幸福感だけではなく健康感を含めることで,より具体的なリハビリテーションの目標設定が可能になるものと推測された。
著者
永崎 孝之 岡田 裕隆 甲斐 悟 高橋 精一郎
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.25, no.6, pp.867-871, 2010 (Released:2011-01-28)
参考文献数
13
被引用文献数
2

〔目的〕吹矢トレーニングが呼吸機能に及ぼす影響を呼気筋トレーニングと比較して,検討することである。〔対象〕健常者19名。〔方法〕無作為に吹矢群10名と呼気筋トレーニング群(呼気筋群)9名の2群に分け,吹矢群には吹矢トレーニング,呼気筋群にはスレショルドPEPを用いた呼気抵抗負荷トレーニングを実施し,呼吸機能の肺活量,努力性肺活量,一秒量,一秒率,呼気最大流速(PEF),呼気最大口腔内圧(PEmax),吸気最大口腔内圧を測定し,各群内および群間で比較した〔結果〕吹矢群はPEF,PEmaxの数値が増加し統計学的有意差を認めた。その他の呼吸機能は差を認めなかった。呼気筋群はPEF,PEmaxの数値は増加したものの統計学的有意差を認めなかった。その他の呼吸機能についても差を認めなかった。また吹矢群と呼気筋群の呼吸機能の比較おいては統計学的有意差を認めなかった。〔結語〕吹矢トレーニングはPEF,PEmaxを増加させ,呼気筋トレーニングと同様の影響を呼吸機能に与えることが示唆された。
著者
林 悠太 久保 晃
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.143-146, 2010 (Released:2010-03-26)
参考文献数
4
被引用文献数
1 1

〔目的〕本研究の目的は,高齢入院患者の生活意欲とADL,体格との関連を明らかにすることである。〔対象〕対象者は,Functional Independent Measure(以下FIM)の食事項目が5点以上であった高齢入院症例71例(回復期リハ病棟:男12例,女24例,79.6±11.1歳 慢性期病棟:男10例,女25例,83.2±7.6歳)である。〔方法〕生活意欲はVitality Index scoreより求め,8点以上を高得点群,7点以下を低得点群の2群に分類し,FIMとBody Mass Index(以下BMI)を求めて分析した。〔結果〕その結果,回復期ではFIMすべての項目で群間に有意差が認められ,慢性期では運動項目の整容・トイレ動作・排泄項目とすべての認知項目,BMIに有意差が認められた。〔結語〕回復期ではADL能力全般が,慢性期では身だしなみや排泄といった人間としてごく当たり前の動作能力が,生活意欲と関連してくると考えられる。
著者
村田 伸 大田尾 浩 村田 潤 堀江 淳
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.101-104, 2011 (Released:2011-03-31)
参考文献数
16
被引用文献数
6 4

〔目的〕本研究は,Frail CS-10の有用性を検討するために,ADLとの関連について検討した。〔対象〕虚弱もしくは軽度要介護高齢者159名(男性65名,女性94名)とした。〔方法〕Frail CS-10と大腿四頭筋筋力について,FIM-MならびにFIM-M下位項目との関連をスピアマンの順位相関係数を用いて性別毎に検討した。〔結果〕Frail CS-10と大腿四頭筋筋力は,男女ともに今回評価したFIM-MおよびすべてのFIM-M下位項目とそれぞれ有意な相関が認められた。ただし,その相関係数から関連の強さを判断すると,FIM-Mのすべての項目でFrail CS-10の方が大腿四頭筋筋力よりも関連が強かった。〔結語〕従来から下肢機能の代表値として用いられている大腿四頭筋筋力よりもFrail CS-10の方が,虚弱高齢者のADLとより関連することが示唆された。
著者
菅沼 一男 丸山 仁司
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.23, no.6, pp.773-776, 2008 (Released:2009-01-28)
参考文献数
11

[目的]本研究は,健常人を対象とし広範囲侵害抑制調節(以下DNIC)が立位体前屈の指床間距離に及ぼす即時的効果について検討した。[対象]対象は,健常者40名(男性20名,女性20名),平均年齢20.7歳であった。「方法」方法は1日に30秒程度の間隔をあけ3回の連続した立位体前屈の指床間距離を測定することとし,各測定日間の相互の影響を考慮し,各測定日の間隔を3日間あけ,1日目,5日目,9日目に測定を行った。DINCの介入による影響を検証するために5日目の2回目のみ,手の背側骨間筋に圧迫刺激による痛み刺激を与えるDNICの介入を行った。[結果]1日目および9日目の測定値は1回目から3回目の各測定値間には有意差はみられなかった。しかし,5日目においては,男女合わせた測定値が1回目から3回目の順に-8.3±7.0 cm,0.1±6.1 cm,-0.4±6.0 cmであり有意差がみられた。[結語]DNICの介入により,立位体前屈の指床間距離の改善が認められ,少なくとも介入時および直後まで効果の持続が確認された。
著者
亀尾 徹
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.369-374, 2008 (Released:2008-07-28)
参考文献数
8

多くの人々が運動やスポーツを行っているという現状から,一人ひとりの抱くスポーツ医学に対する要求も多岐にわたる。スポーツ医学に貢献する理学療法士としては,クライアントの医学的ニーズに応えるべく,疾患名に依存した評価・治療体系ではなく,それぞれの個人の特性をふまえた患者中心の治療を展開することを求められている。これを達成するひとつの手段として,健全なクリニカルリーズニングの適用があげられる。本セミナーでは診断的推論と物語的推論を通して医学的問題点と同時に「人」を理解し,その結果の集積である。クリニカルパターンを構築し,治療に反映させる基本的思考過程を提示する。
著者
中澤 理恵 坂本 雅昭 草間 洋一
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.119-123, 2007 (Released:2007-04-10)
参考文献数
21
被引用文献数
7 3

本研究の目的は,中学生サッカー選手における身長成長速度曲線の成長区分(phase)と下肢筋の柔軟性との関係について検討することである。対象は中学生男子サッカー部員107名とし,傷害の有無や身長成長速度,下肢筋柔軟性について調査・測定した。その結果,体幹・下肢に傷害のない70名のphaseの内訳は,phase I 4名(phase I群),phase II 28名(phase II群),phase III 38名(phase III群)であった。また,phase II群およびphase III群間で下肢筋柔軟性を比較した結果,phase III群の右腸腰筋,左大腿四頭筋,右ハムストリングス,左下腿三頭筋が有意に低下していた。これは,身長の成長促進現象に伴う骨および筋・腱の成長の不均衡の長期的な蓄積およびサッカーの競技特性のひとつであるキック動作が影響を及ぼしたものと考える。今後,縦断的に身長成長速度曲線と筋柔軟性の関係を検討していくことの必要性が示され,成長期スポーツ障害予防への関与の可能性が示唆された。
著者
谷本 正智 水野 雅康 塚越 卓 田村 将良 磯山 明宏 渡邉 晶規
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.383-390, 2008 (Released:2008-07-28)
参考文献数
33
被引用文献数
1 1

〔目的〕不動による関節拘縮後の廃用性筋萎縮に対する持続伸張運動が電気生理学的所見に及ぼす影響を明らかにするため実験を行った。〔対象・方法〕8週齢のWistar系雄ラット30匹を無処置の対照群5匹(以下,C群)と膝関節を4週間内固定し拘縮モデルを作製する実験群25匹に分け,さらに実験群は,1)4週間の不動終了直後にデータを測定した廃用群(以下,D群),2)不動期間終了後,4週間の通常飼育後にデータを測定した4NS群,ならびに8週間通常飼育後にデータを測定した8NS群,3)不動期間終了後,通常飼育に加え徒手的な持続伸張運動を4週間実施した後にデータを測定した4S群,ならびに8週間持続伸張運動を実施した後にデータ測定する8S群の5群に分けた。各期間終了後,膝関節可動域,ハムストリングス筋線維径,電気生理学的所見として単一筋線維筋電図(Single Fiber Electromyography: 以下,SFEMG)の指標を用いて経時的変化を検討した。〔結果〕電気性理学的改善は,4S群と8S群にて有意に持続伸張運動の効果を認め,膝関節可動域と筋線維径は8S群のみに有意な改善を認めた。
著者
陶山 哲夫
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.99-106, 2006 (Released:2006-05-24)
参考文献数
7
被引用文献数
1 3

障害者スポーツは近年益々盛んになり,スポーツ人口が増えている。医療スタッフは勿論のこと,コーチ,トレーナーの増員,設備や管理洋式などの改訂,社会の理解と啓蒙などが今後益々必要とされている。ここでは,障害者スポーツの意義,リハビリテーションスポーツ,生涯スポーツ,競技スポーツ,パラリンピックの紹介などについて述べる。