著者
戸島 雅彦 西谷 幹雄 萩原 良治
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.268-276, 2001-04-18
被引用文献数
11

脳梗塞発症後3日以内に入院した157例に初期治療からリハビリテーションまで施行し,早期自宅退院を阻害する要因を検討した.症例を入院期間と退院先より群分類し,年齢,性比,病型,脳卒中既往歴,同居家族数,入院時機能障害,退院時能力低下,経時的FIMの8因子を各群間で比較した.長期入院した自宅退院群は短期入院群に比して4週目のFIM総合,運動合計,浴槽,階段でのみ有意に低得点で,この差が退院時期決定に関与した.長期入院した自宅退院群と療養施設転院群との間には,同居家族数,FIM 総合,移動,社会的認知で有意差を認めた.入院期間の短縮には予後予測や患者家族への情報提供が大切であると考察した.(リハ医学 2001;38:268-276)
著者
佐直 信彦 中村 隆一 細川 徹
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 : 日本リハビリテーション医学会誌 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.7, pp.541-547, 1991-07-18
被引用文献数
20

退院後1年以上経った歩行可能な在宅脳卒中愚考54例を対象として,10m最大歩行速度(MWS)と75項目の日常生活活動遂行の関係を検討した.性別,年齢,麻療側,罹病期間,家庭内地位,MWSを説明変数とし,各項目の遂行頻度を目的変数として,数量化I類を用いて分析した.MWSが第一義の決定因として選出された活動は27項目であった.身辺処理や新聞を読むなどの静的活動はMWSの速度とは無関係であった.20m/分以上で掃除,買物などの家事,趣味や旅行などの余暇活動,40m/分以上で政治,文化講演会参加,80m/分以上では老人などの世話を行っていた.MWSは在宅脳卒中患者の日常生活活動の予知に有用である.
著者
川平 和美 東郷 伸一 田中 信行
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 : 日本リハビリテーション医学会誌 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.9, pp.737-746, 1992-09-18
被引用文献数
1 1

リハビリテーション施設職員259名と学生119名に障害者の性に関するアンケート調査を行った.1)職員の障害者の性に関する知識と認識を,全体で比較すると,男女とも,専門教育を受けている職種,若年者,未婚者が,そうでない者より高かった.2)女性職員の性知識と認識に関連する要因を分散分析を用いて検討した.職種と年齢は関連したが,結婚の有無,勤務年数は関連がなかった.3)性知識と認識は正相関した(学生を含めた対象全体:Y=2.55+0.27X, r=0.42, P<0.01, 女性職員:Y=1.90+0.36X, r=0.52, P<0.01, 男性職員:Y=2.79+0.24X, r=0・30, NS).つまり,性知識が高まるほど障害者の性への認識が高まり,女性は男性よりこの傾向があきらかだった.4)性に関する研修は,職員の半数も受けておらず,研修の機会は充分でなかった.
著者
後藤 杏里 佐々木 信幸 菅原 英和 角田 亘 安保 雅博
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 : 日本リハビリテーション医学会誌 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.242-247, 2008-04-18
被引用文献数
1

We report a 47-year-old right-handed male patient with pure word deafness after suffering an intracerebral hemorrhage. He had been working as a high school teacher before the onset of his stroke. He was emergently admitted to our hospital due to left putaminal hemorrhage and treated conservatively after admission. The patient's neurological findings showed that although his auditory comprehension was severely impaired, he was still able to communicate using written language. Pure-tone audiometry didn't detect any sensorineural hearing impairment. After the diagnosis of pure word deafness was clinically made, we educated the patient and his family, as well as the associated medical staff at our department, about this condition so that they could understand his pathological situation. In addition, we introduced a rehabilitation program for lip-reading and showed him a technique for using articulatory voice production in usual conversation. As a result of our attempts, he developed the ability to communicate using lip-reading skills after 2 months of rehabilitation and successfully returned to his previous work because of the communicative competence he acquired. We also make some proposals for helping other patients with auditory agnosia to return not only to their regular daily activities but also to return to gainful employment, as patients with this condition seem to have special difficulties benefiting from the present welfare service system in Japan.
著者
横山 知子 鶴川 俊洋 川平 和美 田中 信行
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 : 日本リハビリテーション医学会誌 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.399-404, 1999-06-18
被引用文献数
5 5

脳卒中を中心とした神経系疾患患者25例を対象として,8週間の運動訓練のみを行った群(通常のリハ訓練+サイベックスを使用した膝の屈伸運動)と,4〜8週目に蛋白同化ホルモン(オキシメトロン10あるいは20mg/日を内服)を併用した群の2群に無作為に分けて,非麻痺側下肢の筋力及び筋肥大に対する蛋白同化ホルモンの効果を検討した.下肢の運動訓練は両群ともサイベックス6000を用いて,座位で等速性(60°あるいは180°/秒)の膝屈伸運動を,適宜休憩を入れながら,1日100〜200回,週5日,8週間行わせた.蛋白同化ホルモン併用群では,非投与時に比べて等速性筋力は低速度・高速度ともに,また伸筋,屈筋とも筋力の増加は有意に大きかった.等尺性筋力も伸筋,屈筋ともに増加し,またCT上での大腿筋断面積も有意に増加していた.一方,筋力トレーニング単独群では,全般的に筋力の増加傾向は認められたが,ほとんどの場合で有意ではなく,大腿断面積も明らかな増加を認めなかった.副作用として,AST,ALTの上昇がAS併用した13例中5例,Kの上昇を2例に認めたが,全例で薬剤中止後,正常に戻った.
著者
藤原 俊之 園田 茂 三田 しず子 岡島 康友 木村 彰男 千野 直一
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.253-258, 2001-04-18
参考文献数
15
被引用文献数
2

Functional Assessment Measure (FAM)日本語版を外傷性脳損傷(TBI)患者に用い,Short Behavior Scale (SBS), Mini-Mental State Examination (MMSE), Disability Rating Scale (DRS)との比較を行った.またFAMを用いて,脳血管障害患者とのADL構造の比較を行った.FAM合計点とSBS, MMSE, DRS得点とは統計学的に有意な相関を認めた.また項目別自立度の検討ではTBI群では特に脳血管障害(CVD)群と比較して,問題解決,記憶,見当識,注意,安全確認の項目での自立度が低く,いわゆる認知機能の障害がADLに強い影響を与えていることが客観的に明らかとなった.FAMはTBI患者の能力低下の評価法として有用と考えられた.(リハ医学 2001;38:253-258)
著者
園田 茂
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 : 日本リハビリテーション医学会誌 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.123-132, 1995-02-18
被引用文献数
20

脳卒中患者のための機能評価法Stroke Impairment Assessment Set(SIAS)の体幹, 高次能機能, 感覚項目の信頼性および妥当性を検証した.検者間信頼性は一致率(0.52〜0.85), kappa(0.30〜0.87)と高かった.妥当性検証に関して, SIASの座位腹筋項目は従来の臥位腹筋検査と高い相関があった(r=0.67).視空間認知項目と線分二等分テストの順位相関は0.45となった.視空間認知, 言語項目は, 能力低下を示す機能的自立度評価法FIM認知項目群と相関していた.退院時FIM運動項目合計の予測は, 入院時FIMによる予測(R^2=0.56)より, FIMにSIASの諸項目を加えることでさらに正確に予測できた(R^2=0.60).以上よりSIASは信頼性, 妥当性のある評価法と考えられた.
著者
細川 徹 坪野 吉孝 辻 一郎 前沢 政次 中村 隆一
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 : 日本リハビリテーション医学会誌 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.399-408, 1994-06-18
被引用文献数
28

65歳以上の地域高齢者2,591名を対象に,在宅生活における機能的状態を評価する指標として拡大ADL尺度を構成した.この尺度はバーセル・インデックス10項目を自立・介助の2値変数に変換したものと,老研式活動能力指標の手段的自立因子5項目を分離したものとを合成した2次的指標で,GuttmanおよびMenzelの基準を満たす1次元階層性尺度である.Mokkenの項目別尺度化係数により尿便禁制などを除外した12項目版は高い内的整合性を示した(KR-20信頼性係数0.9).この尺度の得点は加齢に伴い有意に減少し,性差はなく,バーセル・インデックスや老研式活動能力指標に比べて高齢者の健康状態(主観的健康状態と通院治療の有無)の差異を敏感に反映するものであった.

2 0 0 0 OA 新年のご挨拶

著者
江藤 文夫
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 : 日本リハビリテーション医学会誌 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.19-20, 2005-01-18

新年明けましておめでとうございます 昨年はリハビリテーション(以下,リハ)科専門医の広告に係る申請が厚生労働省により受理されました.日本専門医認定制機構の中では基本領域診療科の一つとしてリハ科の認知度の高まりを感じます.同時に,国民の健康の維持と向上に寄与するリハ医療の充実と普及のために専門医制度をさらに整備し,期待に応えるため一層の努力が必要です.わが国の専門医制度の確立に向けた活動は1981年に学会認定制協議会の発足をもって本格化しましたが,未だ数多くの課題を抱えています.リハ科専門医の社会的認知は,
著者
小口 和代 才藤 栄一 水野 雅康 馬場 尊 奥井 美枝 鈴木 美保
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 : 日本リハビリテーション医学会誌 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.375-382, 2000-06-18
被引用文献数
51

機能的嚥下障害スクリーニング法として,「反復唾液嚥下テスト」(the Repetitive Saliva Swallowing Test: RSST)を考案した.30秒間の平均空嚥下回数は若年者(N=30)で7.4回,高齢者(N=30)で5.9回,30秒間の平均人工唾液嚥下回数は若年者で7.7回,高齢者で6.2回であった.空嚥下,人工唾液嚥下ともに高齢者は若年者より有意に嚥下回数が少なかった.一方,若年者,高齢者それぞれの空嚥下と人工唾液嚥下の嚥下回数には有意差を認めなかった.嚥下運動の確認は喉頭挙上の触診で可能であった.高齢者の積算嚥下時間(検査開始から嚥下完了時点までの時間)上限より,RSST 2回/30秒間以下が嚥下障害のスクリーニング値として設定できた.
著者
大塚 友吉 道免 和久 里宇 明元 園田 茂 才藤 栄一 椿原 彰夫 木村 彰男 十野 直一
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 : 日本リハビリテーション医学会誌 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.10, pp.731-735, 1994-10-18
被引用文献数
10

60歳以上の高齢者において握力測定法とその正常値について検討を行った.握力測定法については,握力計の握りの幅が5cm前後であれば問題なく,また体位については,座位または立位で測定すると臥位での測定に比べ有意に大きな測定値が得られた,そこで,疾患群への応用を考慮して,座位で,握力計の握り幅は5cmとし,被験者による若干の修正を許可して,60歳以上の健常高齢者における握力の正常値を求めた.男性に比べ,女性において,加齢の影響が強い傾向にあった.また,対象を運動群と非運動群とに分けた場合,前者では,後者より握力が有意に強く,ゲートボールなど運動を行うことが,高齢者の握力維持に有効である可能性が示唆された.
著者
橋本 光宏 小林 健一 岡本 弦 西垣 浩光 吉永 勝訓
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 : 日本リハビリテーション医学会誌 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.11, pp.912-919, 2001-11-18
被引用文献数
5

手術を行った頸髄症56例に対し簡易上肢機能検査(STEF)を行い, 術前後の上肢運動機能を評価した.STEFは術前後で有意に改善し, 手術およびリハビリテーションの効果を評価するのに有用であると思われた.10項目の検査のうち特に検査8〜10において, 術前は低値を示したが, 術後の改善が著しかった.これらの検査は母指と示指による細かいもののピンチ動作を要求され, 手指の巧緻運動性を定量的に評価するのに有用であると思われた.STEFとJOA scoreの上肢運動機能項目は術前はSpearmanの相関係数0.70(p<0.01)にて, 術後は0.55(p<0.01)にて相関を示した.頸髄症の上肢運動機能評価において, STEFは客観的であり, 左右の上肢機能を別々に評価できるという長所がある.