著者
松原 洋子 石川 准 菊池 尚人 立岩 真也 常世田 良 松原 聡 山口 翔 湯浅 俊彦 青木 千帆子 池下 花恵 植村 要
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

視覚障害等により印刷物の読書が困難なプリント・ディスアビリティのある学生の修学支援では、資料のデジタル化とICTインフラの活用が有効である。しかし日本の高等教育機関の図書館では対応が進まず、大学図書館の情報アクセシビリティに関する研究の蓄積も乏しかった。本研究では、大学等の高等教育機関における読書環境のアクセシビリティについて、公共図書館や海外事例を参照しながら制度・技術の両面から総合的に検討した。その結果、印刷物のデジタル化では未校正データの提供も一定有効であること、電子図書館サービスにおいてはコンテンツの形式以上にウェブアクセシビリティが重要であること等が明らかになった。
著者
竹本 信介
出版者
立命館大学
雑誌
立命館法學 (ISSN:04831330)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.3, pp.1573-1686, 2011
被引用文献数
2
著者
北村 順生
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

地域の映像アーカイブを教育目的で活用するための方策についての知見を得た。授業実施時の方法論としては、映像と合わせたモノの併用や多様な年代の参加の有効性を確認した。地域の映像アーカイブを教育現場で活用する可能性としては、学校現場と地域社会との連携を深めていくこと、生徒たちの関心や意欲を引き出す契機となること、教育のICT化の進展にともないデジタル教材の一環として活用すること、映像メディアに関するリテラシー涵養に結びつくこと、などについて可能性が示唆された。一方で、技術的環境の整備、適応する授業デザインの精緻化、教材となる映像資料のパッケージ化、などの面で実践的な課題があることが明らかになった。
著者
小椋 秀樹
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は,現代語表記のゆれの実態について,『現代日本語書き言葉均衡コーパス』に収録された複数のレジスターを対象にした調査から明らかにするものである。現代語表記のゆれの実態として,次のようなことが明らかとなった。(1) 統語的複合動詞の後項動詞の表記の変遷を調査したところ,漢字表記が増加する傾向が観察された。(2) 外来語については,長音の表記に関するゆれが多く見られた。具体的には,語末長音のゆれと,原語の二重母音[ei]の表記のゆれが観察された。
著者
箱田 徹
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究はミシェル・フーコー(1926-1984)の1960年代後半から1970年代にかけての著作を分析し、不連続性や差異を強調する独自の方法論が明確化される過程を論じた。とくにフーコーが言説分析にかかわる諸概念を実践の問題系に位置づけたことに着目し、この時期以降のフーコー思想にとって政治的主体性の問いが重要性を占めていくことを指摘した。また一連の思索の展開が「六八年五月」と深い関わりがあることも示した。
著者
堀井 悟志
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では,日常的な予算管理実践からどのように新製品開発戦略が創発するのかを実践論的研究によって検討した。その結果,集約的財務指標,新製品開発の短期化のもとで予算管理プロセスを議論の場として用いることで,会計と行動計画のリズムの調和の乱れをきっかけに戦略的適応,製品イノベーションが可能になっているだけでなく,予算管理プロセスが新製品開発の基礎である人的資本の構築の場を提供し,組織能力を向上させていることが明らかになった。そのうえで,予算管理の運用においては管理会計リテラシーが重要であることを指摘した。
著者
佐藤 嘉一 中川 勝雄 森田 浩平 池内 靖子 木田 融男 佐々木 嬉代三 奥川 桜豊彦
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1994

本研究は国内外の社会移動に注目し、(1)移住の動機・誘因、(2)移住後の生活実態、(3)UターンやJターン現象にみられる「帰郷意識」、(4)移住に伴うアイデンテイテイ問題などの実証的研究によって、社会移動についての社会学的分析を試みたものである。具体的には、戦前・戦後を通じて海外や本土に大量の移民・出稼ぎ者を供給してきた沖縄県の北部地域である今帰仁村を対象地域に選定し、現地の移住体験者と移住先の今帰仁村出身者についての綿密な聞き取り調査を実施した。本研究によって明らかにされたことは、次のような諸点である。第1に、移住の誘因としては後進的農業地域ゆえの現地での雇用機会の少なさがあるにしても、個人レベルに立ち入ってみると大きな夢や高い理想の実現をめざそうとする気概をもって出て行く者も少なからず存在した。第2に、移住の経路として先行する移住者の親戚・知人を頼る「呼び寄せ」を経由する者が大半である。第3に、にもかかわらず多くの移住者は沖縄文化と異質の異郷にあってさまざまな苦労を体験することで、ある者は移住先で郷友会に入り沖縄文化を享受し、ある者は再び帰郷している。その結果、母村と各地の郷友会の濃密な社会的ネットワークが形成される。第4に、この社会的ネットワークが母村を支え人口増、農業振興など本土農村と異なる様相がみられる。第5に、移住先で郷友会に組織されなかった者のなかには、異郷に適応できず社会的転落を余儀なくされる事例があり、また沖縄本島においてもハンセン病患者に対するような深刻な差別があったことも看過できない。第6に、移住者一世によって形成されてきた社会的ネットワークは近年世代交代の局面を迎えており、一世から二世・三世への継承のありかたが課題となっている。
著者
寺脇 拓
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本年度は,大きく分けて二つの実証分析を行った.第一に,昨年度検討した,里山保全に取り組むボランティアがその里山から受ける純便益を計測するための基礎理論をもとにして,そこから実際にその純便益額を計測することに取り組んだ.この分析では,まず兵庫県中町の「観音の森」におけるボランティア活動データを用いてボランティア労働供給関数を推定し,その曲線が旅行費用については右下がりとなるが,賃金率については右上がりの形状をもつことを明らかにした.そして,その旅行費用の係数推定値を用いてボランティア活動一回当たりの純便益を計算した結果,それは747円となった.さらに年間の延べ参加者数153人を乗じることにより,ボランティア活動者が里山から受ける便益は,年間11万4248円と推定された.第二に,昨年度の現地調査の結果を踏まえて,大津市仰木地区の里山を事例としたCV調査を行い,里山が周辺住民に及ぼす便益を計測することに取り組んだ.本調査の一つの特徴的な点は,圃場整備されていない棚田をもつ里山に対する支払意志額(WTP)と圃場整備された棚田をもつ里山に対するWTPをそれぞれ質問したところである.圃場整備による生物相への影響はないものとして質問しているため,そのWTPの差は,単純に景観に対するWTPの差ということになる.二段階二肢選択CVMによる分析により,圃場整備されていない昔ながらの棚田に対するWTPは6719円,圃場整備された棚田に対するWTPは1735円となり,前者が後者をはるかに上回る結果となった.この結果は,今後の里山保全のあり方を考える場合に,生態系への影響だけでなく,景観への影響も考慮に入れなければならないことを示唆している.またこの分析では,里山保全に対する価値を構成するものとしては,遺贈価値が最も大きく,ついで存在価値が大きいことが明らかとなった.これは,非利用価値を考慮した資源配分の必要性を示すものである.
著者
高橋 康介 小川 健二 北川 智利 金子 沙永
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2023-04-01

本研究では知覚像が従来考えられているよりも自由に制御できる可能性について実証研究を進める。構造化を抑制して未統合の感覚信号にアクセスし高感度の知覚像を得る脱構造化現象と、心的イメージと知覚像を合成する信念可視化現象という2種類の知覚像制御過程の解明を目指す。前半は熟達者を対象とした知覚心理学・脳科学研究により知覚像制御の現象理解、心的過程と神経基盤の解明、予測符号化の枠組みでの理論化を行う。後半は非熟達者を対象に知覚像制御の熟達過程や個人差・適性を検討する。以上の研究を通して「不自由でままならぬ」という従来の知覚観から脱却し、ある程度まで自由に制御できる知覚像という新しい知覚観を提案する。
著者
HUANG Zheng
出版者
立命館大学
巻号頁・発行日
2022
著者
高橋 康介
出版者
立命館大学
雑誌
学術変革領域研究(A)
巻号頁・発行日
2022-06-16

棋士は脳内に将棋盤をイメージし操作する(以降「脳内盤」と呼ぶ)。熟達した棋士の脳内盤の在り方は多様であり、将棋に関する法則と物語が内在化されている。本研究では棋士の中にある熟達した脳内盤の表象と多様性を明らかにし、その多様性を生み出す背景要因を探る。まず脳内盤メトリクスを作成し、オンライン調査により棋士の脳内盤の表象と多様性を定量的かつ体系的に解明する(研究1)。続いて棋士のイメージ化に関連する認知特性の個人差を認知心理学実験により検討する(研究2)。さらにインタビュー調査により棋士それぞれの固有の脳内盤が育まれた熟達化過程、来歴、経験を探る(研究3)。