著者
笠原 健一
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

環境負荷ガスのモニターや生命科学への応用が期待されている量子カスケードレーザ(QCL)では電子散乱制御が高性能化や遠赤外・テラヘルツ化に向けての鍵を握っている。電子散乱の情報はQCLの線幅増大係数αや相対雑音強度RINを調べることで得られる。研究ではαの測定を通じて伝導帯サブバンドの非放物線性やブロッホ利得に関する知見を得ることができた。RIN測定では光出力の依存性や測定温度域を変えることで電子の非発光緩和時間に関する情報が得られた。また遠赤外・テラヘルツ化では対角遷移型ミニバンド構造について解析を進めた。電子-電子散乱は波動関数の重なりの4乗、光学遷移は2乗に比例するので対角型遷移を上手に使うことで電子-電子散乱は急激に落ちることが解析の結果、確認できた。
著者
佐藤 誠 峯 陽一 文 京洙 シャーニー ジョルジオ カルロス マリア・レイナルース 中村 尚司 鄭 雅英 佐藤 千鶴子 安藤 次男 小島 祥美 大倉 三和 スコーマン マキシ ソロモン フセイン コーネリッセン スカーレット バレスカス マリア・ロザリオ ベイリー エイドリアン アティエンサ マリア・エラ ハートウェル レオン デヤヘール ニコラ 大西 裕子 坂田 有弥
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

国際人口移動を単なる労働移民の問題にとどまらない複合現象として理解する視点にたち、日本とアジア、南アフリカと南部アフリカという二地域における国際人口移動の実態把握と比較分析を通じて、流出地域と流入地域において人間の安全が保障されるための課題は何であるのかを、人間安全保障の批判的摂取をふまえつつ解明した。具体的には、社会セクターにおける人口移動に焦点をあて、国際人口移動研究への理論的貢献を行った。
著者
金子 貴昭
出版者
立命館大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

当年度は、板木デジタルアーカイブと、2009年度に構築した板本デジタルアーカイブの連携に取り組み、公開されているシステムに実装を行い、研究ツールとしての付加価値を高めた。奈良大学に板木が所蔵されている享保十七年版「十巻章」の諸本調査のため、7月に真言宗智山派智積院智山書庫所蔵本の調査を行った。奈良大学所蔵板木は、半丁ごとに板木が寸断された状態で伝存しているが、袋綴じと粘葉装の板本を摺刷できるよう、元4丁張の板木を半丁毎に分断したものであることが判明した。板木が現存する板本を対象に匡郭高の全丁採寸調査を行い、匡郭高低差および板木の構成に相関関係を見出し、かつ高低差発生の原因が木材収縮に起因することを明らかにした。昨年度デジタル化を行った出版記録の記述内容について検証を進めた。結果、異なる記録間で情報の出入りや齟齬があり、可能な限り全ての記録を参照して初めて確定的な事実が得られるとの結論に至った。当年度は、2009年度以前の成果報告に上記の研究成果を加え、博士学位論文「板木デジタルアーカイブ構築と近世出版研究への活用」の執筆に注力し、博士(文学)の学位を取得した。
著者
藤巻 正己 江口 信清 生田 真人 平戸 幹夫 山下 清海 田和 正孝 祖田 亮次 ルスラン ライニス タールミジー マスロン
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、(1) 人口・社会経済地図による俯瞰的分析、(2) クアラルンプル大都市地域やパハン州などの農山漁村、サラワク州内陸部の先住民族居住地域における虫瞰的現地調査を通じて、マレーシアにおける貧困問題の表出状況とその差異や要因について、地域的・民族集団的多様性という観点から探究した。その成果については、公開セミナーの開催、他の研究組織との国際シンポジウムの共催、そして研究報告書(180頁)の刊行をもって公開された。
著者
江口 信清 藤巻 正己 ピーティ デヴィッド 山本 勇次 村瀬 智 瀬川 真平 池本 幸生 石井 香世子 四本 幸夫 古村 学
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本研究の目的は、社会的弱者が、不利益をもたらされがちであった観光現象を逆手にとって、自立化・自律化の途を進み、かつ近代化の過程で喪失してきた自信やプライド、そして「伝統」を回復することはできるのだろうか。社会的弱者の自立的な生き方に観光がどのような意味を持つのかについて、世界の多様な地域の事例の比較分析し、考察をすることにある。比較研究の結果、少なくとも4つの結論を得た。(1) 途上国における社会的弱者は、観光にかかわるだけでは自立しえないであろう。(2) 外部で作られた観光の概念やスタイルと現地の人たちの理解するそれらの間には、しばしば齟齬がある。(3) 自生的なリーダーとこの人物を支えるフォロワー関係の存在が、観光開発の成否やコミュニティの福祉の改善に大きくかかわる。そして、(4) 女性の役割がたいへん重要であるということである。
著者
八村 広三郎 赤間 亮 矢野 桂司 遠藤 保子 西浦 敬信 崔 雄 古川 耕平 阪田 真己子 李 亮 中村 美奈子 丸茂 美惠子
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

モーションキャプチャ技術などを利用して,無形文化財のデジタル・アーカイブと,そのデジタルデータを利用して,動作解析,動作認識,コンテンツ制作などに利用するための広汎な研究を行った.具体的な成果は,複数演技者による舞踊動作における同期現象の解明,祇園祭山鉾巡行の記録とVR再現,仮想ダンスコラボレーション,身体動作データベースと身体動作の類似性に基づく,データ検索手法,舞踊譜Labanotation を用いた舞踊動作の記録と動作の再現のためのシステムLabanEditorの開発.また,これの能の仕舞動作への適用.ストリートダンス身体動作の教育支援システム,などである.
著者
河角 龍典
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、平城京および長岡京の考古学的遺構のGISデータベースが構築された。これのGISデータベースは、効率的に遺構情報を検索し、表示するための機能を持っている。そのGISデータベースの地理情報を利用することによって、両都市の都市構造や古環境を可視化することができた。
著者
楠井 清文
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、二つの目的を持つ。第一に、植民地期韓国で日本語によって刊行された文芸雑誌を収集し、デジタル化することで、資料の利便性を高めることである。第二に、それらに基づいて、当時の日本人の文学活動を明らかにすることである。研究成果では、第一の点について、三つのデータベースを構築・公開することができた。第二の点については、1920年代に朝鮮で詩雑誌が盛んに発行されており、朝鮮の詩人と交流するなど、幅広い活動を行っていたことが明らかにできた。
著者
松葉 涼子
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本年度は大英博物館における絵入版本資料計1828点を調査し、目録化した。目録データはすべて博物館に納品しており、館のデータベースに反映される。また、博物館の版本コレクションのうち、582点をしめるジャック・ヒリアー旧蔵の版本データの撮影を行い、版元情報のデータ入力を実施した。また、すでに公開されている書籍画像データベースを参照しながら、版元基礎情報のデータ入力を進めている。以上の作業によって構築されたデータは版元総合目録として公開する予定である。所蔵資料の画像全公開を目標とする書籍閲覧システムにおいては、版元の住所表記など細かな情報を入れ込むことは困難であった。ところが、版元データベースとして別に走らせておき、書籍閲覧システムと連結させることができれば、版本一点ごとに版元の詳細なデータを付加することができる。版元データベースは、他の書籍閲覧システムにも活用し得る基礎的データとなり、現在各所蔵機関ですすめられている所蔵資料のデジタル化においても大きな意味をもつものとなる。さらに、作業と並行して浮世絵出版と版元との関連に着目し研究をおこなった。まず、吉原俄の浮世絵出版にみる歌舞伎音曲と版元の関係性を明らかにした。また、大英博物館所蔵資料の江戸役者絵本を中心に、江戸役者絵本の出版事情を整理し、浮世絵との比較のなかで、役者絵本が出版された意義について検討し、地方にむけて出版するための意図が役者絵本の出版事情にどのように関わっていたかについて述べた。
著者
井本 亨
出版者
立命館大学
雑誌
社会システム研究 (ISSN:13451901)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.25-48, 2003-09-30

本稿はアメリカ商業銀行経営の変遷をたどり,その推移に対して経営学的な分析を試みるものである.1970年代より,アメリカ商業銀行は業務分野,地理的分野に関わる法規制によって業務展開が大きく制限され,成長が鈍化した.多くの大企業が海外進出を行う(多国籍企業の登場)中で,商業銀行も法規制の影響が少ない海外業務へと収益分野を拡大させ,発展途上国に対してソブリンローンなどを提供する.また,アメリカ国内においては,企業合併の手法として脚光を浴びたLBOに対する融資や,不動産融資に精力的に進出し,資産規模を大きく拡大させた.しかしその一方でそのような新しい分野の融資に対する適切な貸付ポートフォリオの構成を行わず,商業銀行に巨額な不良債権を発生させた.不良債権は多くの商業銀行の財務内容を悪化させ,これを契機に商業銀行の経営方針は大きな変化を迎える.これまで,すべての金融サービスを提供する,いわゆるフルライン戦略とよばれていた方針を転換し,自らの得意とする業務分野に経営資源を集中させるフォーカス戦略を多くの銀行が採用した.カリフォルニアの大手商業銀行バンク・オブ・アメリカが海外業務から撤退し地元におけるリテール業務(小口取引業務)に特化したように,商業銀行が経営資源を集中させた分野は,個人や中小企業を顧客とする分野であった.リテール業務は1件あたりの収益が少なく,これまで商業銀行は大口顧客である大企業との取引を好む傾向にあったが,それらの取引は証券業との競争激化によってすでに魅力的なものではなくなっていたため,収益をもたらす新たな顧客としてリテール業務が注目され,規制緩和を伴って,商業銀行はリテール業務を新しい収益源とすることに成功した.このような一連の流れに加え,デリバティブなど新しい金融技術が引き起こした金融革新によって,伝統的銀行業務(預金貸付業務)から金融サービス業務へと商業銀行のマネジメントの主眼は大きく変化していく.