- 著者
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古池 若葉
- 出版者
- 跡見学園女子大学
- 雑誌
- 跡見学園女子大学文学部紀要 (ISSN:13481444)
- 巻号頁・発行日
- vol.42, no.2, pp.A87-A101, 2009-03-15
本稿では,ASD 児者における言語的な問題について,語用論上の困難に焦点を当ててその様相を示した上で,語用論的能力のアセスメントに役立つと考えられる検査や手法について整理し,今後の課題について考察した。その結果,主な知見として以下の3 点が得られた。第1 に,ソーシャルスキルにおいては言語的な側面が重要な位置づけにあるが,既存のソーシャルスキル尺度は語用論的側面をアセスメントする上で十分とは言えない。第2 に,ASD 児者は,形式的な言語に問題が見られなくても,談話や会話などの語用論的側面に問題を持つことが多い。第3 に,Wechsler 知能検査は,高機能ASD 児者の語用論的能力に比べて言語性知能を過大評価しやすく,語用論的能力を測定するアセスメント方法は未確立ながら,ナラティブの産出を調べる方法や,会話を分析する方法によるアプローチが行われている。これらの知見を踏まえて,心理士として,言語臨床にどこまで携わる必要があるかについての考察を加えた。