著者
竹尾 治一郎
出版者
関西大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

1.フランツ・ブレンターノおよびブレンターノ学派の哲学の一般的特徴は、客観主義的実在論である。これとは対照的に、時代を同じくするもう一人の重要なオーストリアの哲学者であるエルンスト・マッハの科学哲学における実証主義は主観主義的傾向を代表する。これらの思想の間の緊張関係を、バートランド・ラッセルの1910年代の現象論から同20年代の中性的一元論への移行に注意を払ひながら、これとの関連において研究した。2.ブレンターノにおける、「志向的内在」の概念による心的現象の特徴づけ、および彼自身によるこの見解の否認に到る経過を跡づけた。更にブレンターノによる心的現象の分類と、これに基づく哲学の諸領域の区分を明瞭にした。また一方、心的現象についてのブレンターノのもとの見解が、マイノングの対象論においてどのやうに発展せしめられたかを、その主要な論点について追求した。その上で、ブレンターノとマイノングの存在論,認識論,倫理学の思想を比較研究した。3.マイノングとラッセルの論争をふり返り、それを通じてマイノングの対象論を、現代のたいていの論理学者によって受け容れられてゐる存在論に照らして検討した。その際、クワインやフリー・ロジックの研究者達の存在論的立場とマイノングのそれとの相違を明らかにした。われわれはなぜマイノングが彼の対象論において非有の対象を認めざるをえないと考へたか、またさうした(非有の)対象がわれわれの観点からどのやうに評価されるかを考察した。われわれはまた、ブレンターノ,G・E,ムーア,ラッセル,新実在論者といったオーストリアと英米の哲学者達が、いはゆる「主観主義の論証」を構成する各命題にどのやうに反応したかを考察し、観念論的認識論に対する彼等の個別的な反論がいかなる主張を含むかを明らかにした。
著者
岩崎 千晶 村上 正行 山田 嘉徳 山本 良太
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

研究課題①「正課と学習支援の連環によるディープラーニングを促すデザイン要件の提示」に関しては、日本語ライティングにおいてライティングセンターを活用した学習者の個別傾向を分析し、リピーターへとつなげるための学習支援の手立てを検討した。また学習の深化を目指し、ICTを活用したライティング指導の実践研究を行った。学習支援には、個別指導に加えて、自主学習用の教材開発も含まれるため、英語・日本語ライティング教材を開発し、正課と学習支援の連環による学びの深化に取り組んでいる。「研究課題②多様なアクターが関わるラーニング・コモンズにおける学びのプロセスモデルの提示」では、各大学がどのように学習者の学びを評価しているのかについて調査を行った。具体的にはCiNiiを活用し、ラーニング・コモンズの評価を扱う論文66件を分析した。調査の結果、質問紙調査、観察調査、インタビュー調査の順で調査法が採用され、量的な調査が75%を占めた。今後、学びのプロセスや成果を明らかにするためには、質的な調査やラーニング・コモンズにおける理念(育むべき学習者像)に関する議論の重要性を示した。特に学習成果に関しては汎用的な能力が評価指標となっていたため、本研究で指摘した学習者にとっての学習概念の更新を促す「照射」の概念を取り入れる必要性を確認した。「研究課題③学習支援を提供する組織における学生スタッフを含めた教職員を対象としたSD・FD研修プログラム・eラーニングの開発と評価」では、教育の質保証、授業設計、評価方法、ICT活用、学習環境をテーマに研修プログラムを開発し、運営・評価をした。またライティング研修の中から、ライティングの理念・学習支援の歴史等のプログラムをeラーニング教材として提供するための資料教材を完成させた。またライティングの学習支援に関する指導モデルを提供するため、eラーニング教材を開発した。
著者
長谷 洋一
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

既刊の報告書や論文、古記録などに掲載された約7000件の近世仏師の事績をもとに仏師ごとのデータベースを構築し、公開した。本研究は構築したデータベースを利用して、近世京都仏師、大坂・江戸仏師、在地仏師の盛衰と三者間での交流を明らかにすることができた。京都での仏像製作需要が減少すると、京都仏師、大坂・江戸仏師が修復や開帳などで地方へ進出すると、在地仏師との技術的交流が生まれ、また京都仏師に繋がる肩書を得ることとなり、在地仏師での造像活動が活発になることを明らかにした。
著者
二階堂 善弘
出版者
関西大学
雑誌
東アジア文化交渉研究 (ISSN:18827748)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.99-108, 2009-03-31

The Mazu Hall (Maso-do) in Tou Temples (Tou-dera) in Nagasaki has hitherto been thought to be a reflection of the religion of Southern China. However, it is considered that the regional religions were reflected in these temples when they are built: Mindongfaction in Soufuku-ji Temple, Minnan-faction in Fukusai-ji Temple, and Jiangnan-faction in Koufukuji-Temple. It can be speculated by the fact that Gotei-do once existed in Soufuku-ji Temple and it is considered that it honored the God of Plague Expulsion (Wufu Dadi) in Fuzhou.
著者
田中 梓都美
出版者
関西大学
雑誌
東アジア文化交渉研究 (ISSN:18827748)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.467-482, 2011-03-31

In 1639, the Edo bakufu prohibited Portuguese ships from entering Japaneseports and also prohibited any Japanese from travelling overseas. After this, informationin the form of written rumours entered Nagasaki. Naturally, much of this informationconcerned Taiwan; however, as of yet, there is no research that focuses upon the uniquegeography and customs of Taiwan. During the Edo period, the Japanese awareness ofTaiwan was formed by Tei Seikō's [Zhèng Chénggōng 鄭成功] accounts; however, for thisargument, it is necessary make a distinction between governmental awareness andpopular awareness. This paper attempts to determine the accuracy of information inmaterials compiled by the Edo bakufu and how faithfully they represent the actualcondition of Taiwan. This will then be contrasted with Chinese records. Also, acomparison and investigation of the information on Taiwan contained in Edo-periodpublications and the information on Taiwan in the materials compiled by the Edo bakufuwill provide insights into the formation of the Edo-period populace's awareness ofTaiwan.
著者
大谷 渡
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

戦時下における台湾民衆の戦争の記憶と体験を、聞き取り調査によってその生の声を記録化し、当時の新聞、雑誌、公文書、手紙、手記などとの照合検討をとおして、これを社会史的観点から多角的かつ具体的に解明した。その成果は、「国際交流研究集会65年目の証言」(2010年)を関西大学で開催して広く社会に発信し、2011年には『看護婦たちの南方戦線帝国の落日を背負って』(大谷渡、東方出版、1-241頁)として出版した。
著者
遠藤 由美 阪東 哲也
出版者
関西大学
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.39-55, 2006-10

本研究の目的は、自尊感情水準による他者からのフィードバックの解釈に及ぼす影響を検討することである。実験参加者は、大学生134名で、受容条件(AC)と拒絶条件(RC)とにランダムに割り当てられた。その後、ノートを貸してもらえるように要請する仮想場面を想起させるビニエットを読ませた。ACのビニエットでは、友人の反応を"うん、後でね"と提示し、RCのビニエットでは、友人の反応を"今もってないから、ごめんね"と提示した。ビニエットを読ませた後、受容期待、自己関連感情、対人方略について評定させた。自尊感情高群はフィードバックのネガティブさに応じて、ネガティブな感情を強く喚起する。しかし、自尊感情低群において、フィードバックのポジティブさと関わりなく、ネガティブな感情を強く喚起する傾向が示唆された。そこで、自尊感情水準による否定的評価の捉え方について考察がなされた。
著者
佐藤 健宗
出版者
関西大学
雑誌
ノモス (ISSN:09172599)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.25-36, 2006-06-30
著者
永田 憲史
出版者
関西大学
雑誌
關西大學法學論集 (ISSN:0437648X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.479-502, 2008-11