著者
菅 磨志保 山下 祐介
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

災害が多発する昨今、市民による自発的な支援活動が不可欠になっているが、支援効果を高めるための組織化・制度化や、受援者(被災者)との関係性において問題も顕在化してきた。支援の制度化に関しては、特に公的主体との連携体制の構築が求められる中、従来から尊重してきた共同的な実践を可能にしつつ、トップダウン型の意思決定にも対応できる体制の構築が課題となっている。支援-受援関係に関しては、原発避難者が抱える問題構造を分析、支援が避難者同士を分断していく過程等を明らかにした。他方、過疎問題に悩む地域の復興調査から、良好な支援-受援関係が、復興の推進のみならず、従前の社会課題の解決にも寄与することが見出された。
著者
植村 邦彦
出版者
関西大学
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.17-33, 2010-03

英語の〈civil society〉は、16世紀末から使われ始めた言葉である。日本語では通常「市民社会」と訳されているが、この言葉は本来アリストテレス『政治学』における「国家共同体」の訳語として英語に導入されたものであり、17世紀のホッブズとロックにいたるまで、この意味で使われた。この言葉の前史と初出時の語義を確認することが、本稿の課題である。
著者
大島 薫
出版者
関西大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

<説法>と称される一連の言説に<経釈>を位置付け、その構造を明らかにするとともに、法会における一連の所作として、学侶の研鑽を明らかにするために行われた<論義>と、これら<説法>における言説との関連性など見出した(福田晃編『唱導文学研究第四集』、三弥井書店、発表予定)。また<経釈>に限らず、<説法>における一連の言説として表白された<表白><施主段>についても伝本調査を行い、東寺観智院金剛蔵『十二巻本表白集』ほか、その本文を電子化するなど、それらの解読をすすめる準備を行った。さらに、「説法の上手」とうたわれ、「説法道」を確立したと伝えられる、安居院澄憲の<説法>を相対化するために、澄憲以前に、多くの「説法詞」を草したことで知られ、その「詞」の多くが伝存する寛信について、その著作に関する調査と解読をすすめた。結果、『類雑集』の成立ほか、勧修寺流の形成についても私見を得た(勧修寺聖教文書調査団における夏期報告会において口頭発表した)。また、澄憲草を中心とする、安居院流の「説法詞」を伝える文献に関して、真福寺・神奈川県立金沢文庫・叡山文庫・東寺観智院金剛蔵・勧修寺などで伝本調査を行った結果、「説法の上手」で知られた澄憲が、天台教学の研鑽をすすめるべく「宗要」の編纂を手がけたむねを伝える文献を発見するなど、これまでの澄憲理解を覆す新見をも得た。
著者
品川 哲彦
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究はグノーシス研究、生命哲学、未来倫理、ホロコースト以後の神学など多様な面をもつヨナスの哲学的経歴を統合的に理解することを目的とした。その生命哲学に含まれる目的論的自然観、存在と善を結びつける形而上学、グノーシス思想と近代哲学に自然からの離反という共通の欠陥をみる指摘、神学的思索はいずれもそれだけをとれば価値多元社会の現代では反時代的と批判されやすい。しかしその哲学は、人間以外の自然のみならず人間自身が技術的操作の対象と化している現状への危機感の表明である。本研究は、英独で発刊された書籍に収録された二編を含む七編の論文、依頼講演二回の学会発表を通じて上記のヨナスの現代的意義を示した。
著者
溝井 裕一 細川 裕史 齊藤 公輔 浜本 隆志 森 貴史 北川 千香子
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

我々は、ナチスによる集合的記憶の乱用の問題について調査を実施した。その結果、ナチスが過去の「アーリア人の遺産」に由来する要素を、建築、祝祭、演説などに織り込み、これによってドイツ人のアイデンティティを変化させ、彼らに人種主義的かつ優生学的な思想を植え付けようとしたことが明らかとなった。ナチスが実施した絶滅動物の復元も、「過去の想起」に関連するものであった。我々はまた、戦後の大衆文化における「集合的記憶におけるナチスのイメージ」も研究対象とした。そして、ナチスのイメージは現実というよりも我々の期待を反映したものにすぎず、世代交代や社会環境の変化に合わせて変質していくものであることを解明した。
著者
松本 茂
出版者
関西大学
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.27-43, 2003-06-15

本論文の目的は、家電リサイクル法の不法投棄データを用いてコミュニティーの自主施行力を評価することである。この目的のために、論文では、以下の3つの分析を行った。第1に、不法投棄水準の地域差を産み出す要因をCount Data Model によって検証した。第2に、再びCount Data Model を利用し、社会資本が不法投棄水準に及ぼす影響について考察した。以上2つの分析の結果、失業率が低く、外国人の居住割合が低く、持ち家比率が高く、帰属意識が高い自治体ほど、不法投棄の水準が低いことが示された。第3の分析として、家電リサイクル法の施行前後の不法投棄水準をProbit Model によって比較し、家電リサイクル法の効果について検証した。分析の結果、持ち家比率が低く、選挙の投票率が低い自治体では家電リサイクル法施行前から不法投棄の水準が高かったが、法施行後その状況が更に悪化しでいることが示された。
著者
陳 其松
出版者
関西大学
雑誌
東アジア文化交渉研究 (ISSN:18827748)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.483-516, 2011-03-31

With the Japan's debut on the international stage in 1854, the image of Japanesefrequently appeared in pictorials, a medium that initially became popular in the 1840s.Through focusing on one of these famous pictorials, Harper's Weekly, we can see howthe image of Japanese changed over time. At the beginning, the Japanese attired in"traditional samurai costume" were considered a primitive race and depicted with darkskin and twisted faces. After the Meiji Restoration, however, modernizing Japan strove toshed the image of the "premodern." Accordingly, editorial comments and the tone of theillustrations of the Japanese also became accepting. These pictures are not simplyevidence of Japan's modernization, but trace its drifting from the periphery to the centerof World history in the 19th century.
著者
前田 裕
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

同時摂動最適化法を用いることにより、学習機能をもつニューラルネットワークのハードウェア化が容易に実現できることについて検証した。ニューラルネットワークのハードウェア実現を想定した場合、パルス密度による数値表現が適していることを示した。また、サポートベクトルマシンを対象に、同時摂動を用いた手法を提案すると共に、ハードウェアシステムを実現した。さらに、同時摂動による学習機能を有する神経振動子をアナログハードウェアシステムとして試作した。