著者
野間 晴雄
出版者
関西大学
雑誌
東アジア文化交渉研究別冊 (ISSN:18827756)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.109-135, 2009-03-31

大航海時代以降にヨーロッパ,とりわけアルプス以北の寒冷な国々では王侯貴族の趣味として,ヨーロッパ以外の花を種子/球根を生きたまま本国に運んで移植し愛でる慣習が広まった。とりわけアングロサクソンのイギリスやオランダはその核心となる。その背景には,薬草学の知識やリンネを頂点とする分類学の発展などがあった。本報告では,その採集を異国の地で担ったプラントハンターと呼ばれる植物採集の専門家の性格を多角的に考察するとともに,採集を依頼・指示した人びととの関係もとりあげる。次にプラントハンターの東アジアでの一事例として,イギリス人ロバート・フォーチュンの日本・中国での採集の方法と成果,歴史的背景を分析する。最後に,プラントハンティングの対象としてユリとキクをとりあげて,西洋と東洋の文化交渉を園芸,栽培化のプロセスから通観して,事例から迫る文化交渉学の方法論にも言及したい。
著者
石田 浩 陳 禮俊 小島 泰雄 川井 悟 潘 志仁
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

平成13年度〜平成15年度の研究実績は以下の通りである。中国農村実態調査は毎年夏、計3回実施し、初年度は上海市奉賢区Q鎮T村、2年目は上海市南匯区D鎮C村と上海市奉賢区Q鎮B村、上海市宝山区Y鎮S村、3年目は上海市松江区X鎮C村と松江区C鎮X村で、村幹部から村経済概況をインダビューし、農家を訪問して直接農民から聞き取り調査を行い、農家アンケート調査を実施した。さらに、比較研究の視点から内陸の成都市近郊農村、青島市近郊農村や杭州市近郊農村でも実態調査を行った。また、農村の工業化と都市化の進展が著しい江蘇省昆山市・蘇州市・呉江市、上海市区の松江区といった長江デルタでの労働力移動の分析を行うため、工業開発区や輸出加工区での聞き取り調査を実施した。特に、こられの工業開発区や輸出加工区に投資する外資系企業を訪問して、労働力の流動を中心に就業者の出身地や雇用条件などについてインタビューを行った。また、長江デルタと珠江デルタの農村開発を比較するために、珠江デルタの深〓市や東莞市などの日系企業と台湾系企業を訪問し、これら企業に就労する内陸農村からの出稼ぎ労働力についてインタビューを行った。これらの調査研究に基づいて、計19回の定例研究会を実施し、そのうち4回の研究合宿と2回の公開シンポジウムを開催した。それぞれの公開シンポジウムでは上海財経済大学の研究者3名と重慶社会科学院経済研究所の研究者3名を招聘して研究報告と討論を行った。これらの研究成果は論文として発表されているが、私たちの共同事業として平成14年度には研究成果中間報告書(全161ページ)を、平成15年度には研究成果報告書(全228ページ)を作成した。研究成果報告書はさらに検討を加え、出版助成金を得て公開する予定である。
著者
野間 晴雄
出版者
関西大学
雑誌
関西大学東西学術研究所紀要 (ISSN:02878151)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.A39-A54, 2007-04

本稿は2006年9月29日にベトナム国家大学ハノイ校地理学部で開催された同学部創立40周年記念大会(ベトナム地理学会共催)での招待講演「20世紀日本の地理学の伝統と革新」の発表原稿を,写真等を除いてほぼそのまま掲載したものである。その目的とするところは,ベトナムの地理学研究者に日本の地理学界の基本的な情報を提供することと,現在の課題をベトナム地理学の動向と比較しつつ考察することである。前半では,20世紀におけるアカデミック地理学の伝統を主要な4つのスクール(東京大学,京都大学,東京高等師範学校/東京文理科大学/東京教育大学/筑波大学,広島高等師範学校/広島大学)の創立者やの後継者たちの研究テーマの特色から概観した。後半では,第二次世界大戦後における日本の地理学の変化を,応用地理学,第四紀への関心,いわゆる「地理学の革命」といわれたアングロサクソン系地理学の影響の深化,地理学教室の新規設立や学術雑誌の刊行,マルクス地理学の影響,GISの普及などから展望した。
著者
杉本 貴志
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

現在急速に事業の統合・広域化を進める消費者生活協同組合がいかなる課題を抱えているか、日本とイギリスの生協について現地調査と理論的考察を進めることにより、「非営利・協同」の事業体として独自の存在意義を訴えることに成功することができたならば、こうした統合化は流通業界におけるユニークで強力な事業体に生活協同組合を発展させ得るものであることを確認することができた。しかしそれは同時に、組合員の「参画型民主主義」という生協本来の価値を揺るがしかねないものでもあって、その解決のためには「ステークホルダー民主主義」のモデルを模索し、確立することが、今何よりももとめられていることを論じ、考察した。
著者
岩田 年浩 須賀 竜哉 田村 亜由美 吉岡 展祥
出版者
関西大学
雑誌
情報研究 : 関西大学総合情報学部紀要 (ISSN:1341156X)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.1-11, 2006-07-12
被引用文献数
2

個人での資産運用のこれからの形ともいえる株式投資において,株価の動きを予測することの重要性はますます高まっていくだろう.そこで本研究では,安定性という観点から新たな分析方法を打ち出した.すなわち,より規則性の高いものはより予測しやすく,利益の確保においてより確実性が高いということから,直後の株価予測ではなくむしろ利ざやを得るためのよりリスクの少ない,または確実な銘柄選びということを考えたのである.そしてその分析を誰しもが手軽に行えるよう独自のソフトを開発し,その有益性を実証した.
著者
山本 千映
出版者
関西大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本年度は、昨年度に収集したスタッフォードシャー州文書館所蔵の四季裁判所記録、Calendars of Prisonersのデータベース化を進めた。デジタルカメラで撮影した1777年から1860年までの記録のうち、1777年から1820年まで、タイプされている部分のみであるが、データ入力が完了している。欄外に手書きで評決や判決等の追加情報が書き込まれているケースも多々あるが、これは未入力となっている。平成19年2月9日から3月2日まで、資料収集のために渡英し、国立公文書館(NA)およびスタッフォードシャー州文書館(SRO)を訪れた。昨年度は、NA所蔵の巡回裁判の起訴状(indictments)のトランスクリプトを行ったが、情報量は豊富なもののデジタルカメラでの撮影が難しいため、数週間の渡英では意味のある年数分のトランスクリプトが不可能と判断し、代わりに、情報量は落ちるが、冊子の形態をとっていて撮影が容易な、Crown Minute Books(National Archives, ASSI 2)を閲覧し、1775年から1791年まで撮影した。これにより、Calendars of Prisonersに掲載されている拘留者のうち、巡回裁判での判決によるものの罪状があきらかになる。また、SROでは、Quarter Sessions Order Booksを閲覧した。これは、犯罪のみならず、民事訴訟や行政手続について、四季裁判所が下した判断を網羅したものであり、Calendars of Prisonersの作成の背景を知る上で重要な史料である。昨年8月には、早稲田大学社会科学部中野忠教授の科研セミナーにて「生存戦略と非公式経済」と題して、公式の経済活動以外の、生存(make shift)のための活動について報告した。またCalendars of Prisonersのパイロット的な分析を、「産業革命期イングランドの貧困と犯罪」として執筆中である。
著者
Escandon Arturo
出版者
関西大学
雑誌
関西大学外国語教育フォーラム (ISSN:13472925)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.83-100, 2007-03

ヴィゴツキーの最近接発達領域(ZDP)とポストヴィゴツキー学派アプローチ(社会文化理論と活動理論)は、生活的概念と科学的概念の間の密接な関係についてより良い理解をもたらす。日本の高等教育の第2言語プログラムで、生活的概念の習得は主にコミュニケーションクラスで、一方、科学的概念の習得は文法クラスで起こる。最近接発達領域を用いた教育では、状況的な問題と科目領域の中心概念グループの生徒の取り組みめ間で「両方向移動」が必要とされる。この論文では、(生活的概念から科学的概念への)「ボトムアップ移動」を強化するための、コミュニケーションと文法クラスの両方において「欠落した移動」と呼ばれる活動を提案する。
著者
佐藤 実
出版者
関西大学
雑誌
東アジア文化交渉研究 (ISSN:18827748)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.277-291, 2008-03-31

This paper takes an overview of the features of the concept Chinese Muslim piety from the Chinese Islamic classics written in the early modern age, and considers the relationship between Chinese Islam and Confucianism, the traditional thought of China. Chinese Muslims value piety, but in accordance with the traditional Confucianist scriptures of China, especially "The Doctrine of the Mean". At that time, Islam replaces the Heaven expounded by Confucianism with God. I have pointed out the fact that their valuing of piety comes from a consciousness of being the people who carry on Chinese tradition. I have also submitted the hypothesis that, although ancestral rituals and religious services were performed in a manner that lacked a mortuary tablet, might not China- Arabia calligraphy have been used as a substitute for that tablet?
著者
亀井 克之
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

毎年,中小企業が,後継者不足を理由に廃業している。老舗企業,同族企業の多くが中小企業である。社会問題化している事業承継問題について,本課題研究では, (1)リスクマネジメント理論の活用と, (2)現地調査に基づく日仏比較研究という,独自の手法によって研究を進め,最終年度における「中小企業の事業承継・日仏シンポジウム」主催を中心とする成果をあげて,事業承継におけるリスク・コミュニケーション(「事業承継にはどのようなリスクがあるのか」「そのリスクにどう対応するのか」に関する共通理解)の重要性を提言した。
著者
Nakajima Michiyasu
出版者
関西大学
雑誌
Kansai University review of business and commerce (ISSN:13448455)
巻号頁・発行日
no.10, pp.57-86, 2008-03

This paper explained TPM and MFCA by focusing on the difference between them, but it is not my intention to discuss which is the superior system. It is considered that in reality it is useful to utilize both TPM and MFCA as systems supplemental to each other. For example, Canon uses MFCA in a positive manner as a management tool for cross sectional management which is impossible by the conventional TPM, etc. by linking job site type environmental guarantee activities and MFCA. As a result, Canon succeeded in achieving a waste reduction of 40% compared to last year at one of its offices. Such waste disposal cost appears to have been reduced by several million yen per annum. Canon introduced MFCA as a tool for job site type environmental guarantee activities, and enhanced resource productivity dramatically at an actual spot directly connected with manufacturing, and not the reduction of "paper, rubbish and electricity". This means there was a discovery of a wasteful process in manufacturing which had not been found by the conventional production management technique. This is another matter, but people sometimes notice that their improvement target (priority order) which used to be decided on the basis of a standard such as a product yield was wrong, and change their order of improvement. The rank of an improvement item which used to be in a lower rank will be raised, but this also means that the order was corrected by having found a hidden cost. In this way, in some cases a loss which was not discovered by existing production management is newly discovered by MFCA or it is discovered that there was a hidden loss in a loss which had already been discovered. It is true that all is covered when expressed in words, but the way of thinking that material loss in MFCA covers all may be the same as if one declares that one is omniscient and omnipotent, if the author may borrow the words of a certain corporate manager.
著者
中田 行重 村山 正治 下川 昭夫 平野 直己
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は個人心理臨床では十分に埋め合わせられない今日の社会病理への対応として、地域への心理的援助の枠組みを探った。研究の方法論として、地域のフリースペースやグループアプローチ、スクールカウンセリングなどにおける地域臨床実践およびインタビュー調査、地域文化・風土のローカルな視点に関する文献研究が行われた。研究により明確になったのは大きく次の4点である。第1点は西欧で始まった"コミュニティアプローチ"は日本においては、日本人の心理的風土に合わせる必要があるということである。例えば日本では子育て支援とは、コミュニケーション支援であることが明らかになったのはその1例である。第2点は、臨床心理学は西欧社会から生まれているが、自己と関係性、心理療法論において日本では西欧とは深い面で異なっていることが明らかになった。第3点はコミュニティアプローチのリーダーや心理臨床家は、個人療法家と異なり、水平アプローチという対象間の関係性を活性化する触媒として非構造化された環境における実践を行う資質が必要であることが明らかになった。第4点は日本は対人支援のためのネットワーキングとして西欧と異なるものが必要であり、それはスクールカウンセリング事業などで現れていることが明らかになった。このようにして明らかになったことは、それぞれ本課題の研究者達の日々の臨床実践で活かされており、更なる実践・研究の継続を予定している。
著者
西本 昌弘
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

藤原行成撰『新撰年中行事』は多数の行事項目を掲載し、未知の関係史料を引用しているため、既知の年中行事書と対比検討することによって、日本古代の年中行事研究に新たな手がかりを提供する可能性を秘めている。本研究では、『新撰年中行事』と『小野宮年中行事』の記載を比較する対照一覧表を作成し、検討を進めた。両書の類似点はともに『九条年中行事』を踏まえていることに求められよう。『新撰年中行事』は弘仁式など古くに遡る史料を博捜して、行事の淵源を探る視点が強いため、『小野宮年中行事』とは大きく異なる本文をもっているものと考えられる。
著者
田中 登
出版者
関西大学
雑誌
國文學 (ISSN:03898628)
巻号頁・発行日
vol.78, pp.161-173, 1999-03-14

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