著者
田辺 聡 北村 匡 西元寺 克禮
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.46, no.11, pp.2391-2398, 2004-11-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
56
被引用文献数
6

Argon plasma coagulation(以下APC)は非接触型の高周波凝固装置で,1991年に内視鏡治療の分野に導入された比較的新しいデバイスである.本法は病変に接触せずに広範囲な凝固が可能であり,血管性病変や悪性腫瘍に対する凝固治療,さらに消化管出血に対する止血や静脈瘤に対する地固め治療,Barrett食道に対する焼灼治療など様々な疾患に応用されている.いずれの疾患に対しても短期的な有効性は明らかであり,今後は長期予後の検討が望まれる.特に本邦では,食道,胃,大腸などの早期癌に対する粘膜切除術(EMR)の追加治療あるいは単独治療として用いられている.焼灼深度が浅く安全性の高い治療であるが,合併症として穿孔,壁内気腫の報告があり十分な注意が必要である.各疾患に対する適切な焼灼方法の確立,他の治療との無作為比較試験,長期予後の評価など今後の検討が期待される.
著者
羽鳥 知樹 佐川 寛 水入 紘造
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.29, no.7, pp.1416-1422_1, 1987-07-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
20

最近4年間に経験した出血性胃潰瘍62例のうち,純エタノール局所注入療法を施行した34例(局注群)を対象とし,非局注群28例を対照として,とくに再出血について検討した.また,注入薬液の局在を把握する目的でindocyanine green(ICG)による色素混入法を試み,その意義について検討した.両群の再出血率を比較すると,局注群では34例中5例(14.7%),非局注群では28例中6例(21.4%)と局注群で低率であったが,すくなからず再出血が認められた.局注群の再出血例の内訳は,1例は噴出性出血例であった.2例は潰瘍底に大小2個の露出血管を有し,点状に存在した1個を見逃がしたために再出血したものであった.残り2例は新生血管からの再出血であった.色素混入法は注入量,注入部位の適否の判断の目安および潰瘍拡大の防止として有用であった.
著者
多田 正大 清水 誠治 西村 伸治 鹿嶽 研 渡辺 能行 川井 啓市
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.26, no.7, pp.1062-1067, 1984-07-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
20
被引用文献数
1

潰瘍性大腸炎の病態の一面を検討する目的で,32名の本症患者および健常者7名に対して内視鏡下に水素ガスクリアランス法による粘膜血流測定を行った.直腸S状部の粘膜血流は潰瘍性大腸炎・活動期において増加し,緩解期になると健常者と同等のレベルにまで低下した.また粘膜血流は潰瘍性大腸炎の重症度と比例したが,病変範囲やpatient yearとの比例はみられなかった.病理組織学的には潰瘍性大腸炎の重症例では粘膜の毛細血管に血管炎や血栓が起り,微小循環不全状態にあることが疑われているが,粘膜血流の面からみると重症例でも血流は増加しており,形態と機能の不一致に興味が持たれた.
著者
吉井 新二 黒河 聖 今村 哲理 安保 智典 本谷 聡 前田 聡 小澤 広 萩原 武 西岡 均 後藤 田裕子 村岡 俊二 須賀 俊博
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.49, no.12, pp.2978-2983, 2007-12-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
10

:56歳女性.大腸内視鏡検査にて下部直腸に径10mmの粘膜下腫瘍を認めた.超音波内視鏡検査にて,第2~3層に主座を置く低エコー性病変とその中心部に石灰化を疑うストロングエコー像を認めた.内視鏡的切除術を施行し,病理所見はcarcinoid tumor,深達度sm,lyO,v1で,腫瘍部中心に石灰化所見を認めた. 消化管カルチノイド腫瘍の石灰化例は稀で,若干の文献的考察を加えて報告する.
著者
丹羽 寛文
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.49, no.7, pp.1615-1638, 2007-07-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
48
被引用文献数
1

胃カメラのアイディアは,1889年にEinhornが発表したが,当時の技術では,その実現は不可能であった.食道カメラは,Oebermannが1890年,ついでKellingが1997年に試みている.一方胃カメラに関しては,1898年のSchaafの胃カメラは一枚の写真が得られるのみで実用性は無かった、同年のLange&Meltzingの胃カメラは,50年後の日本の胃カメラと原理,構造,扱い方は,全く同じであったが,感光材料の未発達から感度が低く,粒子が粗く赤色域に感光性が無かった.またX線発見以前で生体に於ける胃の位置,形態に関する知識が皆無で,さらに彼らの研究を継いだ人がおらず,その後の発展が無く見捨てられた.1929年のPorgesand Heilpernの針穴式胃カメラは,実用性に問題があり,1931年のHenningの胃カメラも試みのみに終わった.1950年の宇治らの胃カメラは,良好な写真が得にくく,あまりにも故障が多く,殆ど見捨てられた.しかし1953年以降崎田ら東大田坂内科8研グループが,この機器を取り上げ機器に改良を加え,撮影手技を確立し,実用化が可能となり普及を見る様になった.昭和39年には,診断は胃カメラ,ファイバースコープはファインダーという考えでファイバースコープ付き胃カメラが作られた.その後改良が加えられ,胃カメラ,ファイバースコープ,生検機構が一体化した. 以上の経過から,胃カメラの本当の発明者はLangeらで,宇治らはその改良機を作ったというのが公平な見方であろう.さらにこの不完全な機器を取り上げ,改良を重ね,撮影手技を確立し実用価値のあるものに育て上げた崎田ら当時の東大田坂内科8研グループの功績は極めて大きく,その意義は最初の開発以上と考えられる.
著者
勝見 康平 伊藤 誠 岩田 章裕 鈴村 裕 片岡 洋望 竹島 彰彦 池戸 昌秋 坂 義満 伊藤 龍雄 岸本 明比古 加藤 實 中沢 貴宏 武内 俊彦
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.457-462, 1993-03-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
20

消化性潰瘍の発生に季節性があるか否かをあきらかにするため,内視鏡的にA1あるいはA2ステージの活動期で発見された胃潰瘍601例,十二指腸潰瘍289例を対象に各月ごとの潰瘍発生数を検討した.1年を連続する3カ月ごとの4群に分けて潰瘍の発生数をみると,胃潰瘍は3~5月群が171例でもっとも多く,以後6~8月群164例,9~11月群139例と漸減して12~2月群は127例ともっとも少ない発生であった(P<0.05).一方,十二指腸潰瘍の発生は1~3月群63例,4~6月群68例,7~9月群61例に対し,10~12月群は97例であきらかに高値を示した(P<0.05).以上の成績より,名古屋地区では消化性潰瘍の発生に季節性がみられ,胃潰瘍は春に,十二指腸潰瘍は秋から初冬にかけて好発することがあきらかとなった.
著者
佐藤 邦夫 狩野 敦 濱島 ちさと 関 英政 加藤 博巳 田沢 義人 加藤 智恵子 猪股 正秋 佐藤 俊一 武田 豊
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.318-327, 1987-02-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
66

62歳男性のDouble Pylorus(以下DP)の1例を経験した.患者は心窩部痛を主訴として来院し,X線および内視鏡検査で,幽門の小彎側に十二指腸球部に通じる瘻孔と,これに接して十二指腸潰瘍を有するいわゆるDPが確認された.この患者の10年前の内視鏡所見では幽門前部小彎に変形は認めるものの,副交通路は形成されていない.本邦では近年本症の報告が相次ぎ,1985年末で本例を含め43例にのぼる.その内訳は男32例,女11例で,自覚症状は心窩部痛,吐下血が多い.平均年齢は61.4歳で,成因は先天性2例,後天性33例,いずれとも断定していないもの8例で,副交通路の位置は幽門の小彎側33例,大彎側6例,前壁側1例,部位記載不明3例である.治療法は外科的17例,保存的26例で,最近は保存的に治療されるものが多い.幽門近傍潰瘍の穿通によって形成されるとみられる後天性DPについてはPeripyloric gastroduodenal fistulaと呼ぶのが適切と考えられる.
著者
三嶋 孝 奥田 茂 大島 明 宋 桂子 平岡 力
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.21, no.9, pp.1086-1093_1, 1979-09-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
18

早期胃癌を放置した場合どの位の時間でどのような進行癌に発育するかを知ることは重要なことであり,従来retrospective studyを中心に検討されてきた.しかしこの方法は初期変化が癌であるとの組織学的裏付けを欠いているためあくまで推定の域をでないといわざるを得ない.本研究は生検で癌と診断され,レ線,内視鏡で早期と推定されながら何らかの理由で6ヵ月以上経過が追跡された症例を収集し,早期胃癌から進行癌への発育進展をprospectiveに検討したもので次の結果を得た.(1)早期から進行への進展に要する時間をKaplan,Meierの方法で算出したところ36ヵ月を要することが推定された.(2)早期から進行への進展に伴う病型変化として次のコースを確認できた.(1)IIc ul(-)→Borr.II.(2)IIc ul(+)→Borr.III.(3)IIc+III→Borr.III.(4)III+IIc→Borr.III.(5)IIa→Borr.II.(6)I.IIc ul(-)→Borr.I
著者
藤沼 澄夫 掛村 忠義 佐藤 浩一郎 飯田 努 三枝 善伯 平畑 光一 鴫山 文子 古畑 司 前谷 容
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.50, no.12, pp.3010-3018, 2008-12-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
28
被引用文献数
2

直腸粘膜脱症候群は排便時の過度のいきみにより,直腸粘膜が機械的刺激や虚血性変化を受け,直腸粘膜に隆起性病変,平坦発赤病変や潰瘍性病変を生じる疾患である.臨床的には悪性腫瘍と誤認されることがあるので鑑別が重要である.過度のいきみを行う理由として,排便習慣の他に,恥骨直腸筋の奇異性収縮も要因となっている.症状としては血便が一般的であるが,粘液排泄,会陰痛,テネスムスなどもある.隆起性病変は主に直腸下部にみられ,平坦病変や潰瘍性病変は中部または上部直腸にみられやすい.大きさは様々であり形態学的に本症を診断するが,直腸肛門機能検査や排便造影検査が診断の手助けとなることもある.病理組織学的には線維筋症(fibromuscular obliteration)が特徴であり,平滑筋線維と膠原線維の増生が粘膜固有層において著明にみられる.治療はまず保存的治療を行い,いきみ習慣の改善を第一とする.トイレで過こす時間を最小限にとどめ,排便時のいきみを控えるように指導するとともに緩下剤などの薬物治療を行う.外科的治療は保存的治療を行っても症状に悩ませ続けている患者,または難治性MPSと考えられる症例にのみ考慮されるが,種々の術式により予後は報告者によって異なっている.
著者
多賀須 幸男
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.21, no.10, pp.1159-1177, 1979-10-20 (Released:2011-05-20)
参考文献数
65

For the endoscopic observation of organs apart from the body surface such as the stomach, introduction of a light source into the body cavity was indispensable for sufficient illumination. Its first attempt was performed by Juluius Bruck Jr., a dentist of Braslau in 1867. He introduced a platinum-loop glow lamp with a water cooling device into the oral cavity or the vagina and tried to observe the root of the teeth or the urinary bladder by trans-illumination (Fig-1). It had no clinical use but the idea was adopted for endoscopy. Max Nitze (1848-1906) was working at a city hospital of Dresden where diaphanoscopy by Bruck's method was actively studied by Schramm . In 1876 Nitze made a cystoscope using a platinum-loop glow lamp. At the same time he applied an optical system to his endoscope for the first time. It was inserted into a tube incorporated with the lamp and cooling device (Fig-2). Later he collaborated with Leiter, an engineer of Wien and completed his instrument. In 1876 he demonstrated his new cystoscope at a meeting of Wien Medical Association under a title of “On a new method for the observation of human cavity ” and made a great success (Fig-3). Nitze is called as the father of cystoscopy today. Nitze and Leiter made various endoscopes. Their gastroscope had an angle of 90 degree at the level of the throat and was flexible when it was introduced into a patient (Fig-4). Because of the angle and its complicated structure, it was never applied for living subjects. Soon disagreement happened between Nitze and Leiter and their collaboration was broken. In 1881 Johanes von Mikulcz (1850-1905), a surgeon of Wien completed his gastroscope with Leiter (Fig-6). It was designed following his careful anatomical and clinical considerations. Its practical application was also studied in detail . Gastroscopy today bases on the technique established by him. The stomach was insuf f lated with air and the examination was carried out in the decubitus position after the injection of morphine . Mikulicz may be the first one who was really able to inspect the stomach with an endoscope. In 1886 Edison's incandenscent lamp became available for endoscopes and sufficient illumination without complicated cooling system was obtained In 1895 Rosenheim showed that a straight rigid gastroscope could be introduced into the stomach by proper manipulation. Until 1930 many types of gastroscope were made (Table-1, Fig-7) They can be divided into three groups :1) open tubes, 2) straight or angulated rigid tubes with optical system and 3) flexible tubes to be straightened after introduction. Among them the straight rigid gastroscopes of Elsner and of Schindler were most extensively uses. When we look at the beautiful color pictures on Elsner's (1911) or Schindler's (1923) textbook, we are astonished by their exact and minute observations (Color photos, Fig-3-9). Needless to say that gastroscopy with a rigid instrument was not easy for a doctor and painful for a patient. Schindler reported that he succeeded in the observation of the stomach in 55% of his examination. Until 1924 at least 15 perforations due to gastroscopy had been reported. Sauerbruch strongly claimed that gastroscopy should be refused by a surgeon. A word of this famous thoracic surgeon retarded the development of gastroscopy considerably. Esophogoscopy was actively carried out by Rosenheim. Light of an electric bulb was reflected from the outside of the body. Since Rosenheim was an internist, he introduced his esophagoscope without observing the pharynx. Bronchoscopy was established by Killian, an otolaryngologist of Freiburg in 1897. He succeeded to remove foreign bodies from the right bronchus. Later on Jackson eagerly endeavored for the practical application of esophagoscopy and bronchoscopy in USA. Their instrument was a straight open tube and it was used until the completion of a fiberscope chiefly for the extraction of foreign bodies. Killian had much interest in
著者
河野 辰幸 神津 照雄 大原 秀一 草野 元康
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.951-961, 2005-04-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
31
被引用文献数
7

Barrett粘膜の頻度を得る日的で,初回内視鏡検査施行例2,595例を対象に疫学調査を施行した.その結果Barrett粘膜は2,577例中536例(20.8%)に認められた.Barrett粘膜の長さは女性よりも男性で有意に長く,Barrett粘膜の頻度と年齢層との問には相関関係を認めなかった.Barrett粘膜の有無と胸やけの有無,Barrett粘膜の長さと逆流性食道炎の重症度,食道裂孔ヘルニア重症度との間に相関を認め,萎縮性胃炎がBarrett粘膜の長さに影響を及ぼしていた.逆流性食道炎がBarrett粘膜の発生に重要な役割を担っているものと推察されたが,欧米と比較して,典型的Barrett食道の頻度は著しく低かった.今後統一したBarrett粘膜の定義や診断基準によるevidenceの集積がさらに必要と思われた.
著者
原田 一道
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.3-17, 1995-01-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
80

1988~1992年の5年間に上部消化管内視鏡検査を26,162例に行い,そのうちAGMLが360例であった(平均年齢45.5±16.4歳,M±SD;男:女2.1:1).AGMLの成因としては,精神的ストレス(55.6%),各種薬剤(22.2%),飲食物(6.9%),内視鏡検査(GF)後のもの(3.3%),その他(4.2%),不明(7.8%)であったが,最近,薬剤によるAGMLが増加傾向にあった.AGMLの季節発生は夏季(6~8月)に有意に少なかった.また,都市に住む人の方が地方の人よりAGMLの発生頻度が多かった. ストレスによるAGMLは青壮年に多いのに対して,薬剤によるAGMLは65歳以上の老年者に有意に多く発生していた.誘因薬剤ではNSAIDsが72.5%と最も多く,ついで抗生物質製剤が17.5%,ステロイド剤が5.0%,その他が5.0%であった.NSAIDsに起因する胃病変の発生を予防する方法を確立する目的で,健常ボランティアにおいてDiclofenac単独投与群,防御因子増強剤併用群,H2-受容体拮抗剤併用群の3群にわけて検討した.その結果,H2-受容体拮抗剤併用群が有意に胃病変の発生を抑制した.実験的にIL-1をラットの腹腔内投与(0.01~1μg/rat)すると胃酸分泌と胃排出を用量依存性に抑制し,水浸拘束ストレスおよびNSAIDsやエタノールによる胃病変に対して強力な胃粘膜保護作用を発揮した.この事実はAGMLの病態生理や治療体系に大きなインパクトを与え将来の発展が望まれる.
著者
斎藤 清二 田中 三千雄 樋口 清博 窪田 芳樹 青山 圭一 島田 一彦 紺田 健彦 藤倉 信一郎 佐々木 博
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.24, no.8, pp.1238-1247_1, 1982-08-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
15

236例のERCP施行症例につき主に選択的胆管造影率の向上を目的として,超広視野角十二指腸ファイバースコープとストレシチ法の併用の有用性を検討した.Fujinon社製DUO-X(視野角105°)を使用した149例では,膵管造影率はOlympus社製JF-B3(視野角64°)を使用した87例の成績と差はなかったが,胆管造影率は明らかに高値であった(各々93.5%,77.8%).DUO-Xを使用してプッシュ法でERCPを行った群47例の選択的胆管造影率はJF-B3の45例のそれと統計的有意差を認めなかったが(各々89.4%,77.8%),DUO-Xとストレッチ法を併用した群61例では有意に高い胆管造影成績(96.7%)が得られた.DUO-Xとストレッチ法を用いて施行条件を一定としてERCPを行った32例中胆管造影成功30例の所要時間は平均11分24秒であった.ストレッチ法でのERCPは試みた大部分の症例において容易に施行され,症例の胃形態とスコープ走行形態の間には一定の関連は見い出し得なかった.以上よりERCPにおけるストレッチ法は選択的胆管造影に有利な方法であり,超広視野角十二指腸ファイバースコープの併用により比較的容易かつ確実に施行できる勝れた方法であると思われた.
著者
中西 徹 坂田 泰昭
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.28, no.7, pp.1567-1573_1, 1986-07-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
37

今回われわれは初診時に著明な高ガストリン血症と汎血球減少症を呈しgastrinomaや悪性貧血も疑われたが,最終的には自己免疫性(A型)胃炎に合併した微小胃カルチノイドであった稀な症例を経験したので報告した. 症例は35歳の女性で汎血球減少の精査のため当科を紹介された.入院後再生不良性貧血,悪性貧血は否定され,鉄欠乏性貧血が考慮され全消化管を精査した結果,胃内視鏡下生検で径5mmの微小胃カルチノイドを発見した.また1,900ρg/mlという著明な高ガストリン血症を認めたが,胃液は無酸でgastrinomaは否定され,抗胃壁細胞抗体が陽性であった事からガストリン高値の原因は自己免疫性胃炎による無酸と考えられた.A型胃炎,胃カルチノイド共に稀であるため,A型胃炎に合併した胃カルチノイド例は自験例を含め本邦で5例にすぎないが,文献的及び本例の組織的検討で両者の関連が示唆されており,この点につき考察を加えた.
著者
原田 一道 横田 欽一 相馬 光宏 北川 隆 北守 茂 柴田 好 梶 厳 水島 和雄 岡村 毅与志 並木 正義
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.23, no.7, pp.961-967_1, 1981-07-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
32

胃結核は稀な疾患であるが,われわれは最近の5年間に3例の胃結核を経験した. 第1例は46歳の男性で胃体上部後壁に不整形で,潰瘍底が凹凸不整の大きな潰瘍をみた.内視鏡直視下胃生検による組織像でラングハンス巨細胞と類上皮結節の所見を得,結核による潰瘍性病変と診断した. この病変にストレプトマイシン(SM100mg/ml)3~5mlの局注療法を行い,約3ヵ月後に潰瘍の疲痕をみた.第2例は67歳の男性で,胃前庭部にIIa+IIcの早期胃癌を,また胃体上部前壁に粘膜下腫瘍をみとめた.この腫瘍が術後の組織学的検討で結核性病変と診断し得た.第3例は66歳の女性で噴門直下に不整形の潰瘍性病変を伴う腫瘤があり,内視鏡直視下生検による組織学的所見から結核性病変と診断し,抗結核剤(PAS,KM,INAH)の投与と共にSMの局注療法を試みた.その結果約4ヵ月後に腫瘤はほぼ消失し,潰瘍性病変は瘢痕化した.胃結核が内科的治療で治癒した例は極めて稀で,抗結核剤の局注療法を試みたものは過去にないので報告する.
著者
堀 高志 藤岡 利生 村上 和成 首藤 龍介 末綱 純一 寺尾 英夫 松永 研一 糸賀 敬 村上 信一 柴田 興彦 内田 雄三
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.27, no.12, pp.2775-2781_1, 1985-12-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
27

胃憩室は消化管憩室の中では比較的稀なものであり,胃憩室の発生頻度は一般に0.01%から0.20%との報告が多い.胃憩室の多くは,噴門部小彎後壁寄りに発生し,体部大彎に発生するものは極めて稀である.また,大きさについては,広田らによれぼ2.1cmから3.0cmのものが最も多く,5.1cmを超えるものは6.9%にすぎない.更にその壁構造については,一般に真性憩室が多いとされている. 症例は48歳女性,胸やけ,心窩部痛,体重減少を主訴として入院した.上部消化管X線検査にて胃体部大彎側に巨大な憩室を認め,内視鏡検査にても同様の所見であった.保存的療法にても自覚症状改善しないために手術が施行された.憩室は11.5cm×8.0cmの大きさで,組織学的には仮性憩室であった.
著者
楠本 聖典 濱田 暁彦 勝島 慎二 水本 吉則 上古 直人
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.3607-3616, 2014

【目的】上部消化管内視鏡検査(EGD)におけるプロポフォール鎮静からの覚醒度を経時的に評価し,安全な離院までの必要観察時間を明らかにする.【方法】対象はEGD時に予め定めた投与法によってプロポフォール鎮静を行った104例.平均血圧,動脈血酸素飽和度,握力,視力,Mini Mental State Examination(MMSE),反射神経テストを評価項目とし,検査前と検査終了10分後,60分後を各々比較した.【結果】10分後で有意な低下を認めたのは平均血圧,握力,MMSEであった.60分後では平均血圧は有意な低下を認めたが,10分後に比べると回復傾向であった.握力とMMSEは回復した.【結論】プロポフォール鎮静下のEGDは安全に施行でき,検査終了60分後には平均血圧以外の項目で検査前の状態に回復した.血圧は帰宅基準上問題ない範囲であり,60分後には安全に離院可能と考えられた.
著者
杉森 清孝 白木 正裕 室谷 益代 松本 和基 津本 清次 大柴 三郎
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.31, no.7, pp.1820-1823_1, 1989-07-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
24

症例は45歳女性.ビタミンC錠(アスコルビン酸)を就寝前に飲水せずに服用した.翌朝,嚥下時に咽頭部異和感が出現し来院した.内視鏡検査で食道入口部直下より25cmまでの間に全周性びまん性に白苔の付着を認めた.生検では扁平上皮は変性し,細胞間浮腫を思わせる細胞間隙が目立ち,変性の高度な部位では微小膿瘍も散見された.粘膜保護剤服用にて,第3病日に自覚症状は消失し,第10病日の内視鏡検査では病変は消失していた. 本例で服用されたビタミンC錠は海外の市販薬で,大きさ19.3×8.1×7.6mm,pH2.42,アスコルビン酸含量995.6mgであった.これを本邦の市販薬(ハイシーS(R)錠)と比較すると,大きさは約2倍でアスコルビン酸含量は約20倍にも達し,食道炎惹起の大きな原因と考えられた. ビタミンC錠による薬剤性食道炎は,極めて稀な疾患であり,若干の文献的考察を加え報告する.
著者
佐藤 博文 針金 三弥 龍村 俊樹 山本 恵一 小島 道久 山本 和夫 柴崎 洋一 松本 貞敏 鈴木 亮一
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.26, no.8, pp.1330-1334_1, 1984 (Released:2011-05-09)
参考文献数
10

尋常性疣贅の多発を伴ったS状結腸癌の2例を報告した.症例は59歳の女性と78歳の男性で,ともに消化器症状はなかったが,2年以上前から尋常性疣贅が顔面,手背に多発し治癒傾向にないため,消化管の精査を行った. 上部消化管には異常所見を認めなかったが,注腸造影と大腸内視鏡検査によりS状結腸癌の合併をみとめ,根治術をおこなうことが出来た. 近年,本邦での結腸癌の罹患率は増加傾向にあり,結腸癌による死亡率を低下させるには一般住民を対象とした大腸集検と共に高危険群の精査による早期癌の発見が必要である. 尋常性疣贅はhuman papilloma virus(HPV)による皮膚感染症で,その発病は細胞性免疫能の低下と関連しているといわれている.今回の2症例の経験から,高齢者で尋常性疣贅が多発し,しかも難治傾向にある場合には,内臓悪性腫瘍の高危険群に屈すると考え,精査追跡をすすめるべきである.