著者
DAVID KARP NOBUHITO JIN TOSHIO YAMAGISHI HIROMI SHINOTSUKA
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.231-240, 1993-03-01 (Released:2010-02-26)
参考文献数
26
被引用文献数
37 39

Ingroup bias found in the Minimal Group Paradigm is an important finding for theories of intergroup relations. However, explanation of the finding is controversial. In this study, we contrast the Social Identity Theory explanation of ingroup bias with a new alternative hypothesis. We argue that ingroup bias is a result of subjects employing a self-interested quasi-strategy in an attempt to gain greater material benefits for themselves. Although the strategy cannot be successful, we argue that the interdependence situation characteristic of the Minimal Group Paradigm deceives subjects into believing it can be successful. Consequently, when subjects are not dependent on other subjects for their own rewards in the Minimal Group Paradigm, ingroup bias disappears. Results of our experiment support the interdependence hypothesis.
著者
潮村 公弘 佐藤 誠
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.141-152, 1994

本研究の目的は, 恋愛状況下の異性二者間における相互的な認知の成立機制を探究することであった。測定手法は, 好意的同性二者間でのパーソナリティ認知における相互認知を検討した今川・岩渕 (1981) の手法に依拠した。<BR>被験者は以下の6つの認知過程ごとに, 自己概念を操作的, 客観的に捉えるために開発された47項目から成るSelf-Differential Scale (大学生用) (長島・藤原・原野・斎藤・堀 (1967)) に対して評定を行なった。1) 現実自己像, 2) 他者像, 3) 相手の自己像についての推測, 4) 相手の他者像についての推測, 5) 理想自己像, 6) 理想異性像の6つの認知過程 (認知像) である。なお, 6) の過程は本研究において, 異性間の問題を対象にした場合の独自性を捕捉することを目的に, 新たに取り入れた過程であった。<BR>本研究でのデータには, 相互的な認知を取り扱うための適切な方法としてペア・データが用いられた。それゆえ自己評定の前述の6過程, 他者評定の6過程 (すなわち1) 他者の現実自己像, 2) 他者の他者像, 3) 他者の, 相手の自己像についての推測, 4) 他者の, 相手の他者像についての推測, 5) 他者の理想自己像, 6) 他者の理想の異性像) の12過程の各々2つを組み合わせた認知過程対の類似性が検討された。<BR>まず認知過程対の類似度の検討より, 理想自己像 (5, 5) と理想異性像 (6, 6) の類似, 現実自己像1 (1) と相手の他者像についての推測4 (4) の類似, および他者像2 (2) と相手の自己像についての推測3 (3) の類似, 以上の3つの認知過程対の類似が, 相互的認知の成立に重要な役割を果たしていることがわかった。<BR>さらに上記の分析では検討できなかった, 理想自己像と理想異性像の両者が相互的認知に対して, いかなる規定関係にあるのかについて偏相関係数を用いて検討した。まず, 各々で統制した場合の偏相関係数を算出した。その結果, 理想自己像は自己に関する認知に影響を与える一方, 他者に対する認知には効果を有していないこと。それに対し, 理想異性像は他者に対する認知に影響を与える一方, 自己に対する認知には効果を有していないことが見い出された。さらに, 理想自己像同士の類似の影響を検討するために, 両者の理想自己像を同時に統制した場合の偏相関係数を算出した。その結果, 両者の斉合的な認知の成立, および他者についての認知と自分の理想異性像の類似は, 理想自己像同士の類似とは独立に存在していることが示された。
著者
青野 篤子
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.97-105, 1980-02-15 (Released:2010-11-26)
参考文献数
33
被引用文献数
3 1

本研究は, 空間行動 (対人距離・体の向き) の発達的プロセスを, 性の組合せ・対人感情との関連において検討するために行われたものである。被験者は小学校3年生・同5年生・中学校2年生・大学生の男子ペア・女子ペア・異性ペアがそれぞれ10ペアずつ, 合計240名 (120ペア) であった。それぞれのペアが, 好意的関係・非好意的関係の役割で, 話し合いの場面を演じているところが写真撮影され, 写真の分析によって対人距離と体の向きが測定された。本研究の主な結果は以下の通りである。1) 年齢が上るに従い, 同性ペアの対人距離が直線的増大を示す傾向があるのに対し, 異性ペアの対人距離は思春期前・思春期を頂点とする曲線的変化をたどる。2) すべての年齢段階において, 男子ペアは女子ペアよりも大きい対人距離をとる傾向のあることが見出された。3) すべての年齢段階において, 好意的ペアは非好意的ペアよりも小さい対人距離を示した。4) すべての年齢段階において, 好意的ペアは, 非好意的ペアよりも直面して相互作用を行うことが多い。5) 大学生になると, 直面よりもむしろある程度の角度をもった体の向きが多く現われるようになる。
著者
永田 素彦 矢守 克也
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.197-218, 1996-12-10 (Released:2010-06-04)
参考文献数
42
被引用文献数
2

本研究は, 人々の昭和57年長崎大水害をめぐる災害イメージについて, その特徴を検討したものである。具体的には, まず, 災害イメージについての基本的な考察をし, 災害イメージの基底的なタクソノミー-「事象」 「事態」-を提示した。前者は災害の知覚現場を基盤にしており, 後者は抽象的な概念体系をその存立根拠としている。そして, それに基づいて, 今なお強固に災害イメージを保持していると考えられる長崎市在住の4つのグループ (行政 (市役所), 市民団体M会, A自治会, B自治会) の, 長崎大水害をめぐる会話を分析した。その結果, 行政とM会は長崎大水害を事態化していること, 一方, A, B両自治会は事象化していることを明らかにし, さらに, 各グループの災害イメージの内実的特徴を別出した。最後に, 災害イメージを形成することの意味を明らかにし, そのことが 「防災意識の風化」と呼ばれる現象に対してもつ含意を考察した。災害イメージを長期にわたって維持するには, 単に 「事象化」するだけでも (A, B自治会) 単に 「事態化」するだけでも (行政) 不十分であり, 両者をリンクさせた形で災害イメージを形成することが必要であることが明らかになった。
著者
小窪 輝吉
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.12-19, 1996-06-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
18

Brickner, Harkins & Ostrom (1986) は課題内容への個人的な関心が社会的手抜きを弱めることを見いだした。本研究の目的は課題のパフォーマンスへの個人的関心が社会的手抜きの消去に及ぼす効果を検討することである。180名の男子学生が簡単な折り紙作業に従事した。識別可能性に関して高い条件と低い条件を設け, それと課題誘因に関して統制条件, 内的誘因条件, および内的+外的誘因条件を設けた。その結果, 両課題誘因条件において社会的手抜きが消去されないということが見いだされた。本研究の結果について内的な課題誘因の特性との関連で考察が行われた。
著者
伊藤 君男 天野 寛 岡本 真一郎
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.17-27, 1998-06-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
19
被引用文献数
2 1

本研究の目的は, 緊急事態における避難行動に見られる事前の探索経験と集合行動の効果の検討である。実験室内に被災状況を模した迷路を作製し, 被験者の実際の脱出行動を観察した。実験では, 被験者は電気ショック装置を持った実験者から逃れるように教示された。実験1 (被験者64名) は, 2 (探索経験の有・無) ×2 (単独脱出・集団脱出) のデザインで行われた。探索経験は単独で行われ, その後, 単独または4人集団で実験が行われた。その結果, 探索経験は脱出所要時間の短縮を促進するという結果が得られた。また, 単独-未経験条件の被験者は他の条件の被験者と比較して, 脱出に要した時間を長く認知しているという結果が得られた。実験2 (被験者44名) では2種類の出口を設定し, 探索経験の際, 半数の被験者には一方の出口を, 別の半数の被験者にはもう一方の出口を学習させ, 本実験では4人集団で実験を行った。その結果, 集団脱出における同調行動が観察され, 集団による避難行動において, 不適切な行動であると考えられる同調行動の生起が示唆された。本研究の結果は, 探索経験の効果を証明し, ふだんの避難訓練の有益性を改めて示唆するものであった。
著者
森 永壽
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.250-264, 1997-12-20 (Released:2010-06-04)
参考文献数
15
被引用文献数
1

本研究は, 過疎地域の一つである鳥取県八頭郡智頭町において, 過去13年間にわたって展開されてきた地域活性化運動の軌跡を紹介し, その軌跡を, 大澤真幸の社会学的身体論に基づき, 規範形成・変容のプロセス (超越的身体の構成プロセス) として考察した。特に, たった二人の住民リーダーによって創出された規範が, 彼らから一般住民に対するイベントや外国人・研究者の一方的伝達 (贈与) が成功することによって, 規範の作用圏を拡大するとともに, 一般住民, さらには町行政の規範的前提を再編成していくプロセスを描出した。
著者
大平 英樹
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.95-104, 1989-02-20 (Released:2010-02-26)
参考文献数
23
被引用文献数
2 2

本研究では, 宥和情報による責任性についての評定が生理的喚起と報復攻撃の強度決定におよぼす効果について検討した。宥和情報の提示時期 (攻撃前, 攻撃後) と宥和晴報の程度 (中程度, 高程度) が独立変数として操作され, さらに宥和情報を与えない統制群を加えて5つの実験群が設けられた。被験者は教師一生徒パラダイムの第1試行において実験協力者から強い攻撃を受け, 第2試行において報復の機会が与えられた。本研究において得られた主な結果は以下のとおりである。1. 攻撃を受けることにより各群被験者の生理的喚起の上昇がみられたが, 宥和情報を攻撃前に提示された群では上昇の程度が他の群に比べて低かった。2. 直接的攻撃と間接的攻撃という2つの相異なったタイプの報復攻撃がみられた。3. 直接的攻撃では, 宥和情報の程度が高い場合は提示時期にかかわらず攻撃低減の効果がみられたが, 中くらいの程度の場合は攻撃前に提示したときにのみ攻撃低減の効果があった。ここでは, 生理的喚起と攻撃者の責任の評定の両方が報復攻撃の規定因となっていることが示唆された。4. 間接的攻撃では, 報復攻撃の強度は宥和情報が攻撃前に提示された場合にのみ低減され, 宥和情報の程度は効果を持たなかった。ここでは, 生理的喚起が報復攻撃の重要な規定因なっていることが示唆された。
著者
原田 純治
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.109-121, 1990-11-20 (Released:2010-02-26)
参考文献数
16

本研究は, 7つの援助行動型ごとに, その行動といかなる援助動機・性格が関連するのかを検討した。大学生を対象に質問紙調査を行い, 援助動機の因子構造を分析した上で, 各援助行動型と動機・性格との関連を重回帰分析を用いて検討した。主な結果は, 以下の通りである。1. 「金品の譲渡・貸与」型援助とは, 「互恵と友好的関係」動機が関連し, また女性では「合理的でない援助効用の予期」動機が関連することが見出された。2. 「紹介・勧誘」型援助とは, 「互恵と友好的関係」動機と「援助コストの低さと当然さ」動機が関連した。男性では「合理的でない援助効用の予期」動機が関連した。また, 「社会的外向性」はこの型の援助に対し促進的影響を, 「自己顕示性」は抑制的影響を及ぼすことが見出された。3. 「代行」型援助とは, 「互恵と友好的関係」と「援助コストの低さと当然さ」動機が関連した。また, 「共感性」と「進取性」がこの型の援助に対し促進的影響を及ぼす傾向が見出された。4. 「同調」型援助とは, 男性では「コストの低さと当然さ」, 女性では「互恵と友好的関係」動機が関連した。また, 「社会的外向性」がこの型の援助に対し促進的影響を, 「自己顕示性」が抑制的影響を及ぼすことが見出された。5. 「小さな親切」型の援助とは, 「合理的でない援助効用の予期」動機との関連がみられ, 「共感性」はこの型の援助に対し促進的影響を及ぼすことが見出された。また, 女性では「抑うつ性」が抑制的影響を及ぼすことが見出された。6. 「助言・忠告」型の援助とは, 「援助コストの低さと当然さ」動機と関連があり, 女性では「援助規範意識と合理的援助効用の予期」動機や, 被援助者への「同情」動機と関連があった。また, 男性では「持久性」はこの型の援助に対し促進的影響を及ぼすことが見出された。7. 「気遣い・いたわり」型援助とは, 「援助規範意識と合理的援助効用の予期」動機と関連があった。また, 「持久性」は促進的影響を及ぼすことが見出された。以上の結果に関し, 援助行動と動機・性格との関連, さらにその関連のあり方からそれぞれの援助行動型の特徴が考察された。また, 援動行動型ごとの動機・性格との関連の検討の必要性・有用性が論じられた。
著者
河津 雄介 池田 勝昭 大野 博之 峰松 修
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
教育・社会心理学研究 (ISSN:0387852X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.77-85, 1966 (Released:2010-03-15)
参考文献数
12

修学旅行をひかえた117名のかなり乗り物酔いの程度のおもい中学3年生を対象にして, 乗り物酔いのhypnotherapyの効果をおさえるための実験的研究が試みられた。ここではとくに次のような点に考慮がはらわれた。事前におこなわれた実態調査により, 対象者群における乗り物酔いの程度, 状態, 条件等に関する資料をもとにして, 暗示が構成された。また, 催眠深度を成瀬の催眠尺度をもちいることにより客観的に測定し, 治療効果との関係が分析された。さらに, 効果の持続性を明確にとらえるために, 5ヵ月後にfollow up調査をおこない, 効果の持続性, 深度と効果の持続性との関係等について分析された。
著者
田中 豊
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.111-117, 1995-07-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
8
被引用文献数
7 12

本研究の目的は, 種々の科学技術及びその産物の社会的受容に共通して重要な要因を, 重回帰分析を用いて探索すること, および種々の科学技術及びその産物を, クラスター分析を用いて特徴の類似した事項同士に分類することであった。調査協力者は埼玉県内の私立大学学部生であり, 男子70名, 女子25名の合計95名が調査に参加した。質問紙の内容は, 14種類の科学技術及びその産物のそれぞれについて, その「必要性」「安心感」「地球環境に対する有益性」「マスコミ報道の好意度」「事業主体に対する信頼性」「社会的受容に対する態度」を尋ねるものであった。そして分析の結果, 「必要性」「地球環境に対する有益性」「事業主体に対する信頼性」の3つの要因を説明変数として, 重回帰式を構成するのが有用であることを見いだした。またクラスター分析により, 各事項を, ポジティブな評価を受けている群か, ネガティブな評価を受けている群かに分類できることが示され, ポジティアな事項の中でも特に「太陽光発電所」が好ましいものとして受け止められ, また逆にネガティブな事項の中でも, 特に「核兵器」が好ましくないものとして受け止められていることが明らかにされた。
著者
田崎 敏昭
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.69-77, 1974-06-30 (Released:2010-11-26)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

本研究は斉一者, 同調者, 非同調者, 反同調者に対する反応を知覚レベルで把えようとする試みである.31名の大学生の被験者は, 斉一的, 同調的, 非同調的役割をするサクラのパートナーのいずれか2人と共に幾何図形の面積判断を行うという課題が与えられた. さらに, 面積判断の前後に距離知覚装置上で, パートナーの写真を知覚対象として距離定位させることが求められた.得られた結果は次のとおりである.(1) 被験者は, 面積判断後, 一致者の写真も不一致者の写真も, 装置上における定位位置を負の感情方向 (自己にとって, 不快な対象を定位させる方向) に変化させたが, その変化量に差はなかった.(2) 被験者は, 面積判断後, 斉一者の写真を正の感情方向 (自己にとって快な対象を定位させる方向) に変化させたが, 非同調者, 反同調者の写真は負の感情方向に変化させた.(3) パートナーが2人共同調者である場合, 被験者は面積判断後, 彼らの写真を負の感情方向へ変化させたが, 1人が同調者1人が斉一者である場合の同調者の写真は正の感情方向へ変化させた.このような結果は, 斉一者に対し被験者は正の感情負荷を行ない, 非同調者, 反同調者に対しては負の感情負荷を行なったためと解釈される.
著者
高橋 超
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
教育・社会心理学研究 (ISSN:0387852X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.61-69, 1970 (Released:2010-03-15)
参考文献数
15

本研究は, 印象形成過程における情報統合モデルとしての加算 (summation) -平均 (averaging) モデルの比較検討を行なったものである。被験者は, 市内の女子短期大学生68名で, 各Ssは, つぎの8 setの刺激情報を, 好意度の面から2つの20点評定尺度で判断した。(1) HH (2) LL (3) M+M+ (4) M-M- (5) HHM+M+ (6) LLM-M- (7) HHHH (8) LLLL得られた主な結果は, つぎのごとくである。1) HH-HHM+M+, LL-LLM-M-の各評定値の差を検討した結果, それぞれの差は有意でなかった。すなわち, 極性化した特性に, 中位に極性化した特性を加えても, 反応は増加せず, 平均モデルと一致した結果である。2) HH-HHHH, LL-LLLLの各評定値の差は, 後者についてのみ有意であった。すなわち, 刺激が増加すると, 反応も大となるset-size効果がみられる。3) 平均モデルの公式〔4〕に基づいて, HHHH, LLLLの予測値を求めて, 実測値と比較したが, ともに有意なずれはみられない。以上の結果は, いずれも平均モデルを支持するものであるが, 本研究では, 情報の質の差による統合化の差も伺がわれ, 今後, さらに綿密な分析が必要とされる。
著者
小出 寧
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.41-52, 1999-06-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
32
被引用文献数
3

本研究では, 形容詞による性格特性語によらず, 行動や意識による項目で, 男性性, 女性性に加え, 女性のセックス・アピールの3側面からジェンダー・パーソナリティ・スケールの作成を行ない, 信頼性・妥当性を確かめることを目的とする。その際, 構成概念妥当性を確かめるため, 性役割行動とフェミニスト志向を取り上げる。方法は質問紙法で, 学生 (男性117人, 女性117人) を対象に調査を行なった結果, 尺度の信頼性・妥当性が確認され, 主に次の知見を得ることができた。それは, (a) ジェンダー・パーソナリティ・スケールは性別との対応関係の高い尺度であり, (b) その下位尺度間の関連から, 女性にとってセックス・アピールとは, 単に女らしさの強調といった意味合いだけでなく, 女性が男性中心社会の中で自己を主張していく表現法としての意味合いも込められていると推察され, (c) 男女を問わず男性性の高い人が議長を快く努められ, 男女を問わず女性性の高い人がお茶くみを快く努めることができ, (d) 女性は, 男性性が高いほどフェミニスト志向が強くなり女性性が高いほどフェミニスト志向が弱くなることが判明した。
著者
広瀬 幸雄
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.47-52, 1985-08-20 (Released:2010-11-26)
参考文献数
13

洗剤汚染, ゴミ問題, 渇水というコミュニティの環境問題は, 公的利益と私的利益が対立する共有地の悲劇事態と考えられる。本研究の目的は, これら環境問題における消費者の対処行動とその規定因の因果連関を明らかにすることである。57名の男子大学生に, 洗剤, ゴミ, 渇水の各仮想事態を提示したのち, 各事態毎に, コミュニティ全体の動向予測, 予想される事態の深刻度と生起可能性評価, 対処行動の有効性評価, 対処行動の意図を評定させた。パス解析によって得られた各事態での対処行動と規定因の因果連関は次のとおりである。洗剤問題では, 全体の動向予測→深刻事態の生起可能性→事態の深刻度→対処行動の意図, 全体の動向予測→対処行動の意図に有意な連関がみられた。ゴミ問題では, 全体の動向予測→生起可能性→深刻度→行動意図, 全体の動向予測→行動意図, 有効性評価→行動意図に有意な連関がみられた。渇水問題では, 生起可能性→深刻度→行動意図, 全体の動向予測→行動意図に有意な連関がみられた。
著者
白樫 三四郎
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
教育・社会心理学研究 (ISSN:0387852X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.49-58, 1966 (Released:2010-03-15)
参考文献数
12

本研究はリーダーと成員の心理的距離の指標としてFiedler, F.E. が考案したLPC得点 (リーダーからみて共働者としてもっとも好ましくない人を彼が心理的にどのていど受容するかを示す。least preferred co-workerに対する好意度) の妥当性をOhio大学研究グループが抽出した, リーダー行動の二つの因子 (considerationとinitiating structure) との関連で検討しようとするものである。被験者は炭鉱採炭作業集団の監督者18名と部下473名。監督者のLPC得点はSD法式のテストに彼らが記入した結果から測定された。この得点に基づいてLPC得点が高い監督者 (8名) とLPC得点が低い監督者 (10名) とが決定された。両群の得点の平均値の差は統計的に有意であった。部下は5段階選択肢をもった質問項目に回答することによって, 自己の属する集団の監督者の行動を記述した。LPC得点の高い監督者の下の部下 (202名) と, LPC得点の低い監督者の下の部下 (271名) のそれぞれの監督者の行動に関する記述を比較して, 次のような結果がえられた。1) LPC得点が高い監督者はLPC得点が低い監督者と比較して, 集団内の人間関係により深い配慮を示すと部下から認知されている。つまりLPC得点が高い監督者は, より人間関係志向的であるといえる。2) LPC得点が低い監督者はLPC得点が高い監督者と比較して, 集団の目標達成, リーダーとしての役割遂行により大きなウェイトをかけていると部下から認知されている。つまりLPC得点が低い監督者は, より役割志向的であるといえる。3) これらのことから, LPC得点に関するFiedler, F.E. の解釈の妥当性はいちおう検証されたと考えられる。
著者
伊藤 哲司
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.1-11, 1991-07-20 (Released:2010-02-26)
参考文献数
33
被引用文献数
2 2

本研究の目的は, 2者の相互作用場面でのノンバーバル行動の分析から, ノンバーバル行動の基本的な表出次元を検討することである。被験者の組合せの条件は (男性同士, 女性同士) × (初対面, 友人) の4つで, 各条件5組ずつを用いた。各被験者ペアには, 「アルバイト」について15分間会話をするよう教示し, その場面をビデオカメラによって録画をした。教示前の場面および15分の会話場面から2分ずつをサンプリングし, 8項目のノンバーバル行動 (視線・笑い・前傾姿勢・後傾姿勢・横向き・発話・沈黙・うなずき) と8項目のユニット的ノンバーバル行動 (相槌・笑い反応・話-反応・沈黙共調動作・模倣共調動作・追従共調動作・同時共調動作・反響姿勢) の頻度・総時間・平均時間 (反響姿勢を除いたユニット的ノンバーバル行動とうなずきは頻度のみ) を測定した。全行動変数の因子分析から, コンタクト・リラックス・接近・回避の4因子が抽出された。また, これらの因子に負荷の高い行動間の継起パターンを記述した継起分析から, 個人内で非コンタクト因子 (コンタクト因子の負の負荷の高い行動群) からコンタクト因子, コンタクト因子からリラックス因子, 回避因子から接近因子へ, それぞれ行動が連鎖しやすいことが見い出された。これらの結果を考察して, “コンタクト-非コンタクト”“リラックス-緊張”“接近-回避”の3次元をノンバーバル行動の基本的な表出次元と仮定した。これらの次元は, 心理的指標 (感情評定・相手の人物評定など) との相関から, それぞれ特徴づけられた。また, ノンバーバル行動の重要な機能を反映していると考えられる関与度は, 重回帰分析によって3次元の得点から73.4%が説明された。これらのことから, 仮定した3次元はノンバーバル行動の表出を説明するものとしての妥当性が支持された。ユニット的ノンバーバル行動を除いて分析した結果は, 全行動変数からの結果とほとんど違いはなかった。継起分析の結果から, 個人間では同一行動が繰り返される傾向が示され, 多くのノンバーバル行動がしばしばユニット的ノンバーバル行動を形成していることが示唆された。これが, ユニット的ノンバーバル行動から独自の意味を見い出すことができなかった原因であると推測された。
著者
Sumin Lee Ken’ichiro Nakashima
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
pp.1811, (Released:2019-12-07)
参考文献数
24
被引用文献数
4

The present study sought to examine the effects of the shift-and-persist strategy on the psychological outcomes of individuals with a low socioeconomic status (low-SES). Although previous research has shown that this type of strategy has beneficial effects on the physiological responses and health of individuals with low-SES, its effects on psychological outcomes have not been thoroughly studied. The present study investigated the relationship between shift-and-persist tendencies, childhood SES, and depressive tendencies using two samples. We performed multiple regression analysis of the obtained data. The results of study 1 (N=99 female undergraduates) showed that an individual’s tendency towards depression was negatively related to their persisting tendency, but not their shifting tendency. This relationship was replicated in study 2 (N=662 working adults). Although the results do not correspond with previous research, our finding that persisting is connected to psychological outcomes, such as depressive tendencies, is important.
著者
三隅 二不二 関 文恭 篠原 弘章
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
教育・社会心理学研究 (ISSN:0387852X)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.173-191, 1969-03-15 (Released:2010-03-15)
参考文献数
23

本研究は, 討議集団におけるPM機能を, 集団成員による, 他者評定にもとづいて, 評定尺度の項目作成を試みた。第1研究から第4研究までの一連の因子分析による尺度項目の検討を行なった。その結果, 本研究で用いた評定尺度項目は, 討議におする2つの次元, すなわち討議の目標達成次元 (P次元) と討議の過程維持次元 (M次元) を測定していることが明確にされた。本研究で用いた討議集団のPM評定尺度にBurk (1967) の研究結果を加えると, P次元の項目には17項目, M次元の項目には14項目が含まるものとして考察された。