著者
堀江 尚子 渥美 公秀 水内 俊雄
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.1-17, 2015

本研究は,ホームレスに対する支援のための入所施設において,継続的な支援の関係の構築を目指したアクションリサーチであり,支援の関係性の継続と崩壊という現象を理論的に考究するものである。近年,急増したホームレスの人々が抱える問題は多様である。なかでも対人関係に問題を抱える人は少なくない。ホームレスの支援活動では,当事者と支援者の関係性の継続が重要である。関係性の継続には,関係の本来の様態である非対称が非対等に陥らないことが要請され,そのためには偶有性を喚起・維持する方略に希望がある。本研究はこの方略を組み込んだアクションリサーチである。具体的には,ホームレスを多く引き受ける生活保護施設Yが開催するコミュニティ・カフェに注目し,その施設の退所者と地域の人々の協働の農作業プロジェクトを実践した。偶有性の概念を媒介にして戦略的な実践によって継続的な関係が構築された。支援関係の継続と崩壊について理論的考究を行い,労働倫理を強く持つ人々は支援を受ける当事者になることが困難であることを指摘した。
著者
吉川 肇子
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.45-54, 1989
被引用文献数
1 1 6

ポジティヴな評価の印象 (好印象) よりも, ネガティヴな評価の印象 (悪印象) の方が, 持続しやすく, 覆しにくいことを明らかにした。あわせて, 帰属の違いを変数として導入し, 印象変化との関連を検討した。被験者は95名の男女大学生であり, 刺激人物の行動を記述した文章を与えて, はじめの印象を形成させた。10分間のディストラクション課題をはさんで, はじめの印象と反対の情報を与え, 印象の変化を分析した。さらに1週間後, 印象評定のみを行い, 印象の持続を調べた。帰属の違いは, はじめに与える刺激文中で操作した。<BR>仮説は次の通りである: 1) 悪印象は好印象よりも覆しにくい。2) 悪印象は好印象よりも持続しやすい。3) 悪印象であれ, 好印象であれ, 状況帰属されるよりも傾性帰属される方が, 印象は残りやすい。<BR>実験の結果, 仮説1), 2) ともに支持された。帰属の操作は有効でなかったために, 仮説3) は検証できなかった。さらに, 活動性の次元の印象の変化の分析から, 印象の残りやすさには, 何を最頻的と考えるかということが決め手となるという, 各次元共通のメカニズムが働いていることが示唆された。
著者
坂元 章 三浦 志野 坂元 桂 森 津太子
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.87-101, 1995
被引用文献数
1

本研究の目的は, 通俗的心理テストの結果のフィードバックが, 人々の, 自己イメージ, 更には, 行動に影響するかどうか, また, その影響の強さが, 学術的な心理テストのそれと異なるかどうかを検討することであった。筆者たちは, 1つの実験を行い, 64名の女子の被験者を2つの群に分け, 1つの群には通俗的心理テストに回答させ, もう1つの群には学術的心理テストに回答させた。そして, それぞれの群の半分には, 外向性の偽のフィードバックを与え, もう半分には, 内向性の偽のフィードバックを与えた。実験の結果は, 外向性のフィードバックを受けた被験者が, 内向性のフィードバックを受けた被験者に比べて, 自分は外向的であると考え, 初対面の人物 (サクラ) に対して外向的に行動するようになることを示した。そして, この行動に対する影響の程度は, 通俗的心理テストと学術的な心理テストの間で同じであった。これは, 通俗的心理テストの結果のフィードバックが, 学術的心理テストのそれと同じ程度に, 人々の行動に影響し, 自己成就現象を引き起こしうることを示唆している。実験の結果は, また, 通俗的心理テストと学術的心理テストは, 行動への影響では違いがないが, 心理的安寧への影響では違いがあることを示した。通俗的心理テストのほうが, 学術的心理テストよりも, 心理的安寧を与えていた。また, 筆者たちは, 補足的調査を行って, それぞれのフィードバック文の特徴を調べた。
著者
吉川 肇子
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.45-54, 1989-08-20 (Released:2010-02-26)
参考文献数
23
被引用文献数
2 1

ポジティヴな評価の印象 (好印象) よりも, ネガティヴな評価の印象 (悪印象) の方が, 持続しやすく, 覆しにくいことを明らかにした。あわせて, 帰属の違いを変数として導入し, 印象変化との関連を検討した。被験者は95名の男女大学生であり, 刺激人物の行動を記述した文章を与えて, はじめの印象を形成させた。10分間のディストラクション課題をはさんで, はじめの印象と反対の情報を与え, 印象の変化を分析した。さらに1週間後, 印象評定のみを行い, 印象の持続を調べた。帰属の違いは, はじめに与える刺激文中で操作した。仮説は次の通りである: 1) 悪印象は好印象よりも覆しにくい。2) 悪印象は好印象よりも持続しやすい。3) 悪印象であれ, 好印象であれ, 状況帰属されるよりも傾性帰属される方が, 印象は残りやすい。実験の結果, 仮説1), 2) ともに支持された。帰属の操作は有効でなかったために, 仮説3) は検証できなかった。さらに, 活動性の次元の印象の変化の分析から, 印象の残りやすさには, 何を最頻的と考えるかということが決め手となるという, 各次元共通のメカニズムが働いていることが示唆された。
著者
油尾 聡子 吉田 俊和
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.1-11, 2013

社会的迷惑行為の抑止方法には,禁止や制裁といった方法が取られることが多い。しかし,これらの方法は迷惑行為者の反発心を喚起させるため,長期的にみて抑止効果が弱い。本研究は,これらの方法の問題点を解決すると考えられる報酬による社会的迷惑行為の抑止効果を実証したものである。具体的には,社会的迷惑行為の行為者に対して認知者が好意の提供(親切な行動)を行うことによって,そうした行為が抑止されるのかどうかを検討した。好意を提供された迷惑行為者は,"好意を与えてくれた他者に対して,同様のお返しをしなければならない"という互恵性規範が喚起され,社会的迷惑行為を抑制すると予測された。大学生153名を対象とした実験室実験の結果,飲み物を振る舞ってもらうことを通して好意を提供された迷惑行為者の中で,特に,互恵性規範が喚起されやすかった人々は,社会的迷惑行為を抑制するよう動機づけられることが示された。最後に,好意の提供による社会的迷惑行為の抑止方法は,迷惑行為者と迷惑認知者の感情的反応と関係性の良好さをも配慮した長期的に有効可能性の高い方法であることが考察された。<br>
著者
林 直保子 与謝野 有紀
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.27-41, 2005
被引用文献数
6

高信頼者は低信頼者に比べ他者の信頼性の欠如を示す情報に敏感に反応するという小杉・山岸(1998)の結果を4つの研究で検討した。調査1では,小杉・山岸(1998)で用いられた一般的信頼感の指標が,一般的信頼感のレベルと他者の信頼性情報への反応パターンの間の関係を検討するための適切な指標となっていなかった点を指摘した。調査1の結果に基づき,2つの実験とひとつの郵送調査では,一般的信頼感として異なるものを用いた。結果は,低信頼者が他者のポジティブ人格情報に敏感に反応し,対象となる人物を信頼するようになることを示していた。3つの研究から,高信頼者と低信頼者は対称な反応パターンを有しており,いずれも社会的な機会を拡大するという点で適応的であることが示唆された。<br>
著者
相澤 寛史
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.131-145, 2003-03-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
48
被引用文献数
3 3

本研究では, 相手との対人関係から得られる成果と, 相手以外の関係からの成果, 相手への投資によって対人関係が維持されるとする投資モデルの精緻化を検討した。大学生 (N=414) の同性友人関係について1) 投資モデルにないが衡平理論の概念である怒りや罪悪感という感情も含めてコミットメントへの影響を調べた結果, コミットメントへは満足が大きな影響を与えていた。関係が続くか否かはその関係への満足により大きな影響を受けており, 投資モデルの概念のみでコミットメントの説明は十分であった。2) さらに我々の成果・相手の成果を用い, 成果概念を詳細に検討した。モデル中の対人関係より得られる成果を我々の成果・相手の成果と置き換えて共分散構造分析を行った。また, 同時に親密さごとについても分析を行った。その結果, 親密さが低くなるほど相手の成果を重視する傾向が見られた。怒りを除く全ての社会的交換変数及び罪悪感は親密になるにつれ大きくなった。投資の影響は少なく, 女性では親密になればなるほど投資がコミットメントを下げる (関係を崩壊する) 方向に働く傾向が見られた。全般的に投資モデルの変数から投資を除いた方がモデルの適合が良くなる傾向を示した。
著者
和田 実
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.153-163, 1994-11-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
21
被引用文献数
4 3

The purpose of this paper was to construct a romantic love attitude scale. Subjects were 182 (71 male and 111 female) undergraduates. From factor analysis, four factors were extracted: romanticism, romantic power, romantic love linked to marriage, and ideal romantic love. Validity of these scales was confirmed by sex and sex-role type differences, similar scale (pragma scale, liking and loving scale, and romanticism scale), and various aspects of romantic love experience and courtship: Females considered that romantic love was linked to marriage more than males. The more feminine they were, the more romantic they were and the more ideal romantic love they wished. Those who have loved some people at the same time wished less ideal romantic love than those who have not. Those who have dated with some people at one time didn't believe romantic power than those who had not. Those who loved someone one-sidedly or had one boy/girl friend believed romantic power than those who were not in love or dated with some people. The more people they have dated with, the less ideal romantic love they wished.
著者
中谷内 一也 大沼 進
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.187-200, 2003-03-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
37
被引用文献数
2 2

本研究の目的は, 千歳川放水路計画を取りあげ, 人々が環境リスクマネジメントの政策決定においてどのような合意形成のあり方を望むのかを検討することである。札幌市民から無作為抽出した成人324名を対象に質問紙調査を行った。調査結果から以下のことが明らかにされた。(1) 近傍一般市民の環境アセスメントへの広義の信頼を改善するためには, 事業者の不誠実な行為へのモニタリング機能を整備することが有効である。意図への期待が損なわれているときに, 専門的能力の高さをアピールしても効果はない。(2) 近傍一般市民が好意的に受け取る紛争解決方法はかなり強い当事者主義であり, 決定プロセスのどの局面においても利害関係者の意見を入れることを望む。これらの結果からもたらされるリスクマネジメント実務への示唆を検討した上で, さらに, 理論的な問題を議論した。
著者
田島 司
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.145-155, 2001-07-15 (Released:2010-06-04)
参考文献数
41

本研究の目的は, 日常生活における対人関係が実験場面における内集団バイアスと協力行動とに与える影響を検討することである。87名の女性の調査対象者は, 日常での対人関係に関するいくつかの質問に回答するよう求められた。その回答によって, 他者との同一化の程度と, 自己の役割を顧みている程度が測定された。実験参加者は無作為に2つの集団のどちらか一方に所属するよう割り振られ, その後集団成員の属性について評価するよう求められた。また, 被験者は社会的ジレンマ状況におかれ, 100ポイントを自己と内集団とに対して分配するよう求められた。実験の結果は以下の通りである, (a) 能力評価における内集団バイアスは家族との同一化と負の相関関係にあった, (b) 協力的分配は家族での自己の役割を顧みる程度と正の相関関係にあった。
著者
吉田 綾乃 浦 光博
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.120-130, 2003-03-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
30
被引用文献数
6 3

自己卑下呈示を通じて適応が促進される過程は2つある。ひとつは自己卑下呈示を行うことそれ自体によって適応が直接的に促進される過程であり, もうひとつは自己卑下的に呈示した内容を他者から「そんなことはない」と否定する反応を受け取ることによって, 間接的に適応が促進される過程である。このような影響過程は, 自己卑下呈示規範を内在化する程度によって調整されることが考えられる。自己卑下呈示に対して他者が返す“否定反応”は, 受け手がその呈示を“卑下”として受け取ったことを示している。自己卑下呈示規範内在化高群は, 自己卑下呈示を行う際に否定反応が返されることを当然視しているが, 低群はそのように見なしていない。そのため, 低群にとって自己卑下呈示に対して“否定反応”が返されることが重要であると考えられる。本研究では, 3ヶ月の期間をおいた縦断的な調査において, 自己卑下呈示規範内在化高群では直接的な適応促進効果が見れるのに対して, 低群では間接的な適応促進効果が見られるだろうと予測し, 検討を行った。仮説はおおむね支持された。考察では, 直接的・間接的な効果が, 対人間適応あるいは個人内適応のいずれに影響を及ぼしていたのかを明らかにする必要性について論じられた。
著者
堀毛 一也
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.116-128, 1994
被引用文献数
12 10

本研究では, これまで行われてきた異性関係スキル研究の問題点を整理するとともに, 1) 異性関係スキルの分類および基本的スキルとの関連性の検討, 2) 関係の発展・崩壊とこれらのスキルの関連性の検討という2点を目的とした調査研究を行った。そのためにまず, 現在進行中の恋愛体験について, 熱中度や, 類似性, 重要性などいくつかの項目で評定を求めた。また, 過去の失恋体験についても, ショックの大きさ, 関係から得た自信などについて評定を求めた。同時にオリジナルに開発した社会的スキル尺度 (ENDE2) と異性関係スキル尺度 (DATE2) により, 基本スキルと異性関係スキルの測定を行った。因子分析の結果, ENDE2では, 男子4因子, 女子3因子が得られた。このうち記号化スキルと解読スキルはどちらにも共通に含まれていた。DATE2の分析からは, 男子7因子, 女子6因子が抽出された。2つのスキル間の関連性を検討したところ, 女子では記号化・解読スキルと異性関係スキルの問に中程度の相関が見られた。一方男子では, 基本スキルのそれぞれが, 異性関係スキルの諸因子と別個の相関を示していた。この結果は, デート場面でイニシアチブを求められることにより, 男子は多様なスキルを早めに高め, 状況に応じて使い分けることが必要になるものと解釈された。<BR>また, 現在進行中の恋愛関係とスキルの関連を分析した結果, 異性・基本スキルとも関係の発展と共に高まる傾向が示されたが, その発展の過程には明確な性差がみられた。男性は, 発展の初期に相手への情熱を高め, スキルを洗練させてゆく傾向があった。これに対し, 女性は相手の特性を慎重に検討し, 関係が重要であるという認識を得た後に, 急速にスキルを発展させることが明らかになった。さらに, 過去の失恋体験もスキルの向上に影響しており, 男性では過去の失恋から得た自信やショックの大きさがスキルの向上と有意な関連をもっていたのに対し, 女性では自分から強い愛情を示しながら失恋した場合にはスキルが高まるが, それ以外に過去体験との関連はみられなかった。これらの知見はこれまでの恋愛や失恋に関する研究結果を支持するものと考えられる。
著者
坂元 章 三浦 志野 坂元 桂 森 津太子
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.87-101, 1995-07-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
20

本研究の目的は, 通俗的心理テストの結果のフィードバックが, 人々の, 自己イメージ, 更には, 行動に影響するかどうか, また, その影響の強さが, 学術的な心理テストのそれと異なるかどうかを検討することであった。筆者たちは, 1つの実験を行い, 64名の女子の被験者を2つの群に分け, 1つの群には通俗的心理テストに回答させ, もう1つの群には学術的心理テストに回答させた。そして, それぞれの群の半分には, 外向性の偽のフィードバックを与え, もう半分には, 内向性の偽のフィードバックを与えた。実験の結果は, 外向性のフィードバックを受けた被験者が, 内向性のフィードバックを受けた被験者に比べて, 自分は外向的であると考え, 初対面の人物 (サクラ) に対して外向的に行動するようになることを示した。そして, この行動に対する影響の程度は, 通俗的心理テストと学術的な心理テストの間で同じであった。これは, 通俗的心理テストの結果のフィードバックが, 学術的心理テストのそれと同じ程度に, 人々の行動に影響し, 自己成就現象を引き起こしうることを示唆している。実験の結果は, また, 通俗的心理テストと学術的心理テストは, 行動への影響では違いがないが, 心理的安寧への影響では違いがあることを示した。通俗的心理テストのほうが, 学術的心理テストよりも, 心理的安寧を与えていた。また, 筆者たちは, 補足的調査を行って, それぞれのフィードバック文の特徴を調べた。
著者
中村 雅彦
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.132-146, 1991-11-20 (Released:2010-02-26)
参考文献数
31
被引用文献数
4 2 7

The purpose of this study was to investigate how heterosexual interaction including cognitive and behavioral aspects varies in terms of love styles, satisfaction, and commitment. A questionnaire survey was conducted for one hundred and fifty two college students who were engaging in romantic relation-ships. Respondents answered measures on their current interaction, and on perceived similarity with their partner. They had also rated love style measure based on Lee (1977) 's typology of love, and social exchange measures incuding satisfaction and commitment with partner. Multiple regression analyses showed that Erotic love style was dominant in romantic relationship. That is, Eros was positively afected by exchanges of self-disclosure, giving money and goods, meta-commnication, and perceived similarity. Those results were generally consistent, regardless of respondents' gender, relationship length, and intimacy status. It was also revealed that commitment for partner was generally determined by self-investment, relationship satisfaction and CLalt, supporting the prediction from Rusbult (1983) 's investment model. On the other hand, equity of outcomes had little effect for satisfaction, and commitment.
著者
菊地 雅子 渡邊 席子 山岸 俊男
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.23-36, 1997-06-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
46
被引用文献数
20 20

他者一般の信頼性についての信念である一般的信頼の高さが必ずしもその人の騙されやすさを意味しないというRotter (1980) の議論, および高信頼者は低信頼者よりも他者の信頼性 (ないしその欠如) を示唆する情報により敏感であるという小杉・山岸 (1995) の知見を, 情報判断の正確さにまで拡張することによって導き出された「高信頼者は低信頼者に比べ, 他者の一般的な信頼性についての判断がより正確である」とする仮説が実験により検討され, 支持された。この結果は, 他者一般の信頼性の「デフォルト推定値」としてはたらく一般的信頼の高低と, 特定の他者の信頼性を示唆する情報が与えられた場合のその相手の信頼性の判断とは独立であることを示している。すなわち, 高信頼者は騙されやすい「お人好し」なのではなく, むしろ他者の信頼性 (ないしその欠如) を示唆する情報を適切に処理して, 他者の信頼性 (ないしその欠如) を正確に判断する人間であることを示唆している。最後に, 社会環境と認知資源の配分の観点からこの知見を説明するための一つのモデルが紹介される。
著者
Goun Park Keiko Ishii
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
pp.2218, (Released:2023-10-31)
参考文献数
16

Scholars have explained political orientation and morality as a consequence of epistemic needs and empathic motivation. In this study, we replicate previous research on the influence of psychological states on moral foundations, system justification, and political orientation among Japanese participants. Consistent with previous findings, empathy is positively associated with care and fairness (called individualizing foundations) whereas epistemic needs to manage certainty (e.g., need for closure) are positively associated with ingroup loyalty, respect for authority, and purity (called binding foundations). Empathy and the need for closure indirectly affect political orientation and system justification through their influence on moral foundations. Contrary to previous findings, we find empathy to be positively associated with binding foundations whereas the need for closure is positively associated with individualizing foundations. We discuss the implications of these findings to show that moral foundations are a result of motivated social cognition.
著者
工藤 力 西川 正之
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.99-108, 1983-02-20 (Released:2010-11-26)
参考文献数
36
被引用文献数
45 33

本研究は, Russellら (1980) の開発した改訂版UCLA孤独感尺度の邦訳版を作成し, その信頼性と妥当性を検討することを目的とした。被調査者は, 学生, 一般社会人, 入院治療中のアルコール依存症患者, 合計975名である。孤独感尺度のほかに, 社会的行動, および身体的徴候に関する自己評定尺度, 家族との愛情関係測定用のSDスケール, 自尊心尺度, CPI 10が用いられた。主要な結果は, 以下の通りである。(1) 孤独感はアルコール依存症患者で最も強く, 次いで, 男子の大学新入生, 30代~40代の一般社会人の順であった。しかし, 平均的にみると, 大学生に比べて一般社会人の方が有意に強い孤独感を示していた。(2) 孤独感の性差に関しては, 大学新入生においてのみ見出された。(3) 孤独感尺度の信頼性は, 上位・下位分析, α係数, 折半法, 再検査信頼性係数により吟味されたが, いずれの場合も本尺度の信頼性が充分であることを示している。(4) 孤独感尺度の妥当性は, 孤独感の行動的対件, 社会的関係の認知, 家族との愛情関係, 身体的徴候の現出, 自尊心尺度とCPI 10尺度との対応, 一般社会人とアルコール依存症患者の比較などにより検討されたが, いずれの場合も併存的妥当性が充分であることを示した。(5) 補足的な結果として, 母親との愛情関係 (経験) は, 孤独感の強さを規定するものであることが示唆された。今後は, 本尺度を使用して, 孤独感に陥る原因の解明や, 孤独感の永続化に寄与する要因の分析, 孤独感解消のための対処行動の様態, さらには孤独感の因果帰属が感情反応や対処行動, さらには自尊心に及ぼす影響などを明らかにする必要があるように思われる。
著者
増田 匡裕
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.164-182, 1994-11-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
14
被引用文献数
6 4

The present study examined exclusivity in heterosexual romantic relationships and its effects on the possibility of the maintenance of these relationships. More than others, romantic relationships are characterized by exclusivity, which establishes the boundary of a romantic group. This aspect of romantic relationships can be inferred from the manner in which people act toward the other, namely, the ritual acts which define the relationship as exclusive and proscribe extradyadic ties of the same kind. The nature of these rituals depends on the larger and the mini-culture peculiar to the dyad. From this perspective, exclusivity is reflected in the extent which individuals would accept their partner or themselves participating in extradyadic heterosexual relations. Hence, dyadic exclusivity can take one of four values: high-high, high-low, low-high, and low-low. A questionnaire was administered to one-hundred-thirty-six couples which allowed us to classify them into the above four types and to assess perceived dyadic stability. Exclusivity was found to have considerably less impact on stability for the male partner than for the female partner. Females regarded high exclusivity as indispensable, whereas males gave most weight to both partners agreeing about the proper degree of exclusivity. Agreement between partners about exclusivity, however, is relatively hard to occur after short acquaintance. These and other findings suggest that exclusivity is an important factor not only for explaining the cohesiveness of romantic dyads but also for understanding their development.
著者
小平 英志
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.165-174, 2002-04-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
23
被引用文献数
1 2

本研究の目的は, (1) どの程度の被調査者が理想自己と義務自己の2種類の自己指針を区別しているのかを確認すること, (2) 現実-理想不一致と現実-義務不一致がそれぞれ自己肯定感, 自己否定感と強い関連があるという自己不一致理論 (SDT) の想定を, 優越感・有能感自己嫌悪感を指標に検証すること, (3) 現実-理想不一致, 現実-義務不一致と優越感・有能感, 自己嫌悪感との関連における相対的重要性の影響を検討することであった。女子大学生219名を対象に, 自己不一致測定尺度, 優越感・有能感尺度, 自己嫌悪感尺度, 及び自己指針に関する質問票が実施された。その結果, 理想自己と義務自己を異なる状態であるとした被調査者は4割ほどであり, 同じ状態であるとする被調査者が3割以上確認された。自己不一致と優越感・有能感自己嫌悪感との関連では, 現実-理想不一致は優越感・有能感, 自己嫌悪感の両方と, 現実-義務不一致は自己嫌悪感とのみ関連が有意であった。続いて, 相対的重要性から理想自己重視群, 義務自己重視群, 両自己重視群の3群に分割し, 偏相関係数を算出した。その結果, 理想自己を重視する群では, SDTの想定通り, 現実-理想不一致と優越感・有能感, 現実-義務不一致と自己嫌悪感との問のみに有意な関連が見られた。義務自己を重視するとした被調査者は全体の15%未満であり, いずれの偏相関係数も有意ではなかった。両方の自己を重視している群では, いずれの偏相関係数も有意ではなかった。本研究の結果から, 少なくとも理想自己を重要であるととらえる被調査者においては, 自己不一致と感情との弁別的関連がより明確になる可能性が示唆された。
著者
中丸 茂
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.52-63, 2001-12-25 (Released:2010-06-04)
参考文献数
31

本論文では, 随伴性の心理学の観点より, 文化心理学のパラダイムを理論的に分析し, 文化と文化的行動についての心理学的研究を発展させるための理論的知見, および, 新たなる研究テーマを提出することを目的とする。随伴性の心理学の観点による文化心理学的研究への提言として, (1) 心理学的法則 (人間の行動) を形成・維持・変容させる条件づけの手続きは, 文化間で共通である, (2) 文化による心理学的法則の違いが生じるのは, そこで使用される刺激や条件づけられる行動が文化によって違うからである, (3) 心理学の目的は, 心理学的法則の発見のみならず, 法則を形成・維持している手続きを発見することもその目的であり, その観点より, 文化によって, よく使用される手続きの発見も重要である, (4) 手続きに対する解釈の違いは, 文化によって異なっており, そのことから, 手続きの有効性も異なってくることが予測される, (5) 文化を理想化すれば, 文化を実験室で再現でき, 実験室レベルでの文化心理学的研究が可能である, という点があげられる。