著者
山木田 和哉 山田 浩史 河野 健二
雑誌
研究報告 システムソフトウェアと オペレーティング・システム(OS)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.4, pp.1-11, 2011-07-20

可用性の高いサービスを実現するために,オペレーティングシステム (OS) には高い信頼性が求められる.しかし,現在の OS 内部には多くのバグが含まれており,カーネルクラッシュの原因となっている.古くからカーネルクラッシュに対し広く用いられているリカバリ手法として,OS の再起動が挙げられる.OS 再起動はシンプルかつ強力なリカバリ手法であり,カーネルクラッシュの原因を特定せずとも,システムを復旧することができる.しかし,OS の再起動には時間を要するという問題点も存在する.これは,OS 再起動がハードウェアやカーネルの初期化など,多くの煩雑な手順を踏まなければならないためである.そこで本研究では,システム起動フェーズの再現性に着目した OS の再起動高速化手法 Phase-based Reboot を提案する.Phase-based Reboot では,OS 起動時の動作を実行フェーズ毎に分割して,システムの状態を保存する.そして,OS 再起動時に,過去の OS 起動時と同じ動作をする場合は,過去の実行フェーズを再利用することで,迅速に再起動と同等の効果を得る.また,Phase-based Reboot を Xen 3.4.1 上で稼働する Linux 2.6.18 内に実装し,評価実験を行った.実験では,既存の OS 再起動に要する時間を約 34% から 94% 削減できることを確認した.Although operating systems (OSes) are crucial to achieving high availability of computer systems, modern OSes are far from bug-free. Rebooting the OS is simple, powerful, and sometimes the only remedy for kernel failures. Once we accept reboot-based recovery as a fact of life, we should try to ensure that the downtime caused by reboots is as short as possible. Unfortunately, OS reboots involve significant downtime, which is unacceptable in commercial services. This paper presents "phase-based" reboots that shorten the downtime caused by reboot-based recovery. The key idea is to divide a boot sequence into phases. The phase-based reboot reuses a system state in the previous boot if the next boot reproduces the same state. A prototype of the phase-based reboot was implemented on Xen 3.4.1 running para-virtualized Linux 2.6.18. Experiments with the prototype show that it successfully recovered from kernel transient failures inserted by a fault injector, and its downtime was 34.3 to 93.6% shorter than that of the normal reboot-based recovery.
著者
白子 準 吉田 宗弘 押山 直人 和田 康孝 中野 浩史 鹿野 裕明 木村 啓二 笠原 博徳
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌コンピューティングシステム(ACS) (ISSN:18827829)
巻号頁・発行日
vol.47, no.12, pp.147-158, 2006-09-15
参考文献数
27
被引用文献数
11

半導体集積度の向上にともなう消費電力の増大,集積トランジスタ数の増化に対する処理性能向上の鈍化に対処するため,チップ上に複数のプロセッサを集積するマルチコアアーキテクチャ(チップマルチプロセッサ)が大きな注目を集めている.このようなマルチコアアーキテクチャの能力を最大限に引き出し,高実効性能・低消費電力を達成するためには,プログラムの適切な並列化に加えチップ上のリソースのきめ細かな電圧・動作周波数制御を実現するコンパイラが必要不可欠である.本論文では,各プロセッサコアが等価であるOSCARタイプのマルチコアプロセッサにおいて,各プロセッサの電源のON/OFF・周波数電圧制御(FV制御)をマルチグレイン並列化環境下でコンパイラが適切に判断し低消費電力化を行うコンパイル手法を提案する.提案手法を実装したOSCARコンパイラにより,科学技術計算とマルチメディアアプリケーションに対する評価を行った結果,SPEC CFP95 appluにおいて4プロセッサ使用時に最小実行時間を維持したまま60.7%の消費エネルギー削減,MPEG2エンコーダにおいて4プロセッサ使用時にデッドライン制約を保証したまま82.7%の消費エネルギー削減が達成された.A chip multiprocessor architecture has attracted much attention to achieve high effective performance and to save the power consumption, with the increase of transistors integrated onto a chip. To this end, the compiler is required not only to parallelize program effectively, but also to control the volatage and clock frequency of computing resources carefully. This paper proposes a power saving compiling scheme with the multigrain parallel processing environment that controls Voltage/Frequency and power supply of each core on the multiprocessor. In the evaluation, OSCAR compiler with the proposed scheme achieves 60.7 percent energy savings for SPEC CFP95 applu using 4 processors without performance degradation, and 82.7 percent energy savings for MPEG2 encoder using 4 processors added deadline constraint.
著者
竹内 実
出版者
京都産業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

受動喫煙による肺の免疫で重要な肺胞マクロファージの染色体異常への影響について、受動喫煙(タバコ副流煙自動喫煙)設備を作成し、マウスにタバコ副流煙を一定量均一に吸入させたCGH法により染色体異常を検討した。染色体異常は有意に増幅した部位116箇所、欠損した部位169箇所であった。この結果をもとに、変動幅が大きかった上位10箇所のゲノム部位を抽出したところ、有意に増幅したおもなゲノム部位は、chr8のqE1,chrXのqF2,chr6のqG1, chr17のqA3であった。逆に有意に欠損したおもなゲノム部位は、chr3のqE3、chr5のqC3.1、chr13のqB3、chr16のqB3であった。
著者
木村 靖二 キムラ セイジ Seiji Kimura
雑誌
史苑
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.64-75, 1996-03 (Released:2012-11-21)
著者
新沼 久美
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国文学研究資料館紀要. アーカイブズ研究篇 (ISSN:18802249)
巻号頁・発行日
no.10, pp.121-138, 2014-03

聖路加看護大学の大学史編纂・資料室では2006年から収集したオーラルヒストリーのデータ45件分を保管している。これらのオーラルヒストリーの収集手法を分析し、課題を検討することを通して、大学アーカイブズにおいてオーラルヒストリーを収集するにあたり必要となる作業について考察した。大学アーカイブズにおけるオーラルヒストリーの位置づけを大学組織運営の経営知としての資料、大学活動の主体者である学生(卒業生)の活動に関する資料の2つに限定して捉え、そのうえで大学アーカイブズでオーラルヒストリーを収集する際には、実施概要の作成、本人校正、公開・保存の同意書取得、データベース化、利用規程整備が必要な行程としてあげられることを示した。This study considers necessary steps to collect oral history at college archives, through examining the method how to collect the oral history which St. Luke's college of nursing archives did previously.First it is proposed that oral history is the collection of 1) the records of college management, and 2) the one of student activity. Then in order to archive oral history as college archives, it is concluded that 5 steps are required; recording process of project, interviewee's proofreading, permission to use the interview, online catalog, and use policy.
著者
牧迫 飛雄馬 古名 丈人 島田 裕之 赤沼 智美 吉田 裕人 井平 光 横山 香理 鈴木 隆雄
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 = The Journal of Japanese Physical Therapy Association (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.27-33, 2011-02-20
被引用文献数
4

【目的】75歳以上の高齢者における新規要介護認定の発生に対する歩行能力の影響を明らかにすることを目的とした。【方法】要介護認定を受けていない75歳以上の地域在住高齢者190名を対象とした。ベースライン調査として5m歩行時間(通常速度)を測定し,以降39ヵ月間の要介護認定発生状況との関連を調べた。【結果】39ヵ月間で34名(17.9%)が新規に要介護認定を受けた。5m歩行時間を男女別に4分位で速い群から遅い群のI〜IV群に分類し,要介護発生率曲線の差をLog-rank検定にて検討した結果,5m歩行時間が遅いIV群(男性5.2秒以上,女性5.8秒以上)では,それ以上に速い歩行速度を有する群(I〜III群)と比べて有意に高い要介護認定発生率を認めた(p<0.01)。Cox回帰分析の結果,新規要介護の発生と有意な関連を認めた変数は,BMIと5m歩行時間(秒)であり,5m歩行時間のハザード比は1.65(p<0.01)であった。【考察と結論】地域在住後期高齢者の歩行速度は,将来の要介護認定発生に影響を与える要因のひとつであることが確認された。
著者
山田 磯夫
出版者
[出版者不明]
巻号頁・発行日
2012

制度:新 ; 報告番号:乙2373号 ; 学位の種類:博士(文学) ; 授与年月日:2012/12/19 ; 早大学位記番号:新6129
著者
織原 義明
出版者
おりはらよしあき事務所
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

研究の目的)平成20年度科学研究費補助金(奨励研究)による地震予知意識調査で、山形県内の8割以上の中高生が地震前の動物異常行動を少なからず信じていることなどが明らかとなった。本研究では、地震前の動物異常行動などの宏観異常現象を人はなぜ信じるのか、その理由を探る。また、東日本大震災前の宏観異常現象について、三陸海岸における現地調査で証言を得る。さらに、教員を目指す大学生を対象に宏観異常現象や疑似科学に対する意識を調査し、その傾向を明らかにする。研究方法)インターネット上で宏観異常現象(動物異常行動・地震雲・電気製品の異常)に関して、なぜそれを信じるのかを尋ねるアンケート調査を実施した。三陸海岸では、東日本大震災前の宏観異常現象に関する聞き取り調査を実施した。また、教員を目指す大学生を対象に、宏観異常現象や疑似科学に対する意識についてアンケート調査を実施した。研究成果)インターネットによる調査では、動物異常行動・地震雲・電気製品の異常、いずれにおいても「必ずある」と答えた回答者は「あるかもしれない」の回答者より、自らの体験でそれを信じる傾向にあることなどがわかった。また、この3つのなかでは、動物異常行動を信じる割合が最も高く、次いで地震雲、電気製品の異常となった。この傾向は山形県の中高生調査の結果と同じであった。三陸海岸での聞き取り調査では、大船渡市におけるカラスの異常行動の証言や、昭和三陸大津波で異常があったと報告されている井戸で、東日本大震災の前に水位が下がっていた可能性などが明らかとなった。教員を目指す大学生へのアンケート調査では、心霊現象・超能力・血液型占いのいずれについても、肯定的に捉える学生より否定的に捉える学生が多かった。しかし、地震前の動物異常行動を少なからず信じる割合は8割以上であった。

2 0 0 0 OA 教員文庫

出版者
同文館
巻号頁・発行日
vol.第6編, 1900
著者
播本 秀史 ハリモト ヒデシ Hideshi Harimoto
雑誌
キリスト教学
巻号頁・発行日
vol.43, pp.11-21, 2001-12-25
著者
目黒 強
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本年度は、明治から昭和にかけて広く読まれた雑誌である『日本少年』(実業之日本社)を取り上げ、大衆青少年雑誌における不良少年像を検証した。『日本少年』を検証するに際して、二つの理由から、ジャンル小説に注目することにした。第一の理由は、青少年像が典型的に表現されていることが予想されるからである。第二の理由は、「物語」という形式が読者に対する青少年像の伝達を補助していると考えられるからである。そこで、『日本少年』におけるジャンル小説を検証したところ、「立志小説」(「悲哀小説」を含む)・「冒険小説」・「探偵小説」・「滑稽小説」の四つのジャンルにおいて、青少年像の傾向に違いが認められた。とりわけ、上述のジャンル小説のうち、「立志小説」(「悲哀小説」を含む)と「探偵小説」において、本研究の目的である「学歴社会から疎外された青少年像」が提示されていることが判明した。「立志小説」(「悲哀小説」を含む)においては、苦学型の立身出世が描かれる傾向にあった。とりわけ、有本芳水の「悲哀小説」では、主人公の置かれた境遇が学歴社会から疎外された者の悲哀として強調されていたことからもうかがえるように、明治中期までのような楽観的な立身出世物語からの変容を指摘することができる。「探偵小説」においては、犯罪者が成人として描かれることが多いことに加えて、未成年者が犯罪者集団に含まれる場合には外国人として描かれていたことから、日本人の不良少年を描くことに消極的であったことが指摘することができる。

2 0 0 0 OA 日本文典

著者
佐々政一 著
出版者
金港堂
巻号頁・発行日
vol.巻1, 1902