著者
木村 直弘 KIMURA Naohiro
出版者
岩手大学教育学部
雑誌
岩手大学教育学部研究年報 (ISSN:03677370)
巻号頁・発行日
vol.68, pp.81-106, 2009-02-28

日韓文化の比較研究で知られる李御寧イオリョンは、日本語について次のように指摘している。 ごく日常的な言葉でも、日本語を習う時にいつも苦労するのは、日本語はあまりに厚化粧していて素顔の意味が隠されていることだ。要するに、言葉の表と裏のズレである。激しい場合には、言葉自体の意味とそれが示していることが、まるっきり反対のことがあるからである(1)。 韓国語ではなるべく事実を「包み」込まないで伝えようとするのに対し、日本語の場合、物事を示すというよりはそれを「包む」といった感覚が強いと主張する李は、この相違の由来を日本における「包み文化」と「奥の美学」に措定する。「隠すことによってその特性をあらわす」前者は必ずしも日本の専売特許ではなくアジア一般に見られる特徴でもあるが、特に日本の場合、それは「形式論理では割り切れないパラドックスを生かした文化(2)」として特徴づけられる。「包む」ことによって「奥」を創出する後者も同様であり、「包むことによって、奥に隠すことによって、そして逆に心が表にあらわれるパラドックス(3)」の上に成り立っている。そして、それは「日本人らしさ」の要因のようにみなされている「慎ましさ」(「包む」=「慎む」)や「奥床しさ」が根差す文化的基底と言いうる。 前稿(4)では、喪葬という霊魂にかかわる両義的時空間に介在する哭声とその騒音性に着目し、そこに付された儀礼的機能の変遷に焦点をあてて論じたが、「つつみ隠す」という国風文化的心性と古代以来の「言霊思想」や、竹筒に通ずる「つつむ」構造を持った鼓つづみについての考察を割愛せざるをえなかった。そこで、この小論では前稿を補足するものとして、慎つつむ=「包む」というすぐれて日本的な表現方法について、楽器の象徴論や、「ツツミ」に関連する「ウツ」「コト」といった言葉の意味論、そしてそこに看取できる境界的な可逆性、往還性といった視座から光をあてることを目的としている。
著者
吉田 岳人 矢野 正基 堀川 健一郎 佐藤 啓太 南 翔太 繁野 麻衣子
雑誌
研究報告数理モデル化と問題解決(MPS) (ISSN:21888833)
巻号頁・発行日
vol.2018-MPS-117, no.3, pp.1-6, 2018-02-22

近年,ライドシェアリングは広く注目を集めているが,その中でもタクシー相乗りは効果が高いことが期待されている.本研究では,イベントへの参加などで共通の目的地のある乗客のタクシー相乗りの可能性を探る.タクシー相乗り問題では通常移動コストの最小化を扱うが,ここでは,タクシーの総走行距離が長くならない中で,乗客の総移動距離を最小化することを目的とする.この問題を混合整数線形計画問題として定式化するとともに,乗車人数に制限がある場合に対する厳密アルゴリズムと制限がない場合に対するヒューリスティックアルゴリズムを提案する.そして,数値実験により,ヒューリスティックアルゴリズムの解が適切であることを検証し,さらに,得られた解の相乗り方法と支払料金から評価して妥当性を示す.
著者
三浦 直是 山本 広志
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要. 教育科学 = Bulletin of Yamagata University. Educational Science
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.213-223, 2011-02-15

There is a hypothesis that most characters in Japanese manga are modeled on the white races even if they are Japanese. In order to verify this hypothesis, (1) the ratios of eyes, mouths and noses to the faces, (2) the aspect ratios of length and breadth of the faces, and (3) the colors of hair, irises and skin of the sixty main characters in sixty popular manga were analized, and then compared to those of the Japanese and the White. As a result, (1) and (2) did not fit either the facial features of the Japanese or the White. They are completely different from existent features. Then, (3) turned out to fit those of the Japanese in manga for male readers, while those in manga for females varied including nonexistent colors of hair and irises. In addition, the same characters in manga for females are often drawn in unexpectedly different colors
著者
山田 寿則
出版者
文教大学
雑誌
文教大学国際学部紀要 = Journal of the Faculty of International Studies Bunkyo University (ISSN:09173072)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.141-161, 2017-07-31

In this paper we will examine the legal situation on the threat or use of nuclear weapons andhow the legal argument progresses under the humanitarian approach to nuclear disarmamentas preliminary observations for the treaty to prohibit nuclear weapons on which now are undernegotiations.The upcoming treaty is based on the assertion that it is legally required to identify and pursueeffective measures to fill the legal gap for the prohibition and elimination of nuclear weapons. Butwith regard to the threat or use of nuclear weapons, there is no gap in the law. International Courtof Justice (ICJ) identified several legal principles and rules applicable to nuclear weapons in its1996 Advisory Opinion. Its “non liquet ” on “an extreme circumstance of self-defence” was causedby inappropriate application of the principles and rules to nuclear weapons inadequately for somereasons.All Nuclear Weapon States explicitly or implicitly acknowledge the application of internationallaw, and especially international humanitarian law (IHL) to nuclear weapons. Under the discourse ofthe humanitarian approach to nuclear disarmament, many states and commentators also insist theiropinions on the premise of applicability of IHL. There is gap not in the law, but in application of the law.Against this legal background, the upcoming treaty should be carefully formed to strengthen thelaw against nuclear weapons.
著者
山田 寿則
出版者
文教大学
雑誌
文教大学国際学部紀要 = Journal of the Faculty of International Studies Bunkyo University (ISSN:09173072)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.103-125, 2018-01-31

On July 7, 2017, Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons (TPNW) was adopted at theUnited Nations Conference to Negotiate a Legally Binding Instrument to Prohibit Nuclear Weapons,Leading Towards their Total Elimination. This paper examined each preamble paragraph or articleof the treaty in order to make it clear what feature the treaty has. To begin with, TPNW is based onthe so called Humanitarian Approach to Nuclear Disarmament, which attempts to stigmatize, prohibitand abolish nuclear weapons. Besides this, the treaty has an opportunity to de-legitimatize them.Secondly, TPNW compliments and reinforces the Non-Proliferation Treaty (NPT). Lastly, TPNWembodies the entry point for Nuclear Weapon Free World. However, there are some strong argumentsagainst TPNW: non-effectiveness, breaking down the NPT regime and disregarding national security.TPNW needs to address those challenges in order to attain and maintain the world without nuclearweapons. We will see the entering into force of the treaty in coming years. At the same time, the focusof nuclear disarmament and non-proliferation is in the relationship between TPNW and NPT in thecourse of current review cycle of NPT to 2020.
著者
岡崎直観 乾健太郎
雑誌
研究報告自然言語処理(NL)
巻号頁・発行日
vol.2014-NL-217, no.8, pp.1-5, 2014-06-26

単語の意味ベクトルを大規模コーパスから学習するためのツールとして,Mikolov らの手法 [14] を実装した word2vec が注目を浴びている.本論文は,word2vec を複数のプロセッサで並列で動作させた時に学習速度が低下する原因を説明し,これを改善するアルゴリズムを提案する.提案手法は学習で得られる単語ベクトルの質を落とすこと無く,複数のプロセッサを効率よく利用できることを実験的に示す.
著者
大江 準三
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.45, no.10, pp.1054-1056, 2004-10-15

最近の自動車開発においては,環境への適応,安全性能向上,さらには情報通信技術によるつながる機能の高性能化など,社会と高度に共存するための機能開発が進められている.本稿では,いつでも,どこへでも安全・安心・快適に移動できる自動車の魅力をさらに進化させた情報通信技術を中心とした最新技術について解説を行う.
著者
堂前 友貴 関 洋平
雑誌
情報処理学会論文誌データベース(TOD) (ISSN:18827799)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.1-13, 2014-09-26

Twitterにおいて,ユーザの生活に関わる地域は,社会行動の分析において重要な属性の1つであるが,プロファイルに明示的に記述されていることは少ない.本研究では,Twitterユーザを対象として,半教師ありトピックモデルを利用した地域特徴語の選択に基づく,生活に関わる地域属性の推定手法を提案する.本研究では,半教師ありトピックモデルにより地域に特徴的な語を選択する.具体的には,地域情報サイトから収集した地域特徴語を含むツイートを教師データとした,半教師ありトピックモデルにより,地域に特徴的なトピックを抽出する.そして,トピックから選定した地域特徴語を使用し,ツイートごとに地域ラベルを付与する.各ユーザの生活に関わる地域は,ユーザのツイートに割り当てられた地域ラベルに基づき推定する.提案手法に基づき,都道府県を,生活に関わる地域の単位とし,16の都道府県を対象として,ユーザの生活に関わる地域の推定実験を行ったところ,精度0.65,再現率0.67,F値0.66の評価値が得られた.
著者
山本 匡 坂間 千秋
雑誌
研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN)
巻号頁・発行日
vol.2011-GN-81, no.10, pp.1-7, 2011-09-08

本研究では近年 Web 上に見られるようになった 「物当てゲーム」 の知識循環性と概念の事例収集特性に着目し,このゲームを概念学習における事例収集のために用いる方法を提案する.本システムの特徴は,過去のゲーム結果から概念を学習し,その結果を新たな概念の学習に利用できることである.また,多くの人にプレイされることにより,獲得される概念が平均化される 「集合知特性」 を持つ.実験の結果,本システムではゲームを繰り返すことにより概念学習が行われ,ゲーム効率が向上することが確かめられた.
著者
大内 秀二郎
出版者
近畿大学商経学会
雑誌
商経学叢 = Shokei-gakuso: Journal of Business Studies (ISSN:04502825)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.169-189, 2004-07-01

【概要】日本では, 1950年代の電気洗濯機普及初期において, いわゆる家電メーカー以外の参入が多く見られた。 中でも日本電装(株)は, 参入以来1953年までは電気洗濯機市場において大きな成功を収め, 一時は業界第1位の市場シェアを獲得した。 しかし, 1954年以降, 激化する企業間競争の中で市場における地位を低下させ, 1958年に業界から撤退する。 本稿の目的は, 日本電装のマーケティング活動の分析を通じて, 1960年代以降電気洗濯機市場において大手家電メーカー間の寡占競争が展開されることになった要因を検討する上での示唆を提供することにある。【Abstract】 In 1950s, many 'non-electric goods makers' were entering the electric washing machine industry. Above all, Nippondenso Co., Ltd. (ND) had achieved brilliant success since its entry until 1953. However, after 1954, ND lost its market share and finally pulled out of the market in 1958. Through the case of ND, this paper aims to analyze the reason why non-electric makers had to withdraw from the electric washing machine industry, and to give suggestion as to what brought forth oligopolistic competition only between electric goods makers in 1960s.