著者
石田朗大 寺西教高 日隈美奈子
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.239-245, 2015-07-15

設計書や仕様書などのドキュメントが十分に整備されていないシステムについて,その利用や改修を行うためにソースコードの解析,ドキュメントの整備を行う場合,目的によっては必ずしもシステム全体を解析する必要がない場合も多い.課題に対してシステムの必要な部分のみを解析するといったことは,実務ではよく行われるが,その具体的な手法について体系的にまとめられたものはなかなか見受けられない.本稿では,公的年金財政検証プログラムを対象として,いかにして短期間でソースコードの解析を行い,プログラムの改修を行ったかについて,その実践事例を示す.設計書や仕様書を網羅的に作成するのではなく,目的に合った解析を集中的に行うことで,プログラム解析の工数削減を行うことができた.
著者
HASEGAWA Makoto KIYOTA Kozo
出版者
GRIPS Policy Research Center
雑誌
GRIPS Discussion Papers
巻号頁・発行日
vol.15-09, 2015-06

In an increasingly globalized world, the design of international tax systems in terms of taxation on foreign corporate incomes has received much attention from policymakers and economists alike. In the past, Japan's worldwide tax system taxed foreign source income upon repatriation. However, to stimulate dividend repatriations from Japanese-owned foreign affiliates, Japan introduced a foreign dividend exemption in 2009 that exempts dividends remitted by Japanese-owned foreign affiliates to their parent firms from home taxation. This paper examines the effect of this dividend exemption on profit repatriations by Japanese multinationals. We find that the response of Japanese-owned affiliates to the dividend exemption was heterogeneous. More particularly, foreign affiliates with a large stock of retained earnings were generally more responsive to the reform and significantly increased dividend payments to their parent firms in response to the enactment of the dividend exemption system. Dividend payments by these affiliates also became more sensitive to withholding tax rates on dividends levied by host countries under the new exemption system.
著者
田仲 理恵 新熊 亮一 板谷 聡子 小西 琢 吉永 直生 土井 伸一 山田 敬嗣 高橋 達郎
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.7, pp.1549-1558, 2015-07-15

商業活動や社会活動においては,人々に情報を伝達して行動を促進する試みがしばしば行われる.社会活動では商業活動に比べて,情報受信者の情報や行動そのものへの興味が薄いことがあり,同じ情報伝達の枠組みでも行動に結び付きにくいという問題がある.そこで本論文では,商業活動において行動促進効果があるといわれているクチコミを用いた情報伝達に着目し,ソーシャルネットワーク上のクチコミによって社会行動を促進する手法について検討を行う.具体的には,ソーシャルネットワーク上での情報送信に対してインセンティブ報酬を与えるモデルを想定して,情報送信そのものに報酬を付与する送信基準方式と,情報送信後に相手が行動を起こした場合に情報送信者に報酬を付与する行動基準方式の2通りを比較した.114名の参加した社会実験結果から,行動基準方式の方が素早い行動が起きること,情報送信時に依頼的なクチコミを付加する方が素早い行動が起きること,行動基準方式は送信基準方式に比べて依頼的なクチコミを付加する割合が高いことが明らかになった.これより,行動基準方式を用いることで情報送信者は依頼的な内容のクチコミを作成する傾向が強まり,それにより行動促進効果があることが確かめられた.
著者
渡辺 予里 ワタナベ ヨリ Yori Watanabe
雑誌
言語科学研究 : 神田外語大学大学院紀要
巻号頁・発行日
vol.13, pp.53-68, 2007-03

サービス業は、いろいろな接客業、例えばスーパーマーケットなどの販売店、レストランなどの飲食産業、病院や電車、バスなど多種多様であるが、その中から、私たちが日ごろよく目にする接客場面の状況やサービスをする側と受ける側の会話を想定し、もし自分がお客だったらその状況と受けたサービスについてどういった評価をするかを質問紙によって調査を行った。そしてその結果について、国ごとや性差、年齢などによってサービスに対する評価に違いがあるかどうかを分析した結果、国によって店員の接客態度に対しての評価の違いや、男女の性差による、接客態度への評価の違いが存在するという結果を得た。
著者
小風 尚樹
雑誌
研究報告人文科学とコンピュータ(CH) (ISSN:21888957)
巻号頁・発行日
vol.2015-CH-106, no.7, pp.1-5, 2015-05-09

本報告原稿は,財務記録史料マークアップのための方法論的提言を行った Kathryn Tomasek,Syd Bauman による 2013 年の論文を検討すべく,実際に 19 世紀イギリス政府文書に収録された貿易統計データの史料をマークアップすることで,その方法論の有効性や課題について考察するものである.
著者
三吉 明
雑誌
北星論集 = Hokusei Review (ISSN:03871886)
巻号頁・発行日
no.9, pp.85-108, 1972-03
著者
"浅羽 良昌" Yoshimasa" "Asaba
雑誌
摂南経済研究
巻号頁・発行日
vol.3, no.1-2, pp.37-51, 2013-03

アメリカの国際観光の特徴は、国際観光客到着数についてはフランスに遠くおよばないものの、訪米外国人観光客がアメリカ国内で消費・支出する金額、すなわち観光輸出額が圧倒的に大きいところにある。しかも、アメリカ人(現実にはアメリカ人と、1年以上のアメリカにおける居住者をさし、アメリカ国籍以外の人々も含む。以下、表記上アメリカ人と統一することにする)の観光客が、海外旅行で消費・支出する金額、すなわち観光輸入額は意外と伸びず、観光収支の黒字幅が第2位のスペインを大幅に上廻って断然トップに位置しているところにある。こうした特徴をもったアメリカの国際観光を側面より支えるのは、訪米外国人観光客数とあわせアメリカ人海外観光客数の状況にあるが、これらの実態を地域別はもとより国別ベース、とりわけ国別ベースに焦点をあてて検討しようとするのが、本ノートの課題である。言い換えれば、アメリカを訪れる人々の地域・国はどこか、アメリカ人はどこの地域・国を主に訪れているか、このことを明らかにすることが、本ノートの唯一の目的であり、それ以外の意図はない。
著者
馬場 恒子 野阪 美貴子 西内 由紀子
出版者
神戸松蔭女子学院大学学術研究委員会
雑誌
神戸松蔭女子学院大学研究紀要. 人間科学部篇 = Journal of the Faculty of Human Sciences, Kobe Shoin Women's University : JOHS (ISSN:21863849)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-9,

トランス脂肪酸の多量摂取は健康に悪影響を与えることから、平均摂取量を一日当りの総エネルギー摂取量の1% 未満とする目標が設定された。日本では菓子類を多く食べる若年女性の摂取量が多く、菓子類の中でも特にパイ中のトランス脂肪酸含有量が高いことが2007年に報告された。日本において規制は行われていないが、これらの食品からトランス脂肪酸を低減する取り組みが各企業で自主的に進められている。そこで今回実際に含有量が減少しているかどうか検証する目的で、2011 年5 ~ 7 月に購入した14 種類の市販パイと、2種のカップ麺のトランス脂肪酸と飽和脂肪酸含有量を測定した。その結果、5 種類(36%)がトランス脂肪酸高含有食品(1.5-9 g/100 g 総脂質)で、トランス脂肪酸高含有食品の数は2007 年の80%に比べ著しく減った。高含有パイのうち1 種は、1 個中に1.8 g 含んでいた。これを1 個食べると、10 歳未満の子供では推定エネルギー必要量の1%を超え、身体活動レベルの低い若年女性では1%に相当する。また、カップ麺の天ぷらと麺はパーム油同様の飽和脂肪酸の多い組成となっていた。これは、トランス脂肪酸の代替品としてパーム油の使用が進み、飽和脂肪酸の摂取量が増加する可能性を示している。含有量表示の義務化と、種々の脂肪酸を含んだバランスの良い食事をとるように啓蒙することが、国民の健康維持につながると思われる。
著者
中畑 邦夫 Kunio Nakahata
出版者
麗澤大学経済学会
雑誌
麗澤学際ジャーナル = Reitaku Journal of Interdisciplinary Studies (ISSN:21895333)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.115-130, 2015-03-20

In this article, I deal with unique arguments on the masses in Ango Sakaguchi’s works which was written mainly after the Pacific War, and try to show its significance.To understand Ango’s arguments on the masses, it is necessary to comprehend his concept of Karakuri. Karakuri means systems, which involve not only ‘visible systems’ such as political systems or legislative systems, but also ‘invisible systems’ such as morals, manners and customs of communities, and even habits in personal life. Karakuris are established based on human nature, or on the fact that as long as humans live, they have will to live, and to live better, and in Ango’s works, human nature is nature of masses who are faithful to their will personally in any social circumstances, and all the humans are masses radically and intrinsically. But there are cases where to be faithful to human nature impedes our life of a person, or of a community. So Karakuri must be established, even though it is contradictory to human nature. For example, during the war time, the military had to make soldiers faithful to a Karakuri called bushido, morals of soldiers that it is much better to die than to receive disgrace as captive, because Japanese would hate to battle in general, and without such Karakuri, Japanese would escape from the battles for their country.In this way, Karakuris shows peculiarity or special characteristics of persons or communities, even though they are based on universal human nature or nature of masses, and in Japan they brought about tragic situations. Never to repeat such situations, and to realize eternal peace, Ango points out absurdity and contradictory construction of conventional Karakuri as to what Japanese people are, or peculiarity of Japanese people, and insists that Japanese people go back to or evolve into, nature of masses or universality. And as a way to universality, Ango argues the importance of art which is not conventional in or peculiar to Japan, but is open to masses universally.
著者
吉本 弥生 Yayoi YOSHIMOTO ヨシモト ヤヨイ
出版者
総合研究大学院大学文化科学研究科
雑誌
総研大文化科学研究 = Sokendai review of cultural and social studies (ISSN:1883096X)
巻号頁・発行日
no.9, 2013-03-28

一九〇〇年頃、日本の思想界では人格主義が大きな影響を与えていた。日本の人格主義は、感情移入美学との関連があり、その影響を強く受けていたのが阿部次郎(一八八三~一九五九)であった。同時に武者小路実篤(一八八五~一九七六)にもその傾向が見られ、両者の思想は互いに似たところがあった。 そこで、当時の社会思想について阿部と似た意識のあった武者小路実篤の「理想的社会」(『生長する星の群』一九二三年一月~八月)を取り上げ、阿部の『人格主義』(岩波書店、一九二二年)と比較することで、両者の相違と同時代受容を検証した。これまで、阿部と武者小路の社会観を考察する研究はなされていない。その際、浮上したのが「同情」と「隣人愛」の概念である。これは、阿部がリップスの感情移入を「同情」と訳していたことから始まった。阿部は、彼自身の解釈でこの言葉を用いていたが、「同情」「隣人愛」は、当時の日本において重要な役割を果たしている。 本稿では、「同情」に着目し、キリスト教と反キリスト教の両面から考察し、この視点から一例として、ショーペンハウア―受容を取り上げた。それは、阿部だけでなく、武者小路や森鴎外(一八六二~一九二二)、島村抱月(一八七一~一九一八)など、当時の知識人達に広まっていた。中でも、井上哲次郎(一八五六~一九四四)に見られるように、ショーペンハウアーは仏教の側面からも解釈されており、阿部と武者小路の社会観でも人格的価値や善という側面に共通性が見られた。 また、阿部と武者小路は各々「第三の社会」や「第三のもの」という国家や共同体観を持っており、これは当時、既に受容されていたイプセンの戯曲に登場する『皇帝とガラリヤ人』(一八七三年)で著した「肉の王国」と「霊の王国」を経て霊肉一致の「第三帝国」を求める人々の姿を想像させる。 イプセンの戯曲では、ギリシアの古代精神とキリストの精神を統一融合した世界として「第三帝国」が表現されるが、阿部と武者小路の目指す社会は、同時代に受容された感情移入説と人格向上が融合したものであった。 以上の考察の結果、武者小路の共同体はカントの「目的の国」と似ており、阿部の国家はヘーゲルの『法哲学』の国家観と似た特徴を持ち、両者は善の社会を目指している点では共通した思想を持っていたのである。Abe Jirō (1883–1959) declared that a good society can be created through “personalism” (1922). He thought that the improvement of individual personalities would lead to a virtuous society. Mushakōji Saneatsu (1885–1976) had a similar idea. Abe Jirō’s idea of “personalism” resembled Mushakōji Saneatsu’s thinking about the “ideal society.” In this essay, I have inspected their ideas. Abe Jirō said that sympathy is a kind of empathy; and empathy, when seen aesthetically, is also applicable to society. I investigated the problem of sympathy from the point of view of empathy. The theory of empathy proposed by Theodor Lipps (1851–1914) was introduced in Japan in discussions of aesthetics and psychology. Mori ōgai (1862–1922) was the first to take up the problem, and it spread among the intellectuals of that time. Sympathy was understood in terms of religion when Schopenhauer’s thought was transmitted to Japan. Schopenhauer can be interpreted from a Buddhist point of view, as seen in the writing of Inoue Tetsujirō (1856–1944). I investigate “sympathy” and “neighborly love” from the time of Schopenhauer’s reception in Japan. Lipps’s idea applies to all interpretations. Therefore, their interpretation differentiate with that of someone. But Abe’s and Mushakōji’s ideas resembled those of others in the same period. Ibsen (1828–1906), in his play Kejser og Galilaer (1873), had put forward something similar in his idea of “the third society” that unites the flesh as expressed by the Greek mind and the spirit as expressed by the Christian mind. Similarly, in Japan, Abe Jirō and Mushakōji Saneatsu saw their country as one in which sympathy and personalism were fused. Abe’s idea may also be compared to Hegel’s “philosophy of law,” and Mushakōji’s ideal society may be compared to Kant’s idea of a “goal country.” Abe and Mushakōji thought that religion is goodness.
著者
松林 達史 山田 武士
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.48, no.SIG15(TOM18), pp.126-136, 2007-10-15

本研究では,大規模なネットワークデータのための高速かつ効率的な可視化座標計算の手法を提案する.従来のネットワーク可視化手法の1つとして Fruchterman らによる力学モデルを用いる手法がよく知られている.彼らの手法はノード間やエッジに対し力学関数を与えることにより,系全体のエネルギーを定義し,加速度方向に各ノードの座標を更新することによって,系のエネルギーの極小状態を求める.この手法では座標の更新頻度は一様で,すべてのノードを毎回更新していたが,提案手法では階層的独立固有時間刻み法を用いて個々のノードに独立な更新時間を設定し,局所的に更新頻度を変えることにより計算の高速化を可能にした.この手法は,天体力学において用いられている局所的に密集した領域を精度良く計算する手法を,グラフ可視化手法に拡張したものである.また,提案手法は並列処理に適しており,粒子間相互作用専用並列計算機 MDGRAPE-3 PCI-X に実装することによって,計算速度の数百倍高速化が可能であることを示した.さらに,LGL(Large Graph Layout)法を用いた Opte Project の可視化結果との比較を行い,提案手法により高精度な可視化が可能であることを示した.
著者
田頭 幸三 但馬 康宏 菊井 玄一郎
雑誌
研究報告ゲーム情報学(GI) (ISSN:21888736)
巻号頁・発行日
vol.2015-GI-34, no.9, pp.1-6, 2015-06-27

コンピュータによるゲームの思考アルゴリズムの研究は囲碁,将棋などのボードゲームに限らず,トランプゲームに対しても行われている.特に大貧民については,毎年,電気通信大学が UEC コンピュータ大貧民大会を開催している.この大会は,大貧民をプレイするクライアントプログラム同士を対戦させ,最も強いクライアントを決める大会であり,機械学習を用いた無差別級とヒューリスティックな戦略を用いたライト級の 2 つの部門がある.本研究では,コンピュータ大貧民大会ライト級のヒューリスティック部門に向けて製作し,優勝したプログラムから,戦略の一部分を変更した場合の強さの変化を比較することで,勝利するのに有効な戦略について分析を行った.その結果,勝利するには,しばりを発生させる場合は強いカードを持っている場合に優先する戦略,同じ枚数の組が多いカードを提出し,次の自分の番にカードを減らしやすくする戦略,勝てる可能性が高ければ強いカードから出す戦略の有効性が高いと判断できた.
著者
山本 陽平 金森 由博 三谷 純
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.1507-1516, 2015-06-15

本論文では,両面に色の付いた単位正方形をピースとする組合せパズルについて議論する.ピースは両面に色を付けることができ,すべてのピースを過不足なく使用してあらかじめ指定された色模様(「正答」と呼ぶ)を復元することを目的とする.正答が2つ以下であれば,ピースの各面に適切に色を割り当てることで,必ずすべての正答を再構成できる.正答が3つ以上ある場合には,正答間で共通する色をうまく再利用する必要があり,場合によってはすべての正答を実現するピースの集合が存在しないこともあるため,パズルの問題を作成するときには注意が必要となる.そこで,複数の正答が入力として与えられたときに,その正答を実現できるピースの集合が存在するか否かを判定するための条件式と,存在する場合にはピースの生成を行う手法を提案する.そうでない場合には,正答の色合いを調整して,ピースを生成可能にする手法の提案も行う.いくつかの例題で提案手法の実験を行い,実際にパズルを試作したので報告する.