著者
河野 哲也
出版者
慶應義塾大学
雑誌
哲學 (ISSN:05632099)
巻号頁・発行日
vol.95, pp.15-37, 1993-07
被引用文献数
1

1. 序2. デカルトと幻影肢3. ヘッドの「図式」による幻影の解明4. シルダーの「身体像」5. 考察と結論The purpose of this essay is to clarify the way in which consciousness localizes sensations, through an interpretation of a pathological phenomenom, the phenomenon of phantom limb. We compare Descartes' classic theory about 'the phantom limb' and localization of sensations with the modern psycho-physio-logical theories by H. Head and P. Schilder which insist on the importance of 'body-schema' for localization and body-movement or action as essential factors for the formation of the schema. Their studies show that the phantom limb is a 'habitual body' which the patient continues to hold in spite of the loss of his limb. According to Head and Schilder, consciousness localizes sensations through its own whole body which acts and moves, not only through its immovable brain. Finally, we conclude that the space is not only an object of perception, but is also related to body-movement or action, and that phenomenal or subjective space is sustained by objective space through actions and body-movements.
著者
月村 辰雄 浦 一章 葛西 康徳
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
1999

本年度は研究対象をもっぱら近世・近代のフランスにおけるレトリック教育、とりわけディセルタシオン(論文作成)とエクスプリカシオン・ド・テクスト(テクスト購読法)という二つの主要教育メソッドの展開の過程に焦点を絞って研究を進めた。ディセルタシオンは18世紀半ばのパリ大学の教授資格試験から採用されたディスクール形式で、スコラ学の論述形式の近代版といえる。初め哲学の問題が扱われたが,19世紀以降は順次ラテン文学,フランス文学研究の問題の解答形式ともなり,正-友-合という論旨の展開が義務付けられて現在に及ぶ。一方、エクスプリカシオン・ド・テクストは、初めはルネサンス期の古典語購読の方法として出発し,17〜18世紀には主としてイエズス会のコレージュでラテン語購読の方法として精錬され,次いで19世紀にはフランス語古典の解説法として発展する。ひとつひとつの語釈,難語解,構文説明,その部分の著作全体における意味,またその著作の著作家において占める意義,さらには時代との関係という具合に,1節から始まって文学史にまで話が及ぶスタイルが確立するのは1880年代である。
著者
大沢 啓徳
出版者
[出版者不明]
巻号頁・発行日
2010

制度:新 ; 報告番号:甲3181号 ; 学位の種類:博士(文学) ; 授与年月日:2010/11/17 ; 早大学位記番号:新5476
著者
吉本 浩和
出版者
京都大学哲学論叢刊行会
雑誌
哲学論叢 (ISSN:0914143X)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.72-83, 1992-09-01
著者
橋本 武志
出版者
京都大学哲学論叢刊行会
雑誌
哲学論叢 (ISSN:0914143X)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.28-39, 1993-09-01
著者
有本 建男
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.58, no.8, pp.623-634, 2015-11-01 (Released:2015-11-01)
参考文献数
28

20世紀末から始まった急速なグローバリゼーションと,デジタル技術の飛躍的発達,気候変動などグローバルな課題の急増によって,近代が築いてきた政治経済社会システム,人々の価値観,ライフスタイルが大きく変容している。ニューヨーク世界貿易センタービルのテロによる崩壊,リーマンショックによる世界経済恐慌,エボラ出血熱などの感染症,東日本大震災と福島原発事故は,いずれも,近代科学技術と近代文明の光と影,限界を私たちに明らかにした。科学技術への市民の信頼は大きく損なわれ,科学技術の目指す価値,制度体制は,今大きな見直しを迫られている。人々は,地球の有限性を強く感じ始めている。この時機,科学技術関係者は日常に流されることなく転換期を自覚して,自らの社会的役割と責任について,歴史的,社会的,哲学的な思考を深める必要がある。本稿は,科学技術と政治の関係について,歴史の中で政治リーダー,科学者,その共同体が考え発言し行動してきた事例をまとめたもので,今後の政策形成とグローバルネットワーク構築に向けて示唆を得ることができると考える。
著者
池田 誠
出版者
北海道大学大学院文学研究科
雑誌
研究論集 (ISSN:13470132)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.17-36, 2011-12-26

本稿では、ジョン・ロールズの博士論文「倫理的知識の基盤の研究」(一九五〇)を考察し、若きロールズが『正義論』(1971/99 rev.ed.)の著者へと成長していく軌跡を辿る。そこで私は、ロールズの博士論文と、この博論の「ダイジェスト」とされる彼の翌一九五一年の処女論文「倫理学における決定手続きの概要」との間の共通点と相違点に焦点を当てる。 まず、第一の共通点として、両論文は法学や科学哲学における「議論の理論」を参考に、当時の倫理学における懐疑的風 潮への反論として理性的な倫理学的探求の可能性を擁護することを主題としている。また第二の共通点として、両論文のうちにはすでにのちに「反省的均衡」と呼ばれる反基礎づけ主義的な方法論が確立され展開されている。しかもそこでは、『正義論』にみられる功利主義と(多元的)直観主義に代わる新たな規範倫理学理論を立てることへの意欲も見られる。 一方、両論文の間の相違は三つある。第一の相違点は、ロールズが実際に自らの提示する理性的な倫理学的探求の実例を 素描してみせる際に解明と正当化の題材とする道徳判断の種類である。博士論文のロールズは「(i)よい性格に関する 道徳判断」の解明を図るが、「概要」論文の彼は「(ii)正しい・正義にかなう行為に関する道徳判断」の解明を試みている。これに伴い、第二の相違点として、それぞれの論文でロールズが提示する道徳判断の解明原理(道徳原理)も異なっている。第三の相違点として、博士論文では、「概要」論文には登場しない「形式的正当化」と「実質的正当化」という二種類の正当化方法が登場する。 この相違点にもとづき、私は、博士論文のロールズは早くも彼の倫理学方法論を確立する一方、その実例の提示である規 範倫理学理論においてはいまだ発展途上であり、以降、彼はより包括的な規範倫理学理論の確立をめざし、彼なりの「反照的均衡」のプロセスを幾度も重ねて「概要」『正義論』へと歩みを進めていったと主張する。