著者
神野 清勝
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.7, pp.981-986, 1986-07-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
20

高速液体クロマトグラフィー(HPLC)は, もっとも有力な分離分析法として広く使用されるようになってきた。しかしながら, HPLC分析においてもっとも重要と考えられる分離条件の設定については, いまだ旧態依然たる“試行錯誤”的な方法が主法であり, もっとも進歩の遅れている部分である。これを改良するもっともよい方法は, コンビピューターを利用することである。本報告では以上のような観点からコンピューターを用いたLC分析の流れを提案する。コンピューターを使用することにより, 分析対象化合物としてその発がん性などから環境汚染物質として注目されているベンゾ[a]ピレンを選び, その同定法への適用例を述べる。
著者
田中 信男 橘 勇治 荒木 幹夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.7, pp.993-998, 1986-07-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
16
被引用文献数
3

逆相クロマトグラフィー用固定相として2-(1-ピレニル)エチル基をシリカゲルに化学結合したPYE固定相と, 通常のオクタデシル固定相(C18)とを用いて,ニ重結命を含む試料の位置異性体と幾何異性体についての分離を検討した。C18固定栢の場合には疎水性相互作用による保持が主となり, 内部二重結合とくにE-形二重結合を含む不飽和化合物が大きな保持を示した。一方PYE固定相においては, 試料のπ電子と固定相のピレン環との相互作用があり, Z-形二重結合および末端二重結合を含む試料について大きな寄与が認められた。このピレン環と試料の二重結合との相互作用の大きさの傾向は, 二重結合炭素上の原子団の立体効果で説明可能である。この相互作用によってPYE固定相においてC18固定相とはまったく異なる分離パターンが得られ, この効果はメタノール含量の大きな移動相でさらに大きな寄与を示した。PYE固定相においては不飽和カルボン酸の二重結合が極性基から遠く位置する場合に大きな保持が得られ, C18固定相では分離されないリノレン酸とγ-リノレン酸も容易に分離された。
著者
中川 照眞 澁川 明正 貝原 徳紀 田中 久
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.7, pp.1002-1010, 1986-07-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
33
被引用文献数
1

18-クラウン-6を移動相に含む逆相系高速液体クロマトグラフィーにおける種々のアミノ酸,対応するアミン, およびペプチド類の保持挙動と分子構造との関係を調べ, 従来のイオン対逆相クロマトグラフィーと比較した。18-クラウン-6を移動相に添加することにより, α-位やβ-位の炭素の級数が低いアミノ酸ほど大きな保持値の増加率を示し, ロイシンとイソロイシンなどのように, イオン対モードでは分離しにくい疎水性の類似したアミノ酸を短時間で容易に分離することができた。また, 側鎖にアミノ基を有するリシンではほかにくらべてキャパシティーファクターの増加率はいちじるしく大きかった。アミノ酸とそれに対応するアミンとの問の保持値の差は, イオン対法にくらべて大となった。またプロリンはイオン対法では保持値の増加を示したが, 本法では逆に減少した。ペプチドの保持はN末端残基のアミノ酸の構造を強く反映した変化を示した。N末端残基のβ-位炭素に枝分かれがあるペプチドでは, 18-クラウン6との会合定数が小さく, 会合にともなう保持値の増加率も小さいことがわかった。このように, 18-クラウン-6はアミノ基周辺の立体構造をより強く認識する能力をもつので, 従来法では困難であった微妙な分離が可能となり, ペプチドやタンパク質の新しい分離分析への応用が期待される。
著者
中村 洋 高木 和子 田村 善蔵 与田 玲子 山本 有一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.7, pp.1017-1024, 1986-07-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
16
被引用文献数
1

主としてタンパク質の蛍光標識試薬として利用されてきた2-メトキシ-2, 4-ジフェニル-3(2H)-フヲノン(MDPF)をアミノ酸のプレカラム蛍光誘導体化試薬として活用する試みを行なった。誘導体化反応の至適条件の検討は, α-アミノ酸の場合には生成するMDPF誘導体が蛍光性であることを利用して蛍光検出フローインジェクション分析法によった。一方, N-アルキル-α-アミノ酸(環状アミノ酸を含む)についてはMDPF誘導体が無蛍光性であるので, これを過剰の試薬や試薬水解物からHPLCで分離後に2-アミノエタノールを添加して蛍光検出する方法によった。その結果, アミノ酸の蛍光誘導体化には10mmol・dm-3MDPFとともにpH10, 20℃ で40分間反応させる条件が最適であった。α-アミノ酸からは一対のジアステレオマーによると思われる2本の蛍光性ピーク渉生じたが, TSKLS-410K逆相カラムと50mmol・dm-3リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)-メタノール系移動相を用いるメタノール勾配溶離法により, 2~5pmolのα-アミノ酸を定量し得た。100pmolのα-アミノ酸を5回分析した場合の相対標準偏差は2.9~5.3%であった。予試験の結果から, MDPFはペプチドのプレカラム蛍光試薬としても有望と思われた。
著者
高木 強治 吉田 修一郎 足立 一日出
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会論文集 (ISSN:03872335)
巻号頁・発行日
vol.65, no.6, pp.761-770, 1997-12-25
参考文献数
12

大規模水路網の流況解析において, 開水路1次元流れの数値解法にPreissmamスキームを用い, 体系的なモデル作成手法と効率的な流況解析アルゴリズムを提案した. 水路網のモデル化では, 水路を分合流点で切断して樹枝状水路と見なし, 有向グラフで表された水路にトポロジカルソートを適用し, 格子点の計算順序を定めた. 解析手法は, 掃出しアルゴリズムと低次元化された連立1次方程式によって構成され, その計算効率は, 水路網全体に対し, 閉路が占める割合と水路を切断した分合流点が少なくなるほど向上する. 大規模水路網への適用では, 疎行列のための直接解法として有力な内積形式ガウス法と比較して, 計算時間を大幅に削減できた.
著者
稲垣 健治 喜谷 喜徳
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.7, pp.1025-1031, 1986-07-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
34

抗がん活性白金錯体のDNAへの選択的結合を酵素分解および高速液体クロマトグラフ法で研究した。白金修飾DNAをエキソおよびエンドヌクレアーゼで処理し, 酵素分解産物をHPLCで分離・同定した。結果は隣接グアニン塩基対がDNAにおける優先的白金結合部位であることを示した。d(GpG)と各種白金錯体との反応生成物をHPLCで分離した。光学異性ジアミンを含む白金錯体とd(GpG)を反応させると, 二つのピークがクロマトグラムに現われた。これはジアステレオマーの生成による。また, d(GpG)とmeso-ジアミン配位子を含む白金錯体との反応は二つの反応生成物を生ずる。これはN-Pt-N角を二分するC2軸をもたない白金錯体にみられる。これらの化合物の分離に対する至適条件を示した。1, 2-シクロヘキサンジアミン白金錯体で修飾されたDNAの酵素分解産物はクロマトグラフにおいて四つの主ピークを示す。その内の二つはPt[(1R,2R)-1,2-cyclohexanediamine][d(GpG)]とPt[(1S,2S)-1,2-cyclohexanediamine][d(GpG)]である。残りの二つのピークはPt[(1R,2S)-1,2-cyclohexanediamine][d(GpG)]に由来するものである。これらの結果はキラルなジアミン配位子を含む白金錯体のDNAへの結合様式を暗示している。
著者
高橋 圭子 中田 壮一 三上 正仁 服部 憲治郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.7, pp.1032-1039, 1986-07-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
18
被引用文献数
2

親水性ポリアクリレートTSK Gel PW-3000(以下PWと略記する)に6-デオキジ-6-アミノ-β-シクロデキストリンを導入したゲル(ACD-PW)および, アミノ化シクロデキストリンのヒドロキシル基をメチルエーテル化したゲル(Me-ACD-PW)に対する各種アミノ酸の保持挙動の検討を行ない, 保持容量比(k')の比較を行なうことでシクロデキストリン(以下CDと略記する)包接由来の効果とアミノ基由来のイオン相互作用の評価を奢なった。デミン酸は老のままではアミノ酸のアミノ基とCD上のアミノ基の反発のため, まったく保持されない。N-保護アミノ酸は, カルボン酸部位とCD上のアミノ基との間のイオン相互作用により保持されるようになり, イオン強度を小さくすると保持は増大する。また, CDのヒドロキシ基のメチル化は, CD上のアミノ基のイオン相互作用を明確にし, また包接能を増大し, ベンゼン環を有するフェニルアラニン誘導体ではいちじるしい保持の増大がみられた。イオン強度や有機溶媒添加などの溶離液変化によりk'は600倍以上の値まで変化し, ホスト-ゲストコンプレックス形成に基づく包接クロマトグラフィーにおける選択性をさらに向上させる可能性を示した。
著者
牧野 圭祐 尾崎 広明 松本 哲史 武内 民男 福井 寿一 波多野 博行
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.7, pp.1043-1045, 1986-07-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
5

Separation of oligodeoxyribonucleotides, prepared by chemical synthesis, was carried out using reversed 'phase ion-pair chromatography with LiChrospher 100 RP-18e. By this technique, the peak shape and the separation of peaks were highly improved, compared to the results obtained by conventional reversed phase chromatography with the same column. The chain length and the concentration of the tetraalkylammonium ion-pair reagents were found to be responsible for their retention behaviors and tetrabutylammonium phosphate showed marked enhancement of the peak resolution. In the separation with this reagent, a good linear relationship between the elution volumes and the base numbers of oligodeoxyribonucleotides was obtained. This implies that ion-pair chromatography can be used for the separation of oligodeoxyribonucleotides according to their base numbers.
著者
大井 尚文 北原 一 大墨 利佳
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.7, pp.999-1001, 1986-07-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
7
被引用文献数
5

Two novel chiral stationary phases derived from (R)- and (S)-1-(1-naphthyl) ethylamine with (R)-phenylglycine chemically bonded to (3-aminopropyl)silanized silica, [5] and [6], which contain two asymmetric carbon atoms attached to two nitrogen atoms of the ureylene group, have been prepared. These phases showed good enantioselectivity for derivatives of amino acid, amine, carboxylic acid and alcohol enantiomers. Especially excellent separation factors were obtained in enantiomeric separation of aromatic amine and carboxylic acid in the form of 3, 5-dinitrobenzoyl and 3, 5-dinitroanilide derivatives respectively upon phase [6]. It is noticed some enantiomers were resolved directly without any prederivatization on these phases. For example, enantiomers of both E- and Z-isomers of S-3308 (1-(2, 4- di chloropheny1)-4, 4-dimethy1-2-(l, 2, 4-triazol-1-y1)-1-penten-3-ol) are well resolved simul taneously with [5].
著者
小林 巌生
出版者
サービス学会
雑誌
サービソロジー (ISSN:21885362)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.3-10, 2021-03-24 (Released:2021-04-21)
参考文献数
4
著者
Sumio Fukami
雑誌
国際文化論集 = INTERCULTURAL STUDIES (ISSN:09170219)
巻号頁・発行日
no.43, pp.1-22, 2010-12-24

As early as the 2nd century BCE, the name of kapur barus (camphor), a product of the tropical rainforest of insular Southeast Asia, had become established as a rare international trading item and was being mentioned in Chinese texts in its Chinese transliteration of guobu. We can also assert with confidence that, by the early years of the 1st century CE, the island of Pisang, an important navigational point on the sea-route through the strategic Malacca Strait, was being referred to in Chinese texts in its Chinese rendering of pizong. The fact that the earliest Indonesian words to be mentioned in Chinese texts are kapur and pisang is no mere coincidence. Rather, it illustrates the crucial role played by the Malacca Strait region - or, to put it differently, the Indonesia-Malaysia region - in East-West oceanic trading and transportation. As well as furnishing the products that would feature as the trading commodities of East-West exchange, this region also played an essential role in providing the route that made such trading activities possible. An examination of the Indonesian word kapur barus has revealed that the Malacca Strait region had already begun to play such a dual role in East-West oceanic trade by at least the 2nd century BCE.
著者
菅原 裕子
出版者
名古屋大学
巻号頁・発行日
2008

identifier:http://hdl.handle.net/2237/14425
著者
戸谷 裕造 藤崎 恭功
出版者
石油技術協会
雑誌
石油技術協会誌 (ISSN:03709868)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.105-113, 2012 (Released:2014-03-29)
参考文献数
1
被引用文献数
1

Iwaki-Oki Gas field which operated by OIP (Offshore Iwaki Petroleum Co., Ltd.) located at Pacific Ocean of Naraha-Chou offing. OIP started natural gas production from 1984, and finished operation at end of July 2007. After finishing operation, OIP needed decommissioning work of Iwaki-Oki Platform, and started study for it from 2004. This study consisted with several engineering, several preparation works of Platform decommissioning, procurement of HLV (Heavy Lift Vessel) and discussion with related governments.OIP carried out deconstruction work for Platform decommissioning from December 2009 to July 2010. This deconstruction work included topside removal and Jacket toppling. Topside removal is dividing topside on Jacket into 16 blocks, lifting them by HLV respectively, and moving to a working table ship by HLV. And, Jacket was cut in depth-sounding the part of 92.5 meters, and was performing toppling.One of key works of this deconstruction was subsea-cutting, and this key work was Jacket legs and main piles cutting by ROV (Remotely Operated Vehicle). In Japan, it was first case to use ROV for subsea-cutting. Another one was unique work, and it was made use of Jacket leg buoyancy for Jacket toppling.This Platform decommissioning was completed by the time necessary for completion about 10 working days shorter than a plan. This work was also no-disaster.
著者
小山 順子
出版者
人間文化研究機構国文学研究資料館
雑誌
調査研究報告 = Report on investigation and research (ISSN:02890410)
巻号頁・発行日
no.38, pp.45-81, 2018-03

中世和学の大家である三条西実隆(一四五五~一五三七)の『伊勢物語』講釈の聞書は、四種類が知られている。最も有名なのが、大永二年(一五二二)五月の講釈の聞書『伊勢物語惟清抄』(以下、『惟清抄』と略)である。大永二年当時、実隆六十八歳。充実した講釈をとどめたもので、他の実隆による伊勢物語講釈聞書が一もしくは二本しか伝わらないのに比べ、『惟清抄』は天理大学附属天理図書館や内閣文庫・龍谷大学図書館などに数本が伝わり、最もよく読まれたものである。ほかにも、『逍談称聴』と呼ばれる本がある。宮内庁書陵部本と京都大学国語学国文学研究室本の二本が知られている。この書はその名のとおり、逍遙院すなわち実隆の講釈を、称名院すなわち実隆の息子である公条が書きとどめた聞書である。公条は実隆の講釈を数度にわたって聴聞しており、その折々の断片的なメモのような内容となっている。あと一本、実隆講釈を留めたものとしては、青木賜鶴子氏によって『覚桜注』と名付けられている宮内庁書陵部本がある。これは天福本の行間に朱筆で実隆講釈を書き入れたものであるが、公条説なども混入しており、純粋な実隆講釈とは言えないことが指摘されている。上記の聞書は大永年間以降、つまり実隆六十代から晩年にかけての講釈の聞書である。最も古い実隆講釈聞書であるのが、永正六年(一五〇九)、実隆五十三歳の時の講釈の聞書『伊語聴説』である。後述するように、実隆が初めて『伊勢物語』講釈を行ったのは永正四年(一五〇七)十二月。それより二年後『伊語聴説』は、最も初期の実隆講釈聞書と言えるのである。陽明文庫には、『伊語聴説』一冊が残されている。なお『伊語聴説』は、この陽明文庫蔵本のみしか所蔵が知られない。実隆の、すなわち三条西家の最初期の『伊勢物語』注釈の聞書として『伊語聴説』は注目されるものであるが、具体的な内容の検討については大津有一氏『増訂版伊勢物語古註釈の研究』と青木賜鶴子氏「三条西実隆における伊勢物語古注46―「伊語聴説」「称談集解」に触れつつ―」(『百舌鳥国文』6、昭61・10)しか管見に入らない。『鉄心斎文庫伊勢物語古注釈叢刊』(全十五巻、平1~14、八木書店)・『伊勢物語古注釈書コレクション』(全六巻、平11~23、和泉書院)・『伊勢物語古注釈大成』(既刊五巻、平16~、笠間書院)など、『伊勢物語』古注・旧注の影印や翻刻の刊行が続いているとはいえ、『伊語聴説』の影印・翻刻の類はいまだ出されていない。国文学研究資料館蔵マイクロ資料(55―2―6、E1854)によって、写真を閲覧調査することはできるが、書簡の紙背を料紙としているため、判読しにくい箇所も少なくない。そこで本稿では、解題とともに翻刻を収め、以後の研究に資するものとしたい。