著者
小松 和暉 宮路 祐一 上原 秀幸
出版者
IEEE
雑誌
IEEE Transactions on Wireless Communications = IEEE Transactions on Wireless Communications (ISSN:15361276)
巻号頁・発行日
vol.17, no.6, pp.3768-3780, 2018-06
被引用文献数
26

This paper presents a basis function selection technique of a frequency-domain Hammerstein digital selfinterference canceller for in-band full-duplex communications. The power spectral density (PSD) of the nonlinear selfinterference signal is theoretically analyzed in detail, and a nonlinear self-interference PSD estimation method is developed. The proposed selection technique decides on the basis functions necessary for cancellation and relaxes the computational cost of the frequency-domain Hammerstein canceller based on the estimated PSD of the self-interference of each basis function. Furthermore, the convergence performance of the canceller is improved by the proposed selection technique. Simulation results are then presented, showing that the proposed technique can achieve similar cancellation performance compared with the original frequency-domain Hammerstein canceller and a time-domain nonlinear canceller. Additionally, it is shown that the proposed technique improves the computational cost and the convergence performance of the original frequency-domain Hammerstein canceller.
著者
向山 恭一
出版者
新潟国際情報大学国際学部
雑誌
新潟国際情報大学 国際学部 紀要 = NUIS Journal of International Studies (ISSN:21895864)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.91-102, 2019-04-01

本稿の目的は、移民の時代における政治哲学の問題状況を、成員資格の観点から浮かび上がらせることである。第1節では、ジョン・ロールズとマイケル・ウォルツァーの正義論において、なぜ移民は語られないのかを検討し、境界線によって画定された共同体のもつ政治的な意味と限界を考察する。第2節では、ロジャース・ブルーベイカーとクリスチャン・ヨプケのシティズンシップをめぐる社会学的分析に目を転じ、近代国家における政治的成員資格(国籍)の包摂と排除の機制を明らかにするとともに、その現代における変容のプロセスについて考察する。第3節では、ジョセフ・カレンズの移民の倫理学を参照しながら、かならずしもシティズンシップの取得を必要とはしない、移民の時代にふさわしい成員資格のあり方を検討し、それが政治哲学にどのような問いを投げかけているのかを考察する。
著者
玉森 聡 石黒 祥生 廣井 慧 河口 信夫 武田 一哉
雑誌
情報処理学会論文誌コンシューマ・デバイス&システム(CDS) (ISSN:21865728)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.33-46, 2019-05-24

名古屋大学COIでは,高齢者が元気になるモビリティ社会の実現を目指した研究開発を進めている.高齢者が「いきいきした生活」を送るために,外出や他者とのコミュニケーションを継続的に行うことが重要である.我々は高齢者の外出促進を目的として,スマートフォンを利用した個人適応型行動認識とチャットアプリケーションを開発した.これは,高齢者の行動を逐次認識し,蓄積されたデータを活用して地域のイベントなど外出につながる情報を,チャット対話を通じて高齢者に提示する外出促進チャットアプリケーションである.本論文では,愛知県豊田市にて10名の実験協力者に対し実証実験を行い,実環境下での行動認識結果の報告およびアプリの実現可能性や製品化に向けての問題点の確認を目的としている.この実証実験から,アプリに導入した個人適応学習型行動認識について,実環境下で特定の行動「テレビの視聴」の認識が最大46%の精度で可能であることが分かった.この認識結果に基づいたチャットが行える一方で,行動認識上の問題点として,周囲の環境音が大きく精度に影響を与え,チャットのやりとりの阻害原因になる.それゆえ,誤った認識結果に基づくチャットをできるだけ減らす必要があり,より多くの高齢者の外出促進を行うには年齢や忙しさに応じた会話内容や提示内容,提示手法の検討も必要であることが分かった.
著者
内山 三郎 UCHIYAMA Saburo
出版者
岩手生物教育研究会
雑誌
RHACOPHORUS
巻号頁・発行日
vol.23, pp.68-74, 2012-10-01

日本における野生動物の出産の時期は、エサの豊富な春または秋あるいは夏の暖かい季節が一般的である。実験動物としてのネズミの場合は、ヒトから常に給餌されるため季節による変動は見られない。ヒトの場合も、保存技術の進歩によって食料は日常的かつ充分に確保されているため、季節による変動はほとんど無い。日本においては誕生月の違いにより、1月から3月の間に生まれた者が「早生まれ」と呼ばれている。これは日本の学校制度が4月入学のため、3月生まれの者は6歳になるとすぐ入学し、4月生まれの者は6歳になった後ほぼ1年を経過した翌年の4月に入学することによる。4月生まれに比べて3月生まれは早く入学することにより、2月生まれ・1月生まれと一緒に「早生まれ」と言われる。小学校入学の時点においては、3月生まれの児童と4月生まれの児童ではほぼ1年の違いがある。「早生まれ」の者は早く入学して早く学業を終えることになるため、早く社会に出て労働力となるという観点から、「早生まれ」は「得生まれ」とも呼ばれる地域もあるようである。「早生まれ」の者は、早く社会に出て労働力となる以外に何らかの「得」が得られているのであろうか。「鉄は熱いうちに打て」という諺が示すように、少しでも早く学校教育に入ることは早期教育的にも効果が期待できるとも考えられる。過去には、幼稚園入園以前から教育を開始すべしとする過度な早期教育の勧めもあり、有名幼稚園のお受験騒動等の社会現象もみられた。しかし、その後に見られた家庭内暴力や引きこもり等の現象は、早期教育の弊害とする見方も現れ、早期教育が有効であるのは音楽等の限られた分野のみのようである。今村・沢木の報告によれば、「早生まれ」の者はそれ以外の者に比べて明らかに体格的に劣っており、低年齢ほどその体格差が大きい。体格差は体力差に反映され、さらには運動能力差にも反映されるため、早生まれが得であることは無いようである。その顕著な例として、高校生の甲子園出場経験者の生まれ月別の人数調査により、春・夏とも4月生まれの球児が最も多く、3月生まれに向かって徐々に減少している。4月生まれの甲子園球児は、3月生まれの実に2.5倍から3倍となっている。しかし、成人であるプロ野球選手では、4月生まれから3月生まれへの月別人数の減少のスロープが緩やかになり、同じく成人である日本陸上競技選手権大会出場者の生まれ月別人数では、生まれ月による顕著な差は見られない。これらの結果および成人では生まれ月による体格差は消失しているという事実から、低年齢児の体格差を反映した運動能力の差は成人においては消失しているとしている。
著者
金井 啓子
出版者
近畿大学総合社会学部
雑誌
近畿大学総合社会学部紀要 = Applied Sociology Research Review KINDAI UNIVERSITY (ISSN:21866260)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.35-44, 2016-09-30

On May 17, 2015, Osaka City held a referendum to decide whether it should abolish the 23 administrative wards and restructure the city into several wards. Following the referendum, the author's college junior seminar students interviewed 20 members of the municipal assembly in Osaka City who belong to the Liberal Democratic Party. The author wrote a report based on the interviews and submitted it to the Osaka City branch of the LDP on September 23. The referendum was quite important because it could be used as a simulation for a possible referendum in the future by the whole nation to decide whether Japan should revise the Constitution. In this paper, the author examines how the students prepared for the interviews, how the interviews were conducted, what the interviewers and interviewees perceived the whole project, and what lessons the author learned during the process.
著者
千葉 立寛
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.1022-1027, 2018-10-15

クラウドが登場し,クラウドという言葉が広く認知されるようになってから10年ほどが経過した今,多くのシステムがクラウドへの移行が進んでいる.しかしながら,既存のシステムで動作していたアプリケーションをそのままクラウド上に移行したとしても,自動的にリジリエントかつスケーラブルになることはなく,クラウドに対応した形(クラウドネイティブ)に変化させていく必要がある.クラウドネイティブ化していく流れの中心に存在するものが,コンテナ技術である.本稿では,コンテナのこれまでの歩みを振り返りつつ,そもそもコンテナとは何なのか,なぜコンテナが登場したのか,なぜコンテナが注目されているのかを解説していく.
著者
山下 玲 過外 真帆 前田 柊 松山 桂 蔵並 香
出版者
東洋大学ライフデザイン学部
雑誌
ライフデザイン学紀要 = Journal of Human Life Design (ISSN:18810276)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.359-374, 2018-03

政府は2025年までに日本のスポーツ産業市場を15兆円までに拡大することを目標としている。その具体的な施策として、スポーツを「する」「みる」「ささえる」といった、スポーツ参画人口の拡大を目指している。しかし、スポーツを「する」人においては、成人の週1回以上のスポーツ実施率が42.5%にとどまり、「みる」人においても、直接現地でスポーツ観戦を行った人は、わずか24.7%という現状がある。この要因として、スポーツ環境が整備されていないことが伺える。本研究では都市公園に着目し、実施・観戦需要があるにもかかわらず把握されてこなかった、都市公園とスポーツの関係性について明らかにすることを目的とした。まず、都市公園において、「する」スポーツを取り入れた先進事例の1つであるBryant Park(アメリカ合衆国ニューヨーク州)では、スポーツプログラムの実施やスポーツ環境の提供を行うことで、地域住民が気軽にスポーツを実施できる公園づくりを行っていることが伺えた。また、「みる」スポーツとして、日本におけるプロスポーツリーグトップチームが本拠地として使用するスタジアム・アリーナに着目し、結果、対象とした全48チームの本拠地であるスタジアム・アリーナの半数以上が、都市公園内に設置されていることが明らかとなった。しかし、スタジアム・アリーナと都市公園の管理者が異なることにより生じる問題や、法による活動の制限等、弊害が生じている可能性があることも伺えた。本研究より、都市公園とスポーツは深い関係性があることが明らかとなった。今後、国民の健康づくりや感動を共有する「場」のひとつとして、スポーツを取り入れた公園づくりを行うことは、スポーツ参画人口拡大につながると考える。