著者
岩本 秀明 野村 浩郷
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.37(1991-NL-083), pp.7-14, 1991-05-16

法律文の言語モデルを示し、それにより法律文が持つ言語情報と論理情報の両方を共に記述する表現枠組を述べる。さらに、それらを法律文の計算機処理に応用する。法律文には構文的、意味的に制限されて用いられる語や句が多く存在する。これらを考慮すれば法律文に関する制限言語を定義することが可能となる。法律は対象や事象の間の関連を明確に定義するものであるから、法律文の意味表現のベースとして論理表現を採用する。これらより、法律文の表現枠組は、言語情報と論理情報の両方を表現できるものでなければならない。ここで述べる素性論理構造表現はそれらの要求を満たすものである。この表現枠組は、法律の知識ベースを構築し、判例の推論を機械化することへの応用をも意図したものである。
著者
窪田 貴文 吉村 剛 河野 健二
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2016-OS-136, no.11, pp.1-10, 2016-02-22

ログは実行エラー時のシステムの挙動を理解するのに有効な情報源である.これはログの出力にはデバッグに必要な情報が含まれていたり,また実行パスの推定にも有効だからである.しかしながら,近年のマルチスレッド環境に対応したシステムソフトウェアでは単純なログのみではシステムの挙動を理解するのは難しい.なぜなら,マルチスレッド環境では複数スレッドで共有されるデータによりデータフローがスレッドをまたぎ,スレッド間で依存関係が発生するからである.さらに,このような複雑なデータフローを追跡するログを手動で挿入するのは,ソフトウェアの専門的な知識と開発コストが必要な作業である.そこで,本研究ではスレッド間の依存関係を追跡するログの自動挿入を行なうツールを提案する.提案手法では,型情報を考慮したデータフロー解析を行なうことでスレッドをまたいで依存関係が発生するデータフローのペアを特定し,そのデータフローを追跡するログの自動挿入を行なう.本研究では提案手法を Linux I/O に適用し,実際に Btrfs におけるバグのデバッグにおいて有用性が示している.また,提案手法におけるオーバヘッドはデータベースアプリケーションにおいて約 2%であった.
著者
浜田 穂積
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.149-156, 1983-03-15

実数値の2進表現として 先に次の特徴を有する表現法を提案した.(i)形式はデータの長さに依存せず精度変換操作が単純 (ii)オーバフロー アンダフローが発生せず 十分大きい数も十分小さい数も表現可能 (iii)固定小数点表現と比べて 分解能の点で1ビットの不利にすぎない.しかしながら 2進数としての指数の値の2進表現と本表現の指数部とが完全には対応せず1だけずれていて論理を少し複雑にしていたのを修正した.これによっても 上記の特徴は保たれることがわかった.丸めについてはIEEE標準案での提案のすべてを容易に満たすことができる非数については IEEE標準案と松井・伊理の提案したもののうち 0 +0 -0 ∞ +∞ -∞は2進による表現パタンの極限的なものを 表現しようとする数値との自然な連続として定義することができる.これら非数をも含めた数の四則演算を 対称性をよく保って定義することができる.ただし 松井・伊理の定義した? +? -?については特別な数値ではなく 表現の詳しさに関する情報であって 本表現の意味となじまないため定義しないほうが望ましいと考え 該当の場合は有意性なしの例外処理を期待する.データの特性パラメータが本表現によれば長さだけであるので プログラミング言語での指定も容易となる.この場合の具体的拠案も行った.
著者
稲津 和磨 岩崎 英哉
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.1-15, 2010-09-22

近年Google Mapsなどに代表される,Ajaxと呼ばれる手法を用いたWebアプリケーションが増加している.Ajaxを用いたWebアプリケーションはサーバ側とクライアント側で動作する2つのプログラムにより構成され,それらが協調して動作する.そのため,煩雑な通信処理を記述する必要があり,さらには,それぞれの実装言語が多くの場合は異なっているため,プログラミングが非常に煩雑になる.そこで本論文では,開発効率の向上を目的として,JavaScriptに基づくプログラム言語でWebアプリケーションを1つのプログラムとして記述し,処理の柔軟な分割を可能とするフレームワークを提案する.また,そのプログラム言語で記述されたプログラムを読み込み,サーバ側で動作するソースコードとクライアント側で動作するソースコードを出力するような機構を設計し,実装した.提案機構は,与えられたプログラムを解析し各構文要素がサーバとクライアントのどちらで実行するべきかを決定する.その際,分割方針を指定することで,同じソースコードから異なる分割を得ることができる.同じ動作をするWebアプリケーションを,提案機構と既存の手法のそれぞれを用いて記述し,プログラムを比較して記述性が向上していることを確認した.また,提案機構によるオーバヘッドは,Webアプリケーションで行われる一般的な処理については問題ない程度の小さなものであることを確認した.
著者
周 潔瑩 坪井 哲也 長谷川 大輔 石川 浩司 木村 恵介 田中 未来 大関 和典 繁野 麻衣子
雑誌
研究報告数理モデル化と問題解決(MPS) (ISSN:21888833)
巻号頁・発行日
vol.2018-MPS-117, no.4, pp.1-6, 2018-02-22

レストランの顧客満足度は,料理の品質だけではなく,料理提供の順序とタイミングにも強く関係している.料理の品質は,料理ごとに定められている調理手順に従うことで維持できるが,料理提供の順序やタイミングは,注文された複数料理の組み合わせにより,各々の調理手順を組み立てなければならない.本研究では,調理手順を組み立てるスケジューリング問題を扱う.まず,スケジュールを行う調理手順を簡素化したモデルを作成し,提供までの時間とグループ客への同時提供を重視したルールを提案する.そして,評価実験により提案したルールを比較し,ルールの有効性と結果にもたらす影響を考察する.
著者
佐々木 高弘
雑誌
人間文化研究
巻号頁・発行日
no.41, pp.238(1)-206(33), 2018-11-20
著者
保木 邦仁
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2006論文集
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.78-83, 2006-11-10

将棋プログラムBonanzaの思考アルゴリズムの主要な特徴の一つである,局面評価の機械学習に関する手法を紹介する.これの手法では,minimax探索の振る舞いを決める特徴ベクトルの自動学習を目指す.熟練した人間の棋譜との指し手一致の度合いを図る目的関数を設計し,これに停留値を与える静的評価関数f(v)の特徴ベクトルvを求める.さらに,v=0となる自明な解の除去や,棋譜サンプル数の不足に起因するオーバーフィッティングを回避するため,ラグランジュ未定乗数法を用いて目的関数に拘束条件を課す.目的関数の停留値は静的評価関数の勾配∇f(v)を用いて探索される.これは,古くから知られている最適制御理論の枠組みに沿った手法である.しかし,約6万局の学習データから1万以上の要素を持つ特徴べくとるを生成し,駒割に加え序盤の駒組,中盤の駒の動き,終盤の速度計算等の複雑な盤面特徴の把握が必要とされる将棋において,有効に働く局面評価関数が生成された.筆者に知る限り,本稿で提案される手法は,チェスやその変種の静的評価関数の自動学習法として”実用に耐え,役に立つ”初めてのものである.