- 著者
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神鳥 昭
- 出版者
- 公益社団法人日本航海学会
- 雑誌
- 日本航海学会誌 (ISSN:04666607)
- 巻号頁・発行日
- no.45, pp.115-128, 1971-08-30
- 被引用文献数
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1962年から1969年までの8年間に関門海峡で発生した衝突海難について分析した結果を要約すると次のとおりである。1)関門海峡で発生した全海難は年平均65件で,そのうち衝突および乗揚海難が72%を占めている。種類別海難の趨勢は,衝突海難の場合増加傾向をたどつており,乗揚およびその他の海難の場合横ばい状態である。2)衝突海難の発生地点は部崎沖,早靹瀬戸の門司崎寄り,門司港内,大瀬戸の彦島寄りおよび六連島泊地に集中している。3)各水域の衝突危険度を幹線航路の長さ1浬当りの衝突海難発生率に基づく指数(東部水域を100とする)で評価すると,早靹瀬戸500,中部水域408,大瀬戸150,西部水域116である。4)水域別の衝突海難発生件数の経年的趨勢は西部水域では増加傾向をたどつており,東部水域でも増加傾向がうかがえる。他の水域では横ばい状態である。5)西部水域では3,000トン以上の大型船の衝突発生率が高く,早靹瀬戸および大瀬戸では100〜1,000トンの比較的小型船の衝突発生率が高い。6)衝突事故船の船型は急激に大型化している。7)衝突事故船の船型は71%が1,000トン未満である。しかし趨勢としては1,000トン未満の小型船の衝突海難が,ほぼ横ばい状態であるのに対し,大型船の衝突海難が増加している。8)関門海峡通航船の1隻当りの衝突事故率(p)と総トン数(x)との関係は,次の指数関数で表わされる。p=0.46x^<0.59>×10^<-5>9)衝突海難は夏期に少なく,冬期に多発する傾向がある。10)衝突海難は4〜6,時および16〜18時に最も多く発生している。2時間単位でみた船舶交通量と衝突海難の発生件数との間には,ほとんど相関は認められない。11)夜間は昼間にくらべ衝突海難が多発する傾向があるとはいえない。しかし夜間交通量が昼間にくらべ激減することを考慮すれば,夜間通峡船の衝突事故率は昼間の2.5倍である。12)停泊船との衝突海難は全衝突海難の17%を占め,大部分が門司港内と六連島泊地で発生している。門司港内では昼間,六連島泊地では夜間の事故が多い。13)最近六連島泊地で,停泊船との衝突事故が急増している。