著者
三浦 麻子
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.291-294, 2017-03-15

市民生活において人の気づきが重要な意味を持つ場面のひとつに政治的意思決定がある.投票は,論理的な思考を経た合理的な意思決定の所産であるべきで,その前提には能動的に情報を収集し,判断のための問いを明確化する過程,すなわち「気づき」が必然的に伴う.しかし,多くの市民の日常的な政治関心は低いため,機会が近づいて初めて情報を収集する.このような場合に,近年であればマスメディアと並んでインターネットが重要な情報源となるが,膨大な情報の海への選択的接触は限定的で偏った所産しか得られない可能性が高いというパラドックスがある.真に多様な情報に接して気づきを得るためには,偶発的・副産物的な学習が案外有効である.
著者
渡辺 滋
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.190, pp.29-55, 2015-01-30

古代社会で発生した揚名官職(肩書だけで権限・給与が与えられない官職)をめぐっては、有職学(儀式・官職などに関する先例研究)の一環として、また『源氏物語』に見える「揚名介」の実態をめぐって、前近代社会のなかで長期に渡り様々な人々による検討がなされてきた。ところが先行研究では、一部の上級貴族をめぐる個別的・断片的な事例を除き、その展開過程について十分な分析がなされないまま放置されている。そこで本稿では、関連資料が豊富に現存する広橋家の事例を中心として、中世貴族社会における関連研究の展開を解明した。具体的に取り上げたのは、おもに広橋兼秀(一五〇六~一五六七)による諸研究である。国立歴史民俗博物館に所蔵される広橋家旧蔵本から、兼秀によって作成された関連資料を検出・分析することで、従来未解明だった広橋家における情報蓄積や研究展開の諸過程を解明した。その結果、彼の集積した諸情報は家伝のものだけでなく、周辺の諸家からもたらされたものも少なくないことが判明した。そこで中世の広橋家における有職研究の過程で蓄積された情報や、それに基づく研究成果を相対化するため、同家の周辺に位置する一条家・三条西家などにおける研究の展開も検討した。このように中世貴族社会における関連研究の展開過程も分析した結果、諸家における研究が相互に有機的関連を持っていたことや、とくに広橋兼秀の場合、一条家における研究成果から大きな影響を受けていた実態が判明した。以上のような展開のすえ、最終的に近世の後水尾上皇などへと発展的に継承される解釈が、基本的には中世社会のこうした営みのなかで形成されたことが確認された。
著者
大原 剛三 青山学院大学
雑誌
人工知能
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, 2017-03-01
著者
大澤 正彦 慶應義塾大学大学院
雑誌
人工知能
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, 2017-03-01
著者
篠原 愛人
雑誌
摂大人文科学 = The Setsudai Review of Humanities and Social Sciences
巻号頁・発行日
no.24, pp.1-29, 2017-01-31

スペイン語の敬称「ドン」は中世、一部の上級貴族にのみ使用が許されていたが、時とともにその規制は緩んだ。16 世紀にはスペイン領アメリカで征服者が普及させ、先住民の間でも使われるようになった。血筋を重んじる先住民史家チマルパイン(1579~1630?)も作品内で「ドン」を多用したが、独自の尺度をもっていた。本稿ではまず、彼の「ドン」適用基準を明らかにする。チマルパインは、系図を確かめる術のないスペイン人については、血筋より職階を第一の基準としたが、個人的な人物評価も加味した。先住民やメスティソに対しては血統を重視し、正統の首長が大罪を犯しても「ドン」を外さなかった。高い公職に就けば出自に関わらず「ドン」が付けられ、親子や兄弟間でも差がついた。貴族の血を引くと言いながら、チマルパインは自分の両親にも、自身にも「ドン」を付けなかったが、1613~20 年の間に自ら「ドン」を名乗り始める。同じ頃、それまで使わなかった「セニョール」や「セニョール・ドン」という敬称を使うようにもなった。以前、拙稿で指摘したように、自分たちの歴史を回顧し、「クリオーリョ」を意識し始めたのも同じ頃である。このような変化が生じた一因を彼の『第八歴史報告』(1620 年)に探ることができる。「古の言葉」、歴史を伝承する大切さを説き、その重責を自分が担ってゆく決意を表明しているのである。それは自分たちの民族の歴史を語り継ぐ歴史家として覚醒した証と言ってよい。
著者
津川 定之
雑誌
研究報告高度交通システム(ITS)
巻号頁・発行日
vol.2009-ITS-39, no.9, pp.1-8, 2009-10-29

この報告は 1950 年代に R&D が始まった自動車の自動運転システムのサーベイを述べ,その特長と課題について考える.1950 年代,1960 年代の自動運転システムは路面に埋設した誘導ケーブルに基づいていたが,1970 年代,1980 年代にはマシンビジョンに基づく自律車両の研究が行われている.1980 年代に始まる各国の大規模な ITS プロジェクトでは自動運転システムが重視され,単独車両の自動運転だけでなく小さな車間距離で走行する自動隊列システムが開発されている.自動運転の特長はヒューマンエラーをなくすることによる安全と,精密な車両制御による道路容量の増加,隊列走行による空気抵抗減少による渋滞の発生抑止と省エネルギー化にある.しかし法的課題があって公道上での実用化には至っていない.
著者
内田 智史
雑誌
第77回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, no.1, pp.519-520, 2015-03-17

現在の電子書籍の多くはテキスト中心である。しかし、電子書籍は、紙の書籍に比べ、フルカラー版で図表やアニメ・映像なども取り入れることが容易である。また、書籍中にリンクや質問検索システムなどを入れることも可能である。本研究では、これらの特徴を踏まえて、読者の理解力によって、書籍の難易度を変化させ、多くの読者に対応できる電子テキストを提案する。
著者
KAWASAKI Kenichi
出版者
GRIPS Policy Research Center
雑誌
GRIPS Discussion Papers
巻号頁・発行日
vol.16-27, 2017-01

地域統合の動向には深刻な不確実性が高まっている。英国は、EUからの離脱を決定した。米国の新大統領は環太平洋パートナーシップ(TPP)からの撤退に言及してきた。本論文の主な目的は、応用一般均衡世界貿易モデルを用いて、地域貿易協定(RTA)の代替的なシナリオの経済効果を定量的に比較することである。米国は、TPPから撤退すると、裨益しないばかりか、損失を被る可能性も推計される。日本との2国間の自由貿易協定(FTA)及び経済連携協定(EPA)の効果はTPPよりも小さくなる。中国やメキシコに対する米国の高い関税の課税は、中国、メキシコばかりか米国の経済厚生を著しく損なう。中国の東アジア地域包括的経済連携(RCEP)からの便益は、合意内容によっては、米国の関税の影響に比べて相対的に限られたものとなる。英国は、EUからの離脱によって損失を被るが、EU離脱のコストは、TPP参加の便益に比べて小さくなる可能性がある。総じて、関税削減に比べて、非関税措置(NTM)削減による所得効果はより大きなものとなることが示される。より大きな経済的な便益を享受するため、RTAの高い水準を達成する最善の努力が世界的に行われることが勧められる。
著者
辰己 丈夫 兼宗進 久野 靖
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータと教育(CE)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.123(2005-CE-082), pp.77-84, 2005-12-10

筆者の一人である辰己は2001年のCE研究会で「情報教育の音楽化」という題名で発表を行ない、情報教育の中で楽譜処理を利用できることを指摘した。一方、兼宗・久野は、タートルグラフィクスを土台にオブジェクト指向を取り入れた教育用プログラミング言語「ドリトル」を開発していた。ドリトルには以前より音楽演奏機能が追加されていたが、本格的な教育への応用は行っていなかった。これを利用したプログラミング教育を実践してみたいという辰己とドリトルを開発している兼宗・久野の3名が、ドリトルの演奏機能に大幅な演奏機能の拡充を行なった。本発表では、「情報教育の音楽化」の概要、ドリトルにどのような拡充が行なわれたのかなどについて説明をするとともに、教材例・授業例の提示などを行なう。
著者
越塚 登 高田 広章 坂村 健
雑誌
情報処理学会研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.73(1991-OS-052), pp.1-8, 1991-09-06

本稿はGUIプログラミングの労力の軽減を目的とした、BTRONの新しいウィンドウシステムについて述べる。そのアーキテクチャやプログラミングインタフェースは、グループウェアや、カット&ペースト機能、付箋を使ったバッチ処理メタファなどのような、新しい対話スタイルのGUIのプログラミングがサポートできるように設計されている。とのGUIプログラミングモデルのベースとして、本稿では始めに対話モデルを提案する。そして、その対話モデルに基づいた、プログラミングインタフェースモデルである、Abstract Event/Window Callセットを提案する。そして、この、Abstract Event/Window Callセットを実際に実現するソフトウェアである、Window Shared Data Pool()についても述べる。また、本稿ではWSDPのプロトタイプバージョン上に、このブログラミングインタフェースを生かして、分散共有黒システムを少ないソースコード量で実装できたことも加えて報告する。"
著者
中根 佳江
雑誌
大阪総合保育大学紀要 = Osaka University of Comprehensive Children Education (ISSN:18816916)
巻号頁・発行日
no.9, pp.83-106, 2015-03-20

ここ数年、保育者から表現をしない子どもへの指導について、良く質問を受けるようになった。そこで筆者が各園でリトミック指導時に保育者の子どもへの関わり方に注目したところ、保育者の音楽的表現力の差がある事に気づいた。 子どもを取り巻く環境として、家庭では保護者が忙しく、子どもとゆっくり歌を歌うという時間もない。そして保育現場では、様々な取り組みに追われ、子どもと楽しく音楽的活動を行う気持ちの余裕が減少しているように見受けられる。 そのような環境の中で、保育者の音楽的表現力の差が子どもの音楽的表現力の向上に関連されると推測し、本研究では、調査①では、保育者への研修を行い、リトミックの理解と音楽的表現力の向上についての調査を行う。調査②では、保育者の被験児への音楽的表現力についての観察記録により、子どもの音楽的表現力についての調査を行う。 以上の調査より、保育者自身が表現することを楽しいと感じ、保育者が表現力を高め、表現に関する視野を広げて子どもに関われば、子どもの音楽的表現力の向上に影響を及ぼすことがいえる。