- 著者
-
後藤 吉彦
- 出版者
- 日本社会学会
- 雑誌
- 社会学評論 (ISSN:00215414)
- 巻号頁・発行日
- vol.55, no.4, pp.400-417, 2005-03-31 (Released:2010-04-23)
- 参考文献数
- 40
- 被引用文献数
-
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本稿はまず, 身体的損傷 (インペアメント) ではなく社会的障壁こそが障害者にとっての問題=障害 (ディスアビリティ) であると主張する「障害の社会モデル」を紹介し, その功績と意義を確認する.そのうえで, 「社会モデル」に内在する問題-身体・インペアメントについての「生物学的基盤主義」, ひとを障害者/健常者とカテゴリー化することを容認するアイデンティティ・ポリティクス-を批判する.そして, それを補うべく, 障害学, 社会学に必要とされるのは, 障害者/健常者カテゴリーを不安定化させるような取り組みであると指摘し, そのためには「基盤主義」を徹底的に問いなおし, “障害者の身体” や “健常な身体” という概念を脱自然化させて捉えなおす視点が重要であると主張する.本稿の後半では, “健常な身体” の不安定さ, 不可能性を論じたM. Shildrickの著作をとりあげ, さらに, 彼女の議論を参照しながら, 障害者の〈逸脱〉した身体を健常者の〈標準〉なものに近づけるべくおこなわれるリハビリや整形治療について検証する.