著者
山本 篤 山口 和紀
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.44, no.7, pp.1756-1765, 2003-07-15

正規表現は,パターンマッチングを行うためのツールとして広く利用されている.しかし,さまざまな応用で拡張されてきたのにともない,次のような問題が出てきている.1)標準的に使われている正則集合による意味づけでは,後方参照がうまく定義できていない,2)オートマトンを用いたパターンマッチングの実装において,状態数やバックトラックの回数が爆発することがある,3)正規表現の積や差を直接的に利用できない.本研究では,このような問題を解決するために,正規表現関数と呼ぶ関数を導入する.正規表現関数は,記号列集合を入出力とする関数であり,マッチする記号列を消費して出力するものである.たとえば,正規表現 a* が a の繰返しにマッチすることは,その正規表現関数が,a*({ab aa b}) = {ab b aa a ε} という入出力関係を持つことで表される.これを拡張し,変数を扱えるようにすることで,後方参照も含めた正規表現を定義することができる.また,正規表現関数を用いたパターンマッチングの実装が可能であり,後方参照のない場合には計算量の爆発を避けることができ,比較実験でも優位なケースを確認した.さらに,正規表現の積と差を導入し,これらが正規表現関数によって簡単に実装できることを示す.最後に,正規表現の積や差を用いる応用例としてHTMLなどへのパターンマッチングをあげる.
著者
鈴木 勇次 Yuji Suzuki
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.5-15,
著者
川越 ゆり 滝澤 真毅
出版者
東北文教大学・東北文教大学短期大学部
雑誌
東北文教大学・東北文教大学短期大学部紀要 = Bulletin of Tohoku Bunkyo College Tohoku Bunkyo Junior College
巻号頁・発行日
vol.1, pp.83-103, 2011-03-31

はじめに 1950年代のイギリスの子ども文化を紹介したOpie & Opie(1959)の11章には、当時の子どもの間で流行していたさまざまなジンクス(縁起かつぎ)が収録されている。章の冒頭で、著者は1852年にプリマスに在住していたある男性の回想を紹介し、男性の少年時代に流行していた「白馬を見たら3回つばをはき、つばの飛んだ方向に行けば良いことがある」というジンクスの類例が、1950年代の子ども達の間で今なお生き続けていると述べている。また、白馬のジンクスに限らず、学齢期の子どもがさまざまなジンクスにこだわる傾向にあることを、事例を挙げて報告している。では、Opie & Opie に報告されているような子どもの姿は、特定の国や時代に限られた現象なのだろうか。学際的で興味深いテーマであるにもかかわらず、子どもとジンクスとの関わりについての研究は十分になされてきたとはいえない。本論文の目的は、平成の日本で子ども時代を過ごした学生の回想データを分析し、イギリスの事例と比較することで、日本の子どものジンクスの実態の一端を明らかにすると同時に、国や時代の別を問わず、子どものジンクスに共通に見られる特性を示すことにある。
著者
小森 瞭一 Ryoichi Komori
出版者
同志社大學經濟學會
雑誌
經濟學論叢 = Keizaigaku-Ronso (The Doshisha University economic review) (ISSN:03873021)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.61-85, 2006-06-20

小論文は第2次大戦後先進諸国における加速償却政策を比較研究したものである.加速償却政策は民間設備投資を効率的に増加させるもので,1960年代世界的に見られた高度経済成長に貢献した.小稿ではまず加速償却を定義づけ,さらに加速償却政策を歴史的に考察し,理論的側面を検討する.次に企業会計上減価償却が最近の所得課税メカニズムを通じてどのように加速効果をもたらすかを論ずる.本稿の主な課題として第2次大戦後の先進工業国における加速償却規定を比較研究する.最後に加速償却政策の経済的制約として企業会計上の取得原価主義を挙げる.
著者
小熊 正久
出版者
小熊正久
巻号頁・発行日
2010-03-01

メディアの哲学の構築 : 画像の役割の検討を中心として : 平成19年度~平成21年度(2007~2009)科学研究費補助金(基盤研究(C))研究成果報告書 ; 研究課題番号: 19520007 ; 研究代表者: 小熊正久 ; p30-40
著者
梅村 祥之 伊達 彩斗
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:21888752)
巻号頁・発行日
vol.2017-MUS-115, no.39, pp.1-6, 2017-06-10

国土地理院の地図情報から山の形状を表す標高データのカーブを得て,メロディラインを生成するシステムを開発した.そのようにして大量に作成したメロディの中に良いフレーズが何箇所か存在する.それらを人が選定して,つなぎ合わせることによって曲にまとめた.このようにして作成された曲 2 曲と,プロの作曲家によって作曲された既存曲 3 曲の計 5 曲について,26 名の評価者に曲の良さを 5 段階評価してもらった.その結果,本法による生成曲の良さは既存曲と同程度であることが確認された.
著者
小暮 修三
出版者
東京海洋大学
雑誌
東京海洋大学研究報告 = Journal of the Tokyo University of Marine Science and Technology (ISSN:21890951)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.20-37, 2022-02-28

大正・昭和戦前期の国内博覧会では、その余興として「海女の実演」が行われ、非常な人気を博したという。現在確認し得る限り、1920年から1940年代初頭までの間に、すなわち、大正・昭和戦前期に、博覧会で行われた「海女の実演」が41件確認されている。ところで、そのような海女は、どのような視線に晒され、どのように消費されていったのか? そして、なぜ、大衆の人気を博していたのか? 本稿では、時系列に則って、博覧会の意味、そこにおける海女館の位置付け、並びに、それを宣伝する新聞メディア(特に、博覧会開催地の地方新聞)の言説を通して、海女に対する性的視線の形成過程について考察を行った。同時期における国内博覧会の海女館では、大衆の海女に対する性的視線が、博覧会の集客を望む主催者、ランカイ屋(イベント業者)、新聞メディア、それぞれの利害が絡み合う形で形成されていった。そこでの海女は、「奇妙」や「エロ」といった形容詞を伴って商品化されていくことになる。このことは、海女という生身の人間を「他者」として展示し、それを金銭と代替に鑑賞するという、大衆が圧倒的な優位的立場に置かれた非対称的な関係の構築過程を表している。