著者
胡 藤 Teng HU
出版者
島根県立大学北東アジア地域研究センター
雑誌
北東アジア研究 = Shimane journal of North East Asian research : North East Asian region (ISSN:13463810)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.1-17, 2022-03-31

Qian Daxin is one of the most representative scholars of the School of Evidential (kaozhengxue, koukyogaku) in Qing Era. He has a keen command of history studies and claims that Confucian Classics studies (jingxue) and history studies should not be treated separately. He believes that only studying both could prevent knowledge from becoming impractical like the Neo-Confucianism (school of principle, lixue, rigaku). This article takes his assessment of the Shi Tong (by Liu Zhiji) as a clue to analyze his understanding of historical records and what he perceives as the ideal way of historiography. Qian Daxin holds the point that the facts should be truthfully recorded, though the recording may be subject to interference by the political power of the time to ‘create myths’ to legitimate its rule. It is thus valuable to document other narratives of various historical sources to resist such political interference. Only in this way will the historical records be free from becoming moral judgments. And this means reading history will be to understand the ancients immanently through historical records. Qian’s point of view is usually seen to be close to Zhang Xuecheng’s, who is believed to hold a modern historiographical perspective. Although Zhang makes a similar point with Qian that all Confucian Classics should be regarded as historical materials instead of principles, he still attempts to establish in his historiography a continuous "orthodoxy" where the authority of political power overrides scholarship. Qian, unlike Zhang, focuses on discovering and understanding the specific ‘Other’, which was shared by most scholars of the School of Evidential at that time and is thus seen as the motivation of their studies.
著者
安尾 敏明 友藤 孝明 田村 康夫
雑誌
岐阜歯科学会雑誌 = The Journal of Gifu Dental Society (ISSN:24330191)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.121-127, 2021-10

CBTの得点(以下、CBT得点)結果と歯科医師国家試験の合否結果との関係については明らかになっていない。そこで、本研究では、歯学教育上の観点から、CBTの結果と歯科医師国家試験合格率(以下、合格率)との関係について明らかにすること、そして、歯学部学生と教員のために歯科医師国家試験に合格するための目安となるCBTの目標点を統計的に設定することを目的とした。資料は、朝日大学における直近6回(第109回~114回)の歯科医師国家試験を受験した学生のCBT得点とした。CBT得点に基づいて、①96-100点群、②91-95点群、③86-90 点群、④81-85点群、⑤76-80点群、⑥71-75点群、⑦66-70点群、⑧61-65点群および⑨0-60点群の9群と71点群から75点群の5群に分け、各群の合格率を算出した。その結果、①群から③群は100%、次いで④群は90.5%、⑤群は85.2%であった。一方、⑥群から⑨群は、順に、63.7%、50.0%、60.0%、30.0%と低値であった。⑥群を境に合格率が低値となっていたことから、その境目のCBT得点を明らかにするために、まず、⑥群を1点毎に5群に分けて検討した。その結果、各群の合格率は71点群から順に、50.0%、42.1%、73.7%、54.2%、88.5%であった。次に、受信者動作特性分析を行った。その結果、CBT得点の曲線下面積は0.809であった。また、Youden Indexに基づいた最適カットオフ値は74.50点であった。以上の結果から、朝日大学ではCBT得点が86点以上か否かで歯科医師国家試験に全員合格するかどうかの一つ目のボーダーがあり、次いで75点以上か否かで二つ目のボーダーがあるように考えられた。
著者
田島 明子 今福 恵子
出版者
聖隷クリストファー大学社会福祉学会
雑誌
聖隷社会福祉研究 (ISSN:18826199)
巻号頁・発行日
no.12, pp.24-33, 2019-11-30

目的:静岡県内のパーキンソン病在宅療養者の災害に対する準備状況についてアンケート調査とインタビュー調査を行い、それらの結果からパーキンソン病在宅療養者の災害に対する準備の現状を明らかにし、課題と対策を検討した。対象:静岡県内に居住するパーキンソン病在宅療養者。方法:パーキンソン病友の会を通してアンケート調査とインタビュー調査の依頼をした。結果:水・食料・薬の備蓄をしている人が多かったものの、避難経路や避難方法、近隣との日頃からの付き合いや災害時の協力の依頼はしておらず、家族とも特段話し合いをしていない人が多かった。考察:実践的で具体的な計画を家族で話し合いながら立案する、参加しやすい、災害時に役に立つ防災訓練の工夫、災害時に役だつ薬や障害についての情報を共有できる機会が必要であると考えた。
著者
冨田 りさ 酒井 佳永
出版者
跡見学園女子大学
雑誌
跡見学園女子大学心理学部紀要 (ISSN:24348295)
巻号頁・発行日
no.4, pp.169-180, 2022-03

本研究では,人がストレスフルな体験に遭遇したときに精神的健康を維持し続ける力であるレジリエンス(resilience)のうち,後天的に向上させやすいとされる獲得的レジリエンスに着目し,未来,現在,過去の自分に対する評価である時間的展望体験とソーシャル・サポートとの関連を検討することを目的として,女子大学生95名(Mean:20.7,SD:1.02)を対象に,二次元レジリエンス要因尺度(平野,2010)の下位尺度である獲得的レジリエンス尺度,時間的展望体験尺度(白井,1994),大学生用ソーシャ・ルサポート尺度(片受・大實,2014)で構成される質問紙調査を実施した。 分析方法としては獲得的レジリエンス尺度を従属変数,時間的展望体験尺度と大学生用ソーシャル・サポート尺度を独立変数とする階層的重回帰分析を行い,その結果をふまえて獲得的レジリエンス尺度に時間的展望体験尺度と大学生用ソーシャル・サポート尺度が相互に関連しながら影響を及ぼすモデルを作成し,共分散構造分析を用いて探索的に検討を行った。 その結果,階層的重回帰分析では,獲得的レジリエンス尺度の問題解決志向には未来指向性と情緒・所属的サポートが関連し,自己理解には未来指向性と情報・道具的サポートが関連し,他者心理の理解には過去受容と評価的サポートが関連していることが示された。共分散構造分析では,評価的サポートが時間的展望体験尺度の3要因とそれぞれ関連していることが示され,時間的展望体験尺度を介して獲得的レジリエンスに寄与することが示唆された。
著者
大門 巧 大西 建輔 青山 浩
雑誌
情報教育シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.2021, pp.216-223, 2021-08-21

我々は,DNCL のブラウザ上での実行環境として Tetra を開発したが,高等学校での授業で使用するためには,機能の充実を図ることが必要であった.そこで,Tetra を改良した DNCL のブラウザ上での実行環境である XTetra を開発した.XTetra には,従来の Tetra の機能に加え,コンソールからの標準入力,描画関数,エディタのシンタックスハイライト機能が実装されている.高等学校において,Scratch の使用経験のあるクラスと,使用経験のほとんどないクラスで XTetra を用いた授業を実施し,アンケートを用いて処理系の評価をおこなった.その結果,Scratch の使用経験のあるクラスの理解度が使用経験のないクラスと比較して高くなった.また,XTetra はビジュアルプログラミング言語の要素とテキストベースのプログラミング言語の要素の両方を備えているため,ビジュアルプログラミング言語でのプログラミング経験のある生徒の理解を高める効果が期待できるという仮説が立った.
著者
瀬口 眞司
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.208, pp.191-213, 2018-03-09

関西地方の縄文社会の地域的特色,それを醸し出した要因や背景を問うた。議論のポイントは,〈資源の収穫期間の長さ〉と〈資源利用の方向性と強化の程度〉である。そこで,出土堅果類,打製石斧数,磨製石斧数,堅果類貯蔵量の数量的分析などを行った。結果,東日本に比べ,遺跡出土の堅果類はより多様で,収穫期間もより長く,集約的な労働編成の必要性が低かった可能性を改めて見いだした。また,土地・森林の開発強化には消極的で,資源利用の強化の程度も低く抑えられていたことも見いだせた。関西縄文社会の集団規模は極小さく,求心的な社会構造も生まれていないが,それは資源環境が貧しいからではなく,集団の求心性よりも世帯の自律性が優先され続け,社会の階層化や財・権力の集中にブレーキをかける仕組みが保持されていたからであり,収穫期間がより長い森林資源環境が,その地域的特色の維持を支えていたと考えられる。