著者
須藤 康介

本稿では,国際学力調査TIMSS2011 の日本の中学2 年生データから,いじめの実態の量的把握と,学力といじめの関連についての分析を行った。分析の結果,主に以下の三点の知見が得られた。第一に,いじめ被害はからかいが最も多く,次いで暴力が多い。第二に,学力といじめにはそれほど強い関連はないが,仲間はずれ・デマ・盗難については,学力の低い生徒のほうがやや受けやすい傾向がある。そして第三に,学校の学力水準といじめには明確な関連がなく,高学力校/低学力校だからいじめが多い/少ないということはない。
著者
清原 悠
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.205-223, 2013

本稿の目的は, 1966年から81年にかけて展開した横浜新貨物線反対運動を事例に, 住民運動がいかなる地域環境において立ち上がってくるかを, 人口動態, 保守/革新の両者の地縁組織のあり方, 居住環境の整備のされ方から検討することである. そのなかで明らかにしたことは, 住民運動という概念は運動の当事者によって自らの運動を名指すべく使われた語彙であり, 他の社会運動概念と異なり分析概念ではなく当事者概念であったという点である. 住民運動という概念の最も早い使用は60年代の横浜であり, 当時の横浜は人口流入が激しく, 住民たちは政治的志向において保守から革新まで含んでおり, このなかで運動を構成していくためには, 保守/革新からは距離をおいた運動表象が必要であったのである. また, 住民運動概念は革新側が新住民を自らの政治的資源として動員するべく使用し始めたのであるが, 革新自治体であった横浜市と対立した横浜新貨物線反対運動がそれを内在的に批判し, 換骨奪胎して革新勢力から自立した運動を展開するものとして転用したものであった. そして, 革新側から自立した運動を展開できたか否かは地域環境の整備のあり方に関係があり, 大規模団地造営がなされた地区においては, そこに目を付けた革新勢力によって事前に革新勢力の地域ネットワークが構成されており, このような地区が後に反対運動から離脱することになった点を明らかにした.
著者
松山 礼華
出版者
地域社会学会
雑誌
地域社会学会年報 (ISSN:21893918)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.93-107, 2016

The objective of this paper is to clarify the particular organizational structure that enables youth participation in a local community through a case study of a volunteer group called Street Breakers whose work in Kashiwa-shi has resulted in young people joining activities to vitalise the city centre.In recent years, multiple surveys have shown an increasing tendency among youth to remain in their home communities and it has been pointed out that this arises due to the importance that youth place upon close friendships with their peers.From these findings, I point out a difficulty of the present situation. Even though the regional sociology indicates the importance of fostering "publicity" and "purposeful cooperation" in the local community, it remains difficult for young people to participate.Based on observations on participation, it was confirmed that Street Breakers' organizational structure consists of two different principal models: a hierarchical, and a network model which are fused together in a way that enables youth to participate in local activities.The former is a top-down tree structure in which resources and power of authority are concentrated and given to the senior level of the organization who then set the aims of activities and encourage people's heteronomous participation. The network model is a horizontal organizational structure which consists of participants who share a common purpose and values. They make a commitment to the organization independently and self-sustainingly.Street Breakers creates rich dynamics in the network model of organization. However, it is supported by the hierarchical model when the principle of purposeful cooperation became unstable and delayed. In this way, youth can maintain their purposeful cooperation and be linked to various area resources although they needn't devote themselves to intimacy with their peers.
著者
松崎 朝樹
出版者
認知神経科学会
雑誌
認知神経科学 (ISSN:13444298)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3+4, pp.172-175, 2015 (Released:2016-06-17)
参考文献数
7

【要旨】マジック=手品とは、マジシャンが巧妙な方法を用いて見る者の目をあざむき数々の不思議なことをしてみせる芸である。実際に奇跡が起きる訳ではないが、そこには人が持つ、認知を主とした様々な精神の機能が関与している。マジックを成立させる上で、秘密を特定するに至る光学的情報の抑制、情報のピックアップを妨げること、あり得ない出来事を思わせる情報を作りだすことの3つが重要となる。マジシャンが隠すべき秘密に警戒心を持てば観客にもその警戒心が、そして秘密の存在が伝わるものであり、マジシャンは隠すべきところの緊張感を消すように努めている。人は物事を個々ではなく集合、すなわちゲシュタルトとして認識する力を持っており、その際には真の正確さよりも、自然さが優先されている。それにより人は、情報が完全にそろわずとも推測で補い物事を迅速に処理することを可能にし、細部を過剰に認知せずに処理することで費やす認知リソースを節約できる。その推測で保管された認識と現実の狭間に秘密を隠しこむのがマジシャンの技術である。人は物事に疑問を抱くと考え、何らかの答えを得たところで、その疑問に対する思考を終える。これは認知リソースを節約するための機能だが、マジシャンは偽りの答えを観客に提供することで、秘密を探る観客の思考を止め、惑わすことに成功している。しばしばマジックでは起きる現象を予告しなかったり、わざと疑うべき点を多数残したりすることで、「いつ」「どこ」を疑うべきかを不明確にし、マジックの秘密に気付くことを防いでいる。さらに、観客にトランプを覚えたり道具を調べたりするなどのタスクを課し、さらには、動く物体や視線などに向けられる自動的な注意を引き出すことで、マジックの秘密を探る観客の注意を操作して情報のピックアップをコントロールしている。これらの現象は、観客が正常の認知機能を有するからこそ成り立つことであり、マジックを不思議だと思えてこそ正常と言えよう。人がマジックに非現実を見る機能を通すことで、日常的な人の認知機能につき理解は深まる。
著者
中島 雅子 小田 尚子 別府 道子
出版者
東京家政学院大学
雑誌
東京家政学院大学紀要 (ISSN:02866277)
巻号頁・発行日
no.23, pp.p19-20, 1983

自家製おにぎりに,E.coli及びS.aureusの二種の菌を人工汚染させ,竹皮又はラップフィルムに包装し,経時的に生菌数と食塩濃度を測定し,おにぎりの保存性に対する包装材の影響を実験した。1 20℃保存のおにぎりでは,竹皮とラップの包装材の相違による影響は,食塩濃度や,E.coli及びS.aureusの増殖に対して認められなかった。2 37℃保存のおにぎりでは,E.coliでは包装材の相違による影響はみとめられなかったが,S. aureusでは,竹皮包装は,食塩濃度もやや高くなり,菌の増殖もやや抑えられている。3 通常,常温保存をするおにぎりでは,包装材の相違,それによる食塩濃度のわずかな変化よりも,保存温度が保存性に大きな要因と思われるので,可能な限り低温に保存することがのぞましい。

3 0 0 0 OA 国史大系

著者
経済雑誌社 編
出版者
経済雑誌社
巻号頁・発行日
vol.第5巻 吾妻鏡, 1905

3 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1944年07月22日, 1944-07-22

3 0 0 0 舞踊學

著者
舞踊学会 [編集]
出版者
舞踊学会
巻号頁・発行日
1978
著者
八代 昌樹 田口 晃 千原 鋭思 宮澤 克彰 山田 有純
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-07-04

このプロジェクトはハーバード大学教授の石井水晶先生が日本の高校生に協力を求めたものである。同大学で開発されたDegitSeisソフトフェアを用い、アナログ地震計記録をデジタル化するという作業だ。これによってデジタル化された地震計記録は、地震学や自然科学の研究に寄与され、様々な場面での利用が期待される。私たちは今後の研究や社会に役立てばと思い、このプロジェクトに参加した。
著者
伊藤 淳史
出版者
The Association for Regional Agricultural and Forestry Economics
雑誌
農林業問題研究 (ISSN:03888525)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.177-186, 2010 (Released:2012-04-06)
参考文献数
52

本稿では,戦後日本における海外移住政策について,従来ほとんど検討されていなかった農林省サイドの動向に焦点をあてて考察を行った.その結果,農林省サイドの海外移住政策には人的系譜・政策の位置付け双方における満洲農業移民政策との連続性が見出された.海外移住を人口政策として捉えていた外務省サイドでは1960年代以降事業推進の動機が失われるのに対して,農林省サイドでは時々の政策課題に応じた位置付けが与えられた.加えて,海外移住は外務省にとって大東亜省発足にともなって新たに付加された事業であったのに対して,農林省においては戦時期に重要国策として取り組まれた経緯があった.戦後長期にわたって海外移住が推進されたことを外務省サイドの動向のみから説明することは困難である.農林省によって与えられた農業政策としての側面に着目することが必要だろう. また,現在30万人以上におよぶ日系ブラジル人の「デカセギ」現象について,1990年の入管法改正に先立つ戦後移民の「還流」形態が大きな影響を及ぼしていることを指摘した.日系ブラジル人労働者に関する先行研究ではほとんど言及されることはないが,戦後移民の存在を抜きに現在の「デカセギ」を説明することは困難である.従来,満洲移民研究・戦後移民研究・外国人労働者研究は相互を参照することなく行われてきたが,今後は積極的な対話が望まれよう.
著者
奥田 尚
出版者
古代学研究会
雑誌
古代学研究 (ISSN:03869121)
巻号頁・発行日
no.195, pp.51-56, 2012-09
著者
榊原 良太
出版者
日本感情心理学会
雑誌
感情心理学研究 (ISSN:18828817)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.40-49, 2014-09-01 (Released:2014-12-12)
参考文献数
57
被引用文献数
3 3

This paper reviews the research trend of reappraisal and the issues it confronts, with emphasis on the subtypes of the strategy. First, the paper reviews the concept of reappraisal within Gross's process-model. Then, it presents the emotion regulation effects of reappraisal and its influences on psychological well-being. After that, the paper addresses the controversial points of the past research that treated reappraisal as a single strategy. In doing so, the need of the perspective from the subtypes of reappraisal is discussed, and some studies focusing on the subtypes of reappraisal will be reviewed. Finally, the paper concludes with some problems in the preceding studies of reappraisal and discussions on desirable direction for future research.