著者
山田 奨治
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究
巻号頁・発行日
vol.40, pp.103-128, 2009-11-30

六十四種類の「百鬼夜行絵巻」を対象に、その図像の編集過程の復元を試みた。描かれた「鬼」の図像配列の相違に着目し、情報学の編集距離を使って絵巻の系統樹を作成した。その結果、真珠庵本系統の「百鬼夜行絵巻」の祖本に最も近い図像配列を持つのは、日文研B本であるとの推定結果が得られた。また合本系の「百鬼夜行絵巻」についても図像配列を比較し、それらの編集過程の全体像を推定した。
著者
湯浅 貴行
出版者
麗澤大学大学院言語教育研究科
雑誌
言語と文明 = Language & Civilization (ISSN:21859752)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.65-83, 2016-03-31

本研究の目的は、日本人英語学習者があるテキストを読み、そのテキストのどれくらいの割合の語彙を知っていればどれくらい理解できるのかを調査することである。テキストに知らない語が多ければ多いほど、理解の程度も低くなる。この考えを前提としたものがカバー率研究である。多くの先行研究は、未知語の推測や適切な読解を得るためには、テキスト内の98%の単語を知っている必要があると主張している。(Hu & Nation, 2000; Laufer, 2011; Schmitt, Jang, & Grabe, 2011)。しかし、1 語の定義にワードファミリーを使用している点と読解の測定に従来の多肢選択式テストなどを用いていて再生テストが用いられていない点に問題があり、この2 点の問題を改善し、本研究は読解とカバー率の関係を調査した。
著者
藤井 叙人 片寄 晴弘
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.50, no.12, pp.2796-2806, 2009-12-15

市販テレビゲームにおいて,ゲーム内のコンピュータ(COM)の戦略に対してプレイヤの意識が高まりつつある.特に,世界的に人気のある遊☆戯☆王やポケットモンスターに代表されるビデオトレーディングカードゲーム(ビデオTCG)においては,プレイヤの要求に合わせたCOMの強さの設定が必要不可欠である.現在ではゲームプログラマによる戦略の作り込みによって実現されているが,これは非常に煩雑で時間がかかる.本研究では,強化学習法を用いて,戦略型ビデオTCGの戦略を自動学習する戦略学習機構について検討する.COMの最適行動学習だけでなく,TCG特有の要素である“最適なカード組合せ” や“魔法や罠などの特殊効果” に関しても学習機構を実装する.戦略学習機構の評価として,ルールベース戦略を相手とした計算機実験を実施する.最後に,戦略学習機構の汎用性と,残された課題,その解決策について検討する.
著者
田中 建彦
出版者
長野県看護大学
雑誌
長野県看護大学紀要 (ISSN:13451782)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.51-60, 2002-03-31

アイルランドではほとんどの人がケルト語に属するゲール語を話していたが,英語を話すイングランド人によって植民地化され,この国の言語は英語にとって代わられ,アイルランド語(アイルランドで使われているゲール語をアイルランド語と呼ぶ)は次第に衰退していった.植民地支配者の言語である英語が少しずつ社会に浸透していったことに加えて,教育現場でアイルランド語の使用を禁止し,すべての教科を英語で教えることを命ずる政策が実施されたこともアイルランド語の衰退に大きな役割を演じた.19世紀に自治権を獲得したアイルランド政府は,
著者
川瀬 和也 Kazuya KAWASE 宮崎公立大学人文学部 Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities (ISSN:13403613)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.53-68, 2019-03-08

本稿では、マイケル・トンプソンが Life and Action (2008)において展開した「素朴な行為論」について、その全体像を明らかにした上で、検討を加える。トンプソンの議論はその独創性から高い評価を受けているが、他方でその独創性ゆえに、現代の行為論にとってどのような意義を持つのか、正確な評価が進んでいないという状況がある。本稿では、彼の議論を整理し、フレーゲ的方法の当否、行為間の類種関係の扱い、行為説明における心的状態の役割という三つの観点から検討する。
著者
森本 尚之
雑誌
情報教育シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.2018, no.38, pp.248-255, 2018-08-12

三重大学では学部入学生のノートパソコン必携制度 (一種の Bring Your Own Device, BYOD) を 2018 年度に導入した.本論文では,制度導入にあたっての課題(インフラ整備やパソコンの初期セットアップなど)を整理し,それらへの対応を実例を交えて報告する.また,入学生アンケートの結果や制度導入に合わせて開設した相談窓口(ICT サポートデスク)の運用状況などを基にして,制度開始の状況を分析する.
著者
尾崎 雄一 山本 裕明 光来 健一
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2019-OS-145, no.12, pp.1-10, 2019-02-21

情報システムに障害が発生すると大きな損失となるため,システム障害はできるだけ早く検知して復旧を行う必要がある.システム障害の検知を行うには,監視対象システムの外部から監視を行う方法と内部から監視を行う方法が挙げられる.しかし,外部から監視を行う場合はネットワーク障害などで監視を継続できなくなることがあり,内部から検知を行う場合はシステム障害の影響を受けて障害検知ができなくなる可能性がある.そこで,本稿ではシステム内部で監視でき,システム障害の影響を受けにくい GPU を用いて障害検知を行う GPUSentinel を提案する.GPUSentinel では,GPU 上の検知プログラムがメインメモリを参照することによってシステムの状態を取得する.OS のソースコードを最大限に利用して検知プログラムを記述可能にするために,LLVM を用いてプログラム変換を行う.Linux,GPU ドライバ,CUDA を用いて GPUSentinel を実装し,意図的に発生させた障害が検知できることを確認した.
著者
1. 松尾 豊 2. 西田 豊明 3. 堀 浩一 4. 武田 英明 5. 長谷 敏司 6. 塩野 誠 7. 服部 宏充
雑誌
人工知能
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.358-364, 2015-05-01

訂正:p.364 長谷敏司氏の著者紹介における受賞作は正しくは「My Humanity」です.
著者
志賀 隆 浜島 繁隆
出版者
大阪市立自然史博物館
雑誌
自然史研究 = SHIZENSHI-KENKYU, Occasional papers from the Osaka Museum of Natural History (ISSN:00786683)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.1-16, 2017-12-26

2010年12月に著者の一人である浜島繁隆は、大阪市立自然史博物館にこれまで採集してきた東海地方を主とする水生植物コレクションを寄贈した。寄贈した標本の点数は、水生植物28科129分類群1028点であり、1967年から2010年までの44年間かけて採集したものである。これらの標本は、国内26道県、特に愛知県(542点、52.7%)、岐阜県(203点、19.7%)、三重県(124点、12.1%)の3県において重点的に採集されたのもである(869点、84.5%)。このコレクションは東海地方の水辺環境を知る上で重要な資料であり、本稿では、大阪市立自然史博物館に寄贈された水草標本と、これに関連する浜島繁隆の文献をリストした。
著者
小島 道裕
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.140, pp.201-211, 2008-03-31

筆者は,博物館におけるレプリカの意味について既に考察しているが,本稿では,歴史展示における模型の意味について考察した。歴史を展示する方法には,現存する過去の遺品を展示する方向と,展示テーマに沿って過去の情景を再現しようとする方向の2つがあり,模型は特に後者においてしばしば用いられるが,過去の再現としては不可避的に不完全なものであり,原理的にはそこから直接歴史を学ぶことは出来ない。しかし,実際の歴史,ないし現存する遺跡・遺物などへリンクするための,総合的・立体的な索引ないし入り口として考えれば,資料から歴史像を構成するという展示の本来的役割を促進させる意味で,その正当性を確保しうる。それは現実の歴史に対して歴史展示自体が持つ意味でもある。既存の模型を活用する実例,すなわち,復元模型の意味を,固定されたイメージ=「結論」ではなく,さまざまな情報へと開かれた「入り口」(索引)として読み直す試みとして,当館における「京都の町並み」模型にデジタルコンテンツを付加した事例を紹介した。またそこでは,模型の全体像を認識することの困難さという,作り手と受け手(観客)のギャップの問題についても考察することができた。