著者
寒川 光
雑誌
ハイパフォーマンスコンピューティングと計算科学シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, pp.57-64, 2013-12-31

数値計算は浮動小数点演算によって実装されてきた.そのためアルゴリズムは,丸め誤差を制御する方法を取り入れつつ発達した.一方,有理数計算は,計算機科学の黎明期から研究されてきたが,数値計算には,計算機の性能が不十分であったため,実用的な製品としての実装は少ない.初代スパコン CRAY-1 と現在最速のスパコンを比較すると 1 億倍以上の性能差がある.並列システムの計算能力の発展が続くなら,浮動小数点演算による数値計算は,徐々に有理数演算に置き換えられてゆく可能性がある.有理数計算は正確な計算結果を提供するので,現在の数値計算のアルゴリズムの内,丸め誤差の影響を制御する部分は不要になる.浮動小数点計算では主流である 「直交化を基礎とする解法」 は,有理数計算では桁数が膨大になるため,直接的な解法に劣る.このため有理数計算による数値計算アルゴリズムのメニューは,浮動小数点演算用のものと異なる.本論文では,線形代数計算を有理数計算で行うためのプログラミング環境を,多桁整数演算を実現する階層,有理数演算を実現する階層の上に,BLAS に対応する 「有理数 BLAS」 階層を構築することで,既存の浮動小数点計算用のプログラムを,有理数計算環境に移行する方法を提案する.
著者
五十嵐 悠紀
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.57, no.9, pp.912-914, 2016-08-15
著者
新倉 貴仁
出版者
成城大学大学院文学研究科
雑誌
コミュニケーション紀要 (ISSN:02887843)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.1-11, 2016-03

Benedict Anderson’s Imagined Communities (1983)has been considered to be one of the mostsignificant pieces of literature on the relationship between nationalism and media. However, it has been often overlooked that Anderson’s concept of nationalism is heavily influenced by Marshall McLuhan’s arguments on printing media in The Gutenberg Galaxy(1962).The aim of this article is to reframe the relationship between nationalism and media by revisiting McLuhan’s arguments on industrial society.Firstly, The Gutenberg Galaxy is reframed as an outstanding theoretical work on nationalism. It sheds light on the history of mechanical reproduction, which catalyzed the formation and spread of nationalism.Secondly, The Mechanical Bride(1952), which underlies The Gutenberg Galaxy as well as The Understanding Media(1964), is reconsidered as an outstanding attempt to scrutinize contemporary society in the context of the huge transformation resulting from the progress of industrial technologies.In conclusion, McLuhan’s work, focusing on nationalism in the context of the industrial society, provides us with an effective viewpoint from which to rethink the problem of nationalism even in the context of contemporary globalization and the advent of information society.
著者
平岡美那子 大澤幸生
雑誌
第76回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, no.1, pp.99-100, 2014-03-11

過去になされた議論の内容を把握するためには、議論構造が可視化されていると分かりやすい。しかし、現実に行われている議論の場では、参加者の思考プロセスの違いにより、論点のずれや、認識のずれが生じていることがよくある。そこで我々は、個々の発言がなされた時間の情報を利用して、議事録から議論構造を自動的に可視化する手法を提案する。提案手法では、発言に含まれる単語の登場箇所のばらつきや頻度から、トピックやキーワードを段階的に抽出することができる。また、抽出された単語を発言者別に繋ぐことで、参加者内の論点・認識のずれを可視化することが可能となっている。
著者
斎藤 直人 山田 浩史
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2016-OS-138, no.1, pp.1-9, 2016-08-01

仮想化技術を利用したデータベース管理システム (DBMS) の統合が実運用されている.DBMS はトランザクションをログ先行書き込みで実現しているものが多く,ログ先行書き込みはストレージへシーケンシャルに書き込むことで高速化している.しかしながら,DBMS の統合を行うと,複数の DBMS で発生したログ書き込みが同じディスク上の各 VM イメージ内の DBMS ログファイルを往復しながら書き込まれるためシーケンシャルに書き込みを行えない.本研究では,複数 DBMS で発生したログ書き込みをハイパーバイザで制御し,シーケンシャルに行う手法を提案する.提案手法では,複数の VM の各ディスクイメージに保存されていた DBMS のログファイルを1つに統合する.そして,複数 DBMS からのログ書き込みを制御し,統合されたログファイルへシーケンシャルに書き込む.提案手法を Xen 4.2.1,MySQL 5.6.17 に実装し,4 つの DBMS で同時にワークロード TPC-C を実行した.結果,各 DBMS のスループットの平均で 23%向上し,提案手法の有効性が確認できた.
著者
神田直之 武田龍 大淵康成
雑誌
研究報告音声言語情報処理(SLP)
巻号頁・発行日
vol.2013-SLP-97, no.8, pp.1-6, 2013-07-18

本稿では Deep Neural Network (DNN) を用いた日本語音声認識に関する検討結果を述べる.DNN とは多数の階層を持った人工ニューラルネットワークモデルである.近年,多層のネットワークでも効率的に最適化できる手法が発表され,各種の認識タスクで従来法を上回る性能を示したことから,再び大きな注目を集めている.音声認識分野においても DNN に基づく音響モデルに関して既に多数の研究が行われ改善が進む一方で,日本語のテストデータを用いた検討結果は限られた学習データを用いた小規模な実験に限られていた.本稿では日本語話し言葉コーパス (CSJ) をテストセットとし DNN に基づく音響モデルに関する各種の評価を行った結果について述べる.特に 270 時間の学習データを用いた評価において,音素誤り最小化 (MPE) 学習された Gaussian Mixture Model に基づく音響モデルと比較して最大 28.2 %の認識誤りが削減され,DNN の認識性能の高さを日本語においても確認した.また DNN に基づく音響モデルにおいて,学習用の言語リソースが限られた状況でデータを擬似的に増加させる手法について新たに検討を行い,認識精度がさらに向上することを確認した.
著者
林 正頼 笹野 遼平 高村 大也 奥村 学
雑誌
研究報告自然言語処理(NL) (ISSN:21888779)
巻号頁・発行日
vol.2016-NL-227, no.7, pp.1-7, 2016-07-22

英語教育において,学習者が書いた英作文が,どの程度のレベルであるかを把握することは,教育者,学習者双方にとって有用である.本研究では,英作文のレベル判定問題を順序回帰問題として定式化する.レベル判定の手がかりとして,語彙情報といった基本的な素性に加え,英作文に含まれる誤りの傾向や,文の容認性などを導入し,それらの有効性を検証する.
著者
Bond Francis 藤田 早苗 橋本 力 笠原 要 成山 重子 Nichols Eric 大谷 朗 田中 貴秋 天野 成昭
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.1(2003-NL-159), pp.83-90, 2004-01-13

本稿では、基本語彙知識ベース構築の一環として構築した、ツリーバンク「檜」を紹介する。「檜」は、HPSGで書かれた日本語文法JaCYに基づいて辞書の語義文を解析したものであり、詳細な統語情報と意味情報の両方が付与されている。本稿では、「檜」構築の目的や理論的基盤などについて述べる。 また、「檜」の有効性を示す一例として、知識獲得の予備実験を行なった結果について報告する。
著者
武田 文男 竹内 潔 水山 高久 池谷 浩
出版者
GRIPS Policy Research Center
雑誌
GRIPS Discussion Papers
巻号頁・発行日
vol.16-05, 2016-06

平成24・25年の災害対策基本法改正は,制定以来の大改正であり,改正法等の適切な運用を図るため自治体に求められる実務的課題は多いのではないかと考えている。災害対策基本法等の主たる運用を担う自治体における実務的課題等について,関係自治体の現状や取組み,認識等の実態を明らかにし,今後のあるべき対応を提言するものである。
著者
河野善彌
雑誌
情報処理学会研究報告ソフトウェア工学(SE)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.92(2001-SE-133), pp.55-62, 2001-09-19

最高で最善のソフトウエア設計者の設計知識構造をモデル化した.その内部構造と外部特性は,実際の人の設計の場合と合致する.それ故Industrial Engineeringがソフトウエアの場合にも適用可能になる.これらから産業界のニーズに応えて,現状より拡張したIndustrial Software Engineeringを確立することを呼掛けている.
著者
作田耀子 塚原康仁 村瀬結衣 仲倉利浩 杉浦一徳
雑誌
マルチメディア、分散協調とモバイルシンポジウム2014論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, pp.373-379, 2014-07-02

インターネットを活用してイベントを支援し,参加者により充実したものを提供する取り組みは試行として様々な形で行われている.近年のコスプレイベントでは,参加者の中での既存のコミュニティと統合的な情報不足により,交流に関して閉鎖的な空間となりつつある.初対面の相手同士で,当日に確認できる情報は実際の外見の情報のみであり,交流を支援するような情報共有環境は構築されていない.本研究では,コスプレイベント活動支援環境COSUEの実現と評価を行った.イベント開催前にCOSUEに参加者情報を登録し,イベント開催前と開催中に個々の携帯電話から情報共有を実現する相互支援環境を構築した.初期実験では,参加者の当日のコスプレ作品,キャラクター,コンテンツの嗜好,楽しみ方のタイプの情報を提供する.その上でタイプが合う者同士をマッチングし,その情報の共有を行う.実際のコスプレイベントを想定した実験場面において,参加者に本システムを使用させ,その結果から評価を行った.初期実験では参加者のタイプを明確にし,その情報を活用する事で情報共有環境を実現した.交流履歴と参加者のタイプの相関は見られなかった.またイベントの特徴上,イベント中に携帯を確認しにくいため,サイネージなどを活用した情報共有基盤の必要背景を確認した.今後タイプの定義と情報の提供方法について検討する必要がある.
著者
佐野 誠子
出版者
和光大学表現学部
雑誌
表現学部紀要 = The bulletin of the Faculty of Representational Studies (ISSN:13463470)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.55-71, 2015-03-20

義楚の編んだ仏教類書『義楚六帖』における志怪引用の状況を調査した。『捜神記』、『宣験記』、『冥祥記』といった六朝志怪については、先行する仏教理論書『弁正論』や仏教類書『法苑珠林』に引用される資料からの孫引きがほとんどであり、文字の校勘に使える可能性はあるものの、新たな佚文資料を含んではいなかった。しかし、『列仙伝』、『博物志』、『感応伝』、『集異記』などにおいては、独自の引用も行っており、一部に佚文資料が含まれていることを明らかにした。仏教が外典に博物的な知識を求めていたがために、『博物志』、『集異記』といった書の佚文が残ることとなったのだろう。また、同種の博物知識を伝える書である『漢武洞冥記』についても大量の引用があるが、紙幅の関係もあり、別稿を用意する予定である。