著者
三木 悠登
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-05-17

1.背景火山灰土は世界の地表の1%にも満たない非常に稀な土壌であり、特殊な土壌として認識されている。しかし日本では火山灰土は国土の25%を占めており豊富に存在する。火山灰土は軽く、保水性があり一見扱いやすい土であるが一概にそうとは言えない。火山灰土は鉄とアルミニウムが主成分であり、養分が少ない、酸性に傾きやすい、微生物が少ないという特徴がある。アルミニウムは酸性で溶解し肥料のリンと結合する。リン酸アルミニウムは栄養にならない上に、アルミニウムは植物の根等に損傷を与える。これらの問題を改善するために本研究では火山灰からアルミニウムをとりだすことに注目した。上記でも述べた通り火山灰は扱いやすい上に多量に存在する土である反面、世界的な絶対数が少ないことから研究される機会も少なく、肥料の過剰施用などの一時的な対策により回復の兆しが見えない火山灰土も増えている。これらの問題を解決すれば食料自給率の改善や経済基盤の安定などの日本に利益を与えると考えた。 2.研究目的(1)火山灰による植物生育 火山灰だけで植物を育て,植物の栄養欠乏症状を調べることで植物的視点による栄養の欠乏を調べる。(2)土壌の基礎調査 火山灰(桜島・三宅島)と火山灰土(鹿沼土)の組成の調査として,pH測定,定性と定量を行う。(3)アルミニウムの溶出実験土壌中のAlのpHに対する溶解度関係の調査としてAlの定性と定量を行った。 3.研究方法 (1)火山灰による植物生育火山灰(桜島・三宅島)、火山灰土にそれぞれ小松菜と二十日大根を植えた。人工気象気を用いて、温度は25℃設定にし、純水 20mlを与えた。(2)Ⅰ.土壌のpH測定火山灰(三宅島・桜島)、火山灰土 20gと純水 50mlを振とうビンに入れ、振とうを30分間行った。Ⅱ.土壌中元素の定性と定量火山灰(三宅島・桜島)、火山灰土 20gと純水 50mlを浸透ビンにいれ、振とうを30分間行った。その後、蛍光X線分析装置(EDX)によって定性定量を行った。(3)アルミニウム溶出実験Alを溶出させる溶媒として、pH5.8,pH4.3,1mol/Lの塩酸 100mlと火山灰(三宅島・桜島)、火山灰土それぞれ50gを250rpmで振とうを24時間行った。それらをパックテストと蛍光X線分析装置(EDX)により定性と定量を行った。 4.研究結果(1)火山灰による植物生育 二週間以内に全て枯れ、症状として葉が小さい、葉が黄色い、赤色に染まる、茎が弱いなどの症状が出た。(2)Ⅰ.pHの測定全体としてpHが下げられたことが確認できた。火山灰・桜島では4.8、火山灰・三宅島では4.0、火山灰土では6.63である。Ⅱ. 土壌の定性、定量の結果Si,Fe,Al,Ca,K,Sなどの定性ができた。特に、Si、Fe、Alが多く定量された。(3)アルミニウム溶出実験①パックテストによる定性・定量5.8 塩酸 + 火山灰土 0.1ppm4.3 塩酸 + 火山灰土 0.2ppm1mol/L 塩酸 + 火山灰土 1ppm以上 ②EDXによる定性・定量5.8 塩酸 + 火山灰土 1%4.3 塩酸 + 火山灰土 5%1mol/L 塩酸 + 火山灰土 94% 4.考察(1)結果で挙げた症状はすべて、P,N,Kから来る欠乏症状であり、三大要素が全て足りていないと考えられる。(2) 火山灰土はアロフェンに構成されておりCECが高く、肥料がないので塩基飽和度が低かった為pHが低いと考えられる。また、火山灰は斑状組織でSi,Fe,Al,Sなどが存在する為、構成元素が定性できたと考察できる。また、火山灰土はアロフェン(SiO2・Al2O3・nH2O)で構成されるため構成元素が多く定量できたと考えられる。(3)金属個体のAlと同様にアロフェン中のAlにおいてもpHが低いと溶けだしやすいという相関関係が確認できたと考えられる。また、作成した溶液においてpHが全て5.5付近に集中したことから火山灰土の緩衝性の強さが伺えた。 5.参考文献・R.L.Parfitt,1984, Estimation of allophane and halloysite in three sequences of volcanic soils・農林水産省,土壌分析法・土壌中における重金属の動態・土壌-河川-湖沼系におけるアルミニウムの動態と化学
著者
氏野 智也 小島 梨沙 山田 俊幸 田中 将史 中山 尋量
雑誌
日本薬学会第140年会(京都)
巻号頁・発行日
2020-02-01

目的:血清アミロイドA(SAA)は肝臓で合成される全長104残基からなるタンパク質である。生体内でアミロイド線維を形成し、アミロイドーシスの原因となることが知られている。マウスでは、SAA分子のカルバモイル化が、細胞培養系においてアミロイド線維形成を促進すると報告されている。本研究では、ヒトSAAのカルバモイル化が構造特性やアミロイド線維形成に及ぼす影響を検討する。方法:構造特性に及ぼす影響を調べるため、二次構造及びその熱安定性を円二色性分散計により評価した。また、リポソームと混合することによって、脂質結合に伴う二次構造の変化を調べた。アミロイド線維形成に及ぼす影響を調べるため、チオフラビンTを用いた蛍光測定を行うとともに凝集体の形態を電子顕微鏡により観察した。さらに、SAA分子で最もアミロイド線維形成に関与すると考えられているN末端領域に相当するSAA(1-27)ペプチドを用いて、N末端アミノ基のカルバモイル化の影響を調べた。結果:低温では安定性に違いが認められたものの、生理的温度では脂質への結合の有無に関わらず二次構造にほとんど変化が認められなかった。蛍光測定ではどちらもチオフラビンTの蛍光を示しているにも関わらず、二次構造や凝集体の形態に違いが認められた。SAA(1-27)ペプチドのN末端アミノ基のみのカルバモイル化でも、全長タンパク質と同様の傾向を示したことから、N末端アミノ基のカルバモイル化がアミロイド線維の形成過程や形成される線維の構造や形態に違いをもたらすことが示唆された。考察:SAA分子、とりわけN末端アミノ基のカルバモイル化は生体内での構造には影響しないが、SAA由来のアミロイドーシスの発症に影響する可能性があることが示唆された。今後は、酸化など生体内で起こりうる他の化学修飾がSAAの構造や機能に及ぼす影響をさらに検討する。
著者
平井 景梧 山下 博子 友重 秀介 三島 祐悟 大金 賢司 佐藤 伸一 橋本 祐一 石川 稔
雑誌
日本薬学会第142年会(名古屋)
巻号頁・発行日
2022-02-01

アルツハイマー病やハンチントン病などの神経変性疾患は、従来の創薬手法では対応できない凝集性タンパク質が原因であり、根治療法の開発には新たな創薬アプローチが求められる。我々はこれまで、タンパク質分解誘導薬Proteolysis Targeting Chimera(PROTAC)が凝集性タンパク質の分解を誘導でき、神経変性疾患の創薬アプローチになりうることを示してきた。しかし、PROTACは連結化合物であるため分子量や極性が高く、神経変性疾患の病巣である脳へと到達しづらいと予想される。これを解決するうえで、別のタンパク質分解誘導薬である疎水性タグ(HyT)に着目した。HyTはPROTACのE3リガンドを分子量の小さい疎水性構造に置き換えた構造を持ち、標的タンパク質の表面に疎水性構造を提示する。これがタンパク質の変性状態を模倣し、タンパク質品質管理機構による認識とユビキチン―プロテアソーム系を介した分解へと導く。これを踏まえ、我々の凝集性タンパク質に対するPROTAC 1をHyTへと変換すれば分子量と極性を低下させ、中枢移行性を向上できると考えた。PROTAC 1を基に設計・合成したHyTはいずれも、ハンチントン病の原因となる凝集性タンパク質変異huntingtinの存在量を減少させた。また、脳移行性の予測に用いられる固定化人工膜カラムにより各化合物の脳移行性を推定したところ、いずれのHyTも1よりも脳移行性が良いと示唆された。この結果を参考に、一部のHyTについてマウスを用いた脳移行性試験を行ったところ、HyT 2が脳移行性を示すことを見出した。本発表ではその他の結果も併せて報告し、PROTACからHyTへの変換による活性や薬物動態への影響についても議論する。
著者
酒巻翔大 武田蒼 木島悠理 片桐拓美
雑誌
サイエンスキャッスル2018
巻号頁・発行日
2018-11-21

<考察・展望>現在、開発中であるが、サインカーブだけでなく様々な関数のグラフを描画できるよう、そのデータをつくるソフトウェアを開発すれば、数学だけでなく物理などの授業にも応用できると思う。タッチパネルなども操作性を最適化し、もっと使いやすいものとしていきたい。
著者
荒地香澄
雑誌
サイエンスキャッスル2018
巻号頁・発行日
2018-11-21

<考察・展望>オオサンショウウオの粘液2種類の結果と、その傾向が似ている5種類の粘液を選び表にした(表7)オオサンショウウオの生息地には、石苔(ケイソウ・ランソウ・リョクソウ)が21種類みつかっている。そのうちの10種類がアユの体内から見つかっている。この食べ物の種類によってアユの香りが変わることは、昨年、高校生の科学部先輩が見つけていた。この考え方を、私のオオサンショウウオの粘液に当てはめてみた。また図4 川底の生産者(付着藻類)と消費者の食物網、フグ毒の生物濃縮。文献のアイガモの死亡例を、昨年までの私の研究の「落葉溜まりのバイオーム」にも当てはめながら考えた。やはり、着想類の体内で生産された毒成分が、生物濃縮されて「両生類毒」としてちくされる可能性は捨てきれないが。この毒素とレクチンあるいはムチンは別の用途の物質であると、これからはわけて考えないといけないと思いついた。つまり、オオサンショウウオは、天敵を追い払うときに臭い匂いを出すが、この中に毒性を持つテトロドトキシンが含まれている否かは、アオコが発生している流域かどうかに左右される。これを確認したのは、飼育施設の個体は臭い粘液を分泌するが、量と毒性が減少しており、この二つの性質は別々に適応した器官だと思われる。今後は、テトロドトキシンそのものを検出する技能を身につけたい。またこれによって、オオサンショウウオの飼育するときの水質や、生息地に理想とされる石苔は何かがわかれば、これを指標とした川の水質管理にも応用できると思われる。
著者
稲葉 洋平 内山 茂久 戸次 加奈江 牛山 明
雑誌
日本薬学会第141年会(広島)
巻号頁・発行日
2021-02-01

【目的】リトルシガーは葉巻であるが、その外観、使用法は紙巻たばことほぼ変わらないたばこ製品である。リトルシガーは、2019年から市場に多く投入されている。この一因として、シガー(葉巻)は、紙巻たばこよりもたばこ税が低く、20本入りの1箱の価格が400円程度となっている。紙巻たばこが1箱500円程度であることを考えると安価な紙巻たばこ製品と考えられる。現在、国内で販売されているリトルシガーの主流煙に含まれる化学物質量は、公表されていない。そこで、本研究では、リトルシガー主流煙のニコチン、一酸化炭素、タール、たばこ特異的ニトロソアミン(TSNAs)の分析を目的とした。【方法】測定対象のたばこ製品は、echoとわかばの紙巻たばこ、リトルシガーとした。さらに数銘柄のリトルシガーを対象とした。主流煙捕集の喫煙法は、紙巻たばこ外箱表示に採用されているISO法とヒトの喫煙行動に近いHCI法の2種類を採用した。リトルシガーと紙巻たばこの主流煙は、自動喫煙装置に設置したガラス繊維フィルターに捕集し、振とう抽出後、GC/FIDへ供しニコチンの分析を行った。一酸化炭素、TSNAsに関してもWHO TobLabNetが定めた標準作業手順書に基づいて分析を行った。【結果及び考察】ISO法で捕集した主流煙のニコチン量(mg/cigarette)は、紙巻たばこのechoとわかばが0.96と1.33となり、リトルシガーのechoとわかばが1.08と1.53となった。リトルシガーで上昇しているのが一酸化炭素(mg/cigarette)で、echoが13.2から18.3、わかばが16.4から24.5へ上昇していた。一方で、たばこ特異的ニトロソアミン(TSNAs)は低減されていた。リトルシガーの喫煙者は、紙巻たばこと同様の喫煙行動となると予想される。ヒトの喫煙行動に近いHCI法で捕集した主流煙の化学物質量は、ISO法より高くなることも確認された。リトルシガーが安価なたばこ製品としての定着によって、たばこ対策が後退することが懸念される。また、リトルシガーはタール量も高いことから、燃焼によって発生する多環芳香族炭化水素、カルボニル類、揮発性有機化合物の分析を継続的に進めていく計画である。
著者
加藤正宏 西井瑞季 田中美穂 平瀬詩織 牛若菜月 東畑知真 田端優貴
雑誌
サイエンスキャッスル2014
巻号頁・発行日
2014-12-19

バナナの成熟に伴いその皮は斑点状に黒色化する。ドーパミンの重合による黒色化である。この現象に興味を持ち研究を始めた。特に、①なぜ、斑点状に黒色化するのか(生物学的意味)、②斑点状に黒色化する仕組みはどうなっているのか、③なぜ、ドーパミンが存在するのか(生物学的意味)、これらの点に疑問を持ち、その解明を目的とした。今回は、②について知見を得るべく、「バナナの皮の変化の温度依存性(‐8℃~200℃)」を調べた。その結果、20℃および30℃で保存した場合のみ、明確な斑点状の黒色化が観察された。また、細胞レベルでの黒色化を確認するために、表皮の顕微鏡観察も行った。これら以外に、得られた知見を紹介する。
著者
朝倉 佑実 河野 洋平 佐藤 将嗣 青山 隆夫
雑誌
日本薬学会第140年会(京都)
巻号頁・発行日
2020-02-01

【目的】慢性裂肛には、ニトログリセリン等を含むクリームを患部に塗布し、肛門静止圧を低下させる治療が行われている。しかし、副作用や高い再発率が問題であり、有用な新規薬剤が求められている。芍薬甘草湯は内服で筋弛緩作用を示すことが知られており、外用薬としての有用性が期待できると考えられる。本研究ではラットを用いた肛門内圧測定法を構築するとともに、芍薬甘草湯クリームによる内肛門括約筋の弛緩効果を評価した。【方法】芍薬甘草湯クリームは、精製水に懸濁した市販エキス細粒2.5 gに、添加剤の流動パラフィンとグリセリン、および基剤の親水軟膏を加え、全量を7.0 gとした。肛門内圧測定用のプローブは、カテーテル(6 Fr)の先端にポリエチレン製のバルーンを装着して作成した。プローブにかかる圧力は、血圧トランスデューサと圧力用増幅器を用いて測定し、解析にはPowerLabを用いた。肛門内圧測定精度の検証では、クリープメータを用いてプローブにかけた一定の荷重と圧力測定値間の相関性を評価した。SD系雄性ラットを無作為に芍薬甘草湯群または対照群に振り分けた2剤2期のクロスオーバー試験では、吸入麻酔下でクリーム塗布前と塗布(0.1 g/kg)後3 hに肛門内圧を測定し、算出した肛門内圧変化率で効果を評価した。【結果・考察】プローブに一定の荷重(0.01–0.1 N)をかけて圧力を測定した結果、荷重と圧力の間に良好な相関が認められ(R2=0.996)、本測定法の定量性が確認された。肛門内圧変化率は、芍薬甘草湯群の塗布後3 hで78.8±13.5%(n=10, mean±S.D.)となり、対照群に比して有意に低下した(p<0.05)。以上のことから、芍薬甘草湯クリームは慢性裂肛の治療薬として有用である可能性が示された。
著者
天倉 吉章 内倉 崇 好村 守生
雑誌
日本薬学会第141年会(広島)
巻号頁・発行日
2021-02-01

【目的】ヘーゼルナッツはカバノキ科ハシバミ属植物の果実で,栄養価の高いナッツ類と一つとして世界中に広く流通する食材である.我々はナッツ類の成分に関する研究を行っており,成分情報の乏しいヘーゼルナッツに含有する二次代謝物について検討を行い,4種の既知化合物とともに文献未記載の化合物2種を単離し,それらの構造解析について先の薬学会1)において発表した.その検討の中で,本抽出物には縮合型タンニンと考えられる高分子化合物の存在が示唆されていたため,今回,その続きとして高分子画分について検討した.【方法】前回はヘーゼルナッツ市販品の80%メタノール抽出物について検討したが,本研究ではタンニンの検出を目的とするため70%アセトンで抽出することとした.得られた抽出物をn-ヘキサンで脱脂後,Sephadex LH-20カラムクロマトグラフィーによる分画を行い,高分子画分を得た.本画分について,HPLC,NMR,GPC等に基づき構造解析を行った.【結果】得られた高分子画分についてHPLC分析を行ったところ,縮合型タンニンに特徴的なブロードピークが観察された.13C-NMRの結果,カテキン骨格に特徴的なシグナルが観察され,本画分の主成分はフラバン 3-オールがBタイプで縮合している高分子化合物であることが示された.おおよその分子量を明らかにする目的で,本画分のGPC分析(ポリスチレン標準品を使用)を行った結果,重量平均分子量約7~8万であることが示された.また,GPCで確認されるこのピークを指標に,GPCによるヘーゼルナッツ中の高分子画分の定量法についても検討した.本年会では,これら得られた結果についても併せて報告する予定である.1) 北野智愛ら,日本薬学会第138年会(金沢)