著者
森川 明 冨岡 正雄 佐浦 隆一 尾谷 寛隆 松岡 雅一 大垣 昌之
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.267-274, 2019 (Released:2019-08-20)
参考文献数
17

【目的】災害時リハビリテーション支援活動を振り返り,今後の課題を考察する。【方法】東日本大震災と平成28 年熊本地震のそれぞれ異なる3 つのフェーズの支援活動に理学療法士として参加した。【結果】避難所内外での環境調整や生活不活発病の予防,日常生活動作指導,仮設住宅での新たなコミュニティ立ち上げの支援,地域リハビリテーション資源への移行など発災後のフェーズにより必要な支援が異なり,今後の課題も異なるものがあった。【結論】災害時リハビリテーションの歴史は浅く,経験者も少ないので人材育成が必要である。組織的な対応は大規模災害リハビリテーション支援関連団体協議会が担うようになったが,大規模災害になればさらなる組織的な活動が求められ,そのための準備が必要である。そして,復興期の地域リハビリテーションへの円滑な移行のために,平時からの地域リハビリテーションの充実とリハビリテーション関連専門職の災害時リハビリテーション支援への関与が大切である。
著者
堀口 康太
出版者
日本子育て学会
雑誌
子育て研究 (ISSN:21890870)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.16-26, 2018 (Released:2018-10-02)
参考文献数
50

本論文は児童家庭支援センターが児童家庭相談においてどのような役割を果たしてきたか各種の報告を通して検討し、今後の児童家庭相談において、児童家庭支援センターが果たしていくべき役割を検討することを目的とした文献研究である。児童福祉法の改正や設置運営要綱の改正の流れに沿って、便宜的に 3 つの段階 (1. 創設から 2004 年児童福祉法改正まで、2.2004 年児童福祉法改正から 2012 年設置運営要綱改正まで、3.2012 年設置運営要綱改正後から 2017 年まで ) を設定し、児童家庭支援センターが果たしてきた役割を整理した。整理した結果から、今後の児童家庭支援センターに求められている役割を検討したところ、児童家庭支援センターが行っている各事業が児童家庭相談の中で一貫して継続的に提供されていないことが役割を不明確にしている理由であり、今後は予防的観点から要保護児童等やその家庭に対して一貫して継続的に支援を提供し、地域包括ケアシステム構築に重要な児童家庭相談における中核的機関としての役割を担うことが必要であると整理された。最後に、中核的機関としての役割を担う上での課題が整理された。
著者
西尾 伸也 Oleg Khlystov 杉山 博一 Andrey Khabuyev Oleg Belousov
出版者
社団法人 物理探査学会
雑誌
物理探査 (ISSN:09127984)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.55-64, 2014 (Released:2017-03-02)
参考文献数
26
被引用文献数
1 1

バイカル湖は淡水湖として唯一,メタンハイドレートの存在が確認されている湖である。最近,国際共同プロジェクトによりバイカル湖のメタンハイドレートに関する研究が進められている。バイカル湖の中央湖盆,南湖盆で確認されたBSR分布に基づき,多くの泥火山・ガス湧出サイトの湖底表層からメタンハイドレート試料が採取され,地質情報,物理探査情報も収集された。ここでは,今までの研究成果を概観すると共に,表層型メタンハイドレートの集積状況を把握するために実施したコーン貫入試験結果について述べる。
著者
木賀 洋 石井 義則 松田 芳和 高橋 賢 石井 亮
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.C1022, 2004

【はじめに】膝関節周囲の腱断裂は大腿四頭筋実部での断裂が主であり、膝蓋腱断裂は極めて少ない。また、その殆どが透析等の内科的な基礎疾患をベースとしたものである。今回、特に内科的な合併症がなく自然発症的に損傷し、整形外科的手術を施行後の治療を経験したので報告する。<BR>【症例】47歳男性、会社員(フィットネスインストラクター)息子とバスケットボール中に、ジャンプをしたところ膝関節に疼痛、腫脹出現。歩行困難となり救急車にて当クリニック受診。<BR>【手術、後療法】レントゲン、MRI、エコーにて膝蓋骨上方偏位、膝蓋腱実部に断裂が確認され、受傷後一日に観血的治療を施行。再建術については膝蓋骨にアンカースーチャーを使用し腱縫合を行い、半膜様筋腱を採取し膝蓋骨及び腱実部に通しfigure-eightで断裂部を補強した。荷重は術直後より全荷重が許可され、固定期間については術後3週間をギプス固定、その後3週間をKnee Braceで行った。また、関節可動域運動については術後3週より膝関節屈曲30度程度までの自動運動から開始し、術後6週より他動的に行った。荷重位での筋力トレーニングは術後3ヶ月より許可された。<BR>【理学療法評価】術後6週では安静時痛、荷重時痛はなかったが、荷重に対する恐怖心の訴えがあった。視診、触診にて膝蓋骨周囲の腫脹と膝蓋骨低可動性が見られた。また、大腿四頭筋の収縮時痛はなく、収縮不全が認められた。自動運動での膝関節可動域は膝蓋骨上方に疼痛を訴え、0~50度で制限されていた。他動運動は、自動運動とほぼ同様な角度で制限されており、屈曲の最終域感は大腿四頭筋の筋スパズムによるものであった。以上が可動域制限の原因として考え、理学療法を施行した。<BR>【理学療法経過】術後3週時には大腿四頭筋の萎縮が認められ、筋再教育を施行した。術後6週では膝関節屈曲50度、伸展0度であった。また、extension lagが認められ、歩行時に膝関節可動域制限による跛行を呈していた。術後12週で膝関節屈曲130度、伸展0度と改善したが、腫脹、膝蓋骨低可動性、筋スパズムは軽度残存した。extension lag、跛行は消失し、膝関節伸展MMTは4であったため、荷重位における筋力トレーニング(スクワット)に移行したところ膝蓋骨外側上方に疼痛を訴えた。これについて内側広筋の機能不全による膝蓋骨の軌道変化によるものと考え、患者に内側広筋を意識することを指示すると疼みなく運動が可能となった。術後20週では正座、応用動作、軽いランニング等が可能となるまで回復した。<BR>【考察】現在、生活習慣病予防対策として中高年へのスポーツが推奨されている。中高年のスポーツ機会の増加に伴い、これまで稀とされている本疾患の増加が予想される。本疾患は、頻度の高いACL断裂に加え、今後、我々理学療法士も念頭におくべき一つの疾患と考える。
著者
Hideaki Touyama Junwei Fan
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.27-30, 2017 (Released:2017-03-31)
参考文献数
11

This paper describes a technique for decision by majority by applying brain signal analyses. The ElectroEncephaloGram (EEG) of twenty-four volunteers were recorded with the serial presentations of Computer-Generated (CG) images of human emotional faces. We focused on the Event-Related Potential (ERP) P300 signals and the amplitude was investigated varying the ratio of collaborative P300 occurrences in the group. The supervised machine learning technique was used to perform the decision by majority and the estimation performance value could be almost 80%. This novel concept would be applicable to the decision by majority for Computer-Supported Cooperative Work (CSCW) such as Virtual Reality (VR) interactions only by means of thinking.
著者
高田 俊之 三谷 加乃代 河嶋 智子 早川 みち子
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.1361-1365, 2017 (Released:2017-10-20)
参考文献数
20

脳卒中のため摂食嚥下機能に障害を来し経腸栄養法が必要となった場合、糖尿病を有する例では標準栄養剤を使用すると血糖値が大きく変動しコントロール不良となることが多い。胃瘻にて経腸栄養中の糖尿病合併脳卒中患者に対し、標準栄養剤、low glycemic index(以下、低GIと略)栄養剤及び半固形状流動食を使用した場合の血糖変動を持続グルコースモニター(CGM)を用いて各々測定した。標準栄養剤使用時に大きく変動を認めた血糖値は、半固形状流動食では変動幅が著明に減少し、低GI栄養剤と同等以上に標準偏差値、最大血糖値、Mean Amplitude of Glycemic Excursions(MAGE)を低下させた。これは半固形状流動食により胃の蠕動運動が惹起され糖を含む栄養剤が緩やかに腸管に排出されたためと推測できる。今回の結果から半固形状流動食は糖尿病を有する嚥下障害合併脳卒中患者の血糖変動改善に有用と考えられた。
著者
Bao Liao Meng-xiao Zhou Feng-kun Zhou Xiu-mei Luo Song-xin Zhong Yuan-fang Zhou Yan-sheng Qin Ping-ping Li Chao Qin
出版者
Japan Atherosclerosis Society
雑誌
Journal of Atherosclerosis and Thrombosis (ISSN:13403478)
巻号頁・発行日
pp.51102, (Released:2019-10-10)
参考文献数
28
被引用文献数
30

Aim: Exosome-derived microRNAs (miRNAs) are potential diagnostic biomarkers. However, little is known about their effectiveness as diagnostic biomarkers of intracranial aneurysms (IAs). This study aimed to explore miRNA levels in plasma exosomes of patients with IA to identify potential biomarkers that predict the development and progress of IA. Methods: A total of 69 patients with IA and 30 healthy controls (HC) were recruited, among whom 30 had unruptured IA (UA), and 39 had ruptured IA (RA). The miRNA expression profiles of plasma exosomes in 12 IA patients (4 UA and 8 RA) and 4 HC were determined using next-generation sequencing. In addition, significantly differentially expressed miRNAs were further analyzed by Quantitative Real-Time PCR (qRT-PCR) in a validation cohort of 99 subjects. Results: From the sequencing analysis, 181 miRNAs were identified to be differently (p<0.05) expressed. Of these, 9 miRNAs were up-regulated, and 20 were down-regulated in patients with UA compared with HC. Also, 21 were up-regulated, and 10 were down-regulated in patients with RA compared with HC. In addition, compared with UA, 92 miRNAs were up-regulated in RA, whereas 29 were down-regulated. Furthermore, qRT-PCR analysis confirmed that miR-145-5p and miR-29a-3p were up-regulated in IA samples. To distinguish IA patients from controls, the area under the receiver operating characteristic curve was 0.791 for miR-29a-3p, while that of miRNA-145-5p was 0.773 in terms of discriminating whether the aneurysm was ruptured. Conclusions: Circulating exosomal miRNAs can serve as biomarkers of the development and progression of IA.
著者
西谷修著
出版者
講談社
巻号頁・発行日
2016
著者
原田 和彦
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.96, pp.195-217, 2002-03-29

寛保2年(1742)の8月,信濃の北部を流れる千曲川・犀川が大水害をおこした。この水害によって多くの被害がもたらされた。この水害のことを北信濃では「戌の満水」と呼び習わしている。長野市立博物館には,この「戌の満水」の被害状況をあらわしたといわれる絵図面が伝わる。この絵図面は,水害前の様子と水害後の各村の被害状況を克明に示している。また,山崩れや土砂災害の場所まで描かれている。災害をあらわした絵図面としては,信濃に残るものとしては非常に古い部類に属する災害絵図である。ただ,この絵図面が「戌の満水」の被害状況を示した絵図面であるとの根拠は,絵図面が入っていた袋の表書によるだけである。本稿では,まず「戌の満水」の被害状況を,当時の松代藩の被害届から抽出する。これによって,被害届からわかる「戌の満水」の被害状況を描き出す。また,いちじるしい被害をうけた松代城下についても,当時書かれた見聞記にてらして,川の水がどのように城下町に押し寄せたかなどを検証する。このように当時の記録類などから「戌の満水」の被害状況を描き出すという作業を行っている。こうした基礎作業をもとに,そこから前出の「戌の満水」の被害絵図について,その被害状況を抽出し,その上で記録類から導き出した「戌の満水」の被害の様相と照合し,絵図面の性格付けを行った。「戌の満水」の後に松代藩ではさまさまな復興策を試みる。このなかで,松代城下を水害から守る方法として千曲川の流路を改める作業がなされた。災害後の松代藩の復興策をこうした千曲川の流路変更という面から考えてみた。