著者
富山大学経済学部資料室
出版者
富山大学経済学部資料室
巻号頁・発行日
2017-08

この目録は富山大学経済学部の前身校である旧制高岡高等商業学校が昭和4(1929)年度に受入登録したF. v. ヴィーザー(Friedrich von Wieser, 1851-1926)旧蔵の学位論文276件,雑誌等の抜刷481件を含むヴィーザー文庫 1554件1593冊を収録するものである。旧制高岡高等商業学校は大正13(1924)年に富山県の商都高岡に設置された。本州日本海側では唯一の文部省直轄社会科学専門教育研究機関として地域研究も行い,1935(昭和10)年に『富山売薬業史史料集』を編纂出版した。昭和19(1944)年に高岡工業専門学校に転換,約5万冊の蔵書は昭和24(1949)年に発足した新制富山大学に継承された。ヴィーザー文庫を含む専門図書と雑誌は経済学部資料室が所蔵している。第74回経済学史学会全国大会が平成22(2010)年5月に富山大学経済学部において開催され,八木紀一郎氏により「富山大学のフリートリヒ・v・ヴィーザー文庫」が報告された。ヴィーザー文庫について残されていた情報は高岡高等商業学校図書館図書原簿と富山大学附属図書館の書庫で発見された1325枚の図書カードのみであったため,平成23(2011)年度学長裁量経費(教育研究活性化等経費)「F. v. Wieser文庫の再整理:データベース構築と電子化並びに収蔵経緯の究明」を受け,桂木健次氏を中心として経済学部教員による収蔵文献及び文庫についての調査が行われ目録が作成された。研究成果は『富山大学紀要.富大経済論集』に報告されている。
著者
稲田達也 鈴木由美
出版者
日本教育心理学会
雑誌
日本教育心理学会第58回総会
巻号頁・発行日
2016-09-22

問題と目的 社会人基礎力は,「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」として経済産業省が2006年から提唱する概念である。 中学校・高校における課外活動の中で大きな割合を占めるのが部活動である。部活動に関する研究は数多くあり,青木(2005)は,運動部所属群は無所属群及び文化部所属群よりも社会的スキルが高いことを明らかにした。郡司・伊藤(2010)は,部活動への参加経験が長いほど学校への適応感が高まり,規範意識が増大することを示唆している。上野・中込(1998)は,運動部員は部活動に参加していない生徒よりも,運動部活動場面における心理社会的スキル(競技状況スキル)を獲得しており,またそれが般化する形で競技状況スキルと同種の側面を持つライフスキルを獲得できることを明らかにした。中学校・高校における部活動と心理的発達の関連に焦点を当てた論文は数多く見られ,中学校・高校の部活動を通して,社会人基礎力も向上すると考えられるが,具体的に両者の関係に焦点を当てた研究はほとんど行われていない。そこで本研究では,中学校・高校での部活動で身についた力(部活動能力)がどのように社会人基礎力に影響するかを明らかにすることを目的とする。方 法 中部地方公立A大学1〜4年生326名を対象に平成27年4月に質問紙調査を行った。回答を求めた項目は以下の通りである。1.個人属性:性別,中学校・高校での部活動系列(運動部か文化部か),活動期間(引退の時期まで続けたか,途中でやめたか)の回答を求めた。2.部活動能力尺度(自作):予備調査より得られた部活動能力尺度について,5件法で回答を求めた。3.改訂版社会人基礎力尺度(西道):西道(2011)が作成した40項目の「改訂版社会人基礎力尺度」を用い,5件法で回答を求めた。なお,改訂版社会人基礎力尺度(西道)は「前に踏み出す力」「考え抜く力」「伝える力」「チームで働く力」の4因子構造である。結果と考察 個人属性と部活動能力尺度(自作)の各因子を独立変数とし,改訂版社会人基礎力尺度(西道)の各因子を従属変数とした重回帰分析(強制投入法)を性別ごとに行った(Table 1,2)。その結果、男子では,部活動能力尺度の「分析・戦略」「キャプテン・統率」因子が,女子では「チームワーク・対人」因子が社会人基礎力に対して強い影響力を持つことが読み取れた。次に,男子では部活動能力尺度の「根性・努力」「規範・礼儀」因子が,女子では「根性・努力」因子が,社会人基礎力にはほとんど影響しないということが明らかになった。最後に,個人属性と部活動能力はともに社会人基礎力に影響しているが、個人属性よりも部活動能力が社会人基礎力に対して強い影響力を持つことが明らかになった。
著者
湯原 悦子 小島 佳子 高柳 雅仁 Etsuko Yuhara Keiko Kojima Masahito Takayanagi
出版者
日本福祉大学社会福祉学部
雑誌
日本福祉大学社会福祉論集 (ISSN:1345174X)
巻号頁・発行日
no.133, pp.29-45, 2015-09

本研究の目的は,法人後見を行う団体の受任事例の分析を行い,地域における権利擁護支援ニーズの内容と支援の効果について確認することである.分析の結果,権利擁護支援が必要となる背景には金銭管理をはじめとする生活管理能力の不足があり,そこに近隣からの不安や苦情,深刻なネグレクト,あるいは親族やそれ以外の人からの経済的搾取や虐待の被害に遭うことで,それまでの生活の継続が困難になっていく状況が確認できた.支援の効果については,成年後見人らが地域の人々と被後見人らの間に入り,関係を調整することで近隣住民の理解が進み,「地域の困り者」だった被後見人らが地域で受け入れられ,見守られる存在へと変わっていく姿が確認できた.また,被後見人らが自分への自信を深め,思いを口にし,自分なりの人生を生きようと動き出し始める状況が見出された.
著者
志水 照匡
出版者
日本音楽教育学会
雑誌
音楽教育学 (ISSN:02896907)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.1-12, 2010 (Released:2017-08-08)
参考文献数
53

本稿は, 三味線演奏時における演奏者の棹の角度を研究するものである。343名の演奏者を分析したところ, 平均値は32度, 最頻値は33度, 標準偏差は3.7で, 度数分布曲線は最頻値33度を頂点とする釣鐘型の対称分布であることが明らかになった。 さらにF検定を用いて, 長唄と他の種目との検定を行った。その結果, 長唄の母分散と等しいのは一中節, 義太夫節, 清元節, 小唄, 座敷唄, 地歌, 新内節, 創作曲, 端唄, 宮薗節で, 等しくないのは上方唄, 常磐津節, 民謡となった。そしてF検定の結果をもとにt検定を行った結果, 母平均が長唄と等しいのは上方唄, 義太夫節, 清元節, 小唄, 座敷唄, 地歌, 新内節, 創作曲, 常磐津節, 宮薗節, 民謡で, 等しくないのは一中節と端唄となった。性別に関しては, 男女間で母分散は異なるが, 母平均は等しい。また, 棹の角度は服装, 座り方, 演奏方法の違いで大きな影響を受けるわけではない。
著者
水島 洋平
出版者
同志社大学
雑誌
同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.81-89, 2011-03

論説(Article)本稿の目的は、Anderson and Bushman(2002)が提唱したGeneral Aggression Model(以下、GAM)を用いて、男性家族介護者が高齢者虐待を引き起こすメカニズムを、衝動的攻撃と戦略的攻撃の視点から明らかにすることにある。本稿の分析で用いるGAMは、攻撃行動が生起するまでの段階が想定されており、男性家族介護者による高齢者虐待生起のメカニズムを明らかにするうえで有用であると考えられる。分析の結果、家事や介護行為に追われて内的状態を吟味するための時間的余裕がない、あるいは、介護に没頭してしまうことによって認知的資源に余裕がない男性家族介護者は、即時的評価を通じて衝動的攻撃を行なう可能性が高いことが導き出された。一方、長期間の介護生活を送ることによってもたらされる家事や介護行為への慣れ、介護の否定的側面のみならず肯定的側面への気付き、家族会に参加して介護困難を吐露するなど、内的状態を吟味するための時間や認知的資源に余裕がある男性家族介護者は、衝動的攻撃を選択せず、再評価を通じて状況を再解釈し、戦略的攻撃を行なう可能性が高いことが導き出された。最後に、男性家族介護者の「社会的孤立」を防ぐことが、男性家族介護者による高齢者虐待防止のための介入策や支援策のひとつになりうることを提案した。
著者
山内 仁史 山﨑 慎太郎 矢地 謙太郎 藤田 喜久雄
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.83, no.855, pp.17-00320-17-00320, 2017 (Released:2017-11-25)
参考文献数
23
被引用文献数
1

Multi-fidelity analysis has been used for reducing the calculation cost of evaluating the design solution, which is the most costly process in design optimization. In general, multi-fidelity analysis is applied to problems with continuous design variables, which are suitable to construct an approximate model of design space such as the response surface. On the other hand, combinatorial optimization problems, e.g., layout design, are difficult to apply the conventional multi-fidelity analysis, since the response surface cannot be constructed due to the property of the design variables. In this paper, we propose a multi-fidelity optimization method independent of the response surface and a simple analysis model for the method, and apply them to multi-disciplinary optimal layout design problem which is a complicated combinatorial optimization problem. The proposed analytical model, which adopts the concept of the explicit method, realizes for reducing the calculation time by simplifying the physical phenomenon. Then, the multi-fidelity optimization method is constructed by combining the proposed analysis model with the thermal network method which is a well-known thermal analysis method. We confirm that there is a strong correlation between the calculation result of the proposed analysis model and of a CAE software, and show that the proposed analysis model is suitable as a low fidelity model. The effectiveness of the proposed optimization method is demonstrated through numerical experiments.
著者
楊 華 ヨウ カ YANG Hua
出版者
西南学院大学学術研究所
雑誌
西南学院大学国際文化論集 (ISSN:09130756)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.145-160, 2017-02

松本清張は明治四十二年に北九州市小倉で生まれ,昭和二十六年,処女作『西郷札』が『週刊朝日』の「百万人の小説」の三等に入選,第二十五回直木賞候補となった。昭和二十七年,『ある「小倉日記」伝』を発表し,第二十八回芥川賞を受賞した。昭和三十二年『点と線』,『眼の壁』の発表によって,日本では爆発的な「清張ブーム」が起こった。この頃,松本清張は社会派推理小説家としての地位が確立された。「清張以後」という言葉があるように,松本清張の文壇登場以来,日本の推理小説の作風は大きく変わった。従来の探偵小説のトリック一辺倒に対して,松本清張は犯行の動機を重視し,それを取り巻く社会問題を追及している。清張以外,水上勉,森村誠一,黒岩重吾,有馬頼義などの作家たちも,「社会派推理小説」の作品を多数発表している。松本清張は昭和二十六年文壇に登場する頃から,平成四年に亡くなるまで四十年間の作家生活において,ミステリー,ノンフィクション,評伝,現代史,古代史など幅広い分野において,1000篇を超える作品を出している。松本清張の初期作品の代表作『点と線』は昭和三十二年に発表された。戦後の昭和三十年代のはじめという時代は,高度成長のとば口にかかってきたころである。組織の力が大きくなり,その中で個人が次第に歯車化していく。清張はこういう権力悪という社会問題を自分の作品に取り込んだ。『点と線』において,清張は小官僚の課長補佐佐山という人物を設定し,彼の死亡をめぐり,ストーリーを展開した。このような戦後の組織の中の官僚にまつわる作品は,ほかに『ある小官僚の抹殺』(昭和三十三年),『危険な斜面』(三十四年),『三峡の章』(三十五年~三十六年),『現代官僚論』(三十八年),『中央流沙』(四十年)などが挙げられる。『点と線』は「社会派推理小説の記念碑的な作品」と従来から高く評価されているが,権力悪の暴露という面において,後の作品ほど十分ではないと考えられる。『点と線』の不徹底から後の作品における徹底的な暴露に発展していく過程に,昭和三十三年二月に発表された『ある小官僚の抹殺』が重要な役割を果たしている。『点と線』,『ある小官僚の抹殺』,両作品とも汚職事件の渦中にある小官僚の死に関する社会問題を扱う作品だが,それぞれのテクストから現れる「権力悪」への追及の程度が違う。したがって,本稿は,タイトル,構成,ジャンル,「社会悪」の暴露などにおいて,『点と線』から『ある小官僚の抹殺』への発展をめぐり,検討していきたいと思う。
著者
中井 健一
出版者
愛知東邦大学
雑誌
東邦学誌 (ISSN:02874067)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.91-108, 2009-12
著者
隅田園春暁 編
出版者
鶴声社
巻号頁・発行日
1884