著者
燕昇司 栄一 中川 裕章 増田 俊幸 石黒 伴和
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.117-122, 1998-05-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
3

The purpose of this study was to clarify the meanings of “body” and “mildness” as the taste of the soup to which “Mirin” was added. This study was conducted according to the following procedure.1) It was confirmed that “Mirin” gave “body” and “mildness” to dip for noodles.2) The expressions relating to the words “body” or “mildness” were collected. Then, the expressons representing the characteristics of “Mirin” were chosen.3) The above expressions were set as the meanings of “body” and “mildness”As the result “body” was defined as the deep and thick taste with rich smell, and “mildness” as the round, smooth, and nice taste without outstanding sourness and sharpness.
著者
中川 裕美 Nakagawa Yumi ナカガワ ユミ
出版者
大阪大学大学院 人間科学研究科 対人社会心理学研究室
雑誌
対人社会心理学研究 = Japanese journal of interpersonal and social psychology (ISSN:13462857)
巻号頁・発行日
no.18, pp.61-69, 2018-03

原著社会心理学の分野において、内集団協力を説明する代表的な理論には社会的アイデンティティ理論(SIT)と閉ざされた一般互酬仮説(BGR)がある。SITは自己と集団の同一化から、BGRは互恵性の期待から内集団協力が生じるという。中川・横田・中西(2015)により野球ファンにおける内集団協力には、二つの理論が記述する心理過程が同時に働くことが示された。さらに、中川・横田・中西(投稿中)で協力行動にかかるコストを明示すると、SITよりもBGRの心理過程が強く働き内集団協力が生じた。このことから、SITとBGRの心理過程の働きを規定する状況要因の一つは、協力行動のコストであることが示唆された。しかし、中川他の実験では集団間の関係性が曖昧であり、他集団の比較を前提とするSITの心理過程を引き出すには不利な状況だったと考えられる。そこで、本研究ではコストは明示したままで集団間の関係性を明確にするため、集団間の地位を提示した。地位を提示した状況では、SIT が支持されるか否か検討を行った。実験では、カープファン81名(男性47名, 女性33名, 不明1)に地位の刺激(高地位/低地位/統制)をプライミングした後、内集団協力を測定した。その結果、地位の効果が見られず、地位の効果を除いた内集団協力ではSITとBGRともに支持されなかった。In this study, we compared the ability of both the Social Identity Theory (SIT) and Bounded Generalized Reciprocity Hypothesis (BGR) to explain ingroup cooperation in real groups. We conducted the vignette experiments that were designed as controlling various confounded factors to possibility influence ingroup cooperation among Japanese baseball fans. In the experiment, we manipulated expectation of reciprocity, which was assumed as a precursor of ingroup cooperation by BGR, by controlling knowledge of group membership. Ingroup cooperation was measured by participants' intent of helping a stranger in four scenarios. According to Nakagawa et al. (2015, submitted), cost of ingroup cooperation can enhanced the psychological process of BGR, while ingroup cooperation without cost proceeds both processes of theories. However, these experiments were unclear intergroup differences and the effect of social identity was weak. Thus, we expressed the stimulus of intergroup status by the perceptual priming to clear intergroup differences. But the result of the experiment was not support the effect of intergroup status. The analysis that the effect of status was removed revealed both theories was not supported.
著者
杉田 賢治 福原 知宏 増田 英孝 中川 裕志
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.25, 2011

利用者のWebページ閲覧時の行動分析を目的としたWebブラウザ操作ログ 収集ツールを提案する.Web上で情報検索や情報推薦を行う際,利用者が Webページ内でどの箇所に注目していたか,どのようにページを閲覧したかを 把握できれば,より適切な検索や推薦が可能となる. 本研究ではWebブラウザの拡張機能を利用し,利用者の各種ブラウザ操作ログを 収集し管理するツールを提案する.
著者
山田 剛一 森 辰則 中川 裕志
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:03875806)
巻号頁・発行日
vol.39, no.8, pp.2431-2439, 1998-08-15
参考文献数
12
被引用文献数
2

情報検索においては, 検索対象の規模が拡大するにつれ, 検索精度の向上がより強く求められてきている.そこで本論文では, 複合語をまとまりとして扱う手法と, 単語の共起情報を用いる手法を統合することにより, 探索システムの精度向上を図ることを提案する.複合語は全体で1つの概念を表現しており, まとまりとして扱うことが望ましいが, 複合語どうしマッチさせる場合には部分的なマッチングを考慮する必要が生じる.このマッチングを行い文書をスコア付けする手法を考案した.さらに, 単語が複合語を構成せず共起する場合もスコアに反映させるため, 共起情報を利用する手法と組み合わせ, 評価実験を行ったところ, 単語の重みに基づく手法, およびそれに共起情報を加える手法のいずれよりも良い探索精度が得られることが確認できた.
著者
白沢 ナベ 中川 裕 NAKAGAWA Hiroshi
出版者
千葉大学ユーラシア言語文化論講座
雑誌
千葉大学ユーラシア言語文化論集 (ISSN:21857148)
巻号頁・発行日
no.10, pp.291-313, 2008-03

採録・訳・註 中川裕This text was recited by Nabe Shirasawa (1905・93)on Aug 29, 1988, who was born in Chitose. The Ainu heroic epics are usually known as verses sung on melodies. In Chitose (and several other areas), however, women can't sing them but must recite them in prose. Whether there are differences in stories between the epics in verse and in prose has never studied but this text would be one of the examples which suggests the existence of some differences.
著者
中川 裕太 河野 恭之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MVE, マルチメディア・仮想環境基礎
巻号頁・発行日
vol.113, no.51, pp.39-44, 2013-05-10

通常の自撮り写真ではカメラのレンズと撮影者自身との距離が最長でも腕の長さに制限されるため背景を広く写しこむことが難しい.自撮り写真の背景を広く映し込むことは写真の情報量を多くするだけではなく,1枚の写真で撮影者自身の様子と周囲の状況を見栄え良く伝えられるため,SNSへの投稿など体験の記録や共有に効果的である.本研究では自撮り動画像から人物領域を抽出し,背景のみを繋ぎ合わせた背景パノラマ画像と人物のみの画像を生成して重ね合わせることで従来では撮影しづらかった背景が広く写った自撮り写真を生成する手法を提案する.自撮り動画像はカメラを持った腕を前方に伸ばして撮影者が写り込むようにし,カメラは撮影者自身に向けたまま身体が中心軸になるように腰を回転させて撮影するものとする.この撮影方法で得られた動画像中の背景領域は横軸方向へ変動するのに対し人物領域はほぼ変動しない.この変動の差異を動画像中の特徴点移動量と分割ブロックごとの輝度の時間軸変動から検出して人物領域を推定し,残りの背景領域を背景の移動量に合わせて重ね合わせた背景パノラマ画像に貼り合わせることで自撮りパノラマ写真を生成する.
著者
新井 嘉章 福原 知宏 増田 英孝 中川 裕志
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第22回全国大会(2008)
巻号頁・発行日
pp.227, 2008 (Released:2009-07-31)

Wikipediaは現在253言語で展開されている巨大なユーザー参加型の百科事典である。本研究では,Wikipediaから抽出した言語間リンクをいくつかの接続パタンに分けて分析している。本論文では,各接続パタンの紹介と,日中韓英4言語を対象とした各接続パタンの割合を示す。また,言語間リンクによるキーワード対訳に関する調査結果を示し,言語間リンクの対訳システムへの有効性を検証する。本論文では,我々が試作した言語間リンクに基づくキーワード対訳システムについても紹介する。
著者
大岩 秀和 松島 慎 中川 裕志
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.26, 2012

大規模データから省メモリかつ高速に学習を行う手法として,L1正則化付きオンライン学習アルゴリズムが複数提案されている.しかし,これらの既存手法は予測に有用であっても出現頻度の低い特徴をモデルから排除してしまう性質があった. 本研究では,低頻度かつ予測に有用な特徴を予測モデルに動的に組み込める新たな正則化手法を提案する.さらに,本手法の理論解析と実験による評価を行い,本正則化手法の有用性を示す.
著者
塚本 修一 増田 英孝 中川 裕志
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.87, pp.35-42, 2002-09-17
被引用文献数
1

本研究は、HTMLの表形式データの構造の認識とその後の利用を目的とした変換のために、表の項目名と項目データの境界を認識するシステムを実現した。表はデータを整理し、見やすくする性質がある。しかし、携帯端末などの低解像度小画面にHTMLの表を表示する場合、スクロールすると項目名の部分が見えなくなってしまう。また、罫線が引かれている為に、表示領域にも制限が出来、単語途中の折り返しにより可読性が低下する。そこで、本研究では、表のデータをユーザが要求する形に出力するための基礎技術として、HTMLの表の構造を認識するアルゴリズムを提案する。提案手法は、表の行間あるいは列間の類似度による。すなわち類似度が低い場合には、行間あるいは列間に内容的な切れ目があると認識する。このアルゴリズムを実際のWebページ上の表データに適用したところ80%程度の認識率を得た。We implemented a recognition system to identify the boundary between attribute names and values of a table in HTML in order to obtain its structure. Table in HTML is aimed at displaying information clearly and understandably. However, users can't see the attributes of the table by using PDA, because of its small and low resolution display when they browse the Web pages. Its low readability is caused by the phenomena such that only a small portion of table is shown on the screen at once, and original one line is usually broken up into many lines on display screens. We propose an algorithm to recognize the structure of tables in HTML for the purpose of transforming them into forms of high readability even on a small screen of mobile terminal. Our method utilizes a similarity between rows(or columns)of the table. Precisely speaking, if we find an adjacent pair of rows(or columns) having low similarity, they probably are boundaries between item name row(or column)and item data rows(or columns). We achieved approximately 80% accuracy of recognition by applying our algorithm to existing tables on the Web.
著者
吉田 稔 中川 裕志 石田 智也 中嶋 啓浩 松井 藤五郎 和泉 潔 池田 翔 本多 隆虎
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.25, 2011

ある銘柄の取引高の上昇・下降を予測するために、関連するニュース記事の見出しを利用する手法について検討する。
著者
西澤 信一郎 中川 裕志
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL)
巻号頁・発行日
vol.1996, no.56, pp.89-95, 1996-05-28
参考文献数
7
被引用文献数
2

本稿では,日本語の会話中において,発話間の因果関係がどのような形式で記述されているのか,をコーパスを用いて検討した結果について述べる.このような談話構造は,発話者の「思考の流れ」を示しているものと考えられ,発話者は,地図課題対話など目的の定まった会話の場合はもちろんのこと,雑談など特定の目的に左右されない自由会話の場合でも,この構造をある程度認識し,協調的な会話を進めているものと考えられる.そこで,本稿では,地図課題など目的の定まった会話からなるコーパスではなく,飲み会の席上での会話データを対象とした自由課題コーパスを用いた検討を行なった.また,この検討結果を利用し,因果関係を記述するような談話構造をコーパス中から取り出すために必要な手順について提案した.We discuss here how a discourse structure representing a causality relation among two or more sentences is described in Japanese task-free dialogue. The structure, we think, shows "the stream of consideration" of a speaker. We argue that the speaker recognizes the structure and have a conversation cooperatively even in the case of task-free dialogue. Then, we discuss the causality relation with a corpus of Japanese task-free dialogue and show how to find out discourse structures for the relation from the corpus systematically.
著者
中川 裕 大野 仁美 高田 明
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究の主要な目的は、(i)コエ語族における知覚動詞とそれに関連する意味領域語彙や文法化、語彙化、多義構造の事例を組織的に観察・分析すること、(ii)当該語彙の多義性と意味拡張に関する従来の普遍性仮説を批判的に検証すること、(iii)この意味領域における従来の普遍性仮説との関連を踏まえて、コエ語族の事例が示す特徴について探求すること、であった。4年の研究助成期間で、上記(i)と(ii)に該当するデータ収集と分析、それに主要な討議をすべて終えた。そして、最終年度の翌年度に下記の国際学会での発表および海外研究機関からの招待講演で、上記(iii)に該当する研究課題に直接かかわる問題に対しての解答を示すことができた。まず、コエ語族のグイ語、ガナ語およびカバ語の知覚動詞体系には、そこに観察される非視覚的4知覚を包括する多義的動詞の存在と、その内部構造を特徴づける特異な意味拡張パタンを発見した。そして、それが世界の言語のなかでも極めて特殊であることを確かめ、従来の研究(Viberg 1984)で提案されほぼ定説とされてきた、基本知覚動詞が表現する5知覚モダリティーの階層性に対して、実証的根拠を示すことによってその改訂を提案した。さらに、コエ語族に観察される知覚動詞体系の類型論的特徴と、これらの言語が持っているユニークなふたつの語彙化領域(特殊味覚語彙と食品テクスチャー語彙)との関連について解釈を提案した。このほかに、本研究の構想には、上記の検証・探求に先立って行う言語調査の過程で、記述の乏しいコエ語の言語構造や言語社会構造の重要な側面を記述することが含まれており、この点では、詳細なグイ語音韻論・音声学の記述(博士論文)やグイ語話者の社会言語学(学術論文)を発表した。またガナ語群の統語論を概観する論文が刊行予定である。
著者
中川 裕 稗田 乃 中川 裕
出版者
東京外国語大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2001

前年度までに蓄積してきた、コイサン諸語コエ語族ガナ語群の統語論、音韻論、声調論の資料を総合し、それらの重要な側面を記述した。また、日本国内のコイサン研究者を訪問して、ガナ語群グイ語の語彙に関する情報交換や討議を行い、その結果(とくに意味記述に関する情報と討議結果)を、構築進行中のグイ語語彙データベースに組み入れた。さらに、この語彙データベースの意味記述の重要な部分を英訳し、英語による公開の準備に着手した。以上に加えて、研究協力者をナイジェリアとウガンダに派遣し、以下(1)(2)のような調査研究を行った。(1)ナイジェリア北部に分布するチャド語系少数民族語であるブラ語の記述調査:主にブラ語の名詞形態論の解明を目的とした調査を行い、特に可譲渡/不可譲渡性がこの言語における名詞分類の根幹を成すこと、また屈折的な形態論を持つ多くのチャド諸語に対し、この言語が主に膠着的な手法で語形成を行い、さらに語形成の方法として重複が重要な機能を果たしていることなどを説明する論文を作成した;またブラ語の語彙調査も継続して行い、音声の録音資料などを収集した。(2)ウガンダのにおける言語使用と言語態度についての調査:首都カンパラの7つの地域およびウガンダ東部のトロロ・ディストリクトのブタレジャで社会言語学的調査を行った。その結果、各調査地点でのリンガフランカ(ガンダ語)と民族語の使用についての諸側面が明らかになり、また、それらの言語に対する言語態度(とくに重要なのはリンガフランカヘの反対意識と民族語保持意識)の実態が明らかになった。
著者
中川 裕
出版者
東京外国語大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1995

1992年8月以来、現地調査を行い蓄積してきた、グイ語(中部コイサン語族)の資料のうちまだ非公開で量的に大きな比重を占める語彙データを学際的な利用にたえる「辞書」として編纂するために必要な基礎的な分析総合作業を行った.その具体的な内容は以下の通りである:1)これまで未解決であった3音節語根の声調組織を解明した;2)音韻的に対立する分節音および声調を表記する言語学的に妥当な正書法を作製した.以上の結果の一部は論文のなかで報告済みである.同時に、日本国内在住のブッシュマン研究者および研究機関への取材を行い、非言語学的情報の提供を受けた。入手情報と取材先は以下の通りである:1)地名と地点(GPSによる観測データ)の同定、および昆虫・小動物の名称と学名の同定(三重大学人文学部);2)人名とその起源に関する情報および動植物の名称および利用法と学名の同定(京都大学人間総合学部、アフリカ地域研究センター);3)狩猟に関する特殊語彙の意味記述に関する情報収集(兵庫県立人と自然の博物館生態研究部);4)親族名称の体系記述に関する情報収集(麗澤大学外国語学部)。15EA03:以上の新たな表記法と情報とを組み込んだ辞書のコンピュータ入力および編集は、主要な語彙項目のほぼすべてについて(2000項目以上)を終了した.このほかに、昆虫など小動物の標本写真や物質文化の実測図や写真の一部はフォトCDなどの形で変換し、将来的に計画している当辞書への統合の方法を予備調査した.この試みもある程度の成功をおさめた.
著者
中川 裕
出版者
東京外国語大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1996

1992年から毎年行ってきた現地調査で採集したグイ語語彙のデータベースを、次の3つの点で修正と改訂をした:すなわち、1)1995年と1996年の調査結果を加える;2)クリック伴音表記の新しい方法の導入;3)データの並べ変え(ソ-ト)のための情報の入力である。これまで、現地調査で撮影をした物質文化に関連する写真をすべてフォトCDの形でデジタイズし終えた。それには、道具など、物質文化の要素それ自体の写真に加えて、道具の製作過程や利用過程の写真も含まれる。データベース化するこれらの写真資料は、検索のためのキーワードが必要となる。キーワードの設定のために、関連する文献の調査を行った。対象としたものは『文化項目分類表』や『基礎語彙集』の意味分野のリスト、動植物の利用を扱った生態人類学的研究論文である。その結果、一般的な枠組みを準備するのは困難であることがわかり、結局、当該の民族を対象とした生態人類学的民族誌(田中二郎とシルバ-バウアーによるもの)で用いられている項目や記述のラベルに基づくことにした。キーワードの付与は、他の研究者からのフィードバックも取り入れながら試行錯誤的に進めざるを得ないため、部分的に進行中というのが現状である。データベース化に用いているソフトウエアが、今年度途中にバ-ジョンアップを行い、リレーショナル機能をあらたに付け加えたので、写真資料は独立のデータベースにして、語彙データベースとの相互参照機能を構築するよう研究方針を修正した。このシステムのほうが、ツァイルが軽くなり、検索にかかる時間が短縮されるからである。現在、上記の検索キーワード付与とリレーショナルデータベースへの改編を進めている。
著者
中川 裕
出版者
東京外国語大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1993

1.ボツワナでの実地調査によって採集したグイクエ=ブッシュマンの言語(グイ語)の記述資料(フィールドノート)を音韻分析した。その結果、この言語の音素目録、および語彙的語根ならびに機能語の音素配列、声調の体系、さらに主な動詞形態音韻論的現象を明らかにした。2.上記の分析に基づき、この言語の約2500項目の基礎語彙についての情報をカード型データベースに入力した。(1)表記法は音素表記を原則とする簡略音声表記を用いた。(2)表記のための特殊記号を含むグイ語専用フォントを一組作成した。(3)様々な音韻的条件からの検索を可能とするソ-トフィールドを、音素配列分析、声調分析の結果をもとに作成した。(4)語彙の形態論的、意味論的および民族学的な情報を入力した。(意味的・民族学的情報の入力に先立ち調査地を同じくする人類学者との意見交換、情報交換をおこなった。)3.録音資料(アナログテープ及びDATによる記録)を編集し、その一部を音響分析した。さらにこの音響資料をカード型データベースに画像データとして入力した。(ただしこの作業は現在も進行中である。)4.調音器官の図版(上顎と舌の断面図)を作成し、画像ファイルとして入力した。5.言語調査がまだ初期段階である現時点では、資料が非常に流動的であるため、枠組みを変更しやすいカード型データベースを用いているが、録音、画像、文字という異質な資料を統合的に扱うには、リレーショナルデータベースのほうが好都合である。将来的にはリレーショナルデータベースに移行する予定である。また、現在用いているパソコンの処理能力では検索に時間がかかり過ぎる。データベースの公開には高速マシンが必要である。
著者
中川 裕
出版者
東京外国語大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

本研究は、ボツワナ共和国のカラハリ地域でブッシュマンの1グループによって話されている、グイ語(中部コイサン語族)が有する極めて複雑な子音組織の理解のために、この組織を特徴付ける4つのクリック種、13種類のクリック伴音、4つの“軟口蓋化"歯茎閉鎖音([tx,tx',tsx、tsx'])、またこれらの音韻分析に直接関連する口蓋垂摩擦音と軟口蓋側面破察放出音の音響的特徴を、CSL-Computerized Speech Labを用いて分析した。その結果は、これまで私が行ってきた伝統的な主観的音声観察に主に基づく記述を大筋では支持し、それに音声的詳細に関する新たな事実を付加するものであった。細かい点では再考や修正に有益であった(たとえば破擦的放出伴音における喉頭の調節に関する推測に関して)。本研究の結果の一部として、すでに、Nakagawa,H.(1998)Unnatural Palatalization in Gui and Gana?Quellen zur Khoisan-Forschung 15,245-263で非クリック子音に関する議論を、また中川裕(1998)「コサイン諸語のクリック子音の記述的枠組み」『音声研究』ではクリック子音の記述に関する議論を、さらにNakagawa,H(1998)A cluster analysis of clicks and their accompaniments,Linguisitics and Phonetics 98(Sept.1998,Ohaio State University)ではクリック子音および“軟口蓋化"歯茎閉鎖音の新子音クラスター解釈の可能性を、それぞれ報告した。本研究の結果の主要部分にあたる子音組織全体の詳細な記述は現在進めているところである。そこでは、クリック子音と非クリック子音とを統一的に記述し分類するのに妥当な弁別特徴に関しても議論をする予定である。