著者
高橋 徹 井上 誠治
出版者
日本体育・スポーツ哲学会
雑誌
体育・スポーツ哲学研究 (ISSN:09155104)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.109-120, 2009 (Released:2012-12-17)
参考文献数
32
被引用文献数
2 2

The purpose of this study is to examine the surroundings of moving body based on the theory of “affordance”, that is to refine the concept of “body environment” in sport. The study also try to consider its implication into the theory of physical education and sport philosophy.First, the concept of “affordance” presented by J. Gibson is discussed to express the meaning lurked in environment around us. Then, the environment in sport is examined in terms of two ways of talking sport which is introduced by M. Sasaki. Namely, the first manner is the way talking sport inside the body. The second is that of the border between body and environment. Especially, author concentrates to focus on the latter manner in discussing sport environment. Next, the study attempts to define the concept of “body environment” in sport. It may give us the meaning of environment found in bodily movement.At any rate, refining this concept is an approach to understanding the lived experience in sport by its useful manner of experiential description. That is to say, it is an attempt to explore the potentiality in the enterprise educating sport. Finally, author may also inquire the significance and limitation of using experiential description of sport which is a method finding the meaning of lived movement. Then, the study may conclude that this manner of describing sport experience would be possible to apply into every educational affairs.
著者
井上 誠
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.11-18, 2021-01-18 (Released:2021-03-15)
参考文献数
36

嚥下運動誘発には脳幹延髄の神経回路を介する反射性のものと随意性嚥下を含む中枢性のものがある.前者の主たる受容野は,上喉頭神経で支配される下咽頭から上喉頭領域であり,多くの刺激やそれに応答する受容体が関連していると考えられている.その中で最もよく知られているのは,C線維や一部のAδ線維に発現する温度感受性受容体transient receptor potential(TRP)チャネルである.ことに温刺激受容体であるTRPV1や,冷刺激受容体であるTRPM8とTRPA1は,嚥下反射誘発・促進にかかわるという多くの臨床報告があるものの,その十分な根拠を示す基礎研究データは提供されていない.TRPチャネルはポリモーダル受容体である.TRPV1が温度のみならず酸やカプサイシンにも応答する性質を用いて,嚥下障害の臨床に用いられる炭酸水嚥下の末梢受容機構などの解明が行われ,acid sensing ion channel(ASIC)3などの関与が考えられている.機械刺激に関しては,上皮性ナトリウムチャネル(ENaC)が候補受容体とされているが,全容解明には至っていない.
著者
井上 誠章 桑原 久実 南部 亮元 石丸 聡 橋本 研吾 桑本 淳二 増渕 隆仁 金岩 稔
出版者
一般社団法人 水産海洋学会
雑誌
水産海洋研究 (ISSN:09161562)
巻号頁・発行日
vol.84, no.3, pp.187-199, 2020-08-25 (Released:2022-03-17)
参考文献数
43

魚礁効果に関する多くの研究は漁業に依存しない調査データによるものであり,商業漁業によって得られた漁業依存データを用いた研究は少ない.漁獲量および漁獲量を努力量で除して計算されたCPUE(Catch per unit effort)は魚礁効果のほか,操業海域や漁船能力,資源の年および季節変動の影響を受ける.そのためCPUEをそのまま用いた解析からは資源密度にあたえる魚礁効果を偏りなく評価できない.本研究ではメダイ,ヒラマサおよびイサキについて,上記の問題を避けるためCPUE標準化の手法を応用して効果範囲を定量評価した.メダイ資源密度は,魚礁海域では天然海域の約7.0倍であり,効果範囲は魚礁中心から約350 mと推定された.ヒラマサの効果範囲は約100 m,イサキでは魚礁の近接海域に限定されると推定された.
著者
伊藤 加代子 福原 孝子 高地 いづみ 井上 誠
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.77-87, 2009-08-31 (Released:2020-06-27)
参考文献数
26

【目的】誤嚥性肺炎予防という観点からも,口臭予防という観点からも舌清掃は重要である.近年,形態が異なる舌ブラシが多種開発されているが,使用効果に関する客観的データは少なく,歯科医療従事者以外の介護スタッフが適切な舌ブラシを選択するのは困難である.よって,舌ブラシ選択の指標を作成することを目的として,舌ブラシの形態による清掃効果を検討した.【対象と方法】老人福祉施設に入所している39 名を対象とし,A 群(両面の細かいナイロンブラシタイプの舌ブラシ),B 群(アーチワイヤー状のねじりブラシタイプの舌ブラシ),C 群(スポンジブラシ)の3群に分けた.各ブラシを用いて,介護者による清掃を14 日間実施し,舌苔の評価と口腔衛生状態に関するアンケートによる評価を行った.【結果および考察】どの群においても経時的に舌苔の厚みが有意(p<0.05)に改善していたが,ブラシによる違いは認められなかった.舌苔の厚みによって分析したところ,舌苔が厚い群ではA 群が有意(p<0.05)に改善していた.また,有意差は認められなかったものの,ケア時の痛みはA 群,C 群で少なく,べたつきはB 群およびC 群で改善する傾向が認められた.アンケートの自由筆記欄には,B 群では痛みがあったため十分な清掃ができないまま中断してしまったという記載があった.A 群のほうがB 群より与える痛みが少なかったので,舌苔の除去効果が大きかった可能性が考えられる.【結論】どのブラシでも継続して使用することによって,舌苔の厚みが改善することが明らかになった.また,舌苔が厚い場合は両面の細かいナイロンブラシタイプの舌ブラシが,べたつき感改善にはアーチワイヤー状のねじりブラシタイプの舌ブラシが有効であり,ケア時の痛みやブラシへの抵抗が少ないのは,両面の細かいナイロンブラシタイプの舌ブラシおよびスポンジブラシであることが示唆された.
著者
真柄 仁 林 宏和 神田 知佳 堀 一浩 谷口 裕重 小野 和宏 井上 誠
出版者
日本顎口腔機能学会
雑誌
日本顎口腔機能学会雑誌 (ISSN:13409085)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.22-32, 2013 (Released:2015-04-01)
参考文献数
23
被引用文献数
4 6

本研究は,嚥下障害のある患者と健常者の舌骨運動時間と距離,舌骨位,および食塊移送のタイミングを比較することにより,嚥下障害における病態の一つと考えられる舌骨位の下垂が嚥下機能にどのように影響しているかを検証することを目的とした. 対象は,嚥下障害を主訴として来院され嚥下造影検査を行った65名の患者(以下患者群),対照として健常被験者10名(以下健常群)とした.得られたデータから,舌尖の運動開始を基準に舌骨運動・食塊移送の時間経過を計測し,また,第四頸椎前下縁を基準として舌骨位を計測し,患者群と健常群で比較を行った. 患者群では食塊移送時間が口腔,咽頭ともに延長しており,更に食塊の咽頭流入は嚥下反射惹起を示す急速な舌骨挙上と比べ有意に先行していた.第四頸椎を基準とした場合,患者群と健常群に明らかな舌骨位の違いは認めなかった.疾患別の検索を行うと,嚥下反射以降は各疾患とも類似した舌骨の動きが認められたが,嚥下反射前は複雑な軌跡を示した.いくつかの疾患では,嚥下反射惹起前の舌骨の移動距離と移動時間に正の相関関係が認められたため,舌骨位が嚥下反射惹起遅延に影響を与えている可能性が考えられた.
著者
船山 さおり 伊藤 加代子 濃野 要 井上 誠
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.41-47, 2019 (Released:2020-03-31)
参考文献数
24
被引用文献数
1

近年,味覚障害患者が増加している.味覚外来における治療効果を検討することを目的として臨床統計を実施し,亜鉛補充療法の効果について調査した.対象は2012年12月より2017年12月までの5年間に当院味覚外来を受診した患者172名(男性56名,女性116名)とした.患者の既往歴,服用薬剤,診断について単純統計を行った.さらに亜鉛製剤投与による自覚症状の改善に関わる因子を多変量解析により探索した.患者の平均年齢61.1歳であった.亜鉛欠乏性および特発性と診断された99名に亜鉛製剤を処方した.自覚症状の改善があった者は82.8%であった.ロジスティック回帰分析の結果,自覚症状改善に関わる因子は,病悩期間や亜鉛/銅(Zn/Cu)比であることが示された.
著者
船山 さおり 伊藤 加代子 濃野 要 井上 誠
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.41-47, 2019

近年,味覚障害患者が増加している.味覚外来における治療効果を検討することを目的として臨床統計を実施し,亜鉛補充療法の効果について調査した.対象は2012年12月より2017年12月までの5年間に当院味覚外来を受診した患者172名(男性56名,女性116名)とした.患者の既往歴,服用薬剤,診断について単純統計を行った.さらに亜鉛製剤投与による自覚症状の改善に関わる因子を多変量解析により探索した.患者の平均年齢61.1歳であった.亜鉛欠乏性および特発性と診断された99名に亜鉛製剤を処方した.自覚症状の改善があった者は82.8%であった.ロジスティック回帰分析の結果,自覚症状改善に関わる因子は,病悩期間や亜鉛/銅(Zn/Cu)比であることが示された.
著者
道家 守 浜口 斉周 金子 浩之 井上 誠喜 浜田 浩行 林 正樹
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会年次大会講演予稿集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp._11-3-1_-_11-3-2_, 2007

We have been researching and developing a computer language TVML (TV program Making Language) which enables users to make TV programs based on real-time CG (Computer Graphics), only by describing TV program script on their PC. TVML Player, which is a program application on Windows PC, generates TV programs using real-time CG and voice synthesis etc. by interpreting the script written in TVML. This time, we have developed an ad-lib type TVML system, which enables users to control CG character's action on TVML Player easily by simple action description, by using external control function of TVML Player. And we introduce an application of this system for actual program production.
著者
関口 秀夫 木村 昭一 井上 誠章
出版者
日本動物分類学会
雑誌
タクサ:日本動物分類学会誌 (ISSN:13422367)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.1-11, 2009-02-20 (Released:2018-03-30)
参考文献数
24

Specimens of scyllarine species (Decapoda: Scyllaridae: Scyllarinae) were collected using commercial bottom trawl nets from several sites with 50-100 m depths in the shelf water region of the Enshu-nada sea and Tosa Bay along the Pacific coast of Honshu, central Japan. Of these, Bathyarctus chani Hoithuis, 2002 and B. formosasus (Chan and Yu, 1992) are recorded for the first time from Japan while Eduarctus martensii (Preffer, 1881) and Galearctus timidus (Hoithuis, 1960) are poorly known from Japanese waters previously.
著者
植田 弘師 井上 誠
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.114, no.6, pp.347-356, 1999 (Released:2007-01-30)
参考文献数
28

最近,オピオイド受容体のホモロジースクリーニングからオピオイドペプチドに感受性を示さない新たな遺伝子がクローニングされた.このorphan受容体(ORL1)を哺乳動物細胞に発現させたものを利用して,脳から内在性ペプチドリガンド,ノシセプチンが発見された.このノシセプチンはオピオイドペプチドと非常に類似したアミノ酸配列を示すにも関わらず,オピオイドペプチドとは逆に痛覚過敏や抗オピオイド作用を示したことで大変注目された.しかしながら,その後の研究により,このペプチドは投与経路や用量によって侵害作用並びに抗侵害作用を示すことが明らかとなった.著者らも新しい末梢性疼痛試験法を用い,末梢におけるノシセプチンの痺痛機構における役割を検討した.その結果,低用量のノシセプチンは侵害受容器からのサブスタンスP遊離を介して侵害反応を示し,一方,高用量では侵害性物質によるホスホリパーゼCの活性化の阻害を介して抗侵害作用を示すことを見出した.末梢神経系において見出されたこの概念は,中枢神経系におけるノシセプチンの二相性作用のメカニズムに関しても適用できるものと考えられる.最近,ノシセプチンの生理的役割がその受容体の遺伝子欠損マウスを用い検討されており,聴覚機能における関与が見出され,次いでモルヒネ耐性形成機構における関与が見出された.本稿では疼痛機構や記憶学習などにおけるノシセプチンおよびその受容体の生理的役割について,ノシセプチン受容体の遺伝子欠損マウスを用いた結果をもとに検討する.
著者
井上 誠一 小杉 千香子 陸 占国 佐藤 菊正
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1992, no.1, pp.45-52, 1992-01-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
14
被引用文献数
3

[2,3]シグマトロピ-転位反応によりオリベトールモノアセタートのヒドロキシル基のオルト位にメチル-3-ブテニル=イソプロピル=スルフィドを導入した結果,ほぼ1:1の比率で2種類の生成物すなわちかアルキル体と6-アルキル体が得られた。この2種類のアルキルオリベトール誘導体を原料とし,カンナビノールの全合成を試みた。まずそれぞれをアシル化し,酸化して得られたスルポキシドのキシレン溶液を加熱還流すると,スルポキシドのβ-脱離の後,分子内Diels-Alder付加環化反応が起こり,ラクトン環を含む三環性化合物であるΔ9-テトラヒドロジベンゾ[b,d]ピラン-6-オンをシス体優勢に得た。この三環性ラクトンは,メチル化,脱水を経てカンナビノールの前駆体`証4翫テトラヒドロカンナビジオール(CBDと略記する)とabn-cis-Δ9-CBDに収率よく導かれた。このcis-Δ9-CBDにBF3触媒を作用させると,定量的にcis-Δ9-テトラヒドロカンナビノールが得られた。もう一方のabn-cis-Δ9CBDをかトルエンスルホン酸共存下ベンゼン中で加熱還流させると,71%(GC)収率(単離収率37%)でtrans-Δ8-テトラヒドロカンナビノールが得られた。
著者
平居 貴生 髙木 三千代 中島 健一 井上 誠
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.139, no.6, pp.861-866, 2019-06-01 (Released:2019-06-01)
参考文献数
35
被引用文献数
1

Brown adipose tissue is a critical regulator of metabolic health, and contributes to thermogenesis by uncoupling oxidative phosphorylation through the action of mitochondrial uncoupling protein 1 (Ucp1). Recent studies have shown that cold exposure and the stimulation of β3-adrenergic receptors induce the development of brown cell-like “beige” adipocytes in white adipose tissue. Brown and/or beige adipocyte-mediated thermogenesis suppresses high-fat diet-associated obesity. Therefore, the development of brown/beige adipocytes may prevent obesity and metabolic diseases. In the present study, we elucidated whether naturally occurring compounds contribute to regulating the cellular differentiation of brown/beige adipocytes. We screened for the up-regulated expression of Ucp1 during beige adipogenesis using extracts of crude herbal drugs frequently used in Kampo prescriptions (therapeutic drugs in Japanese traditional medicine). This screening revealed that the extract prepared from Citri Unshiu Pericarpium [the peel of Citrus unshiu (Swingle) Marcov.] increased the expression of Ucp1 in beige adipocytes. We also focused on the function of clock genes in regulating brown/beige adipogenesis. Therefore, another aim of the present study was to evaluate naturally occurring compounds that regulate brain and muscle Arnt-like 1 (Bmal1) gene expression. In this review, we focus on naturally occurring compounds that affect regulatory processes in brown/beige adipogenesis, and discuss better preventive strategies for the management of obesity and other metabolic disorders.
著者
谷口 裕重 真柄 仁 井上 誠
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.1069-1074, 2013 (Released:2013-10-25)
参考文献数
13

高齢者の摂食・嚥下障害の問題は、複数の疾患がもたらす病態の複雑化、多剤服用がもたらす副作用、生理的加齢変化や認知機能の低下といった本人の問題のみならず、キーパーソンをはじめとする周囲の環境によって予後が左右される可能性も高いことなどを十分に考慮する必要がある。臨床現場では、嚥下機能にとって重要な役割をもつ舌と舌骨筋の機能変化に注意を払うことが大切である。全身と舌の加齢に伴う機能低下を比較すると、舌筋の筋委縮の速度が全身の筋に比べて遅いことは、加齢に伴う全身の運動機能低下に対して舌運動機能の衰退が比較的検出されにくいことと関連していると考えられる。これに対して、喉頭を上から吊ってこれを引き上げるために重要な働きを示す舌骨上筋は加齢による影響を受けやすく、喉頭下垂や咽頭収縮と喉頭閉鎖との時間的協調を崩すこととなり、結果的に誤嚥のリスクを増加させるのかも知れない。