著者
田中 由浩 佐野 明人
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.47-52, 2014 (Released:2016-04-16)
参考文献数
38
被引用文献数
1

触覚は,体表全体に備わっているが,特に手が果たす役割は大きい.人は触れることで,対象の形状や質感を知覚することができる.また,滑りの予知など巧みな操作に不可欠な知覚もある.触知覚は,対象と皮膚との力学的相互作用による皮膚の変形や熱の移動を機械受容器が取得することで行われている.皮膚は,機械受容器にとって一種の力学的フィルタであり,人の手や指,皮膚の構造には,触知覚のための巧妙な力学的メカニズムが仕組まれている.多くの触知覚メカニズムがまだ未解明で断片的ではあるが,本稿では,機械受容器に有益な触覚増強をもたらす皮膚構造や知覚対象に適切な指や手の構造について概観し,触覚の観点から人工の手を考察する.
著者
伊藤 忠 鈴木 光久 川口 大輔 冨田 秀仁 則竹 耕治 杉浦 英志 佐野 明人
出版者
保健医療学学会
雑誌
保健医療学雑誌 (ISSN:21850399)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.136-144, 2020-10-01 (Released:2020-10-01)
参考文献数
26

無動力歩行支援機ACSIVE を活用した歩行練習が,脳性麻痺児の歩行機能に与える効果について検討することを目的とした.粗大運動能力分類システムのGMFCS レベルⅡの16 歳男児1 名を対象とした.ACSIVE を活用した歩行練習を,週5 日,1 日60 分,6 ヶ月間実施した.歩行計測には三次元動作解析装置を用いた.身体機能は,5-chair stand テスト(5CS),Timed Up & Go テスト(TUG),2 分間歩行テストを計測した.歩行練習の前後で歩幅と歩 行速度の増加が認められた.加えて,立脚期における股関節の最大伸展角度と,前遊脚期の股関節屈曲と足関節の底屈モーメント,足関節の産生パワーが増加 した.身体機能については,5CS,TUG,2 分間歩行距離が向上した.6 ヶ月間のACSIVE による歩行練習は,脳性麻痺児の歩行機能と身体機能の改善に有効であることが示唆された.
著者
佐野 明人 菊植 亮 望山 洋 武居 直行 藤本 英雄
出版者
横断型基幹科学技術研究団体連合(横幹連合)
雑誌
横幹連合コンファレンス予稿集 第1回横幹連合コンファレンス
巻号頁・発行日
pp.133, 2005 (Released:2006-06-27)

自動車業界に代表されるものづくりの現場は,デジタル化・自動化が進む中,今なお人の触覚に基づく技(面品質検査など)と感性が重要な役割を担っている.特に,グルーバルな大競争に打ち勝つために,最高の商品性と卓越した製造品質を確保した車両品質の強化が叫ばれている.皮膚や機械受容器細胞の構造には,巧妙な触覚情報処理機構が仕組まれており,その特徴は力学ベースで議論することができる.本研究では,触覚の本質が能動触であることを考慮して,触覚情報処理機構を力学的(動的)側面により解明し,その仕組みや本質的な原理を工学的に応用する.結果的に,必然性の高いデバイス開発が期待できる.本講演では,手掌の皮膚に装着し,触覚刺激を増幅する触覚版のコンタクトレンズについて報告する.触覚コンタクトレンズを用いることで,物体の微小な凹凸を鋭敏に,しかも素早く検出できる.
著者
池俣 吉人 佐野 明人 藤本 英雄
出版者
日本ロボット学会
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.23, no.7, pp.839-846, 2005-10-15 (Released:2010-08-25)
参考文献数
14
被引用文献数
7 15

A passive walker can walk down shallow slope with no energy source other than gravity. This motion is very attractive because its gait is really natural and ideal. Moreover, the walker can exhibit a stable limit cycle. Dynamics of passive walking is very interesting target and important for understanding human locomotion and developing the biped robots. Though the passive walkers are mechanically simple, they are a sort of hybrid systems with the switching condition which combines the nonlinear differential equations describing the swing motion and the leg-exchange. This makes it difficult to analyze. In this paper, we focus on the mechanism of stability of fixed points in passive walking. For the sake of simplicity and clarity as possible, we use a biped model known as the simplest walking model and treat the inter-leg angle at heel-strike as a variable. The equations of stability condition are derived from the eigenvalues of discrete dynamical system. We demonstrate a physical structure which forms the fixed points and a mechanism of its stability.
著者
佐野 明人 藤本 英雄 池俣 吉人
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

受動歩行の力学的原理に基づき, 13時間45分の連続歩行に成功し,ギネス世界記録に認定された.また,ヒトが必要最小限のアシストを加えることで,平地を含むヒトの生活空間での歩行が可能となった.さらに,ヒトに酷似した外装を施すと,ヒトの歩行と見間違えるほどであり気配さえ感じる.上体効果により歩行効率を高められることが実証され,腰関節トルクは脚および膝関節に有効に働くことが示され,膝折れやつまずきによる転倒を低減させた.また,高速移動として,時速10kmクラスの真にヒトのような走行を実現した.
著者
佐野 明人 古荘 純次
出版者
The Society of Instrument and Control Engineers
雑誌
計測自動制御学会論文集 (ISSN:04534654)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.459-466, 1990-04-30 (Released:2009-03-27)
参考文献数
19
被引用文献数
9 18

A biped locomotion robot is expected to be very useful in indoor space designed for human locomotion. In order to achieve a smooth dynamic walking like a human being, it is very important to control a quantity which can represent the state of the biped system as a whole. In regard to biped locomotion systems, an angular momentum of the whole system can be considered as a good index, since it is a stable quantity, as seen from ‘the law of the conservation of angular momentum.’ A control method divided the walking into motions in the sagittal plane and in the lateral plane is adopted. For motion in the sagittal plane, we put the angular momentum close to the smooth reference function given in advance by controlling the ankle torque of supporting leg. For motion in the lateral plane, we treated the motion control as a regulator problem with two equilibrium states. The effectiveness of the proposed control method was examined by the experiments with our walking robot BLR-G2. The BLR-G2 achieved three-dimensional walking where the walking speed is 0.35m/s with stride length 35cm.
著者
佐野 明人
出版者
日本脊髄外科学会
雑誌
脊髄外科 (ISSN:09146024)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.242-245, 2017 (Released:2018-01-06)
参考文献数
17
被引用文献数
1 4
著者
池俣 吉人 佐野 明人
出版者
日本AEM学会
雑誌
日本AEM学会誌 (ISSN:09194452)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.2-8, 2017 (Released:2017-05-24)
参考文献数
52

A passive walker can walk down shallow slope with no energy source other than gravity. This motion is very attractive because its gait is really natural and ideal. Moreover, the walker can exhibit a stable limit cycle. Dynamics of passive walking is very interesting target and important for understanding human locomotion and developing the biped robots. In this paper, we introduce principles and applications of passive walking.
著者
友永 雅己 酒井 基行 田中 由浩 佐野 明人
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement 第31回日本霊長類学会大会
巻号頁・発行日
pp.94, 2015-06-20 (Released:2016-02-02)

霊長類の比較認知研究においては、視覚を対象とした研究が圧倒的に多く、聴覚や嗅覚の研究は視覚に比べると少なく、さらに触覚に関する研究はきわめて少ないのが現状である。そこで今回は、触覚の中でも力触覚に関する研究をチンパンジーを対象に実施した。力(触)覚とは、触覚の中でも物体と接触したときの反力に対する感覚を指す。今回の実験では、モータを利用して力覚(摩擦力)を精密にフィードバックすることのできるトラックボールを開発し、これを用いて条件性弁別課題をチンパンジーに訓練した。課題はまずカーソルを画面上に提示し、トラックボールを用いてこれを一定距離動かすことが要求される。この時の力覚フィードバックの量(8N対0.5N)に応じて、その後画面の上下に提示されるキイのいずれかにカーソルを移動させると報酬を得ることができる。4個体のチンパンジーが実験に参加した。この課題は、これまでに経験していない力触覚の弁別であるということ、また、各刺激に対して異なる反応を要求する条件性弁別課題を導入せざるを得なかったこと、の2点から、きわめて難しい課題であり、すべてのチンパンジーで最終的な学習基準に至ることができなかった。しかしながら、各個体の課題遂行を詳細に分析したところ以下のことが明らかとなった。まず、8N条件と0.5N条件を数試行ずつのブロックとして提示したところ、ブロックが切り替わった試行での正答率が弁別が成立していないと仮定した場合に予測される正答率よりも有意に高いことが明らかとなった。また、摩擦の小さい条件から大きい条件に切り替わる場合の方が逆の場合よりも正答率が高いことが明らかになった。これらの結果から、チンパンジーにおいても力触覚を手がかりとした条件性弁別が成立する可能性が示唆された。
著者
佐野 明人 林 祐史 サッチャポン クリッタナイ 松田 論 池俣 吉人 藤本 英雄
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
ロボティクス・メカトロニクス講演会講演概要集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp."1A2-A13(1)"-"1A2-A13(2)", 2010

In this study, the development of multi-role bipedal walker based on human-assisted passive walking is discussed. In this paper, the effect of upper body with non-linear spring characteristic is demonstrated. And, the bipedal walker with human-like appearance is developed. There is a close resemblance between human being and the developed bipedal walker.
著者
佐野 明人 藤本 英雄
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は, 動力やコンピュータを持たない歩行ロボットに関するものである. ロボットを歩かせるのではなく, 歩けるような脚・足にすることで, ロボット自身が自然かつ滑らかに歩行することができる. 開発したロボットは, 約2時間歩き続けたり, 時速3.3[km/h]で素早く歩いたりすることができ, しかも歩く姿はヒトそっくりである.
著者
池俣 吉人 佐野 明人 藤本 英雄
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會論文集. C編 (ISSN:03875024)
巻号頁・発行日
vol.74, no.738, pp.365-371, 2008-02-25
被引用文献数
1

A passive walker can exhibit a stable limit cycle. In our earlier work, a global stabilization principle of fixed point has been established mathematically, provided that the state just after heel-strike exists at the next step. However, this condition may not always hold. The passive walker with knees can execute the leg-swing motion with no control, only by gravity effect. Unfortunately, while the walker takes a step forward, the swing leg may strike its toe on the slope at unsuitable point. Therefore, understanding of the mechanism of swing-leg motion is very important for assuring the next step. In this study, we focus on the flexion and extension of knee joint of swing leg. In this paper, first, an equation of angular acceleration of knee joint is derived by simplifying and linearizing the model of passive walker. Then, the mechanism of the flexion and extension of knee joint of swing leg is explained.
著者
佐野 明人 池俣 吉人 藤本 英雄
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.119-122, 2006 (Released:2008-06-06)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1 4

受動歩行は,歩行機のもつダイナミクスと環境との相互作用のみによって,理想とする自然な歩容を形成する.特に,安定したリミットサイクルが存在するという重要な特徴をもつ.状態がリミットサイクル上を遷移する限り歩行は安定となる.歩行は物理現象そのものであり,ヒトは歩行現象を移動原理として巧く使っているのではないか.本稿では,歩ける原理として,受動歩行の平衡点の力学的構造ならびに安定メカニズムを紹介し,この力学原理からヒトの歩行を概観する.