著者
和田 章義
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01

2009年台風Choi-wanについて、水平解像度6kmの非静力学大気波浪海洋炭素平衡結合モデルによる数値シミュレーションを実施し、その結果をNOAA/PMELのKEOブイ観測データと比較検証した。計算された台風は、観測から推定される通過時刻よりも3時間ほど遅く、KEOブイ地点を通過した。しかし中心気圧の深まりについては、計算結果と観測結果は整合していた。この比較的遅い移動速度は、台風通過により生じる近慣性流及び乱流混合に影響し、結果としてKEO観測点に相当するモデル格子点で計算された海面水温、海面塩分、無機溶存炭素は観測結果よりも低くなった。そこで台風の位置に合わせた座標系で見た点(ブイの南側の点)で計算結果と観測結果を比較した。この場合、海面水温の低下は変わらなかったものの、塩分は初期時刻から増加し、観測結果と整合的であった。また海水温29℃で規格化した二酸化炭素分圧は初期時刻より増加し、観測結果とより整合的になった。以上の結果から、黒潮続流域の台風通過による海面二酸化炭素分圧の変動は海面水温だけで決まるのではなく、塩分や無機溶存炭素も重要であることがわかった。2011年の台風Ma-on、Talas及びRokeについて数値シミュレーションを実施した。Ma-onとTalasについては、台風による海水温低下が台風強度の計算に重要であった。一方、Rokeについては、台風による海水温低下の効果を考慮した場合、水平解像度1.5kmでも中心気圧の急激な深まりを再現することができなかった。Talasについては、側面境界条件に関するパラメータを変えた数値実験を実施した。このパラメータの変更により、中緯度において進路の違いが見られたものの、後に発生する台風Noruの発生地点には影響を及ぼさなかった。またTalasによる海面水温低下によりNoruの発生時刻は遅くなった。
著者
多和田 真吉 福田 雅一 スアン トラン・ダン デバ ファラ
出版者
日本農薬学会
雑誌
Journal of pesticide science = 日本農薬学会誌 (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.40-43, 2008-02-20
被引用文献数
1 30

沖縄では二種類の熱帯植物,ギンネム(Leucaena leucocephala)およびゲットウ(Alpinia zerumbet)の総合利用に関する研究が展開されてきた.ギンネムはタンパク質含量が豊富で飼料としての高い可能性を有している.しかし,摂取すると動物に害をもたらすミモシン(β-[N-(3-hydroxy-4-pyridone)]-α-aminopropionic acid)が存在するために利用が制限されていた.無毒化酵素のミモシナーゼをギンネムの葉から精製し,アミノ酸配列を決定することをもとにcDNAのクローニングを行った.ゲットウからの精油製造と繊維単離の工程で生じる多量の残渣および残液が廃棄されている.新鮮なゲットウの葉もしくは根,そして残液から精油,dihydro-5,6-dehydrokawain,および有用な抗酸化抽出物を得る抽出方法を開発した.
著者
山野 宏章 和田 哲宏 田坂 精志朗 福本 貴彦
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1264, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】野球肘は成長期の野球選手に多く,発見が遅れ重症化すると選手生命に関わることから,予防,早期発見が重要視されている。その発生要因としては投球数や練習量だけでなく,肩関節周囲筋の筋力や柔軟性などの身体的要因も関わっているとの報告がされている。しかし,野球肘を発症する選手の身体的特徴は,一貫した報告がされていない。また,スポーツ現場で野球肘の評価をするにはポータブルエコーを用いて医師が行うのが一般的で,理学療法士や指導者が簡易に評価できる指標はストレステストや痛みの問診等しかなく,十分ではないのが現状である。そこで本研究の目的は,エコー診断や各種身体機能検査を含めた評価をもとに,野球肘の発症あるいは重症度に関係する要因を包括的に検討することとした。【方法】奈良県の少年野球選手436名を対象とした野球肘検診において野球歴・投球時痛などのアンケート調査,医師によるエコー検査とストレステスト,理学療法士による柔軟性検査を実施した。そこで得た結果を基に野球肘の重症度を5段階に分けた。統計解析は,5段階の重症度を従属変数,アンケートの結果,エコー所見,ストレステストの結果,柔軟性検査の結果を独立変数とし,重回帰分析(ステップワイズ法)を行った。統計学的有意水準は5%未満とした。なお,統計解析にはSPSS statistics ver. 22(IBM,Chicago,IL)を使用した。【結果】重回帰分析の結果,外側エコー異常所見,内側エコー異常所見,肘関節伸展での違和感,肩関節水平内転テスト(以下:HFT),投球時痛,肩関節外旋での違和感,肘内外側のしびれ感の7項目が独立した因子として抽出された。標準偏回帰係数は外側エコー異常所見0.684,内側エコー異常所見0.331,肘関節伸展での違和感0.268,HFT0.056,投球時痛0.045,肩関節外旋での違和感0.052,肘内外側のしびれ感-0.037であった。自由度調整済み決定係数は0.882であり,Durbin-Watsonの検定は2.134であった。【結論】柔軟性検査のうち唯一抽出されたHFTの減少については,肩関節後方の軟部組織の柔軟性の低下を示している。これは投球動作時に体幹,肩甲帯から受けるエネルギーを適切に上肢に伝えることを困難にし,肘関節の適切な運動を阻害する。その結果,肘関節に異常なストレスを与え,野球肘の発症に繋がると考えられる。本研究の結果から,エコー検査が重症度予測に有用であると考えられるが,通常医師が行うエコー検査と比較した場合,エコー検査以外の重症度に影響する因子である痛みやしびれ,違和感の聴取,HFTの測定は理学療法士や指導者が簡易的に実施できる。そのため,スポーツ現場でこれらの評価を定期的に実施することにより,野球肘の予防や早期発見に繋がる可能性があると考えられる。
著者
和田 和洋 森下 竜一
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.25, no.6, pp.579-589, 2010 (Released:2011-02-25)
参考文献数
37

近年,核酸医薬品が次世代の分子標的薬として注目され,様々な疾患の分子レベルでの機構解明を目的とした研究に基づき,その有効性が検証され臨床応用への期待が高まっている.DDSを適用し,目的とする臓器・組織へ送達,標的分子に作用させることにより,治療できる対象疾患が拡大されうるが,核酸医薬品の開発には,安全性および品質の確保という観点で,低分子化学合成品にはない留意点があり克服しなければならない.本稿では,NFκBデコイオリゴヌクレオチドの開発を中心に,核酸医薬品の開発上の課題とDDS技術適用の試みを紹介する.
著者
和田東蔵 著
出版者
和田東蔵
巻号頁・発行日
vol.巻1・巻2, 1896
著者
深水 圭 酒井 和子 甲斐田 裕介 大塚 紹 和田 芳文 杉 健三 奥田 誠也
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.367-374, 2014 (Released:2014-06-28)
参考文献数
13
被引用文献数
3

血液透析 (HD) 患者におけるカルニチン欠乏は, 貧血や低栄養を惹起しQOLを低下させる. 最近わが国において透析患者に対するL-カルニチン経口・静注治療が可能となり, その効果が期待されている. 今回, HD患者に対する6か月間のL-カルニチン900mg経口投与が貧血や栄養状態にいかに影響するかについて, さらに500mg, 1,000mg静注への切り替えによりカルニチン濃度がどのように推移するかについて観察した. 総カルニチン50μmol/L未満の102人のHD患者を単純無作為化によりコントロール群, L-カルニチン群に分け, 6か月後の時点で観察し得た患者を比較検討した. カルニチン投与群 (n=23) では, コントロール群 (n=24) と比較しすべてのカルニチン濃度は有意に上昇し (p<0.001), アシルカルニチン/遊離カルニチン (A/F) 比は低下した (p=0.006). コントロール群と比較しL-カルニチン群ではHt (p=0.02), 総コレステロール (p=0.002), 中性脂肪 (p=0.022) が上昇し, AST (p=0.008), ALT (p=0.013) は低下した. 経口900mgから静注1,000mg (n=8) への切り替えはHD前後, 静注10分後においてすべてのカルニチン濃度を上昇させたが, 500mg (n=6) への切り替えは経口投与と同等であった. 500mgと比較すると1,000mgへの切り替えはHD前後ともに遊離カルニチンを上昇させたが有意差は認めなかった. カルニチン欠乏HD患者に対するL-カルニチン900mg経口投与は貧血や栄養状態, 肝機能を改善しうる可能性を見出した. カルニチン濃度, 患者アドヒアランス, 医療経済効果, トリメチルアミン-Nオキシド産生等を考慮すると静注が推奨されるが, 今後はどちらの投与方法が透析患者に有用であるかを検証するための比較試験が必要である.
著者
和田 哲郎 廣瀬 由紀 西村 文吾 星野 朝文 上前泊 功 田渕 経司 大久保 英樹 原 晃
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.61-67, 2012
被引用文献数
1

平成13年の医師法の一部改正により聴覚障害者が医師になることが可能となった。しかし, 医学教育で求められる極めて多くの情報を, どのように聴覚障害医学生に伝えるかという方法論は確立されておらず, 公的な支援制度もない。我々は, 上記の医師法改正後, 全国で3人目となる聴覚障害医学生を受け入れた。様々な関係団体と協力し, 本人の日常コミュニケーション手段である手話あるいはパソコン要約筆記を用いて情報保障に努めた。講義にはパソコン要約筆記が, 臨床実習では手話通訳が有効であった。しかし, 専門用語など特殊な内容が多いため, 対応可能な手話通訳者の養成と確保などの課題も明らかとなった。スムーズな支援のためには, 1) リーダーシップ, 2) きめ細かな連絡, 3) 信頼関係が鍵になると考えられた。個々の障害学生の希望と教育環境によって対応は変わってくると考えられるが, このような経験が蓄積, 共有され, 今後の聴覚障害学生教育の一助となることを希望し報告する。
著者
古田土 賢一 井川 正治 和田 侑奈
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間-生活環境系シンポジウム報告集
巻号頁・発行日
vol.39, pp.157-160, 2015-11-16

睡眠時の寝床内環境は温度33℃±1℃、湿度50%±5%RHが快適な環境と言われている。しかし、こうした温度・湿度の測定についても測定部位がまちまちで、寝床内の環境としては信頼性に欠けるように思える。寝床内環境の測定に関しては基準が無く、測定部位についても曖昧である。今回、「ひと」を介して寝床内の熱分布を測定し、寝床内環境と考えられる温度域、及び時系列における熱分布の変化について検討した。結果は以下の通りである。寝床内の温度測定の結果、身体より10cm以内の部位を測定する必要がある。ゆえに、測定点は被験者の体型に添って部位決定をしなければならないことが示唆された。

3 0 0 0 OA 磐城之富源

著者
大和田与平 著
出版者
飯田一二
巻号頁・発行日
1915
著者
和田 利博
出版者
京都大学
雑誌
古代哲学研究室紀要 : hypothesis : the proceedings of the Department of Ancient Philosophy at Kyoto University (ISSN:0918161X)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.26-40, 2006-06

この論文は国立情報学研究所の学術雑誌公開支援事業により電子化されました。