著者
宇留間 悠香 小林 頼太 西嶋 翔太 宮下 直
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.155-164, 2012-11-30 (Released:2017-10-01)
参考文献数
19
被引用文献数
8

近年、草地性や湿地性の生物の代替生息地である農地の生物多様性が著しく減少しており、農地生態系の再生を目的とした環境保全型農業が普及し始めている。本研究では、新潟県佐渡市で行われているトキの個体群の復元を目的とした環境保全型農業のうち、冬期湛水および「江」の設置が、繁殖のため水田を利用することのある両生類3種(ヤマアカガエル、クロサンショウウオ、ツチガエルの一種)の個体数や出現確率に与える影響を探った。佐渡市東部の20箇所の水田群(計159枚の水田)において各種両生類の個体数を調べ、一般化線形モデル(または一般化線形混合モデル)と赤池情報量基準(AIC)を用いて、水田と水田群の2階層における個体数を説明する統計モデルを探索した。その結果、ヤマアカガエルとツチガエルの一種において、冬期湛水もしくは江の設置が強い正の影響を与えることが明らかになった。ヤマアカガエルでは、水田と水田群レベルで異なる農法が正の効果を示した。これは、個体群レベルの応答を評価するためには適切な空間スケールを定める必要があることを示唆している。景観要因としては、ヤマアカガエルとクロサンショウウオで水田周辺に適度な森林率が必要であるが、その空間スケールは大きく異なること、またツチガエルの一種では景観の影響を受けないことが明らかになった。この結果は、日本の里山のように景観の異質性が高い環境では、環境保全型農業の影響評価の際に、一律の指標種を用いるのではなく、局所的な生息地ポテンシャルにもとづいて評価対象種を選定する必要があることを示唆している。
著者
小林 頼太 長谷川 雅美 宮下 直
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.52, pp.795, 2005

カミツキガメ(<i>Chelydara serpentina</i>)は淡水から汽水域にかけて生息するアメリカ原産の雑食性カメ類である.日本へは,1960年代からペットとして輸入され,近年では全国各地から野外へ逸出した個体が発見されるようになった.千葉県印旛沼周辺では1990年代中頃より本種が頻繁に発見されるようになり,2002年には国内で初めてカミツキガメの定着が確認された.カミツキガメは在来種と比較して大型であり,また多産であることから個体数が増加した場合,生態系へ大きな影響を及ぼす可能性がある. そこで本研究ではカミツキガメの管理を目的とし,まず,本種の印旛沼流域における分布を調査した. 2000年から2004年の期間に印旛沼流域において,罠掛けによる捕獲および聞き取り調査を行った結果,カミツキガメが確認された地点は流入河川である鹿島川及びその支流に偏っており,こうした傾向に顕著な変化は認められなかった.また, 2002, 2003年に合計28個体(オス10,メス18)に電波発信機を装着し,利用区間距離を記録した結果,外れ値の1個体を除いた27個体の平均(±SD)は405±192mであり,性差は見られなかった.また,この傾向は追跡期間(18-597日)とは相関がなかった.外れ値の 1個体に関しては短期間に移動し,最終的に利用区間は約2300mとなった. 次に,消化管および糞内容物から,カミツキガメを支える餌生物について評価した.その結果,カミツキガメは主に水草やアメリカザリガニなど,環境中に豊富にある資源を摂食していた.これらの結果をふまえ,今後のカミツキガメの管理方針について検討を行う.
著者
角田 啓介 小柳 隆人 坂井 俊之 宮下 直也 箕浦 大祐
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.1413-1425, 2019-08-15

本稿では,企業や公共機関に代表される階層型組織における業務効率化を目的とし,複数チャットボットを連携させた報告業務支援システムを提案する.多くの場合,組織は階層構造をなし,報告業務は多数の担当者から彼らを束ねる少数の管理者へとなされる.この場合,以下2点の課題がある.(1)担当者は漏れ抜けなく迅速に報告業務を実施することが困難な点(2)管理者は多くの担当者からの報告を迅速かつ的確にとりまとめ,状況の把握したうえで意思決定を行い,担当者へ指示することが困難な点.本稿では上記課題を解決するため,複数チャットボットを連携させた報告業務支援システムを提案する.提案するシステムでは,担当者は報告ボットと呼ばれるチャットボットとの対話を通じて場所を問わず必要な情報を漏れ抜けなく入力でき,迅速かつ正確な報告を実施できるようになる.また管理者は複数の報告ボットより報告された内容をまとめる管理ボットにより,自動的に報告結果のまとめや進捗状況の管理ができるようになり,迅速かつ正確な現状把握と意思決定が可能になる.そして提案システムではこれらのチャットボットが連携することで,担当者・管理者双方の業務効率化が実現される.最後に,提案システムを6,000名規模の大企業での災害対策訓練における安否確認報告に適用した結果,提案システムを用いない場合と比較して迅速に安否情報を集計できたことを確認でき,提案手法の有効性を確認した.
著者
石田 健 宮下 直 服部 正策 山田 文雄 石井 信夫 前園 泰徳 亘 悠哉 川崎 菜実
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

多様な固有種のいる生態系に、国際自然保護連合が「最も危険な外来種100種」に指定しているジャワマングースによる被害の出ていた奄美大島において、マングースの餌ともなる外来種クマネズミ、両種に捕食される鳥類とイシカワガエル、動物個体群に大きく影響するスダジイ堅果結実量、の動態を調べ、生態系管理の基礎情報を得た。研究成果をふまえ、国内外で外来種管理の重要性と可能性を説明した。
著者
小川 正三 崎原 宏 宮下 直之
出版者
医学書院
雑誌
臨床整形外科 (ISSN:05570433)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.199-203, 1986-02-25

抄録:脛骨の疲労骨折は決して稀なものではなく,スポーツや軍隊における報告は少なくない.しかしクラシックバレエダンサーにおける本症の報告は本邦においては稀有である.われわれはダンサーにおける本症を5例経験した.症例は男1,女4例で年齢は19歳から30歳までで何れも跳躍時に下腿に疼痛を訴え安静により軽快す.X線像で脛骨中1/3の骨幹部の前面に跳躍型の疲労骨折を認めた.尚27歳の女性の反対側の脛骨に5条,第5例24歳女性の反対側の脛骨に3条の疲労骨折によると思われる横走する骨透過像が認められた.診断は本症の存在を知っておれば困難なことはないが屡々類骨骨腫と誤診され易い.治療は安静,骨穿孔術,骨移植術などを行ったが本症の治癒は遷延され易いので先ず骨穿孔術を行うことを奨める.バレエ人口が急増しつつある今日,今後本症も増加することと思われる.
著者
谷川 明男 宮下 直
出版者
日本蜘蛛学会
雑誌
Acta arachnologica : organ of the Arachnological Society of Eastern Asia (ISSN:00015202)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.19-35, 2008-07-31
参考文献数
28
被引用文献数
5

Japanese spiders of the genus Dolomedes are revised and its phylogeny is inferred by mt-DNA. <I>Dolomedes japonicus</I> B&ouml;senberg & Strand 1906 and <I>D. angustivirgatus</I> Kishida 1936 are removed from the synonymy. <I>Dolomedes fimbriatoides</I> B&ouml;senberg & Strand 1906 and <I>D. hinoi</I> Kayashima 1952 are newly synonymized with <I>D. sulfureus</I> L. Koch 1878, and <I>D. stellatus</I> Kishida 1936 is synonimized with <I>D. japonicus</I>. Two new species, <I>D. fontus</I> and <I>D. silvicola</I> are described. Relative leg length and proportion of male palpal tibia are considered as good keys to indentify <I>Dolomedes</I> spiders, whose genital organs closely resemble one another. <I>Dolomedes sulfureus</I> and <I>D. silvicola</I>, often found on vegetation, have much longer legs and male palpal tibia than their relatives that inhabit near water and run on water surface or hide under water when disturbed. Molecular phylogenetic analysis using mt-COI revealed the following; ((((<I>raptor</I>, <I>yawatai</I>), <I>japonica</I>), <I>orion</I>), (((<I>angustivirgatus</I>, <I>sulfureus</I>), <I>fontus</I>), (<I>silvicola</I>, <I>saganus</I>)), <I>horishanus</I>).
著者
篠原 季次 宮下 直樹 平原 大地 吉本 引正 山川 史郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SANE, 宇宙・航行エレクトロニクス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.88, pp.91-95, 2013-06-13

宇宙基本法が改訂になり、人工衛星を用いた海洋監視手法の研究開発が求められ、JAXAにおいても、排他的経済水域の保全管理、違法操業等の海上犯罪、不審船事案、重大海難事故等、あるいは、我が国に至る海上輸送路における海賊行為等の対処に資することを目的とした、外洋を含めた広い範囲のAIS信号を人工衛星で受信するシステムの検討を行ってきた。衛星AIS (AIS: Automatic Identification System)は、上記に貢献できる宇宙システムの一つであるため、小型衛星を利用した衛星搭載AIS受信システムに関する技術実証実験SPAISE1 (SPacebased AIS Experiment1)を実施した。今回は約1年間に及ぶSPAISE1の実験結果のサマリを報告する。
著者
武山 智博 宮下 直 関島 恒夫 石庭 寛子 坂本 大地 大石 麻美
出版者
岡山理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

統計モデルの構築によって、水田内の局所環境および水田周辺の景観の異質性が、3種のトンボ(ハラビロトンボ、シオヤトンボ、アキアカネ)の出現個体数に与える効果を検討した結果、個体数を説明する環境要因とそのスケールは種間で異なっていた。全般的な傾向としては、種間の飛翔能力の高低に対応したスケールにおける複数の環境要因が出現個体数に影響を与えており、これらのトンボの分布にとって水田と森林が入り混じるモザイク状の景観構造が重要であることが示唆された。
著者
寺内 まどか 中村 和雄 松岡 茂 宮下 直
出版者
The Ornithological Society of Japan
雑誌
(ISSN:00409480)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.7-16, 1985-08-25 (Released:2007-09-28)
参考文献数
9

(1)1983年および1984年4月から11月にかけて,茨城県谷田部町農業研究センターの圃場およびその周辺の畑地と林で見られたキジバトの個体数を数えた.その結果,畑では,ムギ,トウモロコシ,ラッカセイなどの刈り跡やダイズ畑で多く見られる傾向があった.それに対して,林の個体数は安定していた.(2)キジノミトの〓のう内容物を分析した結果,ほとんどの餌が植物質で占められ,それも農作物の割合が高かった.(3)キジバトの餌を林床と畑からサンプリングした結果,植物質の餌は畑に集中していて,林床ではわずかしかみられなかった.(4)これらのことから,キジバトは,繁殖場所である林では密度が安定しているが,畑では採餌のために比較的広い範囲から個体が集まり,特にムギやダイズなどの刈り跡に集中して餌を得ていると思われる.