著者
寺町 ひとみ 畠山 裕充 松下 良 今井 幸夫 宮本 謙一 辻 彰
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.530-540, 2002-12-10 (Released:2011-03-04)
参考文献数
17
被引用文献数
7 7

The department of pharmacy which is a member of the Infection Control Committee in Kouseiren Chu-nou Hospital provided a systematic program of vancomycin (VCM) therapeutic drug monitoring (TDM) and consultations regarding the suitable dose and administration interval etc. of VCM for both patients and physicians. However, in many cases the initial dosage and dose interval were empirically decided by the physician.In the present study, we retrospectively examined three nomogrames that were recommended as the rough standard for determining the initial dosage and dose interval, in comparison to the Bayesian method, based on our hospital data collected from adult MRSA patients. We also compared our findings with the Moellering's method, Matzke's method, Maeda's method and the Population mean methods.Maeda's method did not predict the serum trough and peak levels that reach poisonous ranges. Maeda's method was found to be a safe method. In addition, Maeda's method was found to reach the therapeutic ranges the most frequently of the four methods. Furthermore, the calculations for Maeda's method were simpler than the other three methods. Accordingly, it is possible to easily calculate the initial dosage and dose interval in the clinical field. The serum VCM concentrations should thus be measured for each patient, as soon as possible, to correct the dosage using the Bayesian forecasting technique, because the therapeutic ranges sometimes deviate from the predicted range.
著者
寺田 愛 安藤 仁 野川 麻紀 櫻井 勝 野原 えりか 山下 治久 早川 哲雄 宮本 謙一 小林 健一 篁 俊成
出版者
THE JAPAN DIABETES SOCIETY
雑誌
糖尿病 = Journal of the Japan Diabetes Society (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.463-467, 2003-06-30
被引用文献数
5

理想のインスリン注入器を追求する目的で, 新型タイマー式注入器の使用感や外観を従来の万年筆型注入器との対比において評価した. 当科通院中のインスリン使用糖尿病患者89人 (男性49人, 女性40人) に, アンケート調査を行った. タイマー式は単位の合わせやすさ (7896) や注入ボタンの押しやすさ (6296) など操作性が評価された (数値はタイマー式の支持率). 一方, 外観は形 (2896), めだたなさ (2996) と万年筆型が優っていた. これらを年代別に解析したところ, 操作性は各年代ともタイマー式を支持したが, 外観は若年層ほど有意に万年筆型を支持した, 今後使用したい注入器としては, 若年層ほど万年筆型を, 高齢層ほどタイマー式を選択し, 若年層では外観を, 高齢層では操作性を重視することが判明した. インスリン注入器に求める条件は年齢層によって異なり, タイマー式は高齢者が求める条件をより満たした注入器であることが明らかとなった.
著者
滝本 幸治 宮本 謙三 竹林 秀晃 井上 佳和 宅間 豊 宮本 祥子 岡部 孝生
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.281-285, 2009-04-20
参考文献数
22
被引用文献数
4 2

[目的]地域の職能を有した人材資源を有効に活用した介護予防事業において,過去4年間に我々が介入してきた運動教室の効果検証を行った。[対象]過去4年間の運動教室参加者95名(平均年齢77.8±6.1歳,男性20名,女性75名)である。[方法]体力の総合的効果を検証できるよう,運動教室実施前後の体力測定値を得点化し,総合得点により比較した。得点化には,同市の高齢者健診の結果から作成した体力標準値を利用した。また,運動教室による効果の要因を検討するために,運動教室による効果あり群と効果なし群に分類し,運動教室開始時の体力を比較した。[結果]運動教室の前後で総合得点の有意な向上を認めた。また,効果あり群の教室開始時の総合得点が有意に低く,運動教室開始時の体力水準が低い者に運動効果があったと推察された。[結語]地域に根ざした高齢者運動教室の効果が認められたが,体力水準が低く且つ類似した体力の対象者を選定することによって,より有効な運動教室の運営が可能になることが考えられた。<br>

1 0 0 0 OA 聖城怪談録

著者
宮本謙吾 著
出版者
碧水閣文庫
巻号頁・発行日
vol.下, 1929
著者
橋本 秀子 宮本 謙一
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.207-210, 2007 (Released:2007-10-02)
参考文献数
10

薬剤師として1980年代にがん患者中心の病棟で臨床に密着した業務を展開する中で, 抗がん剤の副作用やがん末期の諸症状に苦しむ患者を目の前にし, 医師や看護師のがん患者への情報提供と彼らの意見を調査した. その後, 1996年と2005年にも同様の質問を行い, その変化に応じて薬剤師の患者への関わり方を探った. 1988年には72.7%の医師が早期がんでも病名告知しなかったが, 1996年には70%の医師が早期がんのみ病名告知するようになり, 2005年には100%の医師が, 進行度に関係なく病名を告知するとの回答を得た. しかし,「いつまで抗がん剤治療を続けるか」「終末期の症状緩和の技術が未熟である」といった新たな問題が生じており, 薬剤師がスタッフの中で独自の立場で主張することも必要となってきている.
著者
宮本 謙三 竹林 秀晃 宅間 豊 井上 佳和 宮本 祥子 岡部 孝生 坂上 昇 森岡 周 舟橋 明男
出版者
土佐リハビリテーションカレッジ
雑誌
土佐リハビリテーションジャーナル (ISSN:13479261)
巻号頁・発行日
no.1, pp.27-32, 2002-12-20

本研究の目的は一側の筋力トレーニングが対側に及ぼす筋力増強効果, すなわち筋力の両側性転移を検証することである。対象は健康な男子学生22名とし, 方法は被験者を等張性収縮によるトレーニンググループと等尺性収縮によるトレーニンググループに分け, 一側の膝伸展筋に対し,4週間(延べ16日間)の筋力トレーニングを行った。そして, トレーニング前後の対側同名筋(膝伸展筋)と対側拮抗筋(膝屈曲筋)の等尺性筋力の変化を筋力測定装置を用いて測定した。結果は, 対側拮抗筋筋に筋力増強効果を認め, 対側同名筋には認められなかった(p>0.05)。また, 等張性トレーニングと等尺性トレーニングの間に差は認められなかった。これらの変化は, 最大出力を発揮するための相反運動あるいは姿勢固定作用と思われ, 筋力トレーニングにおける両側性転移効果を確認することは出来なかった。
著者
佐々木 琢磨 米田 文郎 宮本 謙一 前田 満和 川添 豊 兼松 顕
出版者
金沢大学
雑誌
がん特別研究
巻号頁・発行日
1990

前年度に引続き2'ーdeoxycytidineの2'ーarabino位への置換基の導入を検討し、2'ーazido体(Cytarazid)の簡便、大量合成法を確立すると共に2'ーシアノ体(CNDAC)をラジカル反応を用いて新たに合成した。種々のヒト固型腫瘍由来細胞に対しCytarazid及びCNDACはともに強い増殖抑制効果を示した。また、podophyllotoxin型リグナン類の合成をDielsーAlder反応を用いて合成し、強い抗腫瘍活性を有する化合物を得ることができた。ブレオマイシンの細胞毒性は、ポリアクリル酸と撹拌すると増大するが、この時の細胞死は未知の致死機構によるものと考えられ、休止期細胞や耐性細胞にも同等に作用することを見出した。白金錯体を酸性多糖に結合させた高分子マトリックス型錯体を合成し、それらがB16ーF10メラノ-マの肺転移を抑制することを見出した。酸化還元代謝調節能を有するフラビンや5ーデアザフラビンの誘導体を合成した。これらの中でもNO_2基やCOOC_2H_5基を有するものが強い抗癌活性を示した。次に生元素の一つであるセレンを骨格内に導入した5ーデアザー10ーセレナフラビンを合成し、この化合物もかなり強い抗癌活性を有することを見出した。一方、ヒト腫瘍に対する簡便で能率の良い転移治療モデルとして、鶏卵胎児の転移多発臓器のおけるヒト腫瘍の微小転移巣に含まれるヒト腫瘍細胞の特定遺伝子をPolymerase Chain Reaction法により定量的に検出する我々独自の方法を用いて、転移抑制及び治療に有効な物質をスクリ-ニングした。その結果、本研究班で合成したDMDC(2'ーdeoxyー2'ーmethylidenecytidine)とCNDACがヒト線維肉腫HT1080の肝・肺の転移巣を顕著に抑制することがわかった。選択性の高いプロテインキナ-ゼ作用薬を得るために新しくデザインされたイソキノリン誘導体の細胞周期及び制癌剤多剤耐性に及ぼす影響を検討した結果、in vitroではあるが、P388/ADRの耐性解除作用の強い物質を見出した。
著者
竹林 秀晃 弘井 鈴乃 滝本 幸治 宮本 謙三 宅間 豊 井上 佳和 宮本 祥子 岡部 孝生
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48100757, 2013 (Released:2013-06-20)

【目的】近年,身体保持感や運動主体感などの自己身体感覚の研究において,視覚と体性感覚が時間的・空間的に一致することによりラバーハンド錯覚や体外離脱体験などの現象が引き起こされることが報告されている.一方,慢性疼痛の原因は,視覚情報と体性感覚情報の不一致が疼痛の原因となることが報告されている.そして治療として,鏡,ビデオ映像やVR 技術などを使用し,視覚と体性感覚のマッチングが有効であるとの報告がある.こうしたことから,自己身体を正確に認識するためには,様々な感覚モダリティの情報を統合することが必要である.しかし,姿勢制御において視覚刺激と身体情報の一致・不一致性についての報告は少ない.視覚情報と身体感覚情報(体性感覚,前庭覚)が一致しなければ,身体の違和感が起こり姿勢制御能力の低下やパフォーマンスがうまくできなくなる可能性がある.そこで,今回リアルタイムに視覚情報を変化させることで身体感覚情報との不一致をつくり,姿勢制御への影響を探ることを目的とした.【方法】対象は,健常成人18 名(年齢21.9 ± 0.4 歳)とした.測定肢位は,Head Mounted Display; HMD(HMZ-T2,SONY社製)を装着したタンデム肢位とした.HMDとデジタルビデオカメラ(HDR-CX270V,SONY社製)を同期化させ,被験者自身の後方から撮影した映像をリアルタイムにHMDに映写した.映像としてカメラを前額面上で右回転させ,設定角度は0°・45°・90°・135°・180°の5 つをランダムに映写した.測定時間は各30 秒とし,15 秒で設定角度へと傾け,15 秒で0°へと戻した.データは,重心動揺計(アニマ社製)にて,サンプリング周波数50HzでPCに取り込み,総軌跡長,矩形面積を算出した.統計学的解析は,一元配置分散分析と多重比較検定(Bonferroni法)を用いた.また,測定後,測定時の主観的感覚を聴取した.【倫理的配慮,説明と同意】実験プロトコルは,非侵襲的であり,施設内倫理委員会の承認を得た.なお,対象者には,研究の趣旨を説明し,同意を得た.【結果】総軌跡長は,映像の回転角度180°において,回転角度0°より有意に高値を示した (p<0.01) .矩形面積は,回転角度135°と180°において回転角度0°より有意に高値を示した (p<0.01) .被験者からの主観的感覚の回答としては,「映像に抵抗しようと傾きと反対方向に傾いてしまう」などの映写された自己身体像に対して没入感があったことが窺える回答が得られた.【考察】立位姿勢保持では,視覚・体性感覚・前庭覚の情報が統合されて成り立つが,視覚情報による影響が大きい.しかし通常,自身の姿勢を視覚的に取得することは困難であり,本研究のように自己身体の後方からの映像は非日常的である.さらに,リアルタイムに映写する身体像を回転させることで,視覚情報に外乱刺激を与え,身体感覚情報との不一致の状況のみならず,遠心性コピーとの不一致も与えることになる.結果として回転角度が大きい場合において有意に重心動揺が大きくなった.これは,視覚情報と身体感覚情報の不一致の度合いが大きく,身体図式との整合性が合わず姿勢制御に影響を及ぼしたことを示唆している.これは,Mental Rotation課題において実際動かすことが難しい120°,240°に回転させた手の写真に対する反応時間が延長する報告やBiological Motionにおいて180°回転させた時には、運動の認知が低下する報告と同様なものと考えられる.日常見る機会の少ない角度の視覚情報であるため,視覚映像としての経験的要素が少なく身体図式が形成されていないためと考えられる.また,各回転角度が増大するにつれて回転角速度が速くなることが姿勢制御に影響を与えたことも考えられる.一方,回転角度が少ない場合は,日常経験可能な角度であることから身体図式の形成がされており,映写された身体像との不一致があっても,感覚の重みづけの変化がおこり,視覚情報よりも他の身体感覚情報がより賦活されている可能性や予測的側面により重心動揺を制御できる可能性を示唆している.【理学療法学研究としての意義】姿勢制御において,視覚操作や視覚と身体感覚の一致性に着目する必要がある.視覚情報と身体感覚情報との不一致の状況では,感覚の重みづけの変化により体性感覚など自己身体へのアプローチを閉眼という環境以外で与えることが出来ると考えられ,新たな姿勢制御戦略や視覚や身体感覚情報の統合障害がある場合での評価やトレーニングにつながる可能性があると考えている.
著者
竹林秀晃 宮本 謙三 宮本 祥子 宅間 豊 井上 佳和 岡部 孝生
出版者
土佐リハビリテーションカレッジ
雑誌
土佐リハビリテーションジャーナル (ISSN:13479261)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.33-40, 2002
被引用文献数
1

両側同時筋出力の発揮は,片側のみの筋出力発揮に比べ数〜20%程度低下することが報告されており,両側性機能低下(bilateral deficit)として知られている。本研究の目的は,等速性運動機器を使用して角速度と筋収縮様式を変化させてのbilateral deficitへの影響を筋電図学的に検討を行なうことである。対象は,健常男性6名とした。方法は(1)一側性収縮 (2)両側同名筋同収縮 (3)両側同時同名筋異収縮 (4)両側同時拮抗筋異収縮にて,膝関節伸筋の等尺性収縮・CON・ECCを組み合わせて行なった。収縮各肢位のCON・ECCは,角速度30・90・180度/secで行った。測定には,表面筋電計とCYBEXを用いて測定した。結果は,右VM・RF・VLのおいて左膝関節90度屈曲位での膝関節伸筋等尺性収縮時の右膝伸筋ECC(角速度180度/sec)の際に有意な%IEMGの低下が認められた。また,左VM・RF・VLのおいては,膝関節伸筋等尺性収縮時の右膝関節伸筋ECC(角速度30・90度/sec)時の左膝関節90度屈曲位での膝関節伸筋等尺性収縮の際に有意な%IEMGの低下が認められた。過去の報告におけるbilateral deficitのメカニズムは,脊髄・末梢性レベルの (1)二重相反神経支配(2)両側同時発揮時に抑制されるmotor unitの特性,心理学レベルの(3)注意の分割,中枢性レベルの(4)大脳半球間抑制 (5)大脳半球内抑制などの仮説が提唱されているが,いまだ明確なものは提示されていない。今回の結果からは,二重相反神経支配を意識した方法(4)両側同時拮抗筋異収縮において方法(3)両側同時同名筋異収縮より%IEMGが高くなる傾向はあるものの統計学的に差がないことや周波数解析による%MPFにおいても有意な差がないことから脊髄・末梢性レベルの影響は少なく,日常経験の少ない筋出力より外力が打ち勝つECCの際の左VM・RF・VLに有意な%IEMGを来していることから心理学レベルの影響が大きいと思われた。メカニズムに関しては,いまだ不明な点も多く前述したメカニズムが動作方法の種類により複雑に絡み合った運動制御結果と考えられる。
著者
佐藤 美佳 古川 裕之 松嶋 由紀子 横井 祐子 宮本 謙一
出版者
日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.245-250, 2007-03-10
被引用文献数
2 1

In clinical trials,patient name,date of birth,and sex are items of medical information used to refer to patients.Generally speaking,patient names are indicated by their initials.However,there are doubts as to whether patients may remain completely unidentified when initials are used.In this study,we investigated the identification levels of patients through the combination of the above three patient data items in post marketing surveillance data.We also investigated the necessity of items recorded in case registration forms for pharmaceutical companies and medical institutions.We investigated combinations of"K.K"and"Jan.2,1947"which were assumed to relate to the largest populations in the database of patient medical information at Kanazawa University Hospital.The total number of patients in the database with combinations of the above was 358,251.The number of patients with the initials"K.K."was 7,892(1/45),that with the initials"K.K"and"1947"was 173(1/2000),and that with the initials"K.K","1947" and"Jan"was 23,while there were only 4 patients(1/8500)with the initials"K.K.""1947","Jan"and "2".These results indicate that it would be possible to identify patients from the combination of their initials and their date of birth(DD/MM/YY).However,the size of the patient population in each medical institution's database would be an important factor since it would determine the extent to which this could be done.From the point of view of protecting personal information,it is thus necessary to consider whether it is appropriate to use patients' initials and dates of birth based on the size of patient population.
著者
成橋 和正 野村 政明 亀井 浩行 小野 俊介 松下 良 清水 栄 横川 弘一 山田 清文 鈴木 永雄 宮本 謙一 木村 和子
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
藥學雜誌 (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.123, no.11, pp.973-980, 2003-11-01
被引用文献数
13 16

従来の薬学教育における臨床教育の不足から,多くの薬学系大学院博士前期課程(修士課程)に薬剤師免許取得後の大学院生を対象とした臨床系の専攻やコースが設立されてきている.金沢大学でも,薬学研究科(現:自然科学研究科)に臨床薬学教育を主眼に置いた医療薬学専攻が平成8年に設立され,国立大学としては早期であった.本学医療薬学専攻では,薬剤師免許取得者を対象とし,臨床現場で指導的役割を果たす高度な薬剤師の養成および次世代の医療薬学教育研究に携わる人材の育成を教育理念としている.このため,医療薬学専攻の学生に対して医療現場の実習を通じて医療を担うものとしての自覚を深めさせるとともに,自然科学の素養を身に付けることを求めている.具体的な教育目標は,医療人としての倫理観の醸成,医療の専門家として健康と疾病に関する知識獲得,薬物治療に起因する問題の同定・評価・解決,ならびに,コミュニケーションに関する知識・技術の習得,さらには,関連分野における高い研究・開発能力を発展させることである.このため,発足当初は,入学初期の集中講義,1か月の市内保険薬局での薬局実習,6か月の本学医学部附属病院薬剤部での実務実習を行い,1年間を課題研究期間としていた.講義は学部教育に引き続き,基礎自然科学系科目が大半であり,臨床現場での実習との非関連性が学生からも指摘されていた.また,半年間の実習後に修士の学位論文の一部として病院実務実習篇の作成や口頭発表が要求されていたために,実質的な実務実習は,時間的に極めて限られていた.実務実習を終えたあとの課題研究は,医療薬学専攻ならびに生命薬学専攻に属する各研究室で行っていたことから,必ずしも臨床に近いものではなかった.さらに,学生が就職するのは実習終了後1年を経過した後であり,就職直前の学生から実務に対する不安がでたり,就職直後に修了生や雇用者から実習経験が薬剤師として十分に活かせていないとの声が聞かれた.このような問題点を踏まえて,平成13年度に医療薬学専攻のカリキュラムの改善を図った.医療薬学に対する幅広い知識を深めさせるため,臨床系講義科目を充実させた.この変更では,薬物治療の科学的基礎とともに,看護,倫理,心理,国際など,医療に関連する人文・社会系分野も開講し,受講する学生の講義科目数が増加した.また,実習に関しては,継続性や充実性を考慮し,実務実習期間を1年に延長した.最初の2か月間は薬剤師業務全般の集中的な導入実習として,6人ずつ4グループに分かれ,調剤部門(一般調剤・注射薬調剤,2週間),製剤部門(一般製剤・無菌調剤,1週間),薬剤管理指導部門(医薬品情報・医薬品管理・TDM,1週間:病棟業務,4週間)を行う.その後は学生1人に対し指導薬剤師1人というマンツーマン形式の個別指導とし,薬剤師職能の病棟の薬剤管理指導を中心の実習としている.これに対し,医療薬学専攻の各教官も3名程度の学生を担当し,面接などにより実習の進捗状況を把握するとともに,専門分野に応じた指導も担当している.しかしながら,実習(実務)の大部分は指導薬剤師により行われており,個別指導であるため学生全体としての質の評価や,問題点の抽出は行いにくい.そこで,この新カリキュラムによる講義の理解度や実習の達成度について,visual analog scale(VAS)を用いて,学生と指導薬剤師による評価を試みた.また,この評価結果から,新カリキュラムの問題点などについて考察することとした.
著者
宮本 謙介
出版者
北海道大学
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.85-103, 2001-12-11

本稿(本研究の第II章)では、現代中国における開発最前線の一事例として浙江省の中小私営企業を取りあげ、2000年9月に実施した実態調査に基づいて、私営企業の労働市場を分析課題とした。浙江省は、上海市に隣接して、中国でも最も私営企業が成長している地方であり、当地では、国有企業や郷鎮企業が民営化によって私営企業に衣替えしたものが多数を占める。その労働市場は、同族経営と縁故主義による雇用と労働力配置、内部労働市場の未成熟、労働力調達の地域的閉鎖性などを特徴としており、また雇用形態や社会保障の面でも就労の不安定化要因を内包している。現代中国の私営企業は、労働者の能力主義評価を重視した生産効率優先の経営によって経済成長を牽引しているが、労働者の雇用確保、就労の安定性といった諸点で、なお多くの課題を抱えている。