- 著者
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井上 佳和
宮本 謙三
宅間 豊
宮本 祥子
竹林 秀晃
岡部 孝生
- 出版者
- 日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
- 雑誌
- 理学療法学Supplement Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
- 巻号頁・発行日
- pp.55, 2003 (Released:2004-03-19)
【はじめに】 長年,健康づくりのための運動指針の中で奨励される運動は有酸素性トレーニングであったが,ここ数年,レジスタンストレーニングとの併用が奨励されるようになった。それぞれのトレーニングの方法論や効果についての報告は多い。しかしエネルギー供給系の異なる2種の運動を併用した際のトレーニング効果についての報告は少なく,明確な知見は得られていない。そこで本研究では有酸素性トレーニング単独実施時とレジスタンストレーニングを併用して実施した際のトレーニング効果について検討を行なった。【対象と方法】 対象は運動習慣を持たない成人男性17名とした。この対象者を有酸素性トレーニングのみを実施する群(AT群),レジスタンストレーニングを併用して実施する群(ART群),トレーニングを実施しない群(C群)に分けAT群とART群に対しては週3回,5週間のトレーニングを実施した。内容は有酸素性トレーニングとして50%V(dot)O2max負荷量での自転車エルゴメーター駆動20分,レジスタンストレーニングとして100deg/secの等速性膝伸展運動30回であった。測定項目はPeak V(dot)O2,膝伸展筋力の2項目とし,各群のトレーニング前後の値をt検定にかけることでトレーニングによる効果を判定した。有意水準は5%とした。【結果】 AT群では2項目共に増加したが,有意な増加が認められたのは膝伸展筋力のみであった。ART群ではPeak V(dot)O2,膝伸展筋力共に有意な増加が認められた。C群では,すべてに有意差が認められなかった。【考察】 レジスタンストレーニングによるPeak V(dot)O2の増加は,筋の酸素利用能力の改善に起因すると考えられた。筋の酸素利用能力の改善は,酸素拡散能力と酸素消費能力により規定されるがART群では有酸素性トレーニングによる筋毛細血管の発達が酸素拡散能力を向上させ,レジスタンストレーニングによる速筋内でのFOGへのサブタイプの移行が,ミトコンドリア量と酸化酵素活性を高め,酸素消費能力を向上させたと推察された。今回の結果をふまえると,有酸素的作業能の代表的指標であるPeak V(dot)O2を増加させるためには,有酸素性トレーニングのみならず,レジスタンストレーニングを併せて実施する方が,より大きな効果が期待できる可能性が示唆された。膝伸展筋力については,対象を日常運動習慣を持たない一般成人とした場合,自転車駆動などの運動によっても改善を認めることが明らかとなった。しかしペダル負荷量から考えると,活動が高まる筋線維は遅筋が中心になると考えられることから,速筋線維の活動を高めるレジスタンス運動を加えることで,バランスのとれた筋機能への刺激となり得ると考えられた。