- 著者
-
山下 淳
- 出版者
- 静岡大学
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2003
本研究では,方向変化が可能な複数台の視覚センサを持つロボットに対して,複数観測戦略を導入することで環境認識の確実性を向上させたロボットの行動設計手法を提案する.具体的には,(1)観測精度の向上と(2)視界の明瞭さ向上を目的とする.ここで,人間の目の可動範囲は限られているため,主にステレオ視のみで物体との位置関係を推定する.一方,ロボットの場合は可動範囲の制限がないため,(1-a)ステレオ観測(同じ物体を複数カメラで観測),(1-b)灯台式観測(別の物体をそれぞれのカメラで観測),(1-c)複合型観測((1-a)と(1-b)の組み合わせ)など同じ場所で環境認識を行う際においても,複数観測戦略を採ることができる.そこで,各方法の観測精度を向上させるとともに,状況に応じて観測戦略を切り替えることで,(1)を解決した.具体的には,環境中の目印となる物体の配置や個数などに応じて最適なロボットの移動経路・観測地点・観測戦略をそれぞれ計画する手法を構築した.ここでは,特にロボットのカメラの性能や移動性能に応じた行動設計方法を提案した.さらに,計画手法を改善することにより,行動設計に必要な計算時間を短縮した.また,悪天候時にはカメラの保護ガラス面に水滴や泥が付着するなど,常に明瞭な視界が得られるわけではない.そこで,(2-a)同じシーンを観測中の複数カメラの情報融合,(2-b)カメラ方向を変化させることにより得た単体カメラからの時系列情報融合,によってそれぞれ(2)を解決した.具体的には,視差のあるステレオ画像について,ノイズが付着していない部分の情報を組み合わせることで明瞭な画像を生成する方法を構築した.また,移動物体が存在する状況においても視野明瞭化を行う手法を提案した.