著者
岡田 真人
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.28, 2014

近年,統計学,機械学習,パターン認識,信号処理,通信工学, 計測工学といった幅広い分野で,高次元データのスパース性に 注目したスパースモデリングの方法論が提案されている. 本講演では,生命・脳科学,医工学,地球惑星科学・天文学などの 幅広い分野に関して普遍的な,スパースモデリングによる データ駆動型科学の可能性について議論する.
著者
寺島 裕貴 岡田 真人
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.461, pp.325-330, 2011-02-28

神経細胞の受容野が秩序を持って並ぶ地図構造は大脳皮質感覚野に共通の特徴として知られるが,整然とした一次視覚野(V1)のレチノトピーに対し,一次聴覚野(A1)のトノトピーは乱雑であることが明らかになってきた.一方,過去の研究はV1とA1で見られる受容野構造の違いが自然界の刺激が持つ統計性の違いの反映に過ぎないことを示唆している.そこで我々は,この地図構造の乱雑さの違いもまた,自然刺激の統計性の違いの反映であるという仮説を提唱する.本研究では,V1のモデルであるトポグラフィック独立成分分析を「聴覚らしい」刺激に適応させることで,同モデルがA1のように乱れた地図も生成し得ることを示す.
著者
徳田 悟 永田 賢二 岡田 真人
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.29, 2015

学習において,確率分布の構造はサンプルの個数が増えるにつれて徐々に明らかになる.ではサンプル数が少なくともいくつであれば,その構造を発見できるのであろうか?我々は物質の相転移を議論する統計力学との数理的等価性に基づき,ベイズ学習における系の秩序変数を計算し,その転移点が学習に必要な最低サンプル数に対応することを示す.ニューラルネットワークの一種である動径基底関数ネットワークにおいてその検証を行う.
著者
橋口 友美 井上 真郷 岡田 真人
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.542, pp.55-60, 2008-03-05

一次視覚野(V1)における輪郭抽出の性質は,特定の傾きに対しての方向選択性を持つモジュールの働きによるものであり,この性質を現す単純なモデルとしてGaborフィルタが用いられる.本研究では,視覚画像にGaborフィルタをかけて得られたフィルタ出力から,Bayes推定によって視覚画像を逆推定するという実験を試みた.これは,V1での脳活動情報を観測することで,今見ている視覚画像を推定することに相当する.Bayes推定を用いた画像修復の問題において,事前確率やノイズに並進対称性がある場合はFourier変換を用いて簡単に画像修復をすることができるが,畳み込みフィルタであるGaborフィルタも,Fourier変換を利用することで計算量を減らし,解析解を導くことができる.また,モデルに含まれるハイパーパラメータも,観測画像より推定が可能なことを示す.
著者
岡田 真人 平野 あや 上江洌 達也
出版者
日本神経回路学会
雑誌
日本神経回路学会誌 (ISSN:1340766X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.82-88, 2004-06-05 (Released:2011-03-14)
参考文献数
12

相関型連想記憶モデルは,当初ヒトの行動レベルでの記憶現象を説明するモデルとして提案された.その後,Rollsによって海馬CA3回路が自己相関型連想記憶モデルとして働くという仮説が提案され,連想記憶モデルがヒトの行動レベルのマクロなモデルだけでなく,電気生理的に観測できるニューロンのレベルの神経回路モデルとなった.最近では,連想記憶モデルは高次視覚野である側頭葉の知見を説明するモデルとしても注目をされている.本解説では,連想記憶モデルを用いて側頭葉のニューロンの性質に関して一見異なって見える知見がどのように矛盾なく説明できるかを解説する.
著者
関口 智樹 大森 敏明 岡田 真人
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM)] (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.26-31, 2012-09-28

Slow Feature Analysis (SFA) は時系列データからゆっくりと変化する情報を抽出する数理モデルであり,神経システムのモデルなどに応用されている.近年, SFA の確率モデルが提案されているが,先行研究における SFA の確率モデルでは,データに加わる観測ノイズに関する近似を行っており,その影響についての定量的な議論が行われていなかった.本論文で我々は,パラメータ推定の精度や推定される slow feature のダイナミクスの振舞いを調べることで, SFA の確率モデルにおける観測ノイズの影響を明らかし,最もゆっくりと変化する成分が観測ノイズの影響を強く受けることを示す.The slow feature analysis (SFA) is a mathematical model that extracts slowly varying features from time series data. For example, the SFA has been applied for neural systems. Recently, a probabilistic version of SFA was proposed. This probabilistic SFA includes approximation on observation noise. However, quantitative evaluation on the effect of the observation noise in the probabilistic SFA has not been investigated in the previous study, and thus it remains unclear how the observation noise affects the performance in the probabilistic SFA. In this paper, we investigate the effect of observation noise in the probabilistic SFA by evaluating the accuracy of estimated parameters including slow feature dynamics. We show that the most slowly varying feature suffers from strong effect of the observation noise.
著者
松本 有央 岡田 真人 銅谷 賢治 菅生 康子 山根 茂 河野 憲二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.686, pp.93-100, 2001-03-14

サル側頭葉に存在する顔細胞集団の活動パターンから視覚刺激画像の階層的な構造を抽出できるかどうかを検証するために, Sugaseらの実験データを解析した. 45個のニューロンの活動から38枚の刺激画像に対する38個の応答ベクトルを生成し, そのベクトルをVariational Bayes (VB)アルゴリズムを用いた混合正規分布解析でクラスタリングした. その結果, 異なった画像に対応するニューロン集団を表すベクトルは, 応答の開始時(90-140ms)において"顔か単純図形"などの大分類情報に対応する3つのクラスターを形成した. それに遅れて(140-190ms)それぞれのクラスターは分離し, "人の個体分類"などの詳細な分類情報に対応するサブクラスターを形成することを発見した. さらに相互情報量を計算することでニューロン集団はヒトは個体, サルは表情, 図形は形によって詳細なクラスターが形成されていることが分かった.
著者
川村 正樹 岡田 真人
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.84, no.10, pp.2302-2311, 2001-10-01
被引用文献数
8

系列想起モデルにおける想起過程の厳密解を議論する.連想記憶モデルの想起過程を解析するための理論として, 経路積分法や統計神経力学が提案されている.経路積分法は厳密解を与える理論であるが, 系列想起モデルでは, 定常状態しか議論されていない.我々は想起過程を議論するために, クロストークノイズの時間相関に注目し, 過渡状態を含むすべての場合に適応可能な厳密解を求めた.驚くべきことに, クロストークノイズがガウス分布に従うと仮定した統計神経力学の結果とこの厳密解は一致する.クロストークノイズの正規性を調べるために, クロストークノイズ分布のキュムラントの時間発展を調べた.その結果, パターンを想起することに失敗した場合においても, 3次と4次のキュムラントは0になっており, クロストークノイズが常にガウス分布に従っていることを確認した.また, 理論と計算機シミュレーションより得られる想起過程の結果は一致している.更に, 巨視的な不安定定常状態がセパラトリックスに完全に一致していることがわかった.
著者
川村 正樹 岡田 真人
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.466, pp.15-22, 2000-11-17

系列想起型連想記憶モデルにおける想起過程の厳密解を経路積分法で求めた.経路積分法は厳密解を与える理論であるが, これまでは定常状態しか議論されていない.我々は想起過程を議論するために, クロストークノイズの時間相関に注目し, 過渡状態を含む全ての場合に適応可能な厳密解を求めた.驚くべきことに, クロストークノイズをガウス近似した統計神経力学の結果とこの厳密解は一致する。そこで, クロストークノイズ分布のキュムラントの時間発展を調べた.その結果, パターンを想起することに失敗した場合においても, 3次と4次のキュムラントは0になっており, クロストークノイズが常にガウス分布に従っていることを確認した.また, 理論と計算機シミュレーションより得られる想起過程の結果は一致しており, 巨視的な不安定定常状態がセパラトリックスに完全に一致していることがわかった.
著者
岡田 真人
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

画像は,三次元世界を視点ベクトルから決まる二次元平面に射影することで生成される.これを透視投影という.それに対して非透視投影では,三次元世界を視覚物体毎に異なった視点から観測し,一枚の絵を生成する.我々は,視点の選択と統合に関して確率を用いてモデル化することで,非透視投影画像を自動生成する理論的枠組みを提案する.そこから導出された理論を用いて,非透視投影の画風を模擬するCGのアルゴリズムを提案した.
著者
濱口 航介 岡田 真人 山名 美智子 合原 一幸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.87, no.8, pp.1689-1696, 2004-08-01
被引用文献数
1

神経細胞集団のスパイク同期による情報表現仮説が注目を集める中,フィードフォワード結合された神経層を同期発火が連鎖して伝搬する,Synfire Chainと呼ばれるモデルが提案されている.このモデルでは神経結合の一様性を仮定することで解析的な取扱いが容易になっている.しかし大脳皮質においては局所的な相互作用が存在し,近距離の興奮性,遠距離での抑制性の結合からなるメキシカンハット型と呼ばれる結合が確認されている.そこで我々はMcCulloch-Pitts型ニューロンモデルで構成された神経層の間の結合をメキシカンハット型の関数で与え,各層を伝搬する同期発火の発展を調べた.この系は発火パターンのフーリエ0次モードと2次モードの強度の発展方程式を用いて統計的に記述される.この系には非発火状態以外に,層状回路を伝搬する孤立局在興奮と一様興奮の二つのノントリビアルな安定状態が存在することが分かった.更に孤立局在興奮と一様興奮の共存相が存在することを明らかにした.
著者
濱口 航介 岡田 真人 山名 美智子 合原 一幸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.153, pp.19-24, 2003-06-20

神経細胞集団のスパイク同期による情報表現仮説が注目を集めるなか,同期発火が連鎖して伝搬するSynfire Chainと呼ばれるモデルが提案されている.このモデルでは神経結合の一様性を仮定する事で,解析的な取扱いが容易になっている.しかし大脳皮質においては局所的な相互作用が存在し,近距離の興奮性,遠距離での抑制性の結合からなる.Mexican Hat型と呼ばれる結合が確認されている.そこで我々はMcCulloch-Pitts型ニューロンモデルで構成された神経層の間の結合をメキシカンハット型の関数で与え,各層を伝搬する同期発火の発展を調べた.この系は発火パターンのフーリエ0次モードと2次モードの強度の発展方程式を用いて統計的に記述される.この系には非発火状態以外に,層状回路を伝播する孤立局在興奮と一様興奮の2つのノントリビアルな安定状態が存在することがわかった.さらに,我々は孤立局在興奮と一様興奮の共存相を発見した.
著者
青西 亨 岡田 真人
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.131, pp.85-90, 1999-06-18

オンサーガ反作用場はフラストレーションがあるランダム系の平衡統計力学の重要な概念の一つである.大自由度ランダム非平衡系の統計力学はいまだ発展途上にあり,この系におけるオンサーガ反作用場の役割は不明であった.我々は,オンサーガ反作用場により系全体が加速(減速)することを,シナプスを切断した振動子連想記憶モデルを統計力学的に解析することにより明らかにする.対称切断と非対称切断の系では,巨視的状態は同じであるが,オンサーガ反作用場の違いにより,回転速度だけが異なるというノントリビアルな現象が起こる.よって,この系の解析により,オンサーガ反作用場の加速効果へ寄与を明確に示すことが出来る.
著者
森田 学 小椋 正之 恒石 美登里 渡邊 達夫 岡田 真人 宮武 光吉 梅村 長生
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.786-793, 1999-11-30
被引用文献数
3

根管治療(抜髄・感染根管処置)に関する歯科医療費と診療行為の内容を調査した。昭和55,58,60年,平成2,6年の厚生省社会医療診療行為別調査に用いられた歯科診療報酬明細書のデータのうち,病院,一般診療所分を除いた歯科診療所分のデータを対象とした。各年の対象とした件数は,それぞれ16,145,8,831,18,028,17,165,18,294件であった。歯髄炎や歯根膜炎を主傷病名とする歯科診療報酬明細書の割合は経年的に減少し,平成6年では12〜14%であった。また,根管治療にかかわる点数の合計も年々減少しており,平成6年では,1件あたり平均117点で,総点数の8.3%であった。平成6年の歯科診療報酬明細書について根管治療にかかわる点数を検討したところ,以下の知見が得られた。1)根管治療は40歳,50歳台で最も頻繁に行われていた。また,20歳台では,ほかの年齢層と比較して,3根管歯の抜髄頻度が高いことが認められた。2)根管治療点数の占める割合が最も高い年齢層は20〜29歳であり,総点数の11%であった。しかし,老人医療においては,その割合は約4.0〜5.0%と,全年齢層中,最も低かった。3)抜髄あるいは感染根管処置に始まり根管充填で終わる一連の検査,処置を包括化し,推定点数を算出した。その結果,推定点数の最頻値は,電気的根管長測定検査,麻酔抜髄(あるいは感染根管処置),0回または1回の根管貼薬処置の後に,加圧根管充填した場合の合計点数に等しかった。4)本調査は,1ヵ月の診療報酬明細書を扱い,比較的簡単な症例のみが抽出されていることから,今後数カ月にわたる追跡の必要性が示唆された。
著者
山根 茂 菅生 康子 松本 有央 岡田 真人
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.452, pp.37-40, 2003-11-13

顔は口や目などの部品の配置もさまざま、輪郭や色もいろいろで、さらに表情などの情報を合わせもつ。このように多様で複合した情報が脳内でどのように表現されているかを知ることは、脳の認知や記憶機能のメカニズムを明らかにするうえで大切である。画像の認知や記憶に深く関連している側頭葉と言われる脳の場所では、単一神経細胞においても神経細胞集団においても、おおまかな分類情報から詳細な情報へと階層的に情報が表現されていることがわかった。このダイナミックな分類情報の表現は、連想記憶モデルの振る舞いと酷似していることがわかり、その連想記憶モデルが脳の長期記憶システムとして存在する可能性が大きい。この連想記憶モデルを核に自動的に似ている画像を分類するシステムについて最後に触れる。