著者
市川 忠
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.38-52, 1982-01-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
16

Nobody can deny that lubrication is one of the factors which influence the phonetic function of the larynx. However, no notable studies on the mechanism of lubrication have ever been carried out. This study is an effort to clarify how the larynx is lubricated.The first experiments have been carried out in order to observe the mode of the secretive flow the tracheal and subglottic spaces. As the results of the experiments, the secretive fluid on the trachea traveled toward the vocal folds without phonation. And then, at the instance of phonation, the secretive fluid left immediately the subglottic area and appeared in the slit of the vocal folds.The second, the mode of secretive flow was experimentally examined on the vocal folds during phonation. The second experiments indicated that the secretive fluid on the surface of vocal folds was rotating perpendicularilly to the free edge of the folds.The third experiments of the amount of secretive fluid and its quality were also performed. Phonodynamic examinations including subglottic pressure and sound intensity were carried out in addition to acoustical analysis of the sounds. Results obtained in these experiments were discussed and analyzed from the viewpoint of phonodynamics.
著者
市川 意子 市川 忠雄 溝本 朋子
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.9, pp.780-786, 1996-09-25
参考文献数
11
被引用文献数
2 2

限局した一地方で得られたウシ乳房炎から分離した黄色ブドウ球菌の毒素産生性パターンと,同じ地域の病院患者から得られた黄色ブドウ球菌が同じパターンをもっているかどうかを検討し,地域的に同じパターンの黄色ブドウ球菌がウシとヒトとの感染症に分布している可能性をみた.用いた黄色ブドウ球菌は,1990年10月から1993年9月までの間に千葉県館山市付近における132の酪農家のウシ乳房炎乳から分離した290株と,1992年11月から1993年3月の間に,病院患者から分離した131株である.その結果,1) ウシ乳房炎乳からの分離株では,コアグラーゼVI型が最も多く,毒素は57.9が産生していてエンテロトキシン(SEA~D)が51.7%,毒素性ショック症候群毒素-1(TSST-1)が31.7%を占めていた.エンテロトキシン産生株中でSECが47.3%と最も多かった.2) ヒト臨床分離株では,コアグラーゼはII型が最も多く,ウシ株に多かったVI型はなかった.毒素は73.3%が産生していてエンテロトキシンが68.7%,TSST-1が45.0%を占めていた.エンテロトキシン産生株中でSECが54.4%と最も多かった.3) コアグラーゼ型と毒素産生の組合せで最も多かった菌株は,ウシではVI型,SEC,TSST-1の組合せで全体の19.3%,ヒトではII型,SEC,TSST-1の組合せが全体の36.6%であった.4) 卵黄反応は,ウシ株およびヒト株でそれぞれ68.5%および96.2%の陽性割合であった.前者ではVI型,SEC,TSST-1株の97.8%が陰性であったのに対して,後者ではII型,SEC,TSST-1株の95.8%が陽性であった.5) 同じ地域におけるヒト臨床分離株とウシ乳房炎からの分離株との間に,毒素産生プロフィールの共通性は認められなかった.
著者
平川 正人 吉高 淳夫 市川 忠男
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

ユーザインタフェースは従来の文字主体のものから視覚情報を用いたものに移り変わってきている.更にマルチメディア技術の進歩は,音や動画なども交えた,よりユーザ親和性に優れたインタフェースの提供を可能にしている.ただし対話メディアに複数のメディアを活用するだけでは真に使いやすいシステムとは言えず,コンピュータ処理の質的改善が欠かせない.本研究では,そのような目標に向けたひとつのアプローチとして,コンピュータに社会性を持たせるための基礎的研究を行った.社会性の提供に向けては,まず人間の置かれている“状況"というものをコンピュータが把握する必要がある.そこで状況についての検討をおこない,意味内容の違いから状況を3つのレベルに分類した.さらに,状況認識に基づいた情報管理・アクセスのための基本的枠組みを提案した.また,画像ならびに音声が提供し得る意味について詳細な検討をおこなった.各種メディアデータとして得られる情報を統合し,より高度な状況理解を実現するための研究を進めた.実際に音声,音,映像から各種の特徴データ抽出実験を行なった.さらに,音と映像以外の状況認識の手だてとして,物理的位置の利用可能性について検討をおこなった.位置認識デバイスにGPSを用いた実験の結果,位置情報は状況認識にあたって極めて有効に機能することを確認した.一方,人間とシステムの関係に注目するだけでなく,人間と人間の間で交される対話の過程への状況の利用促進を図ることを目標に,物理的に同じ場所を共有する人間同士の間での情報交換を支援する機能を開発した.プロトタイプシステムの構築を行い,提案した手法の有効性を確認した.
著者
市川 忠雄 大西 啓之 梅津 崇慎 市川 意子 野附 巌 中野 光志
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理研究会誌 (ISSN:09166505)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.53-61, 1994-10-25

青森県下の20戸の酪農家について、夏、秋、冬の3回100項目からなる「畜舎環境衛生改善調査表」を用いて調査を行なうとともに、このうちの4戸について温熱環境やアンモニアガス濃度測定を行なった。さらに、この4戸において2週間間隔で全搾乳牛の乳房炎検査を分房乳サンプルについてCMT変法で実施し、環境調査の得点と乳房炎検査成績との関係を検討した。20戸の環境調査の総合平均得点は65、66および67点とわずかだが調査ごとに改善がみとめられた。しかし、調査項目の中項目別に各配点数を満点としてその得点割合をみると、「搾乳の衛生管理」と「牛体の管理」が3回の調査ともに60%に達せず、他の中項目の得点割合と較べて低かったので、これらの項目を重点的に改善を計る必要が感じられた。朝搾乳前に測定した畜舎内外の温度差は、夏から冬へと季節か進むにしたがって平均0.3、1.7、3.6℃と大きくなったか、農家間に平均して1.4℃の違いか認められた。測定した4牛舎とも閉鎖型であるが断熱材は使用せず、夏季には開放部をできるだけ開放していたので、舎内風速も農家による違いが大きく、とくに夏季には6-0.3m/sと差があった。アンモニアガス濃度は平均して夏1.8ppm、冬4.2ppmであったが、舎内外の温度差が大きく舎内風速が低い農家で高かった。上記4戸における分房別乳房炎陽性率は、秋から冬にむかって全般的に低下の傾向を示したが、平均して4〜10%前後で推移した。全13回にわたる乳房炎検査成績を陽性反応の凝集程度とその発現頻度に応じてスコアー化し、農家ごとに1分房当たりの価として環境調査成績の平均得点と比較した。乳房炎スコアーが0.40と最も高かった農家の環境調査得点は57点と最も低く、逆にスコアーが最も低い農家は74点の得点であった。盲乳発生状況と畜舎構造、とくに牛床長の適否や牛繋留方式との関連について検討した。日本家畜管理研究会誌、30(2) : 53-61.1994.1994年6月8日受理
著者
笠井健治 西尾尚倫 下池まゆみ 市川忠
雑誌
第49回日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
2014-04-29

【はじめに,目的】従来より運動失調症状に対して四肢遠位へ重錘を負荷することで運動の改善が得られることが知られている。その作用機序は固有感覚系からの入力情報の増大とされるが,脳内での反応については明らかになっていない。本研究では近赤外線脳機能イメージング法を用いて重錘負荷が脳血流量変化に及ぼす影響について検討した。【方法】対象者は運動失調患者1名(橋背側海綿状血管腫摘出術後,30歳代女性,SARA9.5点),健常者1名(20歳代男性)であった。課題は両上肢で平行棒を把持した立位で前方の踏み台上へステップ動作を左右交互に繰り返す運動とした。その際,踏み台上面の5cm幅の目印内に足先を収めるように指示した。重錘負荷は0g,500g,1000gの3条件とした。各条件で20秒間の課題と30秒間の休息を6セット繰り返した。計測前に課題練習を行い動作の確認を行った。各条件間で血圧と脈拍を計測し疲労の有無を確認した。課題の成績は各セットでステップが不正確であった割合(以下エラー率)を指標とした。脳血流量変化は光トポグラフィー(日立メディコETG-7100)を用いた。3×5のプローブセットを国際10-05法のC1とC2が,各々左と右のプローブセットの中心に一致するように設定し,運動野と感覚野を中心に左右合計44チャンネルを計測した。ノイズおよびアーチファクトは除外処理を行い,ベースライン補正処理をセット毎に行った。各チャンネルの課題開始5秒から課題終了までの酸素化ヘモグロビン変化量の平均値を算出し(以下oxy-Hb,単位mMmm),脳血流量変化の指標とした。補足運動野および前運動野を反映する領域(以下Pre Motor/Supplmental Motor Area;P/SMA)と体性感覚連合野を反映する領域(以下Somatosensory Association Area;SAA)のoxy-Hbに関して重錘負荷の条件による差を反復測定分散分析およびTukey法を用いて比較した。統計解析はDr.SPSS2を用い,有意水準は5%とした。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は当センター倫理委員会の承認(H25-12)を得て,対象者へ十分な説明をし,書面にて同意を得た上で行われた。【結果】課題のエラー率は運動失調患者では条件0gで40.06±12.78%,500gで19.31±12.85%,1000gで33.33±5.97%であった。0gと比較し,500g%では有意にエラー率が減少した(p<0.05)。健常者では0gで4.17±3.03%,500gで5.63±3.02%,1000gで6.46±3.89%であり,有意な差はなかった。oxy-Hbは運動失調患者では右SAAが0gと比較して500gで有意に増加した(p<0.01)。健常者では左P/SMAで500gより1000g,左右のSAAで0gより1000g,500gより1000gで有意に減少した(p<0.05)。【考察】運動失調患者では重錘負荷条件500gで課題成績の改善を認めたが,健常者では重錘負荷による課題成績の差はなかった。これは重錘負荷による運動失調への効果が本研究でも得られたためと考える。小脳失調患者では課題成績の改善が認められた500g重錘負荷時に右SAAのoxy-Hbが増加した。一方,健常者では重錘負荷により左右のSAAのOxy-Hbが減少した。重錘負荷は筋紡錘から小脳への求心性入力を増大させ,小脳は体性感覚入力をもとに運動の誤差を修正する役割を果たす。この脊髄―小脳ループが障害された場合,大脳皮質による代償的な活動が生じることが予測される。本研究においては失調症患者で課題成績に対応して右SAAのoxy-Hbが増大しており,重錘負荷が大脳皮質感覚領野による小脳機能の代償を生じさせたことを示唆するものと考えられた。【理学療法学研究としての意義】重錘負荷練習に対する科学的根拠の一助となる。また,運動失調患者が運動を行う際に脳のどの機能を利用しているのかを知ることにより機能回復を促進するためのストラテジーの開発につながる。
著者
髙﨑 健二 齋藤 勉 大関 芳沖 稲掛 伝三 久保田 洋 市川 忠史 杉崎 宏哉 清水 収司
出版者
一般社団法人 水産海洋学会
雑誌
水産海洋研究 (ISSN:09161562)
巻号頁・発行日
vol.84, no.2, pp.89-99, 2020-05-25 (Released:2022-03-17)
参考文献数
11

本研究では,灯火を用いない漁業の観測が可能な合成開口レーダを用いて2そうびき漁船の検出を行った.2そうびき漁船の自動検出は,画像からすべての船舶を抽出した後,それぞれの船舶において周辺船舶との距離を調べ,船舶間距離が最小となる組み合わせを漁船ペアとすることで可能となった.漁船ペアが間違っているものについては,組み合わせの修正方法を提示した.また,対象海域における2そうびき漁船の活動を把握するため,2そうびき漁船の密度と船舶間距離を求めた.本研究により,漁期中に十分な画像データが得られれば,漁獲努力量を推定できる可能性が示唆された.
著者
杉崎 宏哉 児玉 真史 市川 忠史 山田 圭子 和田 英太郎 渡邊 朝生
出版者
水産総合研究センター
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.57-68, 2013 (Released:2014-06-11)

安定同位体比を用いた海洋の生態系構造の解析では,基礎生産者の安定同位体比の特定が困難なことが食物網解析の障害となっている。本研究では,摂餌過程における炭素・窒素安定同位体濃縮の歴史的経緯をまとめた上,生物種の安定同位体比を同位体マップ上に整理し,食物網構造や栄養段階の推定手法を紹介した。食物網に沿って炭素・窒素同位体比の関係は線形一次式で表せ,摂食過程における炭素・窒素の同位体分別をそれぞれ3.3‰,2.2‰,その比を1.5に設定することで対象とする動物の同位体比から同位体マップ上に食物網の直線を描くことが可能となった。その結果を用いて三陸沿岸と沖帯の食物網同位体予測モデルを提示した。さらに試料採取法・処理法について再考察し,安定同位体精密測定法の今後の展望についても触れた。
著者
福田 宏之 斎藤 成司 都築 達 牟田 弘 高山 悦代 藤岡 正 鈴木 理文 北原 哲 磯貝 豊 粉川 信行 市川 忠 牧野 克巳
出版者
The Japan Broncho-esophagological Society
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.101-106, 1984-04-10 (Released:2010-02-22)
参考文献数
6
被引用文献数
4 3

Nobody can deny that lubrication is one of the factors which influences the phonatory function of the larynx. However, no notable studies on the mechanism of lubrication have ever been carried out. This study is an effort to clarify how the larynx is lubricated.In the present study, it is revealed that the secretory fluid from the tracheal and subglottic spaces passes instantly through the glottis at the moment of the onset of phonation. Thus, the initiation of the lubrication is accomplished. The fluid from the subglottis is then mixed with the supraglottic fluid which comes mainly from the ventricular gland. A lubricant column is bilaterally made by the mixed fluid on the upper surface of the vocal folds. This lubricant column is rotating perpendicularilly to the free edge of the folds. The lubricant column may lubricate the folds which vibrate during phonation. At the end of phonation, the column decomposes and mostly flows backward to the subglottis. By this flow, the glottis is lubricated again.In this paper, the results mentioned above were discussed and analyzed from the viewpoint of phonodynamics.
著者
笠井 健治 西尾 尚倫 下池 まゆみ 市川 忠
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48100167-48100167, 2013

【目的】近年、認知課題と運動課題を含む二重課題について多くの報告がなされている。しかし、二重課題が学習に与える影響についての報告は少ない。本研究では二重課題(以下DT)が学習に与える影響を脳血流量変化を用いて検討した。【方法】認知課題(A)は30 秒間のストループテストの読み上げ3 回、運動課題(B)はクッション(酒井医療AMB-Elite)上での片脚立位保持とした。対象者はストループテストの経験のない健常な成人男性12 名とし、AとBを同時に行うDT群6 名(36.5 ± 9.42 歳)と、安楽立位でAのみを行うST群6 名(35.8 ± 10.23 歳)を設定した。研究デザインはAを繰り返し3 セット行うこととし、DT群では2 セット目を二重課題とするA-AB-Aデザイン、ST群では全て単一課題のAを行うA-A-Aデザインとした。脳血流量変化は光トポグラフィー(日立メディコETG-7100)を用い前頭前野を対象に合計48chを計測した。ストループテスト実施時の酸素化ヘモグロビン変化量(以下Oxy-Hb、単位mMmm)をベースライン補正後に加算平均処理し、プローブセット背外側に位置する4 個のchのOxy-Hbの平均を前頭前野背外側(以下DLPFC)、内側10 個のchのOxy-Hb の平均を前頭前野内側(以下MPFC)として算出した。また、両群とも課題に対する反応関連性の高いチャンネルの数をROI(region of interest)解析(r>0.7)で求めた。学習の効果判定は、両群とも1 セット目と3 セット目で以下の項目を比較した。脳血流量変化の評価としてDLPFCとMPFCのOxy-Hbと、ROI解析により求められたチャンネルの数を比較した。また、パフォーマンスの評価としてストループテストの正答数の平均(以下Score)を比較し、学習の根拠とした。統計処理はDr.SPSS2 を用いて対応のあるt検定を行った。有意水準は5%とした。【倫理的配慮】本研究は当センター倫理委員会の承認(承認番号H24-14)を得て、対象者へ十分な説明をし、同意を得た上で行われた。【結果】Oxy-HbはDT群で1 セット目の右DLPFC 0.12 ± 0.146、左DLPFC 0.16 ± 0.113、右MPFC 0.13 ± 0.061、左MPFC 0.13 ± 0.057、3 セット目では右DLPFC 0.16 ± 0.096、左DLPFC 0.08 ± 0.117、右MPFC 0.04 ± 0.045、左MPFC 0.04 ± 0.042 となり、両側MPFCで有意にOxy-Hbが減少した(p<0.05)。ST群では1 セット目は右DLPFC 0.21 ± 0.206、左DLPFC 0.28 ± 0.152、右MPFC 0.05±0.146、左MPFC 0.35±0.142、3セット目では右DLPFC 0.10±0.198、左DLPFC 0.19±0.187、右MPFC 0.003 ± 0.140、左MPFC-0.03 ± 0.184 となり、ST群では右DLPFCで有意にOxy-Hbが減少した(p<0.05)。ROI解析で関連性を認めたchの数はDT群で1 セット目11 個、3 セット目21 個、ST群で1 セット目14 個、3 セット目5 個であった。ScoreはDT群で1 セット目47.9 ± 14.95、3 セット目51.4 ± 14.00、ST群で1 セット目45.1 ± 9.31、3 セット目49.1 ± 11.02 であり、DT群のみ3 セット目で有意に増加した(p<0.01)。【考察】先行研究で、学習が進むと課題遂行に必要な局所の脳血流量は保たれたまま、活動領域が縮小すると報告されている。またストループ課題遂行時には左DLPFCが賦活するとされている。本研究でもDT群では課題遂行に関連が少ない両側MDPFCで有意にOxy-Hbが減少し、ストループ課題遂行に必要な左DLPFCのOxy-Hbは保たれていた。また、ROI解析では課題に関連して反応するChが増加していた。これらは課題に対する学習が生じ、脳活動が効率化したことによる脳血流の変化と考えられた。また、パフォーマンスとしてのScoreが改善したことはDT群において学習が生じたことを裏付けるものと考えられた。一方でST群では同様の脳血流変化は少なく、有意なパフォーマンスの改善も得られなかった。つまり、二重課題トレーニングは単純課題トレーニングと比較し、学習効率に優れるトレーニング法であることが脳血流量変化から示唆された。【理学療法学研究としての意義】二重課題トレーニングは単一課題と比較して学習効果の高い方法である可能性が示唆された。臨床における理学療法の介入手段として、二重課題トレーニングを選択する際の根拠の一つになると考える。
著者
小林 稔 志和 新一 北川 愛子 市川 忠嗣 一之瀬 進
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.81, no.5, pp.933-943, 1998-05-25
被引用文献数
21

映像や音声を統合することで, サイバースペースはより豊かなコミュニケーションが可能な空間になってきている.これまでのサイバースペースの移動インタフェースには, 手による操作や視線方向を利用したものが多かった.しかしコミュニケーションにおいて豊かな表現力をもつ手や視線を, 移動のためのインタフェースに利用するのは適当ではない.本論文は, HMDを用いたサイバースペースでの使用を前提に, 足による移動インタフェースを提案する.本論文のインタフェースでは, ユーザは円盤に乗り, 進みたい方向に体重を移動することでサイバースペース内を自由に移動できる.本論文では, まずサイバースペース内を移動するためのインタフェース技術を整理し, それをもとに新しいインタフェースの設計を明らかにする.最後に本インタフェースを使用したユーザの移動軌跡と使用感に関する報告をまとめ, 本インタフェースの効果を整理すると同時に, 身体の向きを変えるときの足の踏み換え動作によるノイズなど特有の課題を示す.